279 / 681
連載
いつか夢見た光3
しおりを挟む照明魔法。
それは文字通りに「明かりを灯す」魔法である。
基本的には白く輝く球体のような光を生み出し、一定範囲を照らす事が可能としている。
ろうそくやカンテラの明かりなどよりも余程明るいのだが、魔法である以上魔力を使用する。
その為、大都市の大通りなどではそれ専門の人間による「魔法街灯」が採用されていることもあるが、まだまだ一般的ではないのが実情だ。
しかし安全性が高いのと、いざという時には炸裂させて目潰しにも使えることから冒険者や行商人などの旅をする者には必須の魔法としても知られている。
ちなみにザダーク王国では有り余る魔力により、ほぼ一日中街の全域を照明魔法が浮かんでいたりするが、それはさておき。
とにかく、こうした「暗い場所」の探索には最適な魔法である。
それを躊躇う理由となると……それが不都合であるからに他ならない。
「だって、ここってたぶん……光の神ライドルグの領域ですよね?」
「恐らくな」
「それがこんなに暗いって……なんだかおかしくありませんか?」
「……」
そう、此処は薄暗い。
光の神たる存在の居る場所としては、あまりに不自然に過ぎないだろうか?
思い返す。
確か、前回のウィルムの「風の大神殿」はどうだったか。
あの時はニノの魔力を追う他にもサンクリードの勘頼りという裏技的な事をやったが……考えてみれば、あの迷路も含めて試練だったのだ。
ならば、この薄暗い空間もまた試練の「理由」と考えられないだろうか。
「なるほどな。何か道標があると考えているわけだな?」
「はい。たぶんですけど、光に関する何かがあるんじゃないかと思います。それ故に薄暗いのだとしたら、照明魔法を使うことが正しいのか間違っているのか……」
そう、照明魔法を使うことが「安易」と考えることも出来る。
もし照明魔法を使うことで「手がかり」が消えるような仕掛けであれば、それは非常に面倒な話になるだろう。
しかし、逆に「照明魔法を使う」ことで起動するような仕掛けであった場合は使わなければ面倒なことになる。
正解がどちらであるかなどということが分かるはずもなく、それ故の悩みでもあった。
ヴェルムドールにも「正解」など分かるはずもなく……思案した後、こう答える。
「使ってみればいいだろう」
「え? でも」
「悩むのは時間の無駄だ。悩むなら、こう考えろ。この迷宮の暗さは光の神の住む場所に相応しくない。故に自分の光を捧げるのだとな」
「光を……捧げる……」
カインはその言葉を反芻すると何事かをぶつぶつと呟き始め、足で床をトントンと叩き始める。
「光を……そういえば、そもそも光の神ライドルグは……」
カインは呟き、やがてハッとした顔で分岐路へと駆けて行く。
そこで天井を見上げ、やっぱりだと声を上げる。
「来てください、たぶんコレです!」
「コレ?」
興奮した様子で手招きするカインの近くへヴェルムドールが歩いていくと、カインは天井を指差してみせる。
「ほら、そこの天井……何か穴らしきものがあるのが見えません?」
言われてヴェルムドールが天井を見上げると、なるほど。
そこには確かに丸い窪みのようなものが存在している。
「あの穴がどうした?」
「思い出したんです。光の神ライドルグの別名は、「最も高きから見下ろすもの」「永遠に輝くもの」、そして……「光を掲げるもの」。つまり……照明!」
片手をあげたカインが照明魔法を起動すると、その手の平の上に球状の輝きが生まれる。
それをカインは窪みに嵌るように浮上させていく。
「……もうちょい右……えーっと……よっ、と!」
何度かの調整の後に、照明魔法は天井の窪みにすっぽりと嵌る。
床を煌々と照らす照明魔法をじっと見上げていたカインは……少しの沈黙の後にあれ、と言って首を傾げる。
「ち、違ったかな……?」
カインが自信なさげにそんな事を呟いた、その瞬間。
照明魔法が窪みに吸い込まれるように、キュインという音を立てて消える。
「うわっ!?」
それと同時に窪み自体が淡い輝きを放ち……やがて一本の光の線を右の通路へ向けて走らせる。
ヴェルムドール達を導いているかのようなそれは、一定の位置でピタリと止まり……窪みの輝きも、少しずつ弱くなっていく。
「ほう、これはこれは……つまり、こういうことか」
ヴェルムドールも同じようにして照明魔法を窪みへと嵌めこむと、やはり同じように窪みは照明魔法を吸収し、その輝きを強める。
同時に光の線も輝きを増し、その範囲内の道が光の線によって明るく照らされ始める。
「つまり、こうして「光を掲げて」進めということか。くくっ、やるじゃないか」
「はは、偶然の思いつきですよ。でもこれで辿り着けそうですね」
「他に何も無いならな」
早速進もうとしたカインが、その言葉にピタリと足を止める。
「えーっと……何か心当たりがあるん、ですか?」
「ないな。だが、仮にも神の試練だ。他に何も無いと考えるのも気楽に考え過ぎかと思ってな? そう、確か風の神の試練はゴーレムをけしかけてきたらしいが」
「……気をつけて進みましょう」
腰の剣に手をかけるカインを見て、ヴェルムドールは面白そうに笑う。
半分冗談だが、もう半分は冗談ではない。
確実に行動を阻害するような「何か」はあるだろうな……と。
口には出さないが、ヴェルムドールはそんなことを考えていた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。