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投げかけられた問い5
しおりを挟む失敗作。
何をもってルモンが魔法解除をそう呼ぶのか、ヴェルムドールには分からなかった。
ヴェルムドールの使った限り、魔法解除は随分と凶悪な魔法だ。
何しろ、魔法の中でも「自然に存在する周囲の魔力を変換し自分の魔法の威力を底上げする」のが大魔法であるが……「すでに他人の魔法として変換された魔力」を自分の支配下に置くなどという発想がそもそもこれまでの魔法には存在しなかった。
発動された魔法はすでに変換不能であるというのが常識だったからだ。
それを無理矢理変換してしまう魔法解除は、正直に言って「常識の範囲外」にある魔法だ。
もっとも、半端ではない魔力を使う為通常使用できるようなものではないが……それとて、改良すればどうにかできそうなものだ。
「お前が何をもって失敗作というのかは分からんが……それが今回役に立ったのは事実だろう」
「……そうですね。今回はそれしかないと思ったから出さざるをえませんでした。貴方に死なれるわけにはいきませんでしたから」
「ほう?」
そんな高評価を受けているとは思わなかったヴェルムドールだが、ルモンは至極真面目な表情でヴェルムドールをじっと見ている。
その様子にどうやら冗談の類ではなさそうだ……とヴェルムドールも思いなおし、台詞の先を促すかのようにルモンと視線を交差させる。
「……正直に言えば、貴方がかつての僕のようなアホであれば殺して成り代わろうと思っていたんですけどね」
「ほう、随分と正直に言うじゃあないか」
「だから言ったでしょう? そこは心配していないんですよ。僕と違って、貴方は王としての器がある」
王の器。
人類社会ではよく言う言葉だが……その定義は揺れ幅が大きいことでも有名である。
いわく、よく人を導ける者である。
いわく、誰よりも優しい者である。
いわく、誰より強い者である。
いわく、誰より人を惹きつける者である。
いわく、そう生まれた者である。
それらは大体が血筋や家柄を肯定する為の理由付けであったり、革命に免罪符を与える為の大義名分であったりする。
故に、そのようなことを言われてもヴェルムドールは全く嬉しくないのだが……ルモンは、自嘲するような笑みを浮かべてみせる。
「僕には、それが無かった。興味のある事にとりあえず手を出してみるだけの阿呆だったし、死んでそれに初めて気付いた。それでもまだ中々治らない。このルモンという人生を貰って、演じて……それでようやく「人並み」ですからね」
そう、「グラムフィア」はそういう男であったとルモンは語る。
何か目的があったわけでもなく世界に生まれ落ちた。
「魔王」というたった一人の種族に先達などいるはずもなく、どう生きるべきか教えてくれる家族など存在すらしなかった。
暗黒大陸は強さだけが正義であり、生まれ落ちた瞬間はまだ少年であり、されど「魔王」としての強さを充分に備えていたグラムフィアが最初に起こした行動は戦い自分に必要な物を手に入れていくことであった。
誰も、何も教えてなどくれない。
欲しければ奪い、あるいは従えるのが常であった。
しかし、誰が何を持っているのかなど分からない。
そして、「何」があるのかすら分からない。
そもそも、自分は「足りて」いるのか。
それすらも分からない。
ひょっとしたら「足りて」いないのではないか。
そんな焦燥感に突き動かされるようにグラムフィアは暗黒大陸を暴れまわった。
ただ戦っても何を得ればいいのか分からないと気付いてからは、相手を「観察」することを覚えた。
観察すると「興味」が湧き、それは束の間グラムフィアを癒す薬となった。
多くの部下を従え、多くの妻を娶った。
大きな城を持ち、多くの財を得て、多数の魔法を覚えた。
それでも、グラムフィアは満たされなかった。
いや、本当に満たされていないのかどうかも分からなかった。
何故なら、「満たされる」というものは、奪えなかったからだ。
奪えなかったのはそれだけではない。
友と呼ばれるものも、奪えるものではなかった。
妻を得ても、愛とやらが手に入ったかどうかは分からない。
部下を得ても、信頼とやらは本当に手に入ったのか分からない。
それが一体どうやったら手に入るのか、教えてくれる者などいなかった。
……だから、「ここにはないのではないか」と。
グラムフィアは、たまに流れ着くという物品や魔族ではない生命体の話を聞いて……そう考えたのだ。
そうして、暗黒大陸の「外」へ部下を送り込んで、自分の知らなかった様々なモノを手に入れて。
そのうちに、「外」からやってきたという「杖魔」と名乗る妙な魔族が「自分こそが貴方へ貴方の欲しい物を捧げられる」と囁いた。
「……そうして、グラムフィアの破滅が始まった。奪うしか出来なかった男には似合いの結末ですが……貴方は違う。僕は、この大陸をこういう風にはできませんでしね」
だから、とルモンは語る。
「……貴方ならばきっと、僕達の謎も解ける」
謎。
それが何かを問う前に、ルモンは静かに呟く。
「何故、僕達は世界にたった一人の「魔王」として生まれ落ちたのか。僕は……いや、グラムフィアは「どう在るべき」だったのか。その答えを示してくれると期待しているんです」
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