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変な光に付きまとわれてます③

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ボーッと立っているのもヒマなので、ちょっと色々観察してみた。

(あ、あんな所に小窓がある)

なんて、どーでもいい事を発見。

(あの子達、今から合コンか何かか?)

六人の女子社員が、団体でいそいそと会社を出て行った。

(気合い入った格好……)

メイクもバッチリしてあった。

「楽しそう……」

なんとなく、その六人を目で追う。


――すると、


キラッ!と、通りを挟んだ向こう側からまた何かが光って見えた。

私は勢いよく光の方を見る。

キラッとしたのはやっぱり一瞬で、今はもう光っていない。

ダッシュで外に出る。

私は何も考えずにほとんど脊髄反射的に光った方へ走ろうと、グッ!と足に力を入れた。瞬間、

「江奈っ!!」

名前を呼ばれて、ピタッ!と止まる。

振り返ると、黒のセダンから険しい顔を覗かせた雪ちゃんがいた。

「あ……」

オールバックにメガネ(ついでに美形)の人がすごむと、ちょっとビビる。

「乗りなさい」

「……はい」

言われた通り、素直に従う。

「失礼します」

そう言って、車に乗り込んだ。

私がシートベルトを締めた事を確認して、車が動き出す。

「アンタね、何の為にサキコちゃんがお願いに来て、何の為にアタシが送って行くのか分かってる?」

「……はい」

「今、どこに行こうとしてたの?」

「それは……」

はぁっ……と、雪ちゃんが大きな溜め息を吐いた。

「自ら危険に飛び込むなんて、バカじゃないの?」

「うっ……」

それはそうなんだけど、なんか段々腹が立って来て……。

「ホンット、目が離せないわね。良い?アンタから近寄ったら絶対にダメだからね?何かあったら、すぐにアタシに知らせなさい。約束よ、分かった?」

「うっ……はい……」

「よし!」

駄々っ子を宥める様に頭を撫でられ、じんわりと温かさが心に沁みる。

雪ちゃんが、やれやれ……とため息を吐いた。

「この後予定無いなら、どこかで夕飯食べて行かない?」

「え、いいんですか?」

「アタシが聞いてるのよ」

夕飯、と聞いていきなり元気になった私に、雪ちゃんがフフッと笑う。

「はいっ!大丈夫です!」

ゲンキンな物で、さっきまでのイライラがどこかへ飛んで行ってしまった。

「どこに行こっか。なに食べたい?」

「なんでもいいです!」

「じゃあ……アタシの気分で良いかしら?」

「もちろんですっ!」

雪ちゃんが紹介してくれたお店はどこも美味しいから、安心して任せられる。

「ガッツリと、肉行きましょうか」

「お肉大好きです!」

「決まりね」

「はいっ!」

わーい。楽しみだなぁ。

わくわくしながら、外を眺める。

(あれ?)

そー言えば、と、ふと疑問に思った。

「あの赤い車じゃないんですね?」

そうだ。デートの時は真っ赤なスポーツカーだったハズ。

「ああ、アレね。あの車じゃ目立つからね。普段はこっちの車よ」

「……なるほど。確かに、目を引きますね」

うん。この街中をあの車で走ったら、かなり目立ってしまう。

て言うか、あの車で出勤なんてしたら、会社内がザワ付いてしまうだろう。

「普段は近くに住んでる兄貴の所に預かってもらってるの」

「あ、お兄さんに……」

雪ちゃんには、お兄さんがいたのか。
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