攻略wiki付悪役令嬢が頑張って栄光の一歩を踏み出すまでの軌跡

すらなりとな

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がくえん!~悪役令嬢のわるあがき

○08表_悪役令嬢は作戦を練り始めた!

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「というわけで、今はアリス様が聖女として振舞っていますが、本来の聖女はアーティア様のようです」

 朝。イザラは例によって、身支度を整えながら、ブルネットの報告を聞いていた。
 なんでも、ノグラを問い詰めて聞き出した情報らしい。
 どうやって問い詰めたかは聞いていない。
 精神衛生上よろしくないからだ。

「ありがとうブルネット。
 では、今はアリスを中心に、アーティア、ラティで動いているのね?」
「はい。正しくはもう一匹、てぃびちゃんなる生物兵器がいるようですが」
「そ、そう……危険はないのかしら」
「ノグラに○×$*をして確認しましたが、問題ないようです」

 一部、聞き取れなかったが、ブルネットがそう言うなら問題ないのだろう。仮に問題があれば、あの学園長が何とかしているはずだ。少なくとも、「前回」において、イザラの死因は生物兵器ではない。錬金術師だ。

「ノグラ先生といえば、少し前に校門でぬいぐるみを押し付けてきた錬金術師――ナイアを捕まえたとのことですが?」
「ええ。確認しています。
 しっかりと錬金術で閉じ込め、反省を促している最中とのことでしたが」
「早めに、きちんと規則通りの処罰を下すようお願いしてください。
 いつまでも個人のもとで管理していては、逃げ出したりされるかもしれません。
 必要なら、私から学園長にお声がけします」
「承知いたしました。
 しかし、ご安心ください。私の調教の成果をもってすれば、お嬢様の手を煩わせることはありません。ノグラには+#$%して確実に実行させます」

 お願いして、と言ったつもりなんですけど?
 ま、まあ、ブルネットもノグラ先生も楽しんでるようこれでいいのかしら?
 ……自分で考えていてなんですが、楽しむって何でしょう?

 浮かんだ疑問をきっちり心の奥底に封印し、イザラはブルネットに向き直る。

「お願いね。
 それと、クラウス様のお加減はどうかしら?」
「はい。衛兵に確認しましたが、大したことはないようです。
 もともと流行り病の症状は軽いうえに、薬も出来上がっていますから、さして心配する必要もないかと」
「そう、でも、お見舞いには行かないといけませんわね。
 手土産は何がいいかしら?」
「必要であれば、クラウス様の好みの品など、お調べいたしますが?」
「ありがとう。でも、私もこれで婚約者です。自分で考えてみるわ」

 軽く笑ってブルネットの申し出を断る。
 この間の慰問ではあと一歩踏み込めなかったが、逆に言えば、もう一歩踏み込めるようになるまであと少し。イザラとしては、きちんとお見舞いイベントをこなし、好感度を上げたいところだ。

 プレゼントするなら何がいいかしら?
 高級なものは慣れていらっしゃるだろうし、珍しいものの方がいいかしら?
 いえ、この間、ラバン様との関係を気にされていましたから、話のきっかけとなるよう、薬学の本なんていいかもしれません。

 考え始めると止まらなくなったのか、ブルネットが髪をセットするのに任せながら、次々とプレゼントを思い浮かべるイザラ。

 プレゼントを選ぶのも、難しいけど楽しいものですわね。

 そう思い始めた矢先、ブルネットが水を差した。

「イザラお嬢様。
 ラティアナ様がいらっしゃるとはいえ、アーティア様が聖女となられた以上、こちらも早めにお会いした方がよろしいのでは?」

 確かに、アーティアとは早めに会う必要がある。
 貴族の中でも、教会権益に依存する貴族と国王の権威に依存する貴族でそれぞれ派閥がある。教会派閥の貴族がアーティアに接触して、あらぬことを吹き込むと面倒だ。ブルネットの報告ではラティが頑張っているようだが、それも限度がある。

「そうね……。
 でも、クラウス様の流行り病が治ってからでは、お見舞いに行けません。
 それが原因で、不仲を喧伝されても困りますし……」
「そのような、当てつけのような噂をする者がいるのですか?」
「分からないわよ? 来年には、メビウス様もいらっしゃるし」
「なるほど、メビウス第二王子ですか」

 メビウス第二王子。
 来年、イザラとは入れ替わりで入学することになる、クラウスの弟である。
 教会――この国では最大宗教となっている聖女教会と王宮をつなぐべく、英才教育を受けている。
 教会派閥の貴族にとっては、うまく取り込めば最大の支援者となる一方、敵となれば容赦なく王権でもって叩き潰されるという、なんとも難しい相手である。メビウスの入学前に、より取り込みやすそうなアーティアを狙う、というのは自然な流れだろう。アーティアからイザラをはじめとした王権に依拠する貴族を引き離すため、悪評を吹き込むことも、十分に考えられる。

「メビウス様とは何度かあったことがあるけど、クラウス様やラバン様と仲がいいようですし、メビウス様が入ってくれば教会貴族も動きにくくなるでしょうから――」

 などと、ブルネットと話していると、

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――
 【メビウス】
  2年目に追加される隠しキャラ。
  全攻略キャラのラブ値が低いと現れる。
  バットエンド回避用の都合のいい救済キャラともいうべき存在。
  教会から吸い上げた怪しい金の力で、いろんな問題を解決してくれる。
  ある意味理想の相手だが、ラブ値が低いと金で買われた関係で終わる。
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――

 頭の中に声が響いた。
 相変わらず何を言っているのか分からないが、罵倒していることは理解できるという酷い説明である。
 慌てて頭を振って追い払うイザラ。
 ブルネットが心配そうに声をかけてきた。

「お嬢様? どうかなさいましたか?」
「いえ、何でもないの。
 それより、ブルネットは、メビウス様について、何か知ってる?」
「メビウス様ですか? そうですね……ああ、そういえば、教会系の貴族たちが
『あの流行り病の薬を教会から配布すれば、膨大な利益が上がる』
『発案者はイザラ様だそうだ。
 我々にも販売の手伝いをさせていただくよう、メビウス様にうかがってみるか』
『いっそ、イザラ様には、メビウス様の婚約者となっていただいた方がよいのでは』
 と、噂していたとの話を耳にしました」

 え? 何それ?

「ちょっとブルネット? 本当なの?」
「はい、問題ありません。
 まったく、お嬢様を利用しようなどと。$&□”では足りません」
「いえ、そういうところを気にしているのではないのだけど!?」

 何やら不穏の言葉が聞こえてきた気がしたが、そんなことはどうでもいい。
 いや、よくはないが、いつものことだ。
 肝心なのは噂の方である。

「その、噂が流れているのは本当なの?」
「はい。お嬢様のお力を正しく認識している方はいるようで、一部の方はまじめに公爵家へ働きかけようと考えているようです」

 どうやら、良かれと思って早く薬を完成させてしまった結果、妙な事態を招いたようだ。
 たかが噂と侮ることなかれ。
 貴族社会では、この噂が膨れ上がって、本当になることも多い。
「前回」の記憶を持つイザラは、脳裏にメビウスに乗り換えたとクラウスから糾弾される光景が浮かび上がった。

「早めに噂は潰しておく必要があるわね。
 やはり、先にクラウス様のお見舞いに参りましょう」
「承知いたしました。
 プレゼントは、やはりご自身で?」
「ええ、放課後までに決めておくわ」

 髪のセットが終わったのを見て、ドレッサーから立ち上がるイザラ。
 そのまま、ブルネットの見送りを受け、部屋を出て、寮の廊下へ。

 クラウス様のお見舞いは――今日の放課後にでも行きましょう。
 授業が終わるまでに見舞いの品を決めておく必要があるわね。
 あら、そういえば、クラウス様からも、アーティアと放課後を過ごしてもいいのでは、と言われてましたね。
 ラティやアーティア、アリスを誘って、一緒に買いに行こうかしら。
 聖女となったアーティアとも一緒に過ごせますし、一石二鳥。
 いえ、でも、聖女となった以上、簡単に声をかけて、とはいかないわね。
 今回は、やっぱりお見舞いの品は一人で用意しようかしら?
 どういったものがいいかしら――

 メビウスの関係で頭を悩ませていた反動か、楽しそうにクラウスへのプレゼント選びを再開するイザラ。

「おはようございます! イザラお姉さま!
 その、慰問、お疲れ様でした!」

 そこへ、ラティが待ち構えていたように話しかけてきた。
 他に上級貴族はいない。
 聖女アーティアと付き合いが多く、派閥から離れていたせいだろう、ラティ自身も少し緊張が見える。不可抗力とはいえ、イザラの派閥から離れてしまったことに、気まずさを感じているのだろうか。
 イザラは、できるだけ以前と同じ雰囲気を作って話しかけた。

「あら、ラティ、おはよう。
 色々と大変だったみたいだけど、変わりないかしら?」
「ええ! 問題ありませんわ!
 その、お姉さまにはご挨拶が遅れて、申し訳ありません」
「いいのよ、私にとって、大切な後輩であることは変わらないのだから」
「~~~ッ! ありがとうございます!」

 微笑んで見せると、何やら顔を真っ赤にして礼を言ってくるラティ。
 よかった。いつものラティだ。
 教会派閥の貴族から変なことを吹き込まれるわけでもないようだ。
 しかし、

「その、少しだけ時間をいただけますでしょうか!?」
「ええ、大丈夫よ? どこか場所を移した方がいいかしら?」
「いえ、お話自体はここで……実は、その、お姉さまに聖女様と会っていただきたいのです!」

 話は妙な方向へ流れ始めた。

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