勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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いつか夢見た光2

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 そこは、暗い場所だった。
 壁に囲まれたその場所は通路のようで、視線の先には三方向に分かれた道がある。
 例えるのであれば、それは迷宮にも似ているだろう。
 しかし不思議と湿っぽくはなく……ただ、暗いだけだった。
 不思議といえば、この迷宮の白い壁もそうだろう。
 つるりとした白い壁は神殿などに使われている高級な石に似てもいるが、それであるかといえば違う。
 かといって、ならば何かと問われれば分からないと答えるほかない。
 石のようでもあり、金属のようでもある。
 ただ分かることは、強い魔力を放っているということくらいだ。

「……不思議な場所、ですね」
「そうだな」

 壁をペタペタと触っていたカインに、ヴェルムドールはそう返す。
 イクスラースと一緒に入ったはずが、中に入ってみれば居たのはカインである。
 別にそれがどうというわけではないし、イクスラースも一人だからどうというわけでもないので心配はしていないのだが……久々に会って気軽に話をする仲というわけでもない為か、どうにも会話が進まなかった。
 といってもあまりお喋りというわけでもないヴェルムドールと、妙な遠慮をしているカインの組み合わせである。
 話を弾ませろというのも無理な話なのかもしれない。

「あー……えっと、ヴェルムドール様もすぐに来たんですね」
「すぐというわけでもないはずだが。それなりに後だったが」

 ヴェルムドールがそう答えると、カインは不思議そうな顔をする。

「え? でも、確かほぼ同時でしたよね?」
「そうだな」

 そう、カインとヴェルムドールがこの場所に転送されるのは、ほぼ同時であった。
 二人の入った時間を考えると、スタート地点と思わしき場所に同時に転送されることなど、普通はないはずである。

「まあ、恐らくは神の試練とやらの一部なのだろうな」
「神の試練っていうと、勇者リューヤが受けたっていうやつ……ですよね?」
「そうだな。どの本にも具体的な内容は書いていなかったが、な」

 ヴェルムドールの呟きにも似た返答に、カインは頷いてみせる。

「そうでしょうね。僕も色々と調べてみたんですけど、詳しく書いた本は一つもありませんでした。ルーティ先生も、そっち関連のことは教えてくれませんでしたし」
「そうか」

 まだ興味深げに壁を調べているカインにヴェルムドールは視線を向けると、呆れたように溜息をつく。

「……そんなに壁が面白いか?」
「あ、いえ。不思議な材質だなあ……と思ったもので」
「神の造ったものだ。不思議でないものを探す方が難しいだろうさ」

 ヴェルムドールの言葉に、カインは言われて見るとそうかも……などと納得したように頷く。
 
「まあ、とにかく他の人達と合流する方が先ですよね」
「可能なら、な」

 ヴェルムドールの返答に疑問を浮かべつつも、カインは道の先に向かって「おーい」と叫ぶ。
 しかし、声は反響して伝わっていく……どころか、響きもしない。

「あ、あれ? おーい!」

 再度叫んでみるも、やはりカインの声は響かない。

「えーっと……あれえ? これも神様の迷宮の不思議ってやつ……なんですかね?」
「そうだろうな。ちなみにだが、壁を壊して進むことも出来んぞ」

 ヴェルムドールは手の中に火撃アタックファイアの火を生み出すと、それを手近な壁へと投げる。

「う、うわあっ……って、あれ?」

 壁に炸裂した火撃アタックファイアは壁を壊すどころか、焦げ跡一つ残さずに消える。

「え、これって……えーと、手加減したとかではなくて?」
「当然手加減はしている。だが、そこは問題ではない。問題なのは、この壁は一般的な威力の火撃アタックファイア程度では焦げ跡すらつかんという事実だ」
「……魔法に対する高い防御力……つまり、聖銀製の鎧のようなものと考えればいいってことですね」
「ああ」

 ヴェルムドールは頷くと、自分も壁をコンと叩いてみせる。

「無論それだけではなく、恐らく障壁のようなもので保護もかけているだろう。以前似たようなものを見たが、それも種類は違えど似たようなものだった」
「へえ、こんなものが他にもあるんですね」
「ああ」
 
 言うまでもなく風の大神殿の木々の事だが、わざわざ説明する気もないヴェルムドールは適当に頷いてみせる。

「そういえば、ジオル森王国で風の神殿騎士が登場したって騒ぎになってましたけど……もしかして、それ関連ですか?」
「……ああ」

 なるほどー、などと頷いていたカインは薄暗い通路の先を見据え……ヴェルムドールへと振り返る。

「他の仲間も心配ですけど……とりあえず合流する手段もすぐには思いつきませんし、僕達だけで進みますか?」
「まあ、それしかないだろうな」

 ヴェルムドールが肯定すると、カインは頷き……すっと手の平を上へと向けた後に、じっとその手を見つめ始める。
 真剣なその表情にヴェルムドールが訝しげな顔をすると、カインは再度振り向く。

「……えっと、変なこと聞くんですけど」
「なんだ?」
「照明魔法って、使うべきでしょうか?」

 好きにすればいいんじゃないか、と言い掛けて。
 ヴェルムドールは、ぴたりと動きを止める。
 カインの今の言葉に、自分もまた引っかかるものがあったのだ。
************************************************
完成直前でデータ消失を久々に経験。
うわあー、なんて叫んだのは久々です。
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