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あぁ、攻略対象1ですか
しおりを挟む「お待たせして申し訳ありません、ランベール殿下」
「構いませんよ、こちらこそ急に訪ねて驚いたでしょう」
ランベール殿下は人の良さそうな笑顔をシャルロットに向けた。この笑顔に何人もの女性が騙されただろうか。
王族特有といわれているプラチナブロンドの髪、太陽をそのまま閉じ込めたような輝く黄金色の瞳。
前世でみたことのある、美しい少年の幼き姿に、思わず溜息が出そうになった。
…どこか夢の中の話のように感じていた異世界転生が、攻略対象をみて現実味が増した。
「目を覚まされたと聞いて安心しました。怪我の調子はどうですか?」
「えぇ、日常生活には差し支えのないほどには回復しました」
心配なんてしていなかったくせに、どの口が言っているんだと苛立つ気持ちを抑え、なんとか微笑む。
「それは本当に良かった。では妃教育はいつ頃から再開しましょうか?」
天使のような笑顔で、意識を取り戻したばかりの人によくそんな鬼畜なことを言えるよ…
ランベール殿下に惚れていたシャルロットだったら、見舞いに来てくれたことに喜び、妃教育にも積極的にとりかかったんだろうけど…私は違う。
「ただ、ひとつ問題がありまして」
「…問題ですか?」
私は先ほどまでの貴族らしい慎ましい作り笑いをやめて、歯を見せて最高の笑顔で笑った。
「実は以前の記憶がないのです。殿下のことも、なにも覚えていません」
笑顔で言う内容ではないけど、婚約者候補から外れたい私にとっては最高の切り札だ。
ランベール殿下も予想外の言葉に、お得意の笑顔が顔から消えた。
「私は殿下の婚約者候補だと先ほど聞きましたが、記憶のない私が務まるとは思えません。辞退させていただければと思います」
抑えきれない喜び(抑えるつもりもない)を、隠すことなく態度だした。このくらいで不敬罪にはならないだろう。
殿下は目を見開き、ただただ驚いている様子。記憶がないとはいえ、私から辞退の申し出が来るとは夢にも思わなかったのだろう。
…まぁ、シャルロットはそれほどまで殿下に執着し、付きまとっていたらしいから。その反応になるのは仕方がない。
私が言いたいことは伝えたので、さっさと帰ってくれやいかなぁ…と思っていると
ドアがノックされ、外出されていた筈のお父様が入ってきた。
「お父様!お帰りなさい!」
…あぁ、なんて美しい顔!!
実の父親をそんな風に思うなんて可笑しいかもしれないけど、美しいんだから仕方がない。
私は殿下がいることを忘れ、お父様に駆け寄り、テンションにまかせて抱きついた。
貴族令嬢としては最悪なマナーなんだろう。それでもお父様は咎めることなく、優しい顔で私を抱きしめてくれた。
「ただいま。シャルを1人にさせてしまって、ごめんね」
…イケメンお父様、最高。
抱きついても娘だから許される立場をいいことに、この3日間美しすぎる父親や母親に馴れ馴れしく甘えることが癖になってしまった。
「殿下、シャルロットのため足を運んでいただきありがとうございます」
「いえ、あの時そばにいながら助けられなかったので…」
「シャルロットは自ら階段を踏み外したので、殿下が気にやむことはございません」
「…そうですね」
私は殿下から隠れるようにお父様の後ろに身を潜めつつ、2人の会話に聞き耳をたてる。
少しの沈黙の後、先に口を開いたのは殿下だった。
「シャルロットが記憶喪失というのは本当ですか」
「医師から1週間は様子をみてみるように言われていたので報告が遅くなってしまいました、申し訳ございません。
娘が婚約者候補を務めるのは難しいかと思います。後日、辞退させていただく旨を陛下へ報告させていただきます」
「そうですか…残念ですが、了解しました」
よっしゃ!!
お父様や殿下にバレないよう、ガッツポーズをする。
こんなに早く攻略者候補1と縁が切れるとは思わなかった。殿下のルートが1番バッドエンドになる可能性が高かった。
私は公爵令嬢として自由気ままに生きれるわ!
「ですが、シャルロットは私の幼馴染には変わりないので、今後も仲良くしてくださいね?」
…仲良くはご遠慮願たい
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