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投げかけられた問い4
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6巻出ます。
詳しくは活動報告にて。
********************************************
ヴェルムドールと同じ。
すなわち、世界に唯一であるはずの「魔王」という生き物であるということ。
しかし「魔王グラムフィア」の力をアルヴァクイーンが持っているというのであれば、あるいはアルヴァクイーンもまたそうであるかもしれない、ということだ。
だが……ヴェルムドールはそれには疑念を抱いている。
「アルヴァクイーンが俺と同じであるならば、何故アルヴァという形式にこだわる。魔人の一人でも創造すれば、更に奴の手は広がるだろうに」
「……確かに。アルヴァクイーンの目的が何であるかは不明ですが、アルヴァよりも魔人のほうが使い勝手がいいはず。創らない理由はありません」
ヴェルムドールにイチカが同意し、ゴーディも頷く。
「ならば、創れるのはアルヴァだけということなのでは? 魔王様と同じなどありえませぬ」
「そうかもしれん。だが、少なくともアルヴァは創れる。そしてその理由を、「グラムフィアの力」と仮定することはできる」
所詮、想像に過ぎない。
アルヴァ以外も創れるけれども創らないのかもしれないし、本当に創れないのかもしれない。
あるいは「創れないと見せかけて実は創っている」のかもしれない。
こればかりは想像するしかないが、こうした未確定の事態を考える際に希望的観測でものを言うのは愚かであるとヴェルムドールは考えている。
故に、常に最悪のケースを想定するしかない。
今回の場合は「出来る」と仮定した上で話を進めなければならない。
「まあ、今はあの女のことはどうでもいいじゃないですか」
しかし、ルモンは手をパタパタと振ってアルヴァクイーンの話を終わらせようとする。
「どうでもいいわけがないだろう。魔王様に敵対する者の情報だぞ?」
「どうでもいいんですよ。今はもっと優先すべき事がある」
ゴーディの台詞を再度「どうでもいい」と切って捨てるルモンに、ヴェルムドールは気付く。
先程の行動もそうだが、ルモンは別にヴェルムドールに忠誠など誓ってはいない。
そういう意味ではイクスラースにも似ているが……どちらかというともう少し遠く、「敵対していない」という風にも見える。
態度からして、自分が疑われているというのも最初から承知の上であったはずだ。
そして魔王たるヴェルムドールの本拠地たる此処で、隠し武器などを使ってどうにかなると考えるほど愚かでもないように見える。
……ならば何故、ルモンはあの場で中途半端な抵抗をしてみせたのか。
その理由を考えて……ヴェルムドールは、とある可能性に行き着く。
「……そうか。お前、イチカを引っ張り出すつもりだったな?」
ヴェルムドールに関することで、最初に出てくるのはイチカ、ニノ、ゴーディのうちの誰かだ。
このうち特に可能性が高いのはイチカとニノであるが……最初に出てきたのがゴーディであったが故に、ルモンは一芝居を打ったのだろう。
そうして、狙い通りにイチカを引っ張り出した。
「ご明察です、今代魔王様」
ルモンがパチパチと手を叩くが、ヴェルムドールは無視する。
「お前がこの場に大人しく来たのもイチカが狙いだな? だが、何の為だ」
「知る為です」
「何をだ」
「その人に少しばかり、興味がありましてね」
ルモンはそう言って、イチカへと視線を向ける。
イチカはヴェルムドールの「最初の配下」である魔人だ。
だがヴェルムドールが魔王である以上、そこに疑問を持つ者などヴェルムドールの知る限りでは今まで居なかった。
いや、正確にはロクナとの間で少々諍いがあったとも聞いているが、それも解決したと聞いている。
「その人は、何かがおかしい。あのサンクリードとかいう男も相当変ですが、その人程じゃあない。でも、それがどうしてなのかが分からない。魔王としての力も失った僕では尚更です」
……なるほど、とヴェルムドールは思う。
イチカは確かに他の魔人とは違う。
イチカは魔神の創った「特別製」であり、あるいはルモンはそこを感じ取ったのかもしれない。
だが、それをわざわざ教えてやる義理もなかった。
「それで、この場で誘き出したと?」
「ええ。普段は近寄らせもしてくれませんし……あそこまで近づけば、その正体が分かるかと思ったんですがね。ですが、いまいち不明だ。他とは違うということしか分からない」
「……そんなことの為に、わざわざ命をかけたのか?」
どう考えても、命をかけるようなものであるとは思えない。
それこそルモンが持つであろう情報と引き換えに要求すればよかったのではないかという程度でしかない。
あんなやり方をすれば、そのままイチカに殺されていてもおかしくはないし、ニノであれば寸止めなどせずにそのまま斬りにいっただろう。
まあ、魔族は往々にして自分の興味を優先するものであるが……ルモンのこの行動は突き抜けている。
……ひょっとするとだが、それを装っている可能性もあるだろう。
イチカに深く関わっている魔神。
その存在をうっすらと感じていたとしても……おかしな話ではない。
「ああ、そこは心配してませんでしたよ」
しかし、ルモンはそんなヴェルムドールの考えには気付かぬかのような飄々とした調子で答える。
「あの時点で僕が殺されそうになっても、今代魔王様が止めると思ってましたしね。まあ、それ以前に彼女が自制するだろうと思っていたんですけど、そこは計算違いでしたかね。あまり我慢のきかない性格のようだ」
「ヴェルムドール様の前で不敬を働いた時点で死に値します。慈悲をあてにするとは……呆れてものも言えませんね」
「え、言ってるじゃないですか。ていうか、貴女ほんと何なんです? 僕、すっごい興味あるんですけど。この話題出しても今代魔王様から何も反応ないってことは、どこぞの神の手下じゃないんですよね? この際教えてくれませんかね?」
「私の全てはヴェルムドール様がご存知であればよいことです」
無表情のイチカと笑顔のルモンが睨みあい、双方共に視線を逸らさぬまま無言の睨み合いを続ける。
全く表情の変わらぬ睨み合いを続ける二人を見かねたかゴーディが軽く咳払いをして「魔王様の御前だぞ」と言うと、ようやく二人は視線を逸らす。
「……まあ、なんだ。ルモン……いや、グラムフィアか?」
「ルモンでいいですよ。その名前で生きていくつもりですから」
「まず聞くが。お前は俺の味方になるという認識でいいんだな?」
「だから魔法解除を渡したんじゃないですか。まあ、あれは苦肉の策ではありますけどね」
あんな失敗作、本当は眠らせたままにしたかったんですよ……と。
ルモンは、そう言って不満そうな顔を隠さなかった。
詳しくは活動報告にて。
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ヴェルムドールと同じ。
すなわち、世界に唯一であるはずの「魔王」という生き物であるということ。
しかし「魔王グラムフィア」の力をアルヴァクイーンが持っているというのであれば、あるいはアルヴァクイーンもまたそうであるかもしれない、ということだ。
だが……ヴェルムドールはそれには疑念を抱いている。
「アルヴァクイーンが俺と同じであるならば、何故アルヴァという形式にこだわる。魔人の一人でも創造すれば、更に奴の手は広がるだろうに」
「……確かに。アルヴァクイーンの目的が何であるかは不明ですが、アルヴァよりも魔人のほうが使い勝手がいいはず。創らない理由はありません」
ヴェルムドールにイチカが同意し、ゴーディも頷く。
「ならば、創れるのはアルヴァだけということなのでは? 魔王様と同じなどありえませぬ」
「そうかもしれん。だが、少なくともアルヴァは創れる。そしてその理由を、「グラムフィアの力」と仮定することはできる」
所詮、想像に過ぎない。
アルヴァ以外も創れるけれども創らないのかもしれないし、本当に創れないのかもしれない。
あるいは「創れないと見せかけて実は創っている」のかもしれない。
こればかりは想像するしかないが、こうした未確定の事態を考える際に希望的観測でものを言うのは愚かであるとヴェルムドールは考えている。
故に、常に最悪のケースを想定するしかない。
今回の場合は「出来る」と仮定した上で話を進めなければならない。
「まあ、今はあの女のことはどうでもいいじゃないですか」
しかし、ルモンは手をパタパタと振ってアルヴァクイーンの話を終わらせようとする。
「どうでもいいわけがないだろう。魔王様に敵対する者の情報だぞ?」
「どうでもいいんですよ。今はもっと優先すべき事がある」
ゴーディの台詞を再度「どうでもいい」と切って捨てるルモンに、ヴェルムドールは気付く。
先程の行動もそうだが、ルモンは別にヴェルムドールに忠誠など誓ってはいない。
そういう意味ではイクスラースにも似ているが……どちらかというともう少し遠く、「敵対していない」という風にも見える。
態度からして、自分が疑われているというのも最初から承知の上であったはずだ。
そして魔王たるヴェルムドールの本拠地たる此処で、隠し武器などを使ってどうにかなると考えるほど愚かでもないように見える。
……ならば何故、ルモンはあの場で中途半端な抵抗をしてみせたのか。
その理由を考えて……ヴェルムドールは、とある可能性に行き着く。
「……そうか。お前、イチカを引っ張り出すつもりだったな?」
ヴェルムドールに関することで、最初に出てくるのはイチカ、ニノ、ゴーディのうちの誰かだ。
このうち特に可能性が高いのはイチカとニノであるが……最初に出てきたのがゴーディであったが故に、ルモンは一芝居を打ったのだろう。
そうして、狙い通りにイチカを引っ張り出した。
「ご明察です、今代魔王様」
ルモンがパチパチと手を叩くが、ヴェルムドールは無視する。
「お前がこの場に大人しく来たのもイチカが狙いだな? だが、何の為だ」
「知る為です」
「何をだ」
「その人に少しばかり、興味がありましてね」
ルモンはそう言って、イチカへと視線を向ける。
イチカはヴェルムドールの「最初の配下」である魔人だ。
だがヴェルムドールが魔王である以上、そこに疑問を持つ者などヴェルムドールの知る限りでは今まで居なかった。
いや、正確にはロクナとの間で少々諍いがあったとも聞いているが、それも解決したと聞いている。
「その人は、何かがおかしい。あのサンクリードとかいう男も相当変ですが、その人程じゃあない。でも、それがどうしてなのかが分からない。魔王としての力も失った僕では尚更です」
……なるほど、とヴェルムドールは思う。
イチカは確かに他の魔人とは違う。
イチカは魔神の創った「特別製」であり、あるいはルモンはそこを感じ取ったのかもしれない。
だが、それをわざわざ教えてやる義理もなかった。
「それで、この場で誘き出したと?」
「ええ。普段は近寄らせもしてくれませんし……あそこまで近づけば、その正体が分かるかと思ったんですがね。ですが、いまいち不明だ。他とは違うということしか分からない」
「……そんなことの為に、わざわざ命をかけたのか?」
どう考えても、命をかけるようなものであるとは思えない。
それこそルモンが持つであろう情報と引き換えに要求すればよかったのではないかという程度でしかない。
あんなやり方をすれば、そのままイチカに殺されていてもおかしくはないし、ニノであれば寸止めなどせずにそのまま斬りにいっただろう。
まあ、魔族は往々にして自分の興味を優先するものであるが……ルモンのこの行動は突き抜けている。
……ひょっとするとだが、それを装っている可能性もあるだろう。
イチカに深く関わっている魔神。
その存在をうっすらと感じていたとしても……おかしな話ではない。
「ああ、そこは心配してませんでしたよ」
しかし、ルモンはそんなヴェルムドールの考えには気付かぬかのような飄々とした調子で答える。
「あの時点で僕が殺されそうになっても、今代魔王様が止めると思ってましたしね。まあ、それ以前に彼女が自制するだろうと思っていたんですけど、そこは計算違いでしたかね。あまり我慢のきかない性格のようだ」
「ヴェルムドール様の前で不敬を働いた時点で死に値します。慈悲をあてにするとは……呆れてものも言えませんね」
「え、言ってるじゃないですか。ていうか、貴女ほんと何なんです? 僕、すっごい興味あるんですけど。この話題出しても今代魔王様から何も反応ないってことは、どこぞの神の手下じゃないんですよね? この際教えてくれませんかね?」
「私の全てはヴェルムドール様がご存知であればよいことです」
無表情のイチカと笑顔のルモンが睨みあい、双方共に視線を逸らさぬまま無言の睨み合いを続ける。
全く表情の変わらぬ睨み合いを続ける二人を見かねたかゴーディが軽く咳払いをして「魔王様の御前だぞ」と言うと、ようやく二人は視線を逸らす。
「……まあ、なんだ。ルモン……いや、グラムフィアか?」
「ルモンでいいですよ。その名前で生きていくつもりですから」
「まず聞くが。お前は俺の味方になるという認識でいいんだな?」
「だから魔法解除を渡したんじゃないですか。まあ、あれは苦肉の策ではありますけどね」
あんな失敗作、本当は眠らせたままにしたかったんですよ……と。
ルモンは、そう言って不満そうな顔を隠さなかった。
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