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連載
ミキシングメモリー11
しおりを挟む次元城の壁を、床を……魔力の爆発による破壊の嵐が蹂躙していく。
崩れ落ちる玉座の間から、ヴェルムドール達は瓦礫の中を飛び移るようにして移動していく。
「死ね……ヴェルムドール!」
崩れ落ちる次元城の中心に顕現したのは、黒い金属巨人……メタルジャイアント。
かつてブラックロードを名乗ったソレの巨大な拳が、地面へむけて跳ぶヴェルムドールへと振るわれる。
だが、その拳に複数の魔法が叩き込まれ強制的に軌道を変えられる。
「……っ!」
忌々しげに魔法の飛んできた方向をブラックロードは睨みつけ、驚愕に息を呑む。
そこには西方軍の一部隊が展開していたのだ。
しかし、それも当然のことだろう。
機能を失ったとはいえ次元城は要監視拠点の一つであり、付近には常に部隊が常駐している。
何かある、と判断したと同時に対処する事が求められる西方軍がこの場に来ないと考える事自体がおかしいことであり……しかし、ブラックロードにそんなことが分かるはずはない。
「目標、巨人型魔族! 撃てぇ!」
「火弾!」
「風弾!」
「土弾!」
隊長らしき魔族の号令に合わせ、西方軍の魔族達が長杖を構え魔法を放つ。
未だ空中にいるヴェルムドール達に影響が出ないような最低限度の攻撃ではあるが、ブラックロードの巨体に余さず命中し揺るがす。
そんな攻撃ではブラックロードの強固な防御を貫くには至らないが、目眩ましには充分過ぎる。
その間にもヴェルムドール達は地上へ近づいて行き……そちらへ視線を向けさせないために、更なる一手が打たれる。
「くっ……何時の間にこんな……うおっ!?」
それは、低空から飛来した一体の魔獣。
地上からの魔法攻撃に注意がいっていたブラックロードの眼前に巨大鳥の魔獣、ハンターイーグルがそれを覆い隠すように急上昇して迫る。
甲高い咆哮をあげながら迫るハンターイーグルを手で払おうとするが、その背に飛び移っていたイクスラースがブラックロードに魔法を放つ。
「ぐあっ!」
顔面に闇弾を受けたブラックロードが無茶苦茶に手を振るう間にもハンターイーグルはその攻撃範囲外へと逃れていく。
「ちょっと困りますよイクスラースさん。俺も作戦行動中なんすけど」
「ごちゃごちゃ言わないでよ。私は飛べないんだから!」
「跳べばいいじゃないすか。つーかイチカ様達はそうやってますよ」
「ドレスで跳ぶほど女捨ててないのよ。いいから協力なさい!」
へいへーい、と言いつつもハンターイーグルはクロードの周りを旋回するように飛行していく。
「お、魔王様達は地上に降りたみたいすねー。なんなら降ろしますよ?」
「うっさいわよ。私という最高の砲台を乗っけといて何の文句があるのよ!」
「何の文句って……」
自分に向かって伸ばされるブラックロードの手を回避しながら、ハンターイーグルはギリギリの範囲を飛ぶ。
「……まー、ないですかねえ」
「ならしっかり飛びなさい。期待してるわよ」
「へいへい。後で怒られそうになったら口添え頼みますよ」
ハンターイーグルの背で短杖を構えているイクスラースを睨みつけ、ブラックロードは吼える。
「イクスラース様……! 何故、分かってくださらないのですか!」
「貴方が間違ってるからよ、クロード!」
そうやって上空で戦いを繰り広げる二人を、地上に降りたヴェルムドールとイチカは見上げていた。
ブラックロードの注意は完全に上空のイクスラースに向いているようで、「足止め」レベルに留めている地上部隊による魔法攻撃は完全に無視してしまっている。
ブラックロードの並ではない防御性能故にできる事ともいえるが……それをつまらなそうに見ながら、イチカはヴェルムドールへと視線を送る。
「……いかがなさいますか?」
「ん? そうだな」
イチカの言う「どうするか」とは、この場で全力攻撃を行うか否かである。
すでにこの戦闘のことは西方軍全てへと伝わっており、西方将であるサンクリードを筆頭とする部隊の準備も完了している。
此処に来ないのは、単純にヴェルムドールがその意思を見せていないからに過ぎない。
「どうせ次元城も壊れたんだ。このままイクスラースに任せてもいいだろう」
「よろしいのですか?」
イチカは確認のために、そう問いかける。
やろうと思えば、此処にいる面子だけでもブラックロードは打倒出来る。
イクスラースの安全も考えればその方がいいのは間違いないのだが、ヴェルムドールは上空の光景から視線を外さぬままに答える。
すでに地上部隊も援護射撃をやめており、ヴェルムドール達を護衛するべくその周りに展開している。
「ああ、構わん。どうせ結末が同じなら、少しでも救いがあるほうがいいだろうさ」
「……救い?」
「そうだ」
ブラックロードは……クロードは、かつてはイクスラースの部下であり仲間だった。
操り人形としての宿命からイクスラース達が解き放たれた中で、唯一クロードのみが死んだ。
ヴェルムドールとしては、それが間違っていたとか悪いとかという考えは無い。
それは当然の結末であり、そうならなければいけなかった。
失われた命達は、その上司であるファイネルの手により癒されなければならなかった。
だが、今はどうだろう。
有り得ない筈の、再度の出会い。
すでに道が分かたれ、交わる事がないのならば。
「あいつ等の手で殺してやるのもまた、救いだろうさ」
あいつ等。
複数形のその意味を問う前に、イチカは「その気配」を察知する。
崩れた次元城のその先。
襲来の海岸の更に先。
海の中から、青く巨大な金属蛇が現れる。
ヴェルムドール達の背後。
大地を、白い金属の獅子が駆けてくる。
そして、遥か上空。
曇天の空を切り裂いて、赤い金属竜が舞い降りた。
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