転生しちゃったよ(いや、ごめん)

ヘッドホン侍

文字の大きさ
125 / 137
後日談たち やり残したネタとか消化していきます

145.後日談5 変な先輩

しおりを挟む

「そこでね、僕は思い出したんですよ。そんな人材いるはずがないと思っていたのでしょうね。あの顔は見物でした」

 俺はそのときの国王陛下の様子を思い出しながらにやりと笑った。
 元皇帝――いや、ここはもうクイタと呼ぼう。クイタとの面会で思わず彼を説教してしまった俺だが、普通俺みたいなお子様にあれこれ言われればイラッとでもきそうなものだが、彼はあの見た目に反して素直というか、まじめというか、非常に効率主義で理知的な考え方をしていた為、いたく俺の話に感動してしまったのだ。
 それは、もう。これまでの人生を振り返って、彼は大いに反省していた。懺悔のように謝り続けてくるものだから、今まで彼に抱いていた怒りも呆れに代わってしまったほどだ。それも獣人を奴隷にする制度も、影という組織もクイタ自身がつくりあげたわけではなかったからだ。また、影は俺の親友であるセフィスを攻撃してくれちゃったりもしていたわけだが、その影に出した指示事態も直接俺の友人に危害を与えろと言ったわけではなかったようなので、何とか呑み込めた怒りなわけだが。そんなものはよくある政治家の「秘書が勝手にやったことです」くらい建前の意味しかなく、たいした根拠になるわけではないが。
 国王陛下にヒッツェのことを任されてしまった以上、今後クイタ氏とのかかわりは絶てないとわかっているので、いつまでも深い怨恨を残しておくわけにはいかなかったのだ。主に俺の精神衛生上の問題で。
 そういうわけで、許そうと思う俺の理性が俺の感情に示した『建前』がまさにそれであっただけである。
 まあ、いずれにせよそれくらい彼は後悔をしていた。――クイタが悔いた。
 いや、別にそんな寒いダジャレ心のなかでも思ってませんけど!? クイタのおっさんは、その名に宿命を背負って生まれてきてしまったようだった。

 で、ヒッツェの属国化と実効支配を行うに当たって、当然俺は本国に向かわなければならないのだが。運営を行うためには俺個人が行ったところで意味はないのだ。
 国家の運営とは組織の統括である。組織がなければなりたたないのだ。いつかそんなことを考えていたような気がするが、まさかあれがフラグだったのではあるまいな。
 フラグの神様にちょっと問いただしたくなったが、それは置いておいて。
 とりあえず問題はその人材であった。そこで国王陛下は、少なくとも情報を集める諜報の人員ぐらいウィル直属の部下が最低限いなくてはならないだろうとおっしゃったのだ。そして、もしすでに思い当たる人材がいれば任命権を委任するぞ、とも付け加えられた。
 もちろんいないと思っての冗談だったのだろう。証拠にニヤニヤと笑っていた。普通8歳の少年に部下にしたいフリーの諜報員の知り合いなどいるはずもない。しかし、そこは期待を裏切りたくなるじゃないか。

「まあそんなわけで、カルシウス先輩さえよろしければ騎士団所属の情報部隊員で、僕の直属の部下になっていただきたいのですが」
「ど、どんなわけ!? 唐突すぎるよウィル君!」
 
 ちなみにカルシウス先輩にはそのへんの――ヒッツェがエイズームの属国になるだとか、その総司令官に俺がなったとかいう――事情はまだ話していない。
 いずれ民間にも広がるだろう情報だが、いまはまだ十分に機密情報なのだ。
 いや、カルシウス先輩のことだから実は知っていたりしそうで怖いのだが。

 いまや普段はその歳に似合わないポーカーフェイスなそのお顔が驚きに染められている。しかもノリノリでツッコミをいれてくるだなんて。それだけ驚いたということだろう。

「で、やります?」

 いまはそんな驚きに満ちた先輩の事情はあえて無視して俺は同じ質問を繰り返した。なぜならばだ。

「やれるならやりたいに決まってるよ」

 ほらやっぱりな。
 カルシウス先輩の答えは予想できていたから。

「では、先輩は今日から僕の直属の部下としてヒッツェ皇国に潜入調査していただきます。この度、ヒッツェがエイズーム王国の属国になりましたので。あ、ちなみに僕は総司令官とあいなりました」

 いや、しかし。さすがのカルシウス先輩も驚きで開いた口がふさがらない状態になってしまっている。
 さもありなん。
 半ば冗談で言っていた自身の希望が通ってしまっただけでなく、さらにはそれが特大のビックニュースとともにやってきたのだ。
 そんなわけで、人材ゲットいたしました俺としましては。
 今後のやらねばならない、やってくるやっかいごとにめんどくささを感じつつも、何だか未来にわくわくきていたりもするのだった。

 
************************************************
読んでいただき、有り難き幸せ。

クイタは悔いた。
クイタの名前はこのダジャレが言いたいが為に決めましたw
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。