勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ

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副長を決めよう5

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「まあまあ。とりあえず、目的のアルムさんはいたわけですし」

 しかし、とりあえず話を進めなければどうしようもない。
 この二人に任せていてはいつまでも話が進まないと察したルモンは、そう言って朗らかに笑ってみせる。
 とりあえずアルムを探すのが目的だったのだから、アルムの変態ぶりはともかく目的は達しているのだ。
 だからこそ「ルモン」らしくそう言ってみたのだが……アルムの顔が、途端に胡散臭いものを見るような目になる。

「……前に会うた時にも思ったが、お前胡散臭いのう」
「そ、そうですか?」
「うむ。ものすっげえ胡散臭いのう。なんじゃろう、上手く説明はできぬがの」

 確かに、ルモンの性格は装っているものだ。
 元々の「ルモン」らしく見えるように真似をして、今では自然にそう出来るまでになっている。
 しかしそれでも、アルムからはそれが透けて見えたのだろう。
 ジロジロと穴が開きそうなほどに睨んでくるアルムにどう対処したものかとルモンは悩むが、その前にアルムのほうから興味をなくしたようにふいと目を逸らす。

「まあ、どうでもいいことか。悪人というわけでもなさそうじゃ」
「そ、そうですか」

 実にアッサリと矛を収めたアルムだが、その視線はすでにファイネルに固定されている。
 恐らくはファイネル最優先であるが為に「敵に回りそうに無い」と判断した以上はルモンに興味はないといったところだろうか。

「で、ファイネル様。わしが目的とか? どのような御用ですかの?」
「ん? ああ……今度の遠征のことは知っているな?」
「ええ、ええ。確か魔王様の旗振りで始まったやつですな。アレがどうかなさいましたかの?」

 たいして興味もなさそうに答えるアルムだが、まあ当然だろう。
 アルムにとって優先すべきはファイネルなのだから。
 そして、だからこそファイネルはこう伝える。

「私が各軍からの選抜で作る「魔王軍」の指揮官になった。お前が副長だ。できるな、アルム」
「お任せあれ」

 淀みの無い即答である。
 一礼をも綺麗にキめており、応対としても完璧だ。
 どうかなさいましたかの、とか言っていた奴の行動とは思えない。
 しかし、一度やる気を出したアルムはキチンと有能なのである。

「それで、わしを選んだ理由について伺っても? 同格の四方将の皆様は選べないとしても……正直に言えば、戦力面でならば各軍に幾らでもファイネル様の補佐を出来る者はおると思いますが」
「国際協調とやらだそうだ。人類に受け入れられやすいものを選ばねばならん」
「……なるほど」

 そこまで聞けば、アルムにも理解できる。
 つまり、「魔族らしくない魔族」を選ぶ必要があるのだ。
 良く言えば親近感の沸く……悪く言えばナメられるような者であればいい。
 もっと言えば、「意外と仲良く出来るんじゃないだろうか」と思わせればいいということだ。
 そういう意味では、ファイネルは実に適任だ。
 なにしろ、ファイネルの行動には裏が無い。
 正直で隠し事が苦手で、何事も正面からというのが大好きだ。
 まあ、魔族にはそういう者が結構多いが……ファイネルはそういった部分がプラス方面に作用している稀有な例でもある。
 人類風に言えば「正直者でサバサバしていて、正々堂々とした行いを好む性格」といったところだろうか。
 恐らく魔王ヴェルムドールの「人類に受けのよさそうな副長」という指示は「そういう風に見える者」という意味を含んでいたはずだ。
 ファイネルのような魔族が稀有であるが、「そういう風に見える」とか「そういう風を装っている」魔族はそれなりにいる。
 そうした者にファイネルをフォローさせろ……とまあ、こんなところだろう。

「確かに、わしが適任なようですな」
「ん、そうか。なら問題はないな」

 頷くアルムにファイネルはそう返し、そこでアルムは「ところで」と言い放つ。

「各軍からの選抜と伺いましたが……その選別は何方が?」
「ん? ああ、そういえば……聞いていないな」

 なるほど、とアルムは頷く。
 つまり、そういうことだ。
 副長に選ばれた者の最初の仕事は、魔王ヴェルムドールに挨拶をして細かい部分を聞きに行く事……ということなのだろう。
 そして恐らくは、そこが「本当に任命される時」になるはずだ。

「どうした?」
「ああ、いえ。まあ、なんといいますか。こちらの話ですのう」

 しかし、気付かない「普通に気のいい者」が任命されたらどうするつもりだったのか。
 まあ、それでも「協調」という点では困らない陣容に仕上がるだけだろうか。
 だがアルムは気付いてしまった。
 そして恐らくだが、気付いた以上は確実に何か面倒な仕事を命じられるだろう。
 とはいえ、それがファイネルの為でもあると思えばやらないわけにもいかない。
 ファイネルという餌に釣られた時点で、覚悟を決めるしかアルムには残されていない。

「……あー、ファイネル様。申し訳ないのですが、魔王様にご挨拶がてら今の件を確認してこなければなりませんので。今日はこれで失礼してよろしいですかのう?」

 少し考えた後に「いいぞ」と答えるファイネルに、アルムは笑顔で一礼して執務室を出て行った。
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