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英雄会談7
しおりを挟む一見過激にも思える剣魔の言葉。
それにいち早く反応したのは、やはりトールであった。
「殺すって、やっぱりお前は」
「黙りなさい」
それを、ルーティは一言で黙らせる。
ジロリと睨んでトールが黙ったのを確認するとルーティは剣魔を正面からじっと見据える。
「剣魔」
「んだよ」
「私は貴方が大嫌いです」
「敵だからな。そうだろうな」
剣魔の返答に、ルーティは静かに首を横に振る。
「……私なら、貴方を知っていると言いましたね」
「おう」
「ならば答えましょう。今の貴方は、私の知る貴方とは大分違う」
そう、違う。
ルーティはそれを確信していた。
今目の前にいる剣魔は、剣魔にしては落ち着きすぎている。
ルーティの知る剣魔はもっと見栄っ張りの上に落ち着きが無いし、中身の無い言動しかしない。
それがどうだろう。
まるで、全くの別人を相手にしているかのようだ。
「長年会っていませんから、性格の一つや二つ変わってもおかしくはありませんが」
「残念だが、俺が生き返った「かもしれない」のは最近の話でな」
「……」
考え込むように黙り込むルーティ。
その様子を見て、剣魔は肩を竦める。
「まあ、いいや。お前はほとんど何も知らねえみたいだ」
「……そうですね。ですが、私からの質問が残っていますよ」
「おう、俺からも神のシナリオを信じてるとかって奴についての質問が残ってるしな。ほれ、言えよ。何が聞きたい?」
ほれほれ、と促す剣魔。
その所作はかつての剣魔を思い起こさせてイラッとするが……こらえながらルーティは質問を口にする。
「貴方、特大の馬鹿なんですから一人で行動なんて出来ないでしょう。誰の下についてるんですか?」
「……言ってくれるじゃねえか」
ひくりと口元を動かす剣魔だが、ルーティは涼しげな表情で受け流す。
頭をがしがしと掻くと、剣魔は気を落ち着けるようにふうと息を吐く。
「あー、まあ、なんだ。言っちまっていいのかな。一応世話になっちゃいるからな。義理に反するんじゃねえかなあ」
うーん、と悩んだ様子を見せる剣魔。
そんな「悩む」という行為自体が剣魔にはあまり相応しくはないのだが……。
しばらくタンタンとリズミカルに足で地面を叩いていた剣魔は、まあいいかと呟く。
「まあ、名前くらいはいいだろ。確かグリードリースとかって名前があるらしい……ぜ?」
言いかけた途中で、剣魔は尋常ではない魔力の高まりを感じて振り向く。
そこにいたのは、先程から騒いで自分の話の邪魔をしているトールだ。
だが、先程までとは何か……そう、何か違うものを感じていた。
「グリードリース……お前、悪の魔王の配下だったのか!」
「さっきからポンポンとキレやすい奴だなテメエは。なんだってんだ」
「それはこっちの台詞だ! 今度は何を企んでる!」
「ああ?」
「お前のかつての悪行は全部聞いている……! ひとたび出現すれば周囲を血の海に染める快楽殺人鬼! 新たな魔王の元で悲劇を繰り返すつもりだな!? 簡単に殺すなんて出てくるのが、お前が変わっていない何よりの証拠だ!」
トールの口上に、剣魔は露骨に面倒臭そうな顔をする。
一番相手をしたくないタイプだということを感じ取ったからだが、同時に相当に強い力を持っている事も感じ取ってしまったからだ。
「ちょっと、貴方……!」
「ルーティさん! 貴女はこいつに騙されているんだ! こいつの過去やった事を思えば、この全てが演技だっていう可能性だってあるでしょう!」
「騙されてるってちょっと」
「こいつはいつだって騙し討ちしてきたんでしょう!? なら今回だって、そうではないとは限らない! 全部が貴女を殺す為の演技という可能性だって!」
「あー」
剣魔が、深い溜息をつく。
それは、諦めにも似たもので……肩をゴキリと鳴らすと、剣魔はトールを睨み付ける。
「で、結局どうしたいんだテメエはよ。激しくウゼぇから一言でな?」
「お前を倒す」
「おう、そうかい。武器も無しで言う根性だけは買っといてやらあ」
かかってこいと手招きする剣魔に、トールはしかしその場に留まり剣魔を睨み付ける。
「ト、トール殿! この場で戦うのは!」
「ガレスさん。こいつは此処で確実に倒しておくべきだ。勇者リューヤの時みたいな悲劇は、絶対に繰り返しちゃいけない」
「し、しかし……!」
「ガレス様。こうなってはもう止められません……トール様に任せましょう」
クゥエリアがガレスを抑えると、ガレスは葛藤したような様子を見せつつも下がる。
それを剣魔は耳をほじりながら眺めていたが、トールがようやく前に進み出たのを見て軽い舌打ちをする。
「人にケンカ売っといて寸劇とか、どんなコースメニューだよ。頼んでねえぞクソが」
「お前こそ、その隙に襲ってこなくてよかったのか? 最後のチャンスだったかもしれないんだぞ」
「……状況分かってんのか? 俺は武器を持ってて、お前は素手だ。それともアレか。実は格闘家でしたってか?」
「そんな余裕、すぐに崩してやるよ」
トールはすうっと中空に手を伸ばし……そこで、ルーティがパチンと指を鳴らす。
それとほぼ同時にイチカが剣魔の腹に強烈な拳を叩き込んだのを見て、トールが驚きと喜びに満ちた目をルーティへと向けようとして。
「えっ」
更に次の瞬間、扉を叩き壊すかのような勢いで飛び込んできた金髪の女の姿に絶句する。
一切の容赦なく顔面へと叩き込まれた拳は、トールの意識を刈り取るには充分過ぎる威力を備えていた。
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