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世界会議8
しおりを挟む「さて、随分寄り道をしてしまった。先鋒の件も別働隊の件も、該当の国で別に話し合うとして……話すべき話題に戻ろうかの」
シャイアロンドの提案に、まだ少しざわついていた議場は静まり返る。
そう、ここからが本当に国同士が議論を交わさねばならない部分なのだ。
「まず、場所だ。次元の狭間に向かうにあたって、各国の軍が集まる場所を決めねばならぬ」
それはつまり集合場所という意味だけではなく、出撃場所ということでもある。
そして今回行われるのは、あらゆる国家の力を結集した戦いであり……勇者がかつて行った「次元の狭間」に巣食うアルヴァの本拠地への攻撃である。
それが伝説にならないと思う者など無く……つまり「出撃場所」になるということは新たな伝説の地の誕生であり、それ故にこの案件に絞って案を練ってきた国も少なくはない。
……つまり、再びシャイアロンドが何かを言い出す前にと叫びそうな勢いで声をあげる者が多発するのである。
「それならリュサム王国が適任ですぞ! 何しろ我が国の誇る王立公園の広さたるや……」
「我等カセルこそが相応しい! 何しろ来るべき時に備えた完璧な……」
「議論するまでもないことですな! 闘国ならば誇りたる闘技場を始めどんな大軍を集めようと全く問題の無い……」
誰もが我先に話すせいで、もう何が何だか分かりはしない。
順番に話せば簡単に解決するのだが、順番に話せば「先に話した者が有利」との心理が働くせいで誰も譲りはしない。
今話している者の誰もが「自分以外が譲ればいい」としか思ってはいない。
シャイアロンドはそれをウンザリとした目で見ると、一通り喋らせてから机をドンと叩く。
「よし、そこまで。立候補者の各国の意見は有難く頂戴させていただいた」
「どうされるのですか、シャイアロンド様?」
面白がるように問いかけるエリアに、シャイアロンドは「そうですな……」と言いながら顎鬚を撫でる。
「……キャナル王国でよろしいのではないか? 考えうる限りでは、一番広い土地を提供できる国だ」
「そうですね、私もそう思います」
「ジオル森王国も賛同しましょう」
シャイアロンドの提案にエリアとルーティも賛同し……されど、この為に準備してきた中小国が「そうですか」と納得するはずもない。
「ま、待った……! 何故そうなるのか!」
「今言ったとおりだ。キャナル王国は此処に集まった国の中では一番広大な平野を持つ国。どれ程の大部隊であろうと許容できる」
「し、しかし……キャナル王国は立候補していない! おまけに内戦で疲弊していると聞く……当然準備も何も無かろう!」
出された意見は意外にもまともで、シャイアロンドは問いかけるようにキャナル王国の代表たるアンナへと視線を投げかける。
そうしてアンナと視線が合うと、シャイアロンドは「如何ですかな」と話を振ってみせる。
ちなみにだが「如何ですかな」と問う形式をとってこそいるものの、その実は「やると言ってくれ」という要請である。
当然のことだが、この「出撃場所」に対する各国の思惑などというものはシャイアロンドからしてみれば見え見えである。
たとえば先程立候補していた中小国の何処かから選べば、その国は威信をかけた大セレモニーに仕立て上げるだろう。
楽団にパレードにパーティにと、国をあげての大騒ぎになるはずだ。
……だが、正直そんなものは邪魔だ。
今回ザダーク王国が持ってきた次元の狭間への侵攻計画だが、シャイアロンドは成功するかすら疑問視している。
なにしろ、相手は何処にでも出現するアルヴァだ。
壁があろうと門があろうと出現する害虫のような輩で、「いつ何処に出てくるか」が全く予想が付かない。
尚且つ、この世界会議が行われる直前のタイミングで帝都近くの鉱山に出現したということすら何らかの意図があったのではないかと疑っている。
そんなアルヴァが、華々しく行われるセレモニーなんてものを見逃すとは到底思えなかった。
……そう。下手をすれば、人類史上最悪の大虐殺が起こりかねないのだ。
そうなれば、その舞台となった国の政権は責任を問われ……下手をすればひっくり返る。
そしてその余波は間違いなく周りの国へも広がっていく。
それが四大国に及ばないとも限らないし……そうなることは防がねばならない。
よって、最初から候補は「出来るだけ人気のない広い場所」を提供できる国だけであることは明白だったのだ。
先程話に出ていた闘技場だなんだのというのは、検討する価値すらない。
「……分かりました。私は今回の交渉に関し、全権を賜っております。その権限に基づき、出撃場所の用意の件……問題ないと回答させていただきます」
「うむ、素晴らしい回答に帝王に代わり感謝する。サイラス帝国としては準備に必要な人員、物資の支援は惜しまないと約束しよう。さて、それを踏まえた上で異論があればご起立願いたい」
いるはずもない。
キャナル王国が「やる」と言い、サイラス帝国が「支援する」と表明したのだ。
唯一対抗馬になるのではと思われた聖アルトリス王国のエリア王女は涼しい顔をしているし、ジオル森王国も……ザダーク王国も同様である。
ここで誰かが立てば賛同する形で「乗る」ことも出来たのだが……誰もが「最初の一人」あるいは「ただ一人」になることを恐れて立ち上がろうとはしない。
「……どうやら、全員意見は一致したようだ。さて、次の議題に移ろうか」
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一年の始まりに面倒極まりない政治の話を全力展開していく、そんなスタイル。
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