攻略wiki付悪役令嬢が頑張って栄光の一歩を踏み出すまでの軌跡

すらなりとな

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がくえん!~悪役令嬢のわるあがき

●07裏-2_お助けキャラは聖女の親友にランクアップした!

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「暇ですわね」
「仕方ないじゃない。医務室で大人しくしてろって先生に言われたんだから」

 学園の医務室。
 アリスは暇そうにベッドに腰掛けるラティの文句を適当に流していた。
 いうまでもなく、先の錬金術の授業で起こった事故(とノグラは言い張っている)のせいである。決して、アリスが下級貴族だからといって、上級貴族の世話をしているわけではない。

「はあ、アナタ、何か面白いことできませんの?」
「できるわけないでしょ! 私を何だと思ってるの!」

 だから、お嬢様のワガママなど盛大に断ってもなんの問題もないのである。
 ラティもそれは分かっているのだろう、「仕方ないですわね」とつぶやくと、ベッド横に置いてあったブランド物のカバンをあさり始めた。

「ちょっと、寝てないで大丈夫?」
「大丈夫に決まってますわ。
 だいたい、ワタクシは大した怪我もしてませんのよ?
 錬金術の授業中に、筋肉増強剤なんて野蛮なものを投与された野蛮な生命体キメラ触手開発コード星の精3号ペットネームてぃびちゃんに押しつぶされるという、ちょっと意味不明な体験をしただけです」

 いや、ちょっとじゃないと思う。
 内心で突っ込んでいるうちに、ラティはタロットカードを取り出した。

「ゼロから21の間の、好きな番号を言いなさい。
 ワタクシが直々に暇つぶしのついでで占って差し上げますわ」
「え? 嫌よめんどくさい」

 何が悲しくて上級貴族のお嬢様の趣味に付き合わないといけないのか。
 そんな思いから出た言葉だったが、ラティからは何か可愛そうなものを見るような目で見られた。

「アナタねぇ、ちょっとは考えなさい。
 あの野蛮生物を大人しくさせたのは誰でしたの?」
「誰って、それは――」

 幼なじみのアーティアである。
 アリスの前に座っていたアーティアが、授業で資料用にと持ち出された聖剣を引き抜き、野蛮生物てぃびちゃんに立ち向かったのである。
 てぃびちゃんを倒したのは聖剣ではなくアーティアの筋肉だったが。

 何を分かり切ったことを。
 そんな顔をするアリスに、ラティはため息をついた。

「しっかりしなさい。
 アナタの幼なじみでしょう?
 それが、聖剣を抜いたのですわよ?
 聖女になったのですわよ?
 アナタは、ただの下級貴族から、聖女様の幼なじみになったのですわよ?
 筋肉に誤魔化されていますけど、大変な事態ですわよ?」
「あ」

 あまりに絵面が酷かったので忘れていたが、言われてみれば、確かに「大変な事態」な気がする。
 ラティは、上級貴族が故にその辺に敏感なのだろう。
 手元でカードを切りながら続けた。

「自称聖女の血を引く貴族はたくさんいても、聖剣を抜けるほど強い血統と証明された者は、百年前の戦争から一人も出ていません。
 聖女が半分伝説になりかかった存在だからこそ、教会は称え、王族も上級貴族も聖女を政治に利用してきたのですよ?
 そこに、突然『本物』が出現してご覧なさい。
 こぞって利用するか、抹殺するかしますわ。
 本人はもちろん、普段アーティアと一緒のワタクシ達もですわよ?
 医務室で大人しくしてろというのも、学校の対応方針が決まるまで、当事者を隔離するのが目的に決まってます」

 ぞっとしないことを言いながら、軽く目をドアへと向けるラティ。
 微かに、鎧が触れ合うような音がした。
 衛兵だろう。
 アリスは必死に動揺を抑えながら、ラティに問いかける。

「そ、それがなんで占いにつながるのよ?」
「ワタクシ、これでも王家の運命を司る家系ですの。
 まだ未熟ではありますが、多少は占術に覚えがありまして。
 これからどうなるか、見てみようと思いましたの。
 確実なことは言えませんが、おぼろげながらでも未来を知っていれば、心構えくらいはできるでしょう。
 ただ無為に不安で過ごすよりマシかと思ったのですけど?
 余計なお世話でしたか?」
「し、仕方ないわね。暇つぶしに付き合ったげるわ」

 いつもならラティから言われていそうなセリフで返すアリス。
 ラティはどこか勝ち誇ったような顔で、タロットの束を揃えた。

「では、先ほど申し上げた通り、ゼロから21までの好きな番号を」
「なんでもいいの?」
「ええ。むしろ、難しく考えず、思いついた番号の方がいいですわね」
「じゃあ、ラッキーセブンってことで。7で」
「では、上から7枚めくります。アルカナは――No.XⅢ。
 あとは、アナタの生年月日を――」

 ノートを取り出し、何やら複雑な計算を始めたラティ。
 時折、妙な触媒の入ったビンを振って色を見たり、よくわからない事をしている。

「占いって適当にやってるんじゃないのね?」
「その辺の詐欺師と一緒にしないでくださる!?
 占術は、ちゃんとした奇跡の御業の一体系ですわよ!?」

 アリスの感想に文句を言いながらも、淀みない手付きで計算を進めるラティ。
 やがて顔を上げ、

「出ましたわ。あら?」
「え? どうしたの?」
「死の∀。つまり、今日のアナタは死を迎えます」

 は?

 とんでもない結果に固まるアリス。
 同事、扉が開いた!

「駄目だよそんなの!」

 入ってきたのは、アーティア!
 肩には、何故か触手生物のてぃびちゃんを乗せている。

「ラティ! アリスが死んじゃうってどういうこと!」
「占いの結果ですわ。細かく説明しますと――」
「わー! 駄目! 最後まで言っちゃ駄目! なんか現実になりそう!」
「はあ? なりそうじゃなくてなるのが占術ですわ!
 馬鹿にしてますの!?」

 叫ぶアーティア。
 家業をバカにされたと思ったのか、怒るラティ。
 収集がつかなくなりそうな事態に、アリスはとりあえず話題を変えた。

「そういうアーティアは何してたのよ?」
「え? ノグラ先生に呼び出されちゃって。
 証拠隠滅に聖剣なおすの手伝ってって」
「おウ! 証拠隠滅じゃありませんヨ?
 たダ、聖剣の修復にハ、私といえド、聖女の力が必要だっただけデ……」

 が、アーティアの話を引き継ぐように、第三者が部屋に入ってきた。
 ノグラである。

「アリスお嬢様モ、ラティアナお嬢様モ、ごきげんよウ。
 この度は私の授業でこのようなことになってしまいまことに申し訳ありませン。
 しかシ、これには――」
「言い訳は結構ですわ!」

 何か長くなりそうな話を、ラティが強引に断ち切った。
 珍しく、アーティアやアリスとじゃれる時に見せることはない、純粋な怒気を浮かべている。

「なぜワタクシのお友達を危険な実験にさらしたのか、それは後ほどお父様から学園長を通じて、しっかりと追及させていただきます!」
「へア!? そ、それハ……」
「文句は言わせませんわ!
 それより!
 先生がここへ来たということは!
 ワタクシたちに伝えることがあったんじゃなくって!?」
「え、ええっト、それハ――」
「それは、私から説明します」

 たじろぐノグラを遮って、入ってきたのは学園長。
 まだ1年生の下級貴族にすぎないアリスは、入学式の講堂で挨拶しているのを見たくらいで、面と向かうのは初めてだ。
 一方のラティは面識があるのか、少しだけ怒気を弱めた。

「直接、こうして会うのは久しぶりですね、ラティアナ」
「ええ、先生。この間のパーティ以来ですわね。
 できれば、もう少し違う形でお会いしたかったですわ」
「貴女のお怒りはもっとも。
 後ほど、貴女と貴女のお友達、そしてそのご家族には、私から正式に謝罪させていただきます。処分も、当事者のノグラ先生と責任者である私は、しっかりと負うことになるでしょう」
「いいえ、先生。
 ワタクシは処分は望みません。代わりに、二人の保護をお願いしますわ」
「もちろん。私の大切な生徒ですもの。
 宗教屋にも政治屋にも、指一本触れさせません。
 もちろん、ラティ、貴女もその中に含まれていますよ」

 睨にらみ合う二人。
 先に口を開いたのは、ラティの方だった。

「では、これからの処遇をお聞かせください」
「ええ。
 とりあえず、アーティアさんとアリスさんには、セキュリティの都合上、下級貴族用の寮から、上級貴族の寮へと移っていただきます。
 衛兵をよこすので、本日中に用意するように。
 それと、しばらくあなたたち三名には護衛を付けさせてもらいます。
 授業は学園全体の守衛の強化だけで対応しますので、今まで通り励んでいただければと思いますが、課外時間は常に人が付くようになります。わが校でも王族や要人を受け入れていますが、それと同じ対応になりますね。
 それから――」

 こまごまとした注意事項が続く。
 アーティアは雰囲気に当てられたのか、固まったまま。
 アリスはがんじがらめの監視に、聞いただけでげんなりした。

「――以上です。何か質問は?」
「ワタクシからはありませんわ。残念ながら妥当な処置でしょう」
「理解していただけて何よりです。
 何かあったら、私まで直接お願いしますね。可能な範囲で、便宜を図ります。
 ああ、この後、迎えをよこしますので、もう少しここで待機していてください」

 それでは、と言い残して、ノグラを連れて去っていく学園長。
 ラティは閉まった扉をしばらくじっと見つめていたが、

「ふーーーーーぅっ! もう嫌ですわ!!」

 ベッドに沈み込んだ。
 慌てて駆け寄る二人。

「ラティ、大丈夫!?」
「大丈夫なわけないでしょう!
 足ガクガクでしたわ! 喉カラカラでしたわ!
 ああもう! パーティでもないのに! なんであんな恐ろしい人とお話し合い貴族の戦争なんてしないといけませんの!」

 上級貴族って大変なんだな。
 シンクロしたアリスとアーティアに、容赦なくラティの目が向く。

「他人事みたいな顔してますけど、二人とも明日から似たようなもんですわよ?」
「だ、大丈夫だよ! アリスは私が守るから!
 誰が来たって私の筋肉と先生から紹介されたこのてぃびちゃんで!」
「そういう意味では……いえ、そのくらいの方がいいかもしれませんわね」

 何か納得したラティ。
 アリスはそれはどういうことかと聞こうとしたが、

「失礼します! 聖女様、そのご友人の方! 入ってもよろしいでしょうか!」

 響いたノックの音に遮られた。


 # # # #


 翌日。
 アリスは痛いほどラティの言葉の意味を思い知ることとなった。

 朝、部屋を出ると同時に屈強な衛兵に後ろから見守られ、教室に向かうまでの間も下級貴族から嫉妬や恐怖の目が向けられ、上級貴族からは値踏みするような視線が飛んでくる。授業中も、先生達から露骨に質問を避けられたりした。
 ラティは慣れているのか平然としていたが、アーティアとラティは放課後にはすっかり疲れ果ててしまった。

「はあ、よくラティは平気だね?」
「このくらいで音を上げていては、上級貴族は務まりませんわ。
 それより、この後が大変ですわよ?」

 午後の日差しが照らす教室の中、教材を片付けながらため息をつくアーティアに、不穏な言葉で返すラティ。
 アリスは引きつった声で尋ねた。

「ま、まだなんかあるの?」
「授業中は先生の目もありましたし、周りに生徒も多かったですけど、放課後はそれもまばらになります。
 自分の派閥に組み込もうとする輩が寄ってくるでしょうね。
 衛兵も、普通に仲よさそうに私たちに話しかけてくる生徒を排除するなんてことはできませんわ。
 王族や有力貴族なら派閥を組んで移動することで、そういうのを避けることができるんですけど、ワタクシ達はたった三人ですし」
「あ、あの上級貴族の取り巻きとか行列って、そういう効果があったんだ」
「当り前ですわ!? 誰も好き好んでぞろぞろ歩いたりしませんわよ!」

 普段通行の邪魔くらいしか思っていなかった行列の意外な効果に思わず声を漏らせば、ラティはぷりぷり怒りながら鞄を手に立ち上がった。
 慌てて、二人で追いかける。
 すると、さっそくラティに上級生が話しかけてきた。

「あ、すみません、アーティアさん、ですよね?」

 後ろの衛兵に動く気配はない。
 代わりに、ラティは笑顔で対応をはじめる。

「あら、ごめんあそばせ。
 ワタクシたちは、これから学園長のところへ行かないといけませんの」
「そうでしたか。それでは、また……」

 意外にも、あっさりと去っていく上級生。
 アリスはラティにそっと話しかけた。

「割とあっけないわね」
「初回はこんなものですわ。
 それより、さっきの上級生の顔くらいは覚えておきなさい。そのうち、何か厄介ごとを持ってきますわよ? 間違っても、こちらの弱みを見せないように」
「そ、そう……」

 真顔で注意され、ひきつった顔でラティの後ろへ回るアリス。
 もう、こういうのはラティに任せよう。
 その判断は正しかったらしく、ラティは次々とやってくる相手をさばいていく。

「間に合ってますわ」「ご縁がありませんね」「急いでますの」

 部活の勧誘から、有名な商家の跡取り、果ては神学の先生まで。
 営業用の笑顔で、それぞれ違った言い訳で避けていく。

「ラティすごい」
「まったくね」

 アーティアの感嘆の声に、素直に同意するアリス。
 が、校門から出たあたり、貴族の行列に出くわしたところで、止まった。

「あら、ラティ、ごきげんよう」
「ごきげんよう、ローラ伯爵令嬢」
「ちょうどよかったわ。ご一緒できないかしら。これから教会へお祈りに行くところなの。聖女様の言葉を、みんな聞きたがっているわ?」

 教会と縁のある上級貴族だろうか。
 首からかけたロザリオを揺らしながら、先ほどさばいてきた生徒たちとは違い、やや強引に詰め寄ってくる。

「お気持ちはありがたいですが――」
「後ろのお二人はお友達? どちらが聖女様かしら?」

 断ろうとするラティをすり抜け、強引にアリスとアーティアに迫る。
 露骨な態度にむっとしたアリス。
 が、その前に、アーティアが前に出た。

「ちょっと、ラティが話そうとしてたのに、失礼じゃないですか?」
「あら? ごめんなさい。気が付かなかったわ。
 でも、私も聖女教会とは親しい家系ですから、聖女様とお話しておきたいの。
 それより、貴女こそ、聖女様のそばにいるのであれば、その肩に乗せている変な生物を何とかした方がよろしいのではなくて?」

 そう言って、しっかりとアリスを見据えるロザリオの貴族。

 あれ? もしかして、私が聖女と勘違いされてる?

 戸惑うアリス。
 が、勘違いを訂正する間もなく、行列先頭に手を握られた。

「ああ、聖女様! お会いできて光栄ですわ!
 私、ローラと申しまして――」

 顔が近い。
 思わず後ずさるアリス。
 顔が追いかけてくる。
 さらに後ずさるアリス。

 助けを求めるように周囲を見渡し、

「百合ニハサマル女! 許スマジ!」

 鬼のような形相を浮かべるアーティアが!

  筋 肉 爆 発 ! !

 一瞬にして肉体美を超越した筋肉の鎧を身に着けたアーティア!
 ローラの首根っこをひっつかんで、強引に持ち上げる。

「何を……!?」

 必死に振り返った挙句、絶句するローラ。
 無理もない、その先には、

「N T R ハ 絶 対 ニ 許 ザ ン ッ !!!」

 地獄のような声を上げるアーティアと、

「二人に手を出すなラ、私を倒してからにしなさイ!」

 触手からムキムキの人型に変貌したてぃびちゃんが!

「通してくださいますわね?」

 そこへ、ラティが笑顔で声をかける!
 一斉に左右に分かれる行列貴族たち!

「さ、行きますわよ? 聖女様?」

 そのまま、ラティはアリスの手を取って、マッスルポーズで威嚇しながら進むアーティアとてぃびちゃんを前に、悠々と歩き始めた!
 慌てて抗議するアリス!

「ちょっと私は聖女じゃ……」
「我慢なさい! どう考えてもアレがボディガードでアナタが聖女ですわ!」

 が、封殺!

 流石に不憫に思ったのか、行列が見えなくなったところで、ラティが一言。

「仕方ありませんわ。
 あなたはいろんな意味で社会的に死んだのです。
 占いが当たったと思って、腹をくくりなさい」

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