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連載
ミキシングメモリー3
しおりを挟む「形態変化、巨大剣」
本来ならば、間合いの外。
そこから振り下ろすルモンの剣が、一瞬にして巨大化する。
その差異はクロードの間合いの感覚を狂わせ、受けることをせずに「バックステップで避ける」という選択をとらせる。
「光撃!」
それを追撃するかのようにルモンが光撃を放ち……そのまま距離を詰めてくるルモンを見て、クロードは嘲笑する。
光撃を放ち距離を詰める。
前回と全く変わらない戦術だ。
ならばとクロードは手の平を向け、闇撃を放つ。
ルモンの光撃を迎撃するべく放たれた闇撃は二人の間で炸裂し、白い輝きを放つ。
それはルモンの光撃が僅かに勝った事を示し……その事実に、クロードが小さく驚きの声をあげる。
目も眩む閃光の中、クロードの耳に届くのはルモンの声。
「形態変化、湾曲剣」
「くっ……!」
輝きの中で、ルモンの黒い影を見つけクロードは剣を振るう。
だが、その剣は空しく空を切り……振るわれたルモンの剣が、クロードの胴を薙ぐ。
金属と金属がぶつかる鈍い音が響き、クロードが思い切り後ろへと下がる。
「馬鹿な……!」
「形態変化、投擲剣」
ガオンという凶悪な音が響き、投擲剣がルモンの手元から放たれる。
それを弾き、クロードは怒りの視線をルモンへとぶつける。
「……貴様、その力……」
「紛れも無く僕の力ですよ。そして……今度こそ僕は、貴方を倒します」
それを聞いて、クロードの動きが止まる。
ルモンを正面から見据え……静かに、問いかける。
「……そうやって生きるつもりか」
「そのつもりです」
「そうか。哀れだな」
「お互い様でしょう。こんなところで、あの日の焼き直しをしているんですから」
「……そうだな。そうなのかもしれん」
クロードはそう言うと、自分の兜を掴んで投げ捨てる。
そこから出てきたのは、黒髪に黒目……「あの日のルモン」が見た、その顔。
「なら……今度も殺してやろう! 闇よぉ!」
「光よっ!」
クロードの剣に、闇の魔力が宿る。
ルモンも剣を長剣へと戻し、光の魔力を宿す。
「死ぬがいい……ルモン!」
「覚悟してください……クロード!」
二人の剣がぶつかり合い、光と闇の魔力が相殺し弾ける。
ギイン、という音の響く剣戟を窓から眺め、フーリィは今にも窓から飛び出しそうに身体を乗り出している。
実際に飛び出さないのはルルガルによって押さえつけられているからだが……ゲルダも似たようなものだ。
「分からない女ですね、貴女も。あれは、あの人には必要な儀式なのですよ」
「何が儀式だ! あいつのせいで……あいつのせいでルモンは死にかけたんだぞ!」
「それでも、必要なのです。あの人の事を思うのならすっこんでいなさい」
ギリギリと押さえつけられながら、フーリィは悔しそうに奥歯を噛み締め……しかし、せめてルモンからは目を離すまいと窓の外の光景を睨み付ける。
響く剣戟の音。
煌く光の剣と闇の剣。
互いに一歩も引かぬ斬り合いはしかし、一瞬でも隙を見せれば斬り伏せてやろうという気合の入った攻撃の連続だ。
……そして。
ルモンの剣が、クロードを浅く薙ぐ。
「やった!」
「ルモン隊長!」
フーリィとゲルダが思わず叫ぶ。
そう、ルモンの剣が浅くではあるがクロードに届いた。
それは紛れも無くルモンがクロードを上回った証であり……ならば、このまま勝てると感じたのだ。
「……強いな」
それは、明らかな鍛錬の証。
決定的な差というわけではないが、クロードの記憶よりもルモンは確かに強い。
ルモンの剣筋をそのままに、ルモンの剣は鋭さを増している。
それは、ルモンが確かに「ルモン」である証とも言えるだろう。
もし、あの場で本当にルモンが生き残っていたのならば……あるいは、やはりそうなったのかもしれない。
「だからこそ……」
ルモンとクロードの剣が、再度打ち合う。
「お前には、謝っておこう」
「え?」
クロードの剣から、無数の刃のようなものが伸びる。
細い棘にも似たそれはルモンを貫き……そのまま、砦の壁へと張り付ける。
「俺はお前との決闘を穢す」
刃は剣へと戻り……ルモンの体が、ずるずると滑り落ちていく。
そのルモンにトドメを刺そうと、クロードは前へと進み出ようとして……その足を、木の根が縛り付けているのに気付く。
「ぬっ……」
「うわあああああああああああああ!」
窓から、フーリィが剣を引き抜き飛び降り高速でクロードへと迫る。
風の魔力を帯びた剣がクロードへと突き出され、その鬼気迫る様子に一瞬防御を忘れたクロードは肩を思い切り貫かれる。
肩を貫く剣の痛みに顔をしかめながらも、クロードは根を引きちぎりバックステップで剣を無理矢理引き抜きながら下がり……右から襲ってくる恐ろしく太い植物の蔓を切り裂く。
「……土よ」
ぼそりと、左から殺気のこもった魔力をクロードは感じる。
「死ん……じゃえええええ!」
「ちっ!」
土の魔力を込めた二振りの斧を振るうゲルダを迎撃しようとしたクロードの腕に、先程切り飛ばしたはずの蔓が根元から更に伸びて絡みつく。
思わず窓を見上げれば、そこには緑眼を輝かせるルルガルの姿がある。
「くっ……があっ!」
僅かに斬り裂かれながらも、クロードはゲルダを思い切り蹴飛ばす。
二人の今の攻撃は、後の事を考えない「本気の全力」だ。
それだけではない。
それだけならば、あの時のルモンのように武器が砕けて終わっていたはずだ。
つまり武器の性能も、あの時よりも上がっているのだ。
それであるが故に、本来であれば通じないであろうクロードに傷をつけることが出来たのだ。
「貴様……貴様、よくもルモンを!」
「う、うう……」
フーリィが油断無く剣を構え、ゲルダがゆらりと起き上がる。
決闘であることは、分かっていた。
だが、そもそもそんなものに二人は納得していなかった。
勝手に二人で戦って、勝手に勝ったり負けたりして。
そんなものを見せられて、目の前でこんなものを見せられて。
一体、何に納得しろというのだ。
「……殺す」
「許しません……!」
その二人の向こう。
崩れ落ち動かないルモンへと目を向けて、クロードはぼそりと呟く。
「……あれなら、死んだだろう。文句はあるまい」
そう言って、転送の魔法陣を起動する。
「逃が……くっ!?」
クロードの剣から放たれた無数の刃を、ギリギリのところでフーリィは打ち払う。
そして、その次の瞬間……クロードの姿は、僅かな転送光を残して消失していた。
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