278 / 681
連載
いつか夢見た光2
しおりを挟むそこは、暗い場所だった。
壁に囲まれたその場所は通路のようで、視線の先には三方向に分かれた道がある。
例えるのであれば、それは迷宮にも似ているだろう。
しかし不思議と湿っぽくはなく……ただ、暗いだけだった。
不思議といえば、この迷宮の白い壁もそうだろう。
つるりとした白い壁は神殿などに使われている高級な石に似てもいるが、それであるかといえば違う。
かといって、ならば何かと問われれば分からないと答えるほかない。
石のようでもあり、金属のようでもある。
ただ分かることは、強い魔力を放っているということくらいだ。
「……不思議な場所、ですね」
「そうだな」
壁をペタペタと触っていたカインに、ヴェルムドールはそう返す。
イクスラースと一緒に入ったはずが、中に入ってみれば居たのはカインである。
別にそれがどうというわけではないし、イクスラースも一人だからどうというわけでもないので心配はしていないのだが……久々に会って気軽に話をする仲というわけでもない為か、どうにも会話が進まなかった。
といってもあまりお喋りというわけでもないヴェルムドールと、妙な遠慮をしているカインの組み合わせである。
話を弾ませろというのも無理な話なのかもしれない。
「あー……えっと、ヴェルムドール様もすぐに来たんですね」
「すぐというわけでもないはずだが。それなりに後だったが」
ヴェルムドールがそう答えると、カインは不思議そうな顔をする。
「え? でも、確かほぼ同時でしたよね?」
「そうだな」
そう、カインとヴェルムドールがこの場所に転送されるのは、ほぼ同時であった。
二人の入った時間を考えると、スタート地点と思わしき場所に同時に転送されることなど、普通はないはずである。
「まあ、恐らくは神の試練とやらの一部なのだろうな」
「神の試練っていうと、勇者リューヤが受けたっていうやつ……ですよね?」
「そうだな。どの本にも具体的な内容は書いていなかったが、な」
ヴェルムドールの呟きにも似た返答に、カインは頷いてみせる。
「そうでしょうね。僕も色々と調べてみたんですけど、詳しく書いた本は一つもありませんでした。ルーティ先生も、そっち関連のことは教えてくれませんでしたし」
「そうか」
まだ興味深げに壁を調べているカインにヴェルムドールは視線を向けると、呆れたように溜息をつく。
「……そんなに壁が面白いか?」
「あ、いえ。不思議な材質だなあ……と思ったもので」
「神の造ったものだ。不思議でないものを探す方が難しいだろうさ」
ヴェルムドールの言葉に、カインは言われて見るとそうかも……などと納得したように頷く。
「まあ、とにかく他の人達と合流する方が先ですよね」
「可能なら、な」
ヴェルムドールの返答に疑問を浮かべつつも、カインは道の先に向かって「おーい」と叫ぶ。
しかし、声は反響して伝わっていく……どころか、響きもしない。
「あ、あれ? おーい!」
再度叫んでみるも、やはりカインの声は響かない。
「えーっと……あれえ? これも神様の迷宮の不思議ってやつ……なんですかね?」
「そうだろうな。ちなみにだが、壁を壊して進むことも出来んぞ」
ヴェルムドールは手の中に火撃の火を生み出すと、それを手近な壁へと投げる。
「う、うわあっ……って、あれ?」
壁に炸裂した火撃は壁を壊すどころか、焦げ跡一つ残さずに消える。
「え、これって……えーと、手加減したとかではなくて?」
「当然手加減はしている。だが、そこは問題ではない。問題なのは、この壁は一般的な威力の火撃程度では焦げ跡すらつかんという事実だ」
「……魔法に対する高い防御力……つまり、聖銀製の鎧のようなものと考えればいいってことですね」
「ああ」
ヴェルムドールは頷くと、自分も壁をコンと叩いてみせる。
「無論それだけではなく、恐らく障壁のようなもので保護もかけているだろう。以前似たようなものを見たが、それも種類は違えど似たようなものだった」
「へえ、こんなものが他にもあるんですね」
「ああ」
言うまでもなく風の大神殿の木々の事だが、わざわざ説明する気もないヴェルムドールは適当に頷いてみせる。
「そういえば、ジオル森王国で風の神殿騎士が登場したって騒ぎになってましたけど……もしかして、それ関連ですか?」
「……ああ」
なるほどー、などと頷いていたカインは薄暗い通路の先を見据え……ヴェルムドールへと振り返る。
「他の仲間も心配ですけど……とりあえず合流する手段もすぐには思いつきませんし、僕達だけで進みますか?」
「まあ、それしかないだろうな」
ヴェルムドールが肯定すると、カインは頷き……すっと手の平を上へと向けた後に、じっとその手を見つめ始める。
真剣なその表情にヴェルムドールが訝しげな顔をすると、カインは再度振り向く。
「……えっと、変なこと聞くんですけど」
「なんだ?」
「照明魔法って、使うべきでしょうか?」
好きにすればいいんじゃないか、と言い掛けて。
ヴェルムドールは、ぴたりと動きを止める。
カインの今の言葉に、自分もまた引っかかるものがあったのだ。
************************************************
完成直前でデータ消失を久々に経験。
うわあー、なんて叫んだのは久々です。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。