エゴイストの檻

観月 珠莉

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【02】 地獄行きの切符

*016* 対峙

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近いとは言っても、大きな家の近くは…近く無い。
小袖は小走りで大河の部屋の前まで行き、ノックした。

「入れ!!」

短く、入室の許可が聞こえる。

「失礼致します。」

中に入ると、必要最低限の上品な家具が無駄なく配置されている。

「いったい、どれだけ待たせるんだ!! 長風呂にも程があるだろう!!」

入った途端、大声で怒鳴られる。

「すみません。」

どのような理由を言おうと、火に油を注ぐだけだと感じた小袖は、言い訳をしなかった。

「焦らしているつもりか!?」
「そんなつもりは……。」

小袖が言い訳をしなくても、大河の怒りはヒートアップしていったのだった。

「何時までそこに突っ立っているつもりだ!!」

大河は、大きなソファに身体を預け、ブランデーを傾けている。

「あの……どうすれば、よろしいでしょうか?」
「ここに来い!!」

手で、大河の横を指す。

「承知致しました。」

頼りない歩みで、大河の下へと向かう。
その様子を見ながら、大河は、思いを巡らせていた。
もう二度と会う事も無いと思っていた、大河に対して誰もした事の無い無礼な行いをした相手が、もう一度、現れた。
しかも、自分自身の身体を差し出して、『ワールド・セレクション』との関係を修復して欲しいと言う。
どれだけ図々しいのかと、更に怒りが膨らんだが、視点を変えてみると、これ程、大河にとって、有利な交渉は無いという思いへと辿り着く。
会社の事を思っていれば思っている程、小袖は言いなりになるはずだ。
徹底的に弱者の立場を植え付け、大河の望むような結果へと導くのだ。
期限も定めずにこれだけ弱い立場で条件を受け入れるとは、仕事が出来るはずの彼女は、本当に切迫した状況になったのだという事が解り、大河は思わず、ほくそ笑む。

「あ…の……。」

小袖が小さな声で前屈みになり、呼び掛けると、その腕を取り、自分の方へと引っ張り寄せた。
そのまま、ソファに横たわるような姿勢になる。
バスローブが肌蹴かかっている事を気にして、慌てて裾を抑える。
近くに来た小袖の髪を鷲掴みにし、勢い良く後ろに仰け反らせる。
まだ、シャワーの余韻が残るその姿は、清純な中にも艶かしさがあった。
キッチリとスーツを着ていた時とは違う姿に、大河の中の眠れる野獣が目を覚ました。

「何てザマだ。あの時、私の誘いに素直に応じていれば、優しくしてやったものを。自業自得だ、せいぜい、甚振られるが良い!!」

小袖の顔を見ると、今まで浴びせられた事の無い、失礼な言葉が蘇ってくる。
大河は、せいぜい痛めつけてやろうと思いを新たにした。
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