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連載
世界会議7
しおりを挟む今エリアが言った事は、ザダーク王国側でも考えていた事だ。
……もっとも、それは「別働隊」にヴェルムドールを混ぜる為の方便でもあったのだが……。
「し、しかし。別働隊とは……?」
何処かの国の代表者の当然とも言える疑問に、エリアは頷いてみせる。
「簡単です。各国の中でもこれぞという者を集めて独自に戦わせるのです。いわば、かつての勇者様のパーティをもう少し大規模にしたようなもの……と言えばよく分かるのでは?」
エリアの言葉に「そういえば、かの国には勇者が……」などという台詞が聞こえてくるのが分かる。
それは期待でもあるが、不安でもある。
「勇者」を取引材料に聖アルトリス王国が何か要求を押し通す気なのかと警戒しているのだろう。
まあ、それも当然の反応だろう。
むしろ警戒しないほうがおかしいというものだ。
だが、そこでエリアは軽く咳払いをしてみせる。
「とはいえ、本隊を疎かにするわけにはいきません。新たな勇者様には本隊に居てもらおうと思っております」
その言葉に、再び議場にざわめきが広がる。
これもまた当然の反応だ。
「勇者」が居ないという事は、その別働隊とやらの戦力がどの程度になるか想像も出来ない。
簡単に言えば、誰だって勝ち馬に乗りたいのだ。
「勇者」の居ない別働隊など、ただの少数部隊に過ぎない。
そんな部隊に自分の国のやり手を預けたい国などあるはずがない。
「我が国からは私の個人的に信頼している凄腕の者にお願いしようと考えています。各国から最低一人ずつでも出せば、相当の部隊が出来上がると考えています」
「まあ、待たれよ」
割り込むならここだ、とアルムは確信し立ち上がる。
「別働隊が危険であるのは各国とも共通認識のはず。たとえアルヴァに勝っても自国の英雄を失ったとあればその後のことも危うかろうと思いますがな」
「……負ければ全てを失います。私は決して別働隊を捨て駒にするつもりはありません」
「うむうむ、そうでしょうな。貴女の口ぶりは囮部隊を作ろうなどという愚策を提案する者のそれではない」
アルムはそう言って周りを牽制すると、無い髭をさするように顎に手をやる。
「まあ、わしが言いたい事は簡単でな。その囮部隊、我等が中心になりましょうぞ」
「え、それは……」
「貴女の話に不安を感じている連中の考えていることは単純ですじゃ」
まずは「本隊」を疎かにしたくないという不安である。
そして次に、「別働隊」に対する不安である。
本隊から自国の英雄あるいは準ずる者を抜く事で本隊が崩れる事を恐れ、別働隊が物量で潰される事を恐れているのだ。
「その点我等は一人一人が自慢の戦闘力を誇る者達。アルヴァ相手であろうと一歩も引かぬでしょうな。そしてその上で、別働隊に人数を割く余裕も充分にある」
「で、ですがそれでは貴国の負担が大きく……」
「なあに、心配はいりませんぞ。なんなら我等だけで別働隊とやらを組んでもいい」
アルムが楽しげに笑う姿に、「それでいいのでは」という声が漏れ始める。
魔族がやってくれるのならそれでいいじゃないか、といった意味だろう。
ついでに潰しあってくれれば怖いものが減るといった意味も含まれているだろうが……分かりやすくてアルムは思わず嘲笑してしまいそうである。
だが、何人か……具体的には四大国の代表者の面々はむっつりとした顔をしている。
「……折角の提案ですが、流石に別働隊をザダーク王国一国にお任せするのは問題です」
「そうですね。これは人類全ての問題。他の国々はともかく、私達四大国は戦力を出すべきです」
「我が国としても異論は無い。鉱山の事件もあった以上、我等が積極的に動かねば国民の信を失うだろうよ」
アンナの言葉にルーティとシャイアロンドも同意し、最後にエリアが大きく頷いてみせる。
「では別働隊は我等四大国とザダーク王国との間で少数の精鋭を出し構成するということに致しましょう」
「ああ、ついでじゃ。先鋒とやらも別働隊が務めればよかろう。まあ、別働隊と別れた「後」の先頭に立つものは必要になるが……それは我等サイラス帝国の騎士でよかろう?」
「そ、それは……」
闘国のアルスレイが反論しようと立ち上がりかけるが、シャイアロンドに睨まれて中腰のまま固まってしまう。
「闘国エストラト……じゃったか。貴国の闘士の強さについては聞いておる。我が国の誇る重装騎士の鎧に勝る防御手段を持っていると思うならば立ち上がるがいい」
「う、ぐ」
「もし立ち上がらば、それを誰にでも分かる形で証明させる。だが少しでも自信がないならば座るが良い。今ならば「何も無かった」ことになる」
明らかに本気であるシャイアロンドの言葉にアルスレイは中腰のまま黙り込む。
彼のプライドとしては「出来る」と言いたいのだろう。
だが、それで出来ねば大言壮語の愚か者として国際社会に晒されることになる。
それは避けたかったし……闘国内でアルスレイの失脚を望む者達はここぞとばかりに妨害もしてくるだろう。
それを考えれば、此処で「挑戦」をするわけにはいかなかった。
「……」
結果として黙ったまま着席したアルスレイを見て、シャイアロンドは小さくフンと鼻を鳴らした。
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