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アルヴァ戦役23
しおりを挟む斯様にルーティは心配性であったが、そんなに心配されていたと知れば三人のうちの一人……具体的にはセイラは目に見えてムッとするだろう。
レナティアの指摘どおり、セイラもシャロンもこの場に来た以上は覚悟を済ませている。
アインは言うに及ばずであり……三人とも、合流の為に城を目指していた。
そして同時に、カインが居なくともやってみせるという鋼の意思にも目覚めていたのである。
「どう、アイン」
建物の陰から気配を探るアインに、セイラが問いかける。
何処からでも出てくるアルヴァ相手にこんなものと思うかもしれないが、アルヴァとてある程度視界に頼る以上、「すでにその場にいる相手」にはこの手が有効である。
「気配は無い、が。どうせなら私にも頼らんほうがお前等の目的には沿うんじゃないか?」
「沿うけどさ。どうせ今後もアインはカインと一緒に行動するんでしょ?」
セイラの少しだけ不満そうな問いかけにアインは一瞬言葉に詰まる。
カインが勇者であるというのはセイラ達には秘密であるがアインは知っている。
それ故に今後もカインが重要監視対象であることはヴェルムドールから直々に聞かされているし、カインと良好な関係を築けている事を褒められすらした。
故に、アインがこの任務から外される可能性は限りなく低いだろう。
むしろ、カインと接する時間が増えている……というよりもアインをメインとしてサポート人員が組まれている有様である。
「……まあ、な」
「だよね。だったらアインが居ない状況っていう方がむしろ不自然だし。それに訓練やってんじゃないもの。使えるものは何でも使うさ」
「そ、そうだね。私もそう思う」
堂々と言い切るセイラ達にアインは苦笑し、しかしそこで眉をピクリと動かす。
「……待て。何か出た」
来た、ではなく出た。
つまり何かが突然現れたということであるが……この妙に魔力が捻れた場所でそんな事をする者と言えば、高い確率でアルヴァだろう。
「シャロンは剣霊を出しておけ。私が確認する」
「う、うん」
シャロンが小声で剣霊召喚の詠唱を始めたのを確認すると、アインは一気に通りへと躍り出て……背を向けていたアルヴァへとナイフを投げる。
「ギイイイッ!?」
次から次へと刺さるナイフはアルヴァを黒い霧へと返し、しかし同時に建物の裏から飛び出してきた手足の妙に長いアルヴァの突撃を受けてアインは後ずさる。
「フン、何かがコソコソしていると思えば人間共か! この街までノコノコやってくるとはな!」
「コソコソしていたのはお前だろう。どうした、こんな場所で。仲間に置いていかれたか?」
特殊型アルヴァの長く鋭い爪を短剣で受けたアインとの鍔迫り合いをしながら、特殊型アルヴァは忌々しそうに「なめるな」と吐き捨てる。
「俺はこの区域の警備を任されしグラゲルベノア。あんな数だけ揃えた連中相手に派遣される有象無象とは格が違う!」
「それはどうかな?」
グラベルゲノアの爪を短剣で弾くと、アインは空いているほうの手で更にナイフを投げ……しかし、それをグラベルゲノアは爪で全て叩き落す。
「あそこに見える城ではなく街の担当という時点で底が見えているようなものだが……おおっと!」
「挑発のつもりか!? 俺の冷静さをそんなもので奪えると……」
「奪えてるじゃん」
アルヴァの視界外から迫っていたセイラの槍がグラベルゲノアに向かって突き出され……しかしこれは警戒していたか回避したグラベルゲノアの片腕を、別方向から迫っていた剣霊が斬り飛ばす。
「ぐおっ……!?」
「隙あり……ファイア……チャアアアジ!」
セイラの槍に火の魔力が宿り、文字通り突撃したセイラの一撃がグラベルゲノアを突き貫き霧散させる。
「グアアアアアアア!? 馬鹿な、そん……」
最後まで言い終わらずに消えていくグラベルゲノアにトドメを刺すかのようにセイラは槍を地面に突き立て、ふうと息を吐く。
「その有象無象と違って油断すっごいし、知能が本能を邪魔するぶん動きも鈍い。充分対処可能だね」
「……お前等にも同じ事は言えるがな。油断すればすぐ死ぬぞ」
自信満々に語るセイラにアインはそう忠告し、セイラはコツンと自分の頭を叩いて反省の意を示してみせる。
今簡単に勝てたから全てのアルヴァに同じように勝てると油断すれば、それは次の戦いでのセイラの死に繋がる。
今の勝利はグラベルゲノアとかいう特殊型アルヴァがアホであったことを忘れてはいけないのだ。
「さあ、行くぞ。早く行かねば城に着いたころには決着がついていたということになりかねん」
「どうかな。このペースなら僕達が一番先かもよ?」
「そ、それはそれでどうかなあ……」
困ったように笑うシャロンに剣霊も同調するかのように肩をすくめてみせながら消えていく。
だが、シャロンとて弱気な台詞を吐いて終わりではない。
「でも、一番に着くつもりじゃないと、きっとカインに置いていかれちゃうよね……」
そんな言葉をポツリと呟き、当然のように聞こえていたセイラが笑顔でシャロンの肩をバンバンと叩く。
「だよねっ。さあ、進もう! 僕達だって、やれば出来るんだ!」
そうして、軽い足音が街中に響く。
その様子にアインが仕方なさそうに溜息をつき……シャロンに促されて、三人もまた城へと向かっていく。
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