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連載
アルヴァ戦役9
しおりを挟むヴェルムドール達がそんな事をやっている間にも、本陣での会議は進んでいく。
まあ、会議といっても陣形の確認や後方支援など、現地でしか出来ない細かい確認が主である。
それにしたところで次元の狭間などという場所で陣容も分からぬアルヴァ相手では本当に「最低限」の確認にならざるを得ない。
それでもこうして会議をしているのは、その最低限を徹底するためである。
「……よし、こんなものだろうな」
「ああ。この場で出来る議論はしつくしただろう」
サイラス帝国のテルドリーズにジオル森王国のスペシオールが同意すると、キャナル王国のアンナも同様に頷く。
「そうですね。これ以上は逆に混乱を招くでしょう」
「となると……次は別働隊に関してか」
アンナの後に続けるように場に集まった中小国の指揮官の一人がそう呟くと、場がにわかに活性化し始める。
別働隊。
少人数の部隊だというソレに対し、各国の反応は面白いくらいに異なっていた。
たとえばある国は、この別働隊こそ新時代の英雄を作る舞台であると考えた。
たとえばある国は、この別働隊は単なる囮であり捨て駒であると考えた。
そしてある国は、この別働隊は自国の最大のアピールのチャンスと考えた。
何故こんなに異なるかといえば理由は簡単で、「少人数でアルヴァと戦う」ということが如何にも恐ろしい事に思えたからである。
下手をすれば全滅するかもしれないそんなものに自国の腕利きを預けようと考える者は前述した「アピール」でもなければ中々踏み出せないものだ。
だからこそ、世界会議で出た「四大国とザダーク王国で少数の精鋭を出し構成する」という案に誰も反対しなかったし、それでいいと考える国が多数であった。
しかし、一部の国は「やはりこのまま引き下がれない」などと考えていたのである。
そう、たとえば闘国エストラトなどは個人の強さを特に信奉する国である。
前回別働隊の話に食い込んでこなかったアルスレイは帰国後に散々周囲になじられたようで、今回の闘士隊の指揮官にも選ばれていないようであるが……その新しい指揮官の男は、目をギラギラと光らせている。
「じゃあ、別働隊についての話を進めよう。まずはメンバーについての発表だな」
「勇者殿、その前によろしいでしょうか」
そしてトールが発言すると同時に、闘国の指揮官は割り込んでくる。
割り込むとすればこのタイミングしかない為、一応マナーに則った発言であり……それ故に、トールは「どうした?」と意見を促してみせる。
「今回の別働隊に関して、提案したいことがあります」
その言葉に他の中小国の指揮官達はピクリと反応し、中には立ち上がった者すらいる。
「まさか……今になって別働隊に人を出したいとか仰るのではあるまいな!」
「なんと! それは少々我侭が過ぎるのではなかろうか」
「うむ。無駄に混乱を招くというものだ」
口々に言う中小国の指揮官達の声を聞き流すと、彼等が一瞬黙ったタイミングを見逃さずに闘国の指揮官は立ち上がる。
「今だから言うのです。国内の調整が済み、こちらに出せる戦力が確定した今だからこそ、言えるのです。どうせ各々方がグダグダと仰るのは自国の腕利きを宝物のように大切にしたいが、他国の宝が輝くのは我慢できんという幼稚極まりない理由でしょう」
「なっ、言いすぎだぞ!」
「何様のつもりか!」
「お、おい! 皆落ち着け!」
ここぞとばかりに騒ぎ始める中小国の指揮官達をトールが収めようとするが、収まるはずもない。
罵詈雑言が飛び交う中で、他の四大国の指揮官達はくだらんとばかりに眉をひそめ……あるいは、こうなれば遺恨を残さぬ為にある程度までは徹底的にやらせるしかないと知っているが故に静観する。
……が、そんな常識など知った事ではないし誰よりも気の短い者がこの場には一人居た。
その者は机をガンと叩き、その音の大きさに驚いた中小国の指揮官達はシンと黙り込んでその音の発生源へと目を向ける。
すると……そこには、明らかにイライラした様子のファイネルの姿があった。
「……喧嘩をしたいなら外に行って拳でやれ。会議をやりたいなら席につけ。口だけで喧嘩をしたい奴は今すぐ申告しろ。私が今すぐ拳で黙らせてやる」
「んなっ……」
思わずファイネルに反論しようとした者も、ファイネルから感じる本気の気配を感じ取って力なく座り込む。
他の者達も蒼白な顔で座り込み……しかし、その中で唯一闘国の指揮官だけは口を開く。
「とにかく、我が国からも特級闘士から一級闘士までの五人で構成した部隊を同行させていただきたい。別働隊の役割を考えれば、そのくらい許容範囲でしょう?」
「だ、そうだが?」
ファイネルがそう言ってトールへと投げると、トールはハッとしたような表情になった後に咳払いをする。
「俺は構わないと思う。ただ、やはり特に危険なのは変わりない。そこは許容して貰いたい」
「ええ、構いませんとも。どの者も世界の為と自ら名乗り出た精鋭達です」
「そうか。他の皆はどう思う?」
トールの問いに、他の四大国の面々も賛成し……闘国の別働隊入りも確定する。
思わず歯噛みする国もあったが……流石に今から「自分も」と言い出すことも出来ず、黙って席を暖めるだけであった。
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