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たとえ、この身は滅ぶとも15
しおりを挟むマスターゴーレム。
ヴェルムドールにとってみれば、それはゴーディのことであった。
しかし、目の前のコレも……いや、これこそがマスターゴーレムなのだろう。
魔族としてのゴーレムは通常の生態系を持たぬ「幻想種」であり、幻想種は既存の概念に似た何かの形をとる。
「マスターゴーレム」であるゴーディもヴェルムドールに創造されたものであるとはいえ、その例に漏れない。
ゴーディの元となる「概念」が恐らくは、これであったのだ。
「最強の武器だったか。言うだけはある」
数瞬前までヴェルムドールがいた屋根を、巨大な剣が薙ぎ払う。
パワー、スピード……どちらも、一端の戦士とよんで差し支えない。
その辺にいるモンスター程度であれば、群れようとも一撃で蹴散らすに違いない。
「火撃」
放たれた火撃を正面から受け、それでもたじろぐ事無くマスターゴーレムはヴェルムドールに向けて剣を突き出し……ヴェルムドールはその剣の上に飛び乗ると、そのまま走ってマスターゴーレムの頭部へ到達。
「豪風弾」
破裂音にも似た音と共にマスターゴーレムに風の塊が炸裂し……それでも、マスターゴーレムは踏み止まって振り返りざまの一撃をヴェルムドールに加えようとする。
並のゴーレムであれば砕けるか……耐えても無様に倒れる程度の衝撃を与えたつもりではあったが、流石に「マスターゴーレム」といったところなのだろう。
避けきれぬ一撃を物理障壁で弾き、その衝撃でヴェルムドールは後方の屋根へと降り立つ。
「なるほど、確かに強い……が、所詮武器どまりだな」
ゴーディ程ではない。
それがヴェルムドールの感想であった。
確かに能力としては同等なのだろう。
だが、ゴーディは生まれ出でた時より研鑽を積み続けている。
己を鍛え、成長し続けるゴーディ相手であればヴェルムドールはその猛攻を正面からでは防ぎきれまい。
鍛え上げた「技」相手では、「武器」単体では決して届きはしない。
それが、ゴーディと目の前のマスターゴーレムの差だろう。
……とはいえ、面倒である事に変わりは無い。
状況を総合する限りでは多少暴れたところで問題は無さそうだが、流石にこの耐久力と防御力は面倒だ。
いつだったかやったように風の魔法で上空に吹き飛ばすにはそれこそ災害と見間違うかのような規模のものが必要だろうし、生物ではない「動く武器」の何処を吹き飛ばせば行動不能になるのかも不明確だ。
丸ごと吹き飛ばせば問題は無いだろうが、それをすれば味方にも被害が大きいし、そこまでの威力の魔法を使えば流石に大騒ぎになるだろう。
「さて、どうする……かな」
回避しながら思案するヴェルムドールを追いかけるようにマスターゴーレムは建物を壊しながら追いかけてくる。
どうにも派手に壊しているが、先程から街中で奇妙な魔力が動いているのをヴェルムドールは感じていた。
いや、正確には建物からだ。
壊されたはずの建物の欠片が、カタカタと動いている。
それは動き、元の姿へと組みあがっていく。
だがそれは保存の魔法ではない。
いや、魔法ですらない。
「……機能を限定したゴーレム……か?」
ゴーレムというものの一般的なイメージは「人型」である。
これはかつてエレメントが使っていたものというよりも、その後に現れた魔族の「ゴーレム」のイメージや、一時期混同されていたアースエレメントのイメージが強いのだろう。
ヴェルムドールとしてもゴーレムのイメージは魔族のゴーレムであり、これは全て人型である。
しかし、なるほど。
考えてみれば道具、あるいは技術として発展していたエレメントのゴーレムが必ず人型でならなければいけない理屈は無い。
「魔力により駆動する道具」という認識がゴーレムなのであれば、それこそ形は想像力の続く限り無限にあるだろう。
このレプシドラの家々もまた、その一つということなのだろう。
動かず、戦わず。
ただ一定の形を維持しようとするだけのゴーレム。
レプシドラが長い時間を耐え抜いたのには保存の魔法だけではなく、そうした理由もあったようだ。
「やけに豪快に壊すと思えば……なるほどな」
ヴェルムドールは小さく笑うと、手近な屋根へと着地する。
すぐさまマスターゴーレムはそちらに向けて剣を振るってくるが……ヴェルムドールの魔法の完成のほうが、僅かに早い。
「爆炎弾」
マスターゴーレムの巨大な剣が弾かれ、その巨体が揺らぐ。
これがゴーディであれば体勢を立て直しついでの一撃も有り得たが、「武器」でしかないマスターゴーレムは「体勢を戻す」「索敵する」「移動の有無の選択」「攻撃方法決定」「攻撃」の五つのプロセスを必要としてしまう。
だが、これは別に一対一の勝負でもなんでもない。
誰かのサポートがあれば、簡単に解決してしまう問題である。
その為というわけではないだろうが……風が逆巻き、複数のウインドエレメントがヴェルムドールの周辺に現れ……次の瞬間、高速で飛来した何かに貫かれ霧散する。
続けて何処かから飛来した「何か」が別のウインドエレメントに命中し、ウインドエレメントはあっけなく霧散する。
続けて二撃目、三撃目は次々とウインドエレメント達に命中する。
緑色の矢にも見えたソレは、離れた場所から正確にウインドエレメント達を狙撃している。
マスターゴーレムがその位置を索敵しようとするその間に、ヴェルムドールの次の魔法は完成している。
「いくぞ……爆炎珠」
発動の言葉と共に、マスターゴーレムの頭上に小さな太陽をも想起させる炎のオーブが出現し……無数の爆炎弾を、マスターゴーレムに向けて吐き出し始めた。
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