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連載
過去の話3
しおりを挟む……そして、大した障害も無くリューヤ達は城の最上階まで辿り着く。
他と比べると階層自体が狭く、精々が「小さな部屋」といった程度だが……その部屋には、他とは明らかに違う部分があった。
「……なんか、この部屋だけ豪華だな」
リューヤの呟きの通り、この部屋だけは様々な装飾や小物が充実していた。
祭壇らしきものも存在し……そして、その全てが飾られたばかりであるかのように光り輝いている。
その全てがかなり高度な保存の魔法がかけられていることは明らかで、恐らくは小物一つだけでも歴史的価値を除いたとしても相当な価値があることは間違いがなかった。
だが、リューヤ達の興味はそこにはなかった。
「どれも相当に古い様式ですが、キャナル王国で使われている祭具に似ていますね」
「輸入したって事?」
「いえ。細部が異なっていますし……その……この国で、造られたものではないでしょうか」
それに、保存の魔法とは違う……何か妙な魔力を感じる気がする。
テリアはその言葉を、呑みこむ。
滅びたとはいえ他国の祭壇の祭具を「妙」扱いすることは、テリアには憚られたからだ。
そんなテリアを横目でじっと見ていたレルスアレナは、祭具をへー、とかほー、とか言いながら眺めていたリューヤをぐいと押してどかせる。
「……勇者リューヤ。ここに何かを感じますか」
「え? んー……他の神様の領域と同じような何かは感じる、かな」
「そうですか」
そう言って、レルスアレナは懐から黒い鍵を取り出す。
「ならばもはや、疑いようもありません。ここはあの方の領域に繋がった。ということは、この鍵で開けられるということです」
「あ、なら俺が」
リューヤの立候補を無視して、レルスアレナは鍵に魔力を込め始める。
視界の隅でヘコんでいるリューヤがテリアに慰められているのが見えるが、今のレルスアレナには全く気にならない。
もうすぐ繋がる。
その事実は、全てに優先したからだ。
「空間が……」
「繋がった……!」
ルーティの呟きを打ち消すような、レルスアレナの声。
ほんの少しの喜色を混ぜたような声と共に、祭壇の前に黒く丸い空間が出現する。
それは神の領域へと繋がる……これまでリューヤ達が何度も見てきた「扉」であった。
「ダグラス様……!」
「あ、おい……皆、俺達も!」
真っ先に扉へと飛び込んでいったレルスアレナの後を追うようにリューヤ達も扉へと飛び込んでいく。
そうして一瞬の暗転の後、リューヤ達は真っ暗な空間の中に投げ出される。
「うおっ、暗っ……!?」
「闇の神様だからってこと!? テリア、照明魔法は……」
「あ、はい! 照明!」
テリアの産み出した輝きが周囲を照らし始め……部屋の中央で崩れ落ちるように座り込んでいるレルスアレナと……黒く輝く「何か」を一瞬だけ照らし出し、すぐに消滅する。
「あ、あれ!?」
「テリア、なんで照明消すんだよ!?」
「い、いえ。今のは……す、すぐにもう一回……」
デュークの抗議に慌てたテリアが再び照明を唱えようとするより先に、リューヤは前方に向けて走り出す。
誰もが頭上の照明に集中していたその一瞬の間に、リューヤの瞳はレルスアレナを捉えていたからだ。
「レルスアレナ!」
距離としてはたいしたことはない。
視界を奪うような不可思議な闇の中で、リューヤは目的の人物を見つけ、その肩を叩く。
「おい、レルスアレナ!? どうしたんだ!」
「……勇者リューヤですか」
「ああ、俺だ! 何があったんだ!」
暗くて表情すらも定かでない中で、レルスアレナは自分の目の前にあるものを静かに指差す。
「いいですから……あれを」
「あれ……って」
レルスアレナの視線の先。
そこには闇に埋もれるようにして、一振りの剣が突き刺さっている。
それは、黒い魔法石の嵌った剣。
「……ダークソード……? でも、俺は試練なんて何も」
「此処にあるのは、あれだけです。他には何もありはしません」
「何も……って。なら闇の神様は……」
リューヤの疑問に、レルスアレナは小さく……自嘲するように、くすりと笑う。
「会う気は無いということでしょう。この空間も恐らくは勇者リューヤ……貴方の為だけに用意されたもの。私は……生きる為に汚れた私では、あの方の愛し子たる資格は……」
「レルスアレナ……」
リューヤはレルスアレナに手を伸ばしかけ……しかし、その手を拳の形に強く握る。
「なあ、闇の神様……アンタ、ダグラスとかいったっけか……」
何処にも居ない誰かを探すように、リューヤはあちこちへと視線を向ける。
だが勿論、そこには深い闇しかない。
「出て来いよ……っ! レルスアレナはアンタを探して此処に来たんだぞ……ずっとアンタを探してたんだ! こんな剣一本置いて終わりって……そりゃないだろう!」
リューヤが突き刺さったダークソードを蹴っ飛ばすと、ダークソードはその姿を黒い光へと変えてリューヤの腰の剣へと融合していく。
それと同時に腰の剣が今までのものとは別種の「何か」に変わっていく。
そして……空間から弾き出されるような感覚を、リューヤは味わう。
それでも、叫ぶ。
「ダグラァァァス! テメエ……ふざけんなよ! 出て来い! 出て……」
その叫びすらも、元の場所へと弾き出される衝撃の中で掻き消えて。
……そして、闇の鍵は。
どれだけ魔力を込めても、再びその扉を開く事は……無かった。
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