召喚世界のアリス

天野ハザマ

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異界の国のアリス

魔女リーゼロッテ

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「この……ブースト!」
「げっ、速くなった⁉」

 ホウキから何か流れ星みたいなの出てるし! 何アレ! ちょっとかわいい!

「逃がしませんわよ! とあーっ!」
「ぐっ⁉」

 ホウキから更に跳んで私に飛びつく魔女。

「お、重いっ⁉」
「失礼ですわね、羽より軽いですわよ!」

 羽より軽かったら病気だよそれ。あー、もう!

「さあ、顔をお見せ! って……あら?」

 私に背後から絡みついたまま顔を覗き込む魔女だけど……呆けたように目を見開いている。
 だから魔女じゃないと言ってるのに……ていうか。

「見ろよ。あの魔女、女の子に絡んでるぞ……」
「どおりで男に靡かないはずだよな」
「そうか、そっちか」
「違いますわよ⁉」

 いや、そういう風にしか見えないでしょ。ちなみに私もそっちの趣味はないぞ。
 男に興味あるかって言われても「はあ?」ってなるけどさ。
 ていうかアルヴァにせよハーヴェイにせよ、残念美形だし。
 マトモっぽいグレイは……ウサギ成分多めだしなあ。もう美形かどうかも私には分からん。

「だから最初から言ってたのに……」
「逃げる貴方が悪いんでしょう⁉」
「いや、どう考えても言い掛かりつけてきた方が悪いでしょ」
「むぐっ」

 魔女は黙り込むと、何かを言い返そうとしてはやめる動作を繰り返す。
 んー……よし、ほっとこう。
 私がそう決めて魔女の横を通り抜けようとすると、魔女が私の腕を握る。

「え、何? やっぱりそっちの趣味が?」
「ありませんわよ!」
「ごめん、私はそっちの趣味に理解はあるけど進む気はないんだ」
「ないって言ってるでしょう⁉」
「いばらの道だとは思うけど、そうと決めたなら頑張ってほしいな」
「貴方わざとやってますわね⁉」
「うん」

 このくらいの意趣返しは許されると思うし、選ばれし美少女に許される奥義「テヘペロ」をやらなかった私の理性に感謝してほしい。

「で、縄張りとか言ってたけど……魔女ってそういうのあんの?」
「……普通、そういうデリケートそうな話題はスルーするものではなくて?」
「あれだけ大声で騒いどいて何を今さら」

 私が呆れたように言えば、魔女は何とも言い難い表情になってしまう。
 いや、でも勝手に言ってたしなあ。私は悪くないぞ。

「……ありますわ。魔女が一所に多すぎても、何も良い事はありませんもの。何故なら」
「あ、うん。超デリケートそう。もういいや」
「貴方が聞いたんですわよね⁉」
「これ以上難しそうな話を聞くと私の中で処理しきれないんだよねえ」
「貴方さては馬鹿ですのね⁉」
「ばっかでーす☆」

 テヘペロしてみたら「キー!」って怒った。
 うわ、本当にああいう怒り方する人いるんだ。すごいなー。

「ほんっと、なんなんですの貴方!」
「いや、こっちの台詞だし。こんな漫才コンビみたいな事しといて何だけど、名前すら知らないし」
「そういう事言うってことは余所者ですのね⁉」
「まあ、余所者だけど」

 何? 魔女ってその土地の顔役か何かだったりするの?

「なら教えて差し上げますわ。私は魔女のリーゼロッテ! この町で薬師をやっておりますわ!」
「お薬屋さんか」
「俗っぽく言わないでくださる⁉」
「はいはい、薬局薬局」
「訳の分かんない事を言うんじゃありませんわ! 薬師は薬師ですのよ!」
「めんどくさっ」
「はああああああああああああ⁉」

 だってめんどくさいんだもん。もうどっか行っていいかな?

「で? 貴方は何なんですの?」
「何って。美少女だけど」
「ビンタしてもよろしいかしら」
「世界の宝にビンタしたいとか、何処の王様?」
「貴方、天眼も持ってないのにほんっとおおおに魔女っぽいですわね⁉」

 また分からん単語出てきた。何、天眼って。星があるから?
 ていうか肩掴んで揺らそうとしないでよ。

「で? 美少女さんのお名前は何と仰るのかしら⁉」
「アリスだけど」

 私が自己紹介すると、魔女……リーゼロッテは「あら」と声をあげる。

「アリス? もしかして、貴方がグレイの言っていた子ですの?」
「グレイ?」

 それはもしかしなくても、私の知ってるグレイかな?

「質問。そのグレイの『色』は?」
「白ですわ。白ウサギ。これでよろしくて?」
「どういう関係?」
「依頼主でしてよ」

 依頼主。此処にグレイの追っていた事件を合わせると……ふむふむ、ふむ。

「……もしかして、狙われてたり?」
「その聞き方からすると……そうですのね?」
「此処に来たのって、グレイに情報聞きになんだよね」

 ヒソヒソと会話すると、リーゼロッテは納得したような表情で何度も頷く。

「そういう事なら、貴方が会うべきなのは私ですわね。グレイは契約上話せないでしょうから」
「そういうものなの?」
「貴方仕事を何だと思ってますの?」

 そんなこと言われても、私の主な仕事って雑用とかペット探しだしなあ。
 E級なめないでほしい。

「ま、そういう事ならお話聞かせてもらえないかな」
「ええ、よろしくてよ。グレイの話が半分でも事実なら、貴方に恩を売るのも悪くなさそうですわ」

 胸を張るリーゼロッテだけど、周囲で私達を見ていた野次馬が何やら囁きあっている。

「話がまとまったらしいぜ」
「二人とも可愛いのになあ……もったいない」
「俺はいいと思う」
「今度アタックしてみようかしら……」

 勿論リーゼロッテにも聞こえていたようで「見世物じゃありませんわ! ていうか違いますわよ!」と叫んでホウキを振り回して追い払っている。
 ていうか、あれ?

「そのホウキ、いつ拾ってきたの?」
「……この状況で気になるのはそこですの?」

 だって気になるんだもん。
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