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連載
世界会議の前に
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皆様、めんどくさい政治の話で溜まった毒は抜けましたでしょうか。
ごめんなさい、まためんどくさくなってきます。
********************************************
鍛冶の音の耐えぬ国。
火と鉄の国。
錬鉄王国。
斯様に、サイラス帝国を表す表現は多い。
サイラス帝国の鍛冶技術は常に最先端であり、それは鉱山を多く抱える山岳国家としてのサイラス帝国の地理的優位と、メタリオの鍛冶師達の弛まぬ努力の為せる業である。
そうしたメタリオの鍛冶師達に憧れサイラス帝国へと向かう若者達も多く、またサイラス帝国もそうした若者達を積極的に受け入れてきた。
その中には勿論、自分の国に技術を持ち帰ろうという野望を抱く者も多く居るが……そうした「熱意のある」者程、後々になってサイラス帝国に居ついてしまう。
というのも、サイラス帝国が常に最先端を走り続ける国だからであり、鍛冶を愛すれば愛するほど、鍛冶師を厚遇するサイラス帝国こそが自らの理想郷であると気付いてしまうからである。
そうやってキャナル王国とは別の意味で「平等」を実現するそんなサイラス帝国であるが、その首都ドークドーンはここ数日、お祭り騒ぎ寸前のような慌しさを見せていた。
その理由はサイラス帝国皇帝アレフガルドの名で発表された「世界会議」の知らせを受けてのものである。
何しろ、四大国どころか様々な中小国……更には魔族の国であるザダーク王国の代表まで来るというのだ。
この知らせを受けて、何故ドークドーンの住人達が大騒ぎするかといえば……一言で言ってしまえば「チャンス」であるからだ。
何しろ、ドークドーンの住人達はほとんどが鍛冶師である。
毎日のように腕を競い続ける中で、彼等は新しい発想に飢えていた。
そう、技術は鍛錬で幾らでも磨くことが出来る。
しかし発想だけはそうはいかない。
サイラス帝国の重装騎士団が誇る最新式の鎧も、「普通とは少し違う発想」で完成したものだ。
そして技術とは、そうした「普通とは少し違う発想」が新しい時代の扉を開き続く者達を牽引していくものだ。
サイラス帝国の鍛冶師達は自分こそがそうでありたいと常に頭を悩ませ考えているのだ。
だからこそ、今回の「世界会議」はチャンスだと鍛冶師達は考えていた。
何しろ、世界中の色んな連中が一箇所に集うのだ。
それは世界の文化が集うのと同義であり、その中には違う発想のヒントとなるものが含まれているかもしれない。
ならば、それを逃す手はないが……「お忍びで寄ってみようか」と思わせるようなものが無ければ、何しろ此処は鍛冶師だらけの街。埋もれてしまうだろう。
かといって、奇妙奇天烈な事をするのもどうだろうと思う者も多い。
ならば……と自信作にして最高傑作を作ろうとする者だらけで、そうした者達の注文で慌しく鉱山からの運搬やら加工やらでそっちの職人が大忙しだったりと、まあそんなわけなのだ。
「すっげえなあ……前に来たときも思ったけど、本当にドワーフの街って感じだ」
「どわあふ? 前にもそんな事を仰っておられましたね」
そんなドークドーンの街中を歩くのは、一人の黒髪の青年と桜色の髪の少女、そして金髪の中年男の三人だ。
「あー、うん。俺の世界の御伽噺にあるんだよ。小さくて力が強くて、鍛冶が得意でさ。男は大体がひげもじゃなんだよ」
「小さくて力が強くて鍛冶が得意……というところまでは同じですね。髭に関しては、まあ……個人で違うのではないでしょうか」
黒髪の青年は無数の傷のついた聖銀の鎧を着こなし、筋肉のしっかりとついた肉体は数々の戦いを潜り抜けてきた証を示していた。
もう一人の桜色の髪の少女は神官であることを示す白いローブの上に聖銀の胸部鎧をつけており、長い金属杖を持っている。
そして最後の金髪の男は、頑丈そうな鋼鉄の全身鎧を身に着けていた。
背中に背負った盾には数え切れない傷があり、鎧もまた同じだ。
しかし三人の中で一番歴戦の戦士らしい風格を出しているのは、その筋骨隆々とした体格のせいもあるだろうか?
「まだ会議までは時間が結構あるんだろ? 此処でキースのいい鎧が見つかればいいんだけどなあ」
「つーか今更だけどよ、本当に俺を侵攻戦とやらに連れてく気かよ、トール?」
金髪の男……キースに問われて、トールと呼ばれた青年は振り返る。
そう、その青年こそは聖アルトリス王国が召喚した「勇者トール」である。
以前ジオル森王国で彼と会ったルーティが今のトールを見れば、別人のようになったと驚くかもしれない。
軽い調子はそのままながらも、何処か無駄な甘さのようなものが抜けていたからだ。
「お前じゃなかったら誰を連れて行くんだよ、キース。お前より強い戦士なんて俺、知らないぞ?」
「この国にいるだろうがよ、最強の剣士が」
キースに言われたトールはそれを聞いて、一気に表情を暗くする。
「アゾートさんかあ……無茶だよ、あの人。アタイを仲間にしたいんだったら勝ってから誘いをかけるんだね、とか……純粋な剣技で勝てるわけねーじゃん……」
「挑戦済だったか……」
「前に来た時にな。ボッコボコだったよ……」
キースに慰めるように肩を叩かれるトールを見て、桜色の髪の少女……クゥエリアがクスクスと微笑む。
「あ、そうだ! キースならアゾートさんに」
「無理だって。俺ぁおっさんだぞ? つーか剣技で勝負ってんならメイスじゃダメだろ」
そう言って腰に吊るした大きなメイスをキースが軽く叩くと、トールは「ダメかあ」と溜息をつく。
「大体よぉ、アルヴァ共を統べる魔王を倒そうって勇者様が昔の勇者の仲間の娘に負けてたんじゃなあ……もうちっと頑張れよ、お前」
「ぐう……」
キースにカラカラと笑われ、トールは悔しそうに唸った。
ごめんなさい、まためんどくさくなってきます。
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鍛冶の音の耐えぬ国。
火と鉄の国。
錬鉄王国。
斯様に、サイラス帝国を表す表現は多い。
サイラス帝国の鍛冶技術は常に最先端であり、それは鉱山を多く抱える山岳国家としてのサイラス帝国の地理的優位と、メタリオの鍛冶師達の弛まぬ努力の為せる業である。
そうしたメタリオの鍛冶師達に憧れサイラス帝国へと向かう若者達も多く、またサイラス帝国もそうした若者達を積極的に受け入れてきた。
その中には勿論、自分の国に技術を持ち帰ろうという野望を抱く者も多く居るが……そうした「熱意のある」者程、後々になってサイラス帝国に居ついてしまう。
というのも、サイラス帝国が常に最先端を走り続ける国だからであり、鍛冶を愛すれば愛するほど、鍛冶師を厚遇するサイラス帝国こそが自らの理想郷であると気付いてしまうからである。
そうやってキャナル王国とは別の意味で「平等」を実現するそんなサイラス帝国であるが、その首都ドークドーンはここ数日、お祭り騒ぎ寸前のような慌しさを見せていた。
その理由はサイラス帝国皇帝アレフガルドの名で発表された「世界会議」の知らせを受けてのものである。
何しろ、四大国どころか様々な中小国……更には魔族の国であるザダーク王国の代表まで来るというのだ。
この知らせを受けて、何故ドークドーンの住人達が大騒ぎするかといえば……一言で言ってしまえば「チャンス」であるからだ。
何しろ、ドークドーンの住人達はほとんどが鍛冶師である。
毎日のように腕を競い続ける中で、彼等は新しい発想に飢えていた。
そう、技術は鍛錬で幾らでも磨くことが出来る。
しかし発想だけはそうはいかない。
サイラス帝国の重装騎士団が誇る最新式の鎧も、「普通とは少し違う発想」で完成したものだ。
そして技術とは、そうした「普通とは少し違う発想」が新しい時代の扉を開き続く者達を牽引していくものだ。
サイラス帝国の鍛冶師達は自分こそがそうでありたいと常に頭を悩ませ考えているのだ。
だからこそ、今回の「世界会議」はチャンスだと鍛冶師達は考えていた。
何しろ、世界中の色んな連中が一箇所に集うのだ。
それは世界の文化が集うのと同義であり、その中には違う発想のヒントとなるものが含まれているかもしれない。
ならば、それを逃す手はないが……「お忍びで寄ってみようか」と思わせるようなものが無ければ、何しろ此処は鍛冶師だらけの街。埋もれてしまうだろう。
かといって、奇妙奇天烈な事をするのもどうだろうと思う者も多い。
ならば……と自信作にして最高傑作を作ろうとする者だらけで、そうした者達の注文で慌しく鉱山からの運搬やら加工やらでそっちの職人が大忙しだったりと、まあそんなわけなのだ。
「すっげえなあ……前に来たときも思ったけど、本当にドワーフの街って感じだ」
「どわあふ? 前にもそんな事を仰っておられましたね」
そんなドークドーンの街中を歩くのは、一人の黒髪の青年と桜色の髪の少女、そして金髪の中年男の三人だ。
「あー、うん。俺の世界の御伽噺にあるんだよ。小さくて力が強くて、鍛冶が得意でさ。男は大体がひげもじゃなんだよ」
「小さくて力が強くて鍛冶が得意……というところまでは同じですね。髭に関しては、まあ……個人で違うのではないでしょうか」
黒髪の青年は無数の傷のついた聖銀の鎧を着こなし、筋肉のしっかりとついた肉体は数々の戦いを潜り抜けてきた証を示していた。
もう一人の桜色の髪の少女は神官であることを示す白いローブの上に聖銀の胸部鎧をつけており、長い金属杖を持っている。
そして最後の金髪の男は、頑丈そうな鋼鉄の全身鎧を身に着けていた。
背中に背負った盾には数え切れない傷があり、鎧もまた同じだ。
しかし三人の中で一番歴戦の戦士らしい風格を出しているのは、その筋骨隆々とした体格のせいもあるだろうか?
「まだ会議までは時間が結構あるんだろ? 此処でキースのいい鎧が見つかればいいんだけどなあ」
「つーか今更だけどよ、本当に俺を侵攻戦とやらに連れてく気かよ、トール?」
金髪の男……キースに問われて、トールと呼ばれた青年は振り返る。
そう、その青年こそは聖アルトリス王国が召喚した「勇者トール」である。
以前ジオル森王国で彼と会ったルーティが今のトールを見れば、別人のようになったと驚くかもしれない。
軽い調子はそのままながらも、何処か無駄な甘さのようなものが抜けていたからだ。
「お前じゃなかったら誰を連れて行くんだよ、キース。お前より強い戦士なんて俺、知らないぞ?」
「この国にいるだろうがよ、最強の剣士が」
キースに言われたトールはそれを聞いて、一気に表情を暗くする。
「アゾートさんかあ……無茶だよ、あの人。アタイを仲間にしたいんだったら勝ってから誘いをかけるんだね、とか……純粋な剣技で勝てるわけねーじゃん……」
「挑戦済だったか……」
「前に来た時にな。ボッコボコだったよ……」
キースに慰めるように肩を叩かれるトールを見て、桜色の髪の少女……クゥエリアがクスクスと微笑む。
「あ、そうだ! キースならアゾートさんに」
「無理だって。俺ぁおっさんだぞ? つーか剣技で勝負ってんならメイスじゃダメだろ」
そう言って腰に吊るした大きなメイスをキースが軽く叩くと、トールは「ダメかあ」と溜息をつく。
「大体よぉ、アルヴァ共を統べる魔王を倒そうって勇者様が昔の勇者の仲間の娘に負けてたんじゃなあ……もうちっと頑張れよ、お前」
「ぐう……」
キースにカラカラと笑われ、トールは悔しそうに唸った。
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