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連載
連鎖崩壊4
しおりを挟む復興が未だ続くキャナル王国にも、当然のように問題は溢れていた。
セリスの極光殲陣でエルアークからキャナル王国に敵意を持つ者は一度一掃されたはずではあったが……それとて、一時的なものである。
内戦後の復興とそれに伴う大量の人の受け入れ、世界各地から集まってきた獣人達の住居の問題。
更には人が増える事により発生する治安の問題も発生し始めていた最中である。
……そして、その王城たるフィブリス城でも今騒ぎが発生していた。
「煌き……輝き……集い、貫け! 光神の閃撃槍!」
「ゲオオオオオオ!」
セリスの放った光の槍が、一体のアルヴァを消滅させる。
しかし玉座の間に侵入したアルヴァはまだ二体残っており、その全てがセリスを狙っていた。
セリスの周りを囲む数人の騎士達の顔には憔悴の色があり、しかし諦めてはいなかった。
ザダーク王国から知らされていた「融合するアルヴァ」によるものと思われる事件の発生直後のアルヴァの大軍の襲撃はエルアークを混乱に陥れ……アルヴァ達はフィブリス城にまで侵入してきていた。
「くそっ……レイナ殿が城下町に行かれているタイミングで、こんな……!」
「それでいいんです」
騎士の悔しそうな呟きに、セリスはそう言って笑う。
確かに伝説のメイドナイトとまで呼ばれるレイナがこの場に居れば何の心配もいらないだろうが、元々レイナはセリスの配下でもなんでもない。
ただの気紛れで居てくれているだけであって……元々レイナは自分の認めた者以外には従わない。
セリスが相手であろうと、それは例外ではないのだ。
「レイナに頼っているようでは、私はいつまでも一人前の王になれません。この国を守るのは、私なんですから!」
セリスはアルトルワンドを頭上に構えると、魔力を込め集中を始める。
「煌き……輝き……集い……広がれ! 光神の烈戦斧!」
アルトルワンドから放たれた光の斬撃が飛び掛ってきたアルヴァ二体を同時に斬り飛ばし、黒い霧となって消えていく。
「た、倒した……?」
「この部屋にいたアルヴァを倒しただけです。城内にもまだ居ますし、街にも空にも……何も終わってはいません」
セリスの言葉に、騎士達はぐっと喜びそうになった声を飲み込む。
そう、本当に何も終わっていないのだ。
未だあちこちから戦いの音が聞こえ、街中も守備騎士団を含む多数の騎士達が戦っている。
下手をすれば、復興本部にいるザダーク王国の魔族達も戦っているだろう。
「あの、セリス様……」
「はい、なんでしょう?」
微笑みながらそう返したセリスに、騎士の一人がおそるおそるといった様子で問いかける。
「以前、この街の危機を救ったという大魔法を再び使うわけにはいかないのでしょうか?」
その騎士の言っているのが極光殲陣であると気付いた他の騎士達も、はっとしたようにセリスを見るが……セリスは困ったような顔で笑う。
「……あれは、そうそう多用できる魔法でもないのです」
「しかし、今使わずにいつ使うというのです!」
「お、おいレクス! 不敬だぞ!」
他の騎士達の慌てたように伸ばされる手を振り払い、レクスと呼ばれた騎士はセリスへと迫る。
「セリス様。今こそあの魔法を使うべきです。このままでは無辜の民にも多数の犠牲が出ます。どうか、どうか……!」
実のところ、極光殲陣に関してはあの後、レイナより「しばらく使ってはいけない」という注意を理由と共に聞かされている。
世界のバランスなどという大きな話を完全にセリスも理解できたわけではないが……「今以上に良く無い事が起こる可能性がある」のだけは理解できていた。
だが、使えばこの状況に変化をもたらす事が出来るのも確実だ。
それが「いい方」に傾くのか、「悪い方」へと傾くのか。
セリスには判断できはしない。だが……使わなければどんどんと悪い方向に進むであろう事も分かる。
セリスがこの玉座の間にいるのも、「使う事を決断せざるを得ない時が来る」と予感したからでもある。
「使っても構いませんよ?」
「だ、誰だ!」
この玉座の間の更に上に存在する祈りの間。
そこに繋がる階段から降りてくる何者かに騎士達は誰何する。
それは、おおよそ肩くらいまでの長さの白い髪を揺らす犬の獣人の女であった。
しっかりと筋肉のついた身体は戦士然としており、布の服と革の鎧。
手元を覆う無骨なガントレットが印象的で、まるで冒険者のようである。
黄色い目を笑みの形に細める女に、騎士達は慌ててセリスを守る布陣に移ろうとして……しかし、セリスがそれを制し跪く。
「……ルビア様、何故こちらに」
「私に「様」づけは必要ありませんよ、セリス様。私は光の神殿騎士ではありますが、ただそれだけの者に過ぎません」
「ひ、光の神殿騎士……!?」
慌ててセリスに続き跪く騎士達に「あちゃー」と呟きながら頬を搔くと、気を取り直したようにルビアはセリスの丁度向かい側に跪き視線を合わせる。
「セリス様。ライドルグ様からの伝言を伝えに参りました」
「え」
「極光殲陣の使用を許す。光の神ライドルグの名にかけて、世界への悪影響は全力で抑えよう、と。レイナが此処に戻るまでの間は私が護衛を務めます」
極光殲陣の使用許可。それも光の神ライドルグのサポート付き。
あまりの事態にセリスはアルトルワンドを取り落としそうになり……その手を、ルビアが押さえる。
「一刻も早く、この事態を収拾しなければなりません。取り返しのつかないことになる、その前に」
「……はい」
何か、複数の意味が込められているようにも聞こえるその言葉に……セリスは、静かに頷いてみせた。
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