あまやどり

あまき

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【番外編】不動産屋の男が言うには

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やばい奴が来た。もはや直感だった。
十代から足を入れたこの業界で、そろそろ還暦に手が届き引退の2文字も過る年になるまで、俺はずっと人様に住む家、土地、場所を提供し続けてきた。その俺の直感が、これはやばいと告げていた。

人にはそれぞれ「家庭事情」がある。そこに同情や関心を持ってはいけない。ただ求められる家や土地を売り、マンションやアパートを契約する。客は要望に沿った屋根のある住処を得る。それが不動産という仕事である。
だがロマン溢れる仕事であることも忘れてはいけない。俺は義理人情に熱い男だった。客の要望には1から10まで応えないと俺の気がすまない。なので客のことを1から10まで知るために、俺は鍛え上げたトーク力で情報を仕入れるのだ。最初はあまり語りたがらない客でも、15分もすれば和気あいあいと話し出し、最初に提示してきた希望よりももっと詳しい要望がにじみ出てくる。それを汲み取ってその客にあった最適の家を探すのが俺の使命だ。

これまでの長い年月、色んな客にあってきた。その中にはやばい奴と思う客も何人かいたものだ。「その筋お断り」と表記しながらも、首筋から手首まで入墨が覗く男にアパートを貸したこともあった。近所付き合いが少なく、夜間でも集積所があいているところを紹介すれば喜ばれた。
左手薬指に指輪を嵌める男に「別宅」のマンションを契約したこともあった。契約者名が若い女の子であったことには触れてはいけない。
学生服が光る少年に部屋を貸したこともあった。「両親が離婚してそれぞれが再婚したから、俺には迷惑料に部屋を与えられたんです」なんて言われた時は思わずおいおい泣く羽目になった。







「この土地、見せてもらえます?」

その女は突然やってきた。パッと見では年齢不詳だが、それでも若い印象を得る。事務所のドアに一番近い受付の女の子にスマホを見せながら、その女は唐突に言った。
その女の繊細な指は、会社のホームページにあげている土地、それも都心に近いが周辺環境は緑の多い静かな場所で、セレブや有名人なんかが求める、いわゆる高級住宅地を指していた。また、うちの会社が掲載している土地の中でも更に一等地と謳っていて、広さもかなりあり価格もそれなりな場所を示している。
入店するや否や挨拶もなく、突然の流れに若い営業が尻込みしているのを見て、俺が立ち上がった。

「はじめまして。ご来店ありがとうございます。店長の今在家です」

営業の基本、まずは挨拶だ。先にこの空気を和らげてにこやかに返し、パーテーションの奥のソファへ促した。

「こんにちは。この土地を今から見せてもらうことは可能ですか?」

特に和らがない空気のまま、笑顔を最大限に出していると、隣にいた若い男が女の腕を引いた。

「もー先生!まずは座って落ち着いて話さないと」

俺の営業はもうすでに始まっている。頭を回転させ、客の情報を仕入れるのだ。
にしても、先生とは…この女は教師なのか。ならこの若い男は、教え子…?年の差カップルなのか。

「気持ちは分かりますけど、いきなり土地見せろだなんて、シマ荒らしに来たヤクザじゃないんだから」
「…そのものの例えはちょっといたたまれないわ…」

…前言撤回。カップルの会話には思えない。

「お客様、土地へのご案内は今すぐにでもできます。ただ手続き等もございますので、まずはこちらでお話を聞かせていただければと…」
「ほらー!まず座りましょうよ」
「…そうですね。私も気がせいてました。よろしくお願いします」









秋川透、29歳、職業は…自営業か。先生と呼ばれるくらいだから何か教室を開いているのか。…そもそもこの一等地を求めるくらいだから、どこかの家元のお嬢さん…なんて説もあり得るな。

「…………えーっと、では秋川様。本日は土地をお求めということですが、用途は住宅建築でしょうか」
「はい」
「そうなりますと、ハウスメーカー等ももうご検討されましたか?」
「それはまた追々考えます。とりあえず土地だけ譲ってもらえないかと」

「なるほど…差し出がましいかもしれませんが、私から一つ言わせていただいても?」
「?」
「住宅建築あり気で土地をお求めになる場合、工務店やハウスメーカー等を検討した上で、土地と住宅をまとめて購入なさる方がよろしいかと。その…借り入れの問題がありますので」
「…借り入れ?」
「…先生、銀行でローンを組む際に、土地と住宅別々で組むんじゃなくて、セットでいくらという形でローンを組んだ方が理にかなってるってことですよ」
「…お連れ合い様のおっしゃるとおりでごさいます」


「あーその心配はありません。一括で払いますので」

…………は?

「…え、は?え、…えぇっと…つまりは、土地を先にお求めになって、住宅建築はもう少し先…ということでしょうか?」
「うーん、できれば早めに建てて住みたいですけど、まだ分からないことばかりだし。家は追々。ただ、土地は早く購入しないと、無くなってしまうと大変でしょう?」


こんな高級住宅地、そんなすぐ売れるわけないのだが。


「…つ、つつまりは、この土地を、一括で購入なさると…?」
「?あー現金でってことですよね。…銀行に手続きしたらいいのかな?織田くん」
「その辺俺も分かんないですよ。こんな大金動かしたことないですもん」
「まぁとりあえず、どっちみちローンを組むことはあまり考えていなくて」

ここは本当に俺が住む世界線なのか。一晩の間にパラレルワールドに来たわけではないだろうな。だがこの客もなかなかだろ。こんな一等地をキャッシュ一括だと?自営業とか言って株でもやってるのか?今流行の個人事業主ってやつなのか?聞きたい、聞きたすぎる。だがあまりに直接きくにはまだ早い。この客がどういう人間なのかもう少し見極めてから会話の切り口を考えないと、失礼なことを言って気分を損ねられたり、不信感を抱かれたりしてはたまらない。

「…なるほど、わかりました。あまりお金の話をしていても進みませんし、この土地を一度見に行ってみましょうか」
「わー!嬉しいです。自分で行ってみようかと思ったんですけど、こういうのはちゃんと不動産屋を通した方がいいって織田くんにいわれて…」
「お、おおおお俺はてっきりマンションを購入されるのかと思っていて!他の住人の方もいらっしゃるのに、勝手に周りをウロウロしていたら先生が不審者になっちゃうと思ったんですよ!」
「マンションもいいなぁと思ったけど、やっぱり一軒家がいいなって思ったんだよね」

マンションも考えていたということは、2人もしくはファミリーでの住居を考えていたということか?だが結婚指輪はしていないし……いやまてまて、今時指輪なんて当てにならんものだし、マンションがファミリー向けなんてのも一概に言える時代ではない。

「うちとしても、こうしてわざわざ事務所まで足を運んで下さったことはありがたく思います。…して、秋川様、マンション購入から一軒家へと思いを変えられたのには何か理由があるのですか?」
「………」
「あぁいや!昨今のお若い方は維持管理の問題や利便性を鑑みてマンションを選ばれる方も多く、秋川様もはじめのうちはマンションを視野に入れていたとのことでしたので、何かきっかけがあったのかと思った次第でして!…うちには都心部に位置しながら駅近で、利便性のいいマンションもご用意がありますので、そちらも内見していただくことは可能ですし…」

何も言わない彼女との距離感を図りながら、彼女が何を目的としてこの土地を欲しがっているのかを推察していく。マンションよりも一軒家がいい理由とするならば、やはり大なり小なり庭が持てることや、近隣住民との接触の少なさだろう。そう言った面で一軒家を好む若者も多い。

「…畑ができたらなぁと思ったんです」
「……は、たけ…ですか?」
「私は仕事上家にいることが多いですし、広い庭で野菜を作ったり、晴れた日は机と椅子を置いて、好きな本を読んでゆっくり過ごしたりしたいなぁって、思ったんです」

「そんな時間、ほんとに取れればなんですけど…」そう言ってはにかんだ笑顔を見せる彼女に涙腺が緩む。まだまだ若い年頃の彼女が、俺でも老後に望む生活をしたいだなんて、普段どれほどの苦労しているのだろうかとそのバックグラウンドを勝手に想像しただけでホロリと来てしまう。もう俺は、この仕事をするには年を取りすぎたのかもしれない。

「もー!先生!横峯さんと一緒に、でしょ?!」

「ここが二人の愛の巣になるわけですねー!きゃー!」なんてテンションが上がっている男に対し、彼女はうつむきがちに「………そう、よね……」と返していた。

これはまずい。なにかって俺の勘が警鐘をならしている。彼はまだ若いから、この機微に気づけないのだろう。だが俺は気づいてしまった。彼女はこの男とも面識があるヨコミネという奴と、いわゆる好い仲というものだったのだろう。だがこの煮えきらない態度から、婚約かあるいは結婚までしていて、今は破局寸前といったところか。浮気や不倫などで慰謝料や手切れ金をふんだんにもらい、新しい土地で心機一転を試みている健気な女性…そういうことか。だから一括で買おうだなんて思考になるし、やたら慌てて住処を欲しがるのもうなずける。
だが、何十年とこの仕事を通して色んな人を見てきた俺が言う。土地も家も、確かにタイミングも大事なのだが、なにより住処との出会いが最も重要なんだ。ヤケクソや勢いだけで決めていいものではない。
お金に関してはもっとそうだ。それがどんなお金であれ、生活にゆとりがもてるような使い方をしなければならない。慰謝料なんてお金はすぐにでも使ってしまいたいかもしれないが、手持ちがあるというのも心の余裕になるのだから、一括支払いなんてのは少し考え直すよう助言した方が良いかもしれない。









「わぁ~!先生!広い!広いですよここ!」
「この辺りは都心部に近いですが隣家とは距離がありますので割と閑散と感じますね。ただスーパーやコンビニ、薬局も徒歩圏内にありますので、生活に不便はないかと思われます。駐車場や庭園も含め、余裕を持った広さの家を建てられるかと思います。」
「先生にぴったりじゃないですか!いいですね!」
「秋川様、実際に見ていただいていかがでしょうか」
「…周りが静かなのが気に入りました。また夜に訪れてもいいでしょうか?夜間の雰囲気も見てみたいなと…」
「それはもちろん。なんでしたらお迎えにあがりましょうか」
「…いえ。一人できます。ただ…」
「…ただ?」

「今晩見に来ますので、明日朝一でお電話させていただいてもよろしいですか?」と言った彼女は、宣言通りに次の日の朝早くに電話をしてきた。「とても気に入ったので、現金一括で買わせてもらう」と。
俺はそれに対し、了承した旨とお金についてはまず契約を交わしてからということを伝え、次に来店していただく日時を決めて電話を切った。来店時にもう一度、支払いについては話し合うつもりだ。明日にでもと息まく彼女を抑えて少し先にアポをとる。商売人としてはすぐにでも契約書を作成して判子を貰って、とも思うが、彼女の事情やあの土地の価値を考えると、もう少し冷静に考えてもらいたいとも思ってしまう。いや、彼女はずっと冷静だったがそれでもどうしても、あの寂しそうな表情が頭から離れない。全く、彼女を手放したヨコミネというのはどれほどの男なのかとため息が出る。「逃した魚は大きいぞ」なんてぼやきながら、俺は普段よりもゆっくりと、契約書の作成を進めた。









あっという間に過ぎたかのように思った頃、また朝一で電話がなった。相手は開口一番にこれまた腰に来るいい声で「横峯といいます」と言った。ヨコミネ、ヨコミネ……ん?ヨコミネ?どこかで聞いたことある名前だなと少し焦りながらも、声は冷静に対応する。なに?秋川透が契約した土地について?契約内容の確認?名義変更?うん?………はっ!まさか!あの一等地の元好い人か?!お前なのかヨコミネ!

「…では、実際の契約はまだなんですね?」
「はい。えー、来週正式な契約日を設けておりますが」
「………分かりました。その日は私も同席させていただきますので、よろしくお願いします」
「は、はぁ」
「あぁ、土地は購入しますので。秋川もそのつもりです」

これは一体どういうことだ。なぜ元がつく奴が連絡をしてくる。さてはここに来て慰謝料を払わないつもりか。心機一転を図る彼女の邪魔をするつもりなのか。

「……あの、失礼ですが…契約者様との関係はどういう…?」
「…私は、近いうち夫となる、横峯律といいます」

「以後お見知りおきを」

そう言った後に二言三言何かを話したが、全く頭に残らなかった。つまりはなにか、元でもないのか。慰謝料の使い道でもなかったのか。2人での新転地を探していたとでも?結婚するから?……………なぁんだ、そうだったのか。あの憂いを帯びた顔は別れではなく、つまりはあれだ、何かしら事件があって落ち込んでいたが良い土地を見つけてハッピーエンドってことか。いやぁにしても、彼女が幸せになれるのならいいに越したことはない。次二人で来店されるのが楽しみだ。





………いやまて。まてまてまて。慰謝料でもなんでもないなら、なんでこんな一等地をキャッシュ一括で買えるんだ。なんだそれは。なんだその金は。どこから沸いたんだ。それに彼女とヨコミネの関係に集中しすぎて肝心の仕事のことは何も聞かなかったな。あの若い男はなんなんだ。先生ってなんだ。そんなに儲かるのか、先生ってのは。なんの先生だ。そもそも事件が起きて仲違いのようなものがあって、土地を手に入れてハッピーエンドってつまりはどういうことだ。土地がキーパーソンになっているのか?なんのRPGだ。にしても一等地だぞ。以前は政界の人間が内見に来た土地だぞ?確かあれは今の経済改革大臣だったな。そんな政界の大物まで購入を悩む程の土地が、二人の愛を結んだのか?どんな仲直りの仕方だ。
考えれば考えるほど彼女という存在が恐ろしいものに思えてくる。俺の直感は間違っていなかった。やばい。なんともやばい客だった。

数日後、質のいい服を着た長身イケメンに圧倒されることになるとは、この時の俺は思いもよらなかった。ヨコミネという男は迅速かつ丁寧にしかし付け入る隙を与えんばかりに話を進め、あっという間に契約にいたった。開口一番に「この土地の資産価値について調べてみたのですが」なんて言われたのはこの仕事をしていて初めてのことだったし、背中にぞくりと何かが走ったのも生まれてこの方味わったことのないものだった。職業欄は会社勤めとなっているが、まぁ金に関してよく頭が回る賢い男だ、経理部あたりだろう。万が一にも営業担当なんてもので現れた日にゃ、逃げ道の用意されていない確実に狩られるセールスになるだろうな。こわいこわい。とりあえず土地を見に行って、判子を貰ったらとっとと帰ってもらおうそうしよう。










「…いいですね。ここ。透が見つけてきただけあります」
「でしょ?実際に見ると一段と素敵よね!」
「家も大きいのが建てられそうだ」
「庭にテラスを作ってお茶を飲みたいなぁ」
「子ども部屋がたくさん作れますね」
「ウッドデッキで日光浴するのも素敵!」
「ソファは小さいのにして、常に隣に座れるようにしましょうね」
「畑もしたいなぁ。夏野菜育てたい!」
「主寝室はベッドがあれば事足りますよね」
「トマトでしょーなすびでしょーきゅうりでしょー」
「浴槽の大きさは悩みますね。二人で入ってピッタリサイズがちょうどいい」
「そうだ、オクラも育てたいね」
「風呂場には全身が写る鏡がほしいですね。あなたの体をよく見て洗ってあげたい」
「あ、オクラって面白い実り方するの!知ってる?」
「もちろん。毎日一緒に入りましょうね」
「……なんの話?」
「オクラの話です」
「(おふろ、だろ!)」





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