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連載
神よ、何故私達を見捨てたのですか3
しおりを挟む魔神。
ダグラスの口から出たその単語に、ヴェルムドールは素早く反応する。
魔神についてはウィルムの反応から神々にとっても何か思うところのある存在であるのは分かっていたが、こうもはっきりと魔神について神々の口から聞くのは初めてであった。
「魔神を参考にした勇者が「世界の調整者」か。まるで魔神そのものが世界の調整者であるようにも聞こえるな」
「アレがその気なら、そうなることも出来るだろうさ。もっとも、どの神もそれを歓迎しないだろうがな」
それはやはり、自分達こそが世界を調整し見守っているという自負があるのだろうか。
余所から来た者に奪われたくないと考えているのであれば、そういう思考になるのも納得がいく。
ヴェルムドールがそう考えているのを見抜いたか、ダグラスが口を開く。
「……アレについて語る前に、魔王ヴェルムドール。お前は世界のバランスが崩れる原因は何であると考える」
「さてな。以前はキャナル王国のセリス女王殿の魔法でバランスに影響が出たんだったか?」
「極光殲陣か。あれの発動は俺も感じていた。短期的に見ればアレは悪影響だが、長期的に見れば必要であったとも言える。あの国の病巣は深すぎた」
ヴェルムドールは、まるで見てきたかのようなダグラスの台詞に目を軽く見開く。
確かにあの国に潜む問題は国を三度崩しても治るか不明ではあったが、それをダグラスが知っているというのは実に意外だった。
「……あの国は世界に与える歪みの発生源の一つだった。本来であればああなる前に勇者が向かっていたはずだ。どういうわけか、そうはならなかったようだがな」
「手遅れであったと?」
「人の身で為せる修正としてはな。故に極光殲陣があの国に授けられたのだろうさ」
だが、その裏には杖魔……そしてアルヴァクイーンが居た。
そのアルヴァクイーンを創り出したのが誰かといえば……フィリアだ。
ダグラスの言う「勇者」とはカインのことだろうが、そもそも何故そういう状況に持っていかなければならなかったのか。
「フィリアが余計な事をしなければ、そうはならなかったんじゃないか?」
そう、それがこの場の全員の素直な感想だろう。
命の神フィリアが「魔王」などを創らねば、勇者の登場を待つ必要すらもなかったはずだ。
だが、ダグラスは真面目な表情でヴェルムドールを見据える。
「……本当にそうか?」
「どういう意味だ」
「フィリアが何もしなければ、キャナル王国は平和な道を進んだのか? 何も後ろ暗いところのない模範的な国家としての歴史を歩んだのか? お前は直接あの国に行き、聞いたのだろう魔王ヴェルムドール。あの国の歪みの根幹は何処にある。何時にある。それは本当に「フィリアの魔王」の誕生より後か?」
「……それは」
キャナル王国の歪みの原因は、正確に言えば杖魔ではない。
そもそもの話で言えば、獣人であり初代女王であるネルの死後に暗躍し、獣人を排斥し人間の手に権力を握ろうとする乗っ取りが起こった事が原因だ。
それが長い獣人の不遇を招き、引いてはセリスの代まで続く「熟成された歪み」へと繋がった。
その途中で魔王シュクロウスの関与もあったのかもしれないが、始まりの歪みは人類自身から始まっている。
そして魔王シュクロウスが滅びた後も歪みを静かに熟成させ続けたのもまた人類自身だ。
もし杖魔がいなければ、シュクロウスがいなければ。
そうしたらキャナル王国は「正しい道」を歩んでいたのか?
その問いにはヴェルムドールでなくとも「否」と答える他は無い。
むしろ、もっと悪い方向へと行っていた可能性すらある。
「もう一つ聞こう。聖アルトリス王国はどうだ。あの国は遥か昔から人類至上主義の傾向があるが、それは本当にフィリアのせいか?」
「だが、フィリアがそうした事象を加速させているのは事実だろう」
「そうだ、その通りだ。そして腹立たしい事に、そうしなければ修正すら出来んのだ」
それはすなわち、裏で蠢くものを表へと出すということ。
綺麗な顔の裏に、綺麗な言葉の裏に、立派なお題目の裏に。
潜みその力を増大させる歪みを隠し切れないほど巨大にし、光に晒すということ。
目を背けるソレを目の前に突き付け、その醜さを直視させるということ。
そしてその上で、自分達から立ち直ろうとしなければならない。
「あるべき姿」を、示さなければならないのだ。
「……神殿騎士を派遣すればいいんじゃないか? あれは神の代行者なのだろう?」
「何をもってそれを証明する。人類の歴史で何度自称神殿騎士が出て、何度それにより混乱が起こったと思っている」
現しの水晶が世に出るまでは、人が己を証明する手段はなかった。
故に成りすましが横行し、それによる詐欺や混乱は日常茶飯事であった。
だが逆に言えば、今は「現しの水晶がある」のだ。
それによって証明できるはずなのだが……今度はそうならない。
そうするまでもなく「偽者」と断じられてしまう為、証明する段階までいかないのだ。
「そして、証明できたとしよう。いや、遥か過去にフィリアの神殿騎士が証明したことがある。どうなったと思う」
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