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連載
アルム、頑張る3
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皆様の応援のおかげで、書籍版7巻出ます。
詳しくは活動報告にて。
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「んじゃ、早速行くか?」
「それもいいんじゃがのう。その前に軽く食事していこうと思っとったのじゃが」
「んん?」
手を差し出そうとしていたオルエルはアルムの発言の意味を掴みかねて差し出した手を引っ込め……その手を顎にもっていって軽く掻く。
空を見上げたところで「明るめ」か「暗め」の判断しかつかない曇天ではあるが、それでも其処に答えを求めるようにオルエルは空を見上げ……「なんでだ?」と問いかける。
「腹が減っておるからじゃが」
「ああ、そうか……腹減ってたら飯食いてぇよな……」
「じゃろ? どこか良い店知ってたら教えてほしいんじゃが」
アルムの言葉には答えず、オルエルは「そぉかあ……」と空を見上げながら呟く。
そのまま動かなくなったオルエルを、アルムは軽くつつく。
そうしてみてもオルエルが動かないのを見ると、仕方ないと諦めてアルムは背を向ける。
別に急いでいるわけではないが、時間は有限なのだ。
「新しい店を探すのもええが、ここは定番の店で……」
「いやいや、待て待て。やっぱおかしいだろ」
突然正気に返ったようにアルムの肩を掴むオルエルの手を、アルムは迷惑そうに払いのける。
ファイネルならば歓迎だが、オルエルのようなムサい男に触られたくはないのだ。
「別にどこもおかしくないわい。腹が減ったら飯を食う。世界の真理じゃ」
「何しに来たんだよ、お前……」
何かと言われれば、当然魔王ヴェルムドールに会いに来たのである。
それは話したはずなのに、もう忘れたのかとアルムは可哀想なものを見る目でオルエルを見る。
ついでに呆れたような長い溜息つきだが、オルエルとしてはそんな目で見られる謂れはない。
「だからよぉ。魔王様に会いに来たんならすぐに行けよ。飯とか後でいいだろ」
「何を言っとるか。魔王様の御前で腹を鳴らす事ほど不敬なことはないわい。つまりわしは忠義者ということじゃ」
言いながらアルムのお腹がぐー、と小さく鳴く。
そして確かに話し合いの最中に腹が鳴るというのも間抜けな話ではある。
オルエルは頭をぼりぼりと掻くと、仕方無さそうにアルムを脇に抱える。
「む? なんじゃ」
「仕方ねえから飯屋も含めて送迎してやる。串焼きでいいな?」
「串焼きはちょっと飽きたのう。あ、わしはあれがいいのう。輸入モノの果実を盛り合わせて甘い蜜をかけるとかいう……」
アルムが言っているのは確か女性に人気の甘味店だったか……と思い出しオルエルはげんなりとした顔をする。
女性が多いせいなのか甘い香りがするせいなのかは分からないが、ああいう店はオルエルのような男が近付き辛い雰囲気を出しているのだ。
期待の目で見上げているアルムを見ないふりをして、オルエルは地面を蹴って跳ぶ。
「分かった分かった。んじゃ串焼き以外な」
「甘蜜がけがいいのじゃ」
「また今度な」
「甘蜜がけがいいのじゃ。ほれ、あそこに店があるではないか」
屋根の上を移動していくオルエルに抱えられたまま、アルムは一方を指差す。
すると、そこには……なるほど、何人かのノルムやビスティアの女が集まっている場所がある。
その手に持っているのは、石を薄く削って作った軽く綺麗な器であり……中には色とりどりの果物が入っているのが見える。
「そんなに混んでねえなあ……」
「うむ。これぞ魔王様の導き。ほれ降りろ、それ降りろー!」
「うお、暴れんな……つーか魔王様は別に導いてねえだろ!」
むしろヴェルムドールはそういう方面に人一倍疎い男である。
ヴェルムドールがこの店を知っているとすれば誰かに連れてこられたか、政策の一環として関わる必要性が出来た時くらいだろう。
それはさておき腕の中でジタバタと暴れるアルムをそのままにするわけにもいかず、オルエルはアルムを抱えたまま地面へと降りていく。
「うえっ……蜜のすっげえ甘い匂いがしやがる」
「良い香りではないか」
ふらふらと店のほうへと歩いていくアルムをそのままに、オルエルは理解出来ないものを見る目で辺りを見る。
この辺りも食事を出す店の多い区画だが、この香りも強い店のせいか周囲のあるのは飲みものの店だったりアクセサリーを売る店だったりと何か空気の違う空間が出来上がってしまっている。
そんな中に飛び込んでしまったオルエルの違和感たるや、「不審者現る」といった感じである。
「やっべえ……此処居たくねえわ……でも置いていくわけにもなあ」
「何が?」
「あ?」
オルエルが振り向くと、その口に木匙が突っ込まれる。
「もが!?」
突っ込まれた木匙にのっていたモノは蜜のたっぷりかかったリンゴで、一口サイズにカットしたリンゴの少し酸味を含んだ甘さを蜜の強い甘みが包んでおり、酸味を抑えながらもリンゴの食感を楽しめるようにしてある。
恐らく甘いものの好きな者にはたまらない味なのだろうが、オルエルにとっては地獄のようである。
口の中から木匙が引き抜かれると同時に口を押さえ、大きくよろける。
「ぐおお……あっま! 甘すぎる……! リンゴってだけで相当甘ぇのに、どうしてこれ以上甘くしたがるんだ……理解できねえ!」
「ええ? 味覚が時代遅れだなあ……そんなんでやってけるんですかー?」
そんなことを言いながらオルエルをニヤニヤと見ているのは観光計画における「案内役」であり、魔絵画の魔族……モカであった。
詳しくは活動報告にて。
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「んじゃ、早速行くか?」
「それもいいんじゃがのう。その前に軽く食事していこうと思っとったのじゃが」
「んん?」
手を差し出そうとしていたオルエルはアルムの発言の意味を掴みかねて差し出した手を引っ込め……その手を顎にもっていって軽く掻く。
空を見上げたところで「明るめ」か「暗め」の判断しかつかない曇天ではあるが、それでも其処に答えを求めるようにオルエルは空を見上げ……「なんでだ?」と問いかける。
「腹が減っておるからじゃが」
「ああ、そうか……腹減ってたら飯食いてぇよな……」
「じゃろ? どこか良い店知ってたら教えてほしいんじゃが」
アルムの言葉には答えず、オルエルは「そぉかあ……」と空を見上げながら呟く。
そのまま動かなくなったオルエルを、アルムは軽くつつく。
そうしてみてもオルエルが動かないのを見ると、仕方ないと諦めてアルムは背を向ける。
別に急いでいるわけではないが、時間は有限なのだ。
「新しい店を探すのもええが、ここは定番の店で……」
「いやいや、待て待て。やっぱおかしいだろ」
突然正気に返ったようにアルムの肩を掴むオルエルの手を、アルムは迷惑そうに払いのける。
ファイネルならば歓迎だが、オルエルのようなムサい男に触られたくはないのだ。
「別にどこもおかしくないわい。腹が減ったら飯を食う。世界の真理じゃ」
「何しに来たんだよ、お前……」
何かと言われれば、当然魔王ヴェルムドールに会いに来たのである。
それは話したはずなのに、もう忘れたのかとアルムは可哀想なものを見る目でオルエルを見る。
ついでに呆れたような長い溜息つきだが、オルエルとしてはそんな目で見られる謂れはない。
「だからよぉ。魔王様に会いに来たんならすぐに行けよ。飯とか後でいいだろ」
「何を言っとるか。魔王様の御前で腹を鳴らす事ほど不敬なことはないわい。つまりわしは忠義者ということじゃ」
言いながらアルムのお腹がぐー、と小さく鳴く。
そして確かに話し合いの最中に腹が鳴るというのも間抜けな話ではある。
オルエルは頭をぼりぼりと掻くと、仕方無さそうにアルムを脇に抱える。
「む? なんじゃ」
「仕方ねえから飯屋も含めて送迎してやる。串焼きでいいな?」
「串焼きはちょっと飽きたのう。あ、わしはあれがいいのう。輸入モノの果実を盛り合わせて甘い蜜をかけるとかいう……」
アルムが言っているのは確か女性に人気の甘味店だったか……と思い出しオルエルはげんなりとした顔をする。
女性が多いせいなのか甘い香りがするせいなのかは分からないが、ああいう店はオルエルのような男が近付き辛い雰囲気を出しているのだ。
期待の目で見上げているアルムを見ないふりをして、オルエルは地面を蹴って跳ぶ。
「分かった分かった。んじゃ串焼き以外な」
「甘蜜がけがいいのじゃ」
「また今度な」
「甘蜜がけがいいのじゃ。ほれ、あそこに店があるではないか」
屋根の上を移動していくオルエルに抱えられたまま、アルムは一方を指差す。
すると、そこには……なるほど、何人かのノルムやビスティアの女が集まっている場所がある。
その手に持っているのは、石を薄く削って作った軽く綺麗な器であり……中には色とりどりの果物が入っているのが見える。
「そんなに混んでねえなあ……」
「うむ。これぞ魔王様の導き。ほれ降りろ、それ降りろー!」
「うお、暴れんな……つーか魔王様は別に導いてねえだろ!」
むしろヴェルムドールはそういう方面に人一倍疎い男である。
ヴェルムドールがこの店を知っているとすれば誰かに連れてこられたか、政策の一環として関わる必要性が出来た時くらいだろう。
それはさておき腕の中でジタバタと暴れるアルムをそのままにするわけにもいかず、オルエルはアルムを抱えたまま地面へと降りていく。
「うえっ……蜜のすっげえ甘い匂いがしやがる」
「良い香りではないか」
ふらふらと店のほうへと歩いていくアルムをそのままに、オルエルは理解出来ないものを見る目で辺りを見る。
この辺りも食事を出す店の多い区画だが、この香りも強い店のせいか周囲のあるのは飲みものの店だったりアクセサリーを売る店だったりと何か空気の違う空間が出来上がってしまっている。
そんな中に飛び込んでしまったオルエルの違和感たるや、「不審者現る」といった感じである。
「やっべえ……此処居たくねえわ……でも置いていくわけにもなあ」
「何が?」
「あ?」
オルエルが振り向くと、その口に木匙が突っ込まれる。
「もが!?」
突っ込まれた木匙にのっていたモノは蜜のたっぷりかかったリンゴで、一口サイズにカットしたリンゴの少し酸味を含んだ甘さを蜜の強い甘みが包んでおり、酸味を抑えながらもリンゴの食感を楽しめるようにしてある。
恐らく甘いものの好きな者にはたまらない味なのだろうが、オルエルにとっては地獄のようである。
口の中から木匙が引き抜かれると同時に口を押さえ、大きくよろける。
「ぐおお……あっま! 甘すぎる……! リンゴってだけで相当甘ぇのに、どうしてこれ以上甘くしたがるんだ……理解できねえ!」
「ええ? 味覚が時代遅れだなあ……そんなんでやってけるんですかー?」
そんなことを言いながらオルエルをニヤニヤと見ているのは観光計画における「案内役」であり、魔絵画の魔族……モカであった。
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