追い求めるのは数字か恋か

あまき

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「いやぁ、諸々落ち着いてよかったですね」
「「どこがよ」」
「え?」

時刻は14:58。そろそろ小休憩を入れようかと思った時の、ふいに出た呟きが瞬時にこき落とされてしまった。
先日のハッキング騒ぎから既に二週間が経過した今、データの復元や、問題のあったPCのクリーンアップ、それから異常は見られなかったメインシステムや本機サーバーの確認作業等々、あの事件から尾を引いていたものがやっと落ち着いたのだ。通常業務をこなしながらのこれらの作業は非常に疲れた。これは一杯引っ掛けたい晴やかな気持ちだったのだが、楓先輩と蒼汰くんからは冷たい眼差ししか返ってこなかった。

「一大トラブルは解決したかもしれないけど、あたしのトラブルは解決してないから」
「楓先輩のトラブル?」
「最近ちょっとなりを潜めていたから油断したわ…今週毎日よ!一日一回お昼時!例の寂しがり屋よ!!」
「あぁ、無言電話の」
「まじで会ってみたいわ、こんなにも誰かに会ってみたいと思ったのは初めてよ」

遠くを見つめて呟く楓先輩の目には狂気が宿っていた。

「…はっ、無言電話しかしてこない寂しがり屋に恋するなんて、楓先輩も落ちぶれましたね」
「うるさい蒼汰!!あんたもその背後に抱えるうじうじしたやつなんとかしなさいよ!うじ虫め!燃えろ!!」
「俺だって!うじうじしたくてしてんじゃないですよ!!あのプリン、一日に数個の限定販売のやつなのに…っ買って来るたびに冷蔵庫に食われる!なんだあれは!妖怪か?!」
「はーっはっは!妖怪にまで好まれるなんてイイ男は困ったものね~」
「妖怪のが楓先輩よりずっとか見る目持ってますね」
「そのままお前も食われてしまえ!!!」

何の話をしているのかさっぱり分からない、いやむしろ理解したいとも思わない心境に、仕事を進めようとイヤホンをした時、肩を優しくとんとんと叩かれたので振り返る。

「あれ、冬木部長。どうしました?」
「残念ながら用があるのは横山くんなんだ。…そんなことよりねぇ、名前で呼んでよ」
「いや、会社だからね…」
「会社でも呼んでほしいのに」
「それこそ業務に支障が出ますから」

「業務の支障以前にその甘ったるさで死傷者が多数だよこのハイカロリー共め。糖分取りすぎだばかやろう」「箱詰めして送りましょう、別の星に」なんて毒を吐き続ける2人をよそに改めて克己さんに向きなおる。
私たちのことは特に公にもしてなければ隠していることもなかったが、部署も違うし特に仕事でも会わないため、関係を知っているのは私や彼が話した特定の相手くらいだろう。楓先輩や蒼汰くんはもちろん、まぁ課長あたりは気付いているのかもしれないなぁと思っている。彼の方が部署や他で誰に話したかは知らないので、会社では公私混同しない為にも今まで通りの接し方をしようと決めていた。の、だが。彼は相変わらずこんな感じだった。

「おや、冬木くん!来てたの~」
「山崎さん、失礼しています。横山くんに用がありまして」

外に出ていた課長が帰ってきて、また一段とフロアが賑やかになる。彼と蒼汰くんの合同案件は、△△会社への契約に少し遠回りをしつつも着々と進んでいる。そこに関しては前回のトラブルのことも踏まえて、克己さんが上手に△△社を丸め込んで、スムーズかつこちらに有利になるような契約で進めている、と蒼汰くんから聞いた。

「鬼っすよ、鬼。鬼が一つの会社を、豆粒を炒るようにフライパンの上で炙ってんすよ」

と冷めた目で語っていたのも記憶に新しい。まぁ、仕事が順調なのはいいことだ。



「あ、課長~…じゃなかった…部長~!!聞いてくださいよ!!」

そうだった。山崎課長改めて山崎部長はこの度昇進なされたのだ。それに伴いシステム開発課も部となり、扱いが少し変わってきた。おかげで私は最年少主任なんて有り難くない役職を貰い、面倒な事務処理が増えて辟易しているところだ。

「どうしたの?深山くん」
「もーまたですよ!再来です!また内線で無言電話ですよ!」
「あれ、最近落ち着いたって言ってなかった?」
「そう!なのに今週からまたですよ!なんの小休憩挟んじゃってくれてんだってまったく!」
「あれ、風邪でも引いて休んでたのかな?」
「部長のんきすぎ!!」

楓先輩が頭をかきむしりながら叫ぶ中、克己さんが「そういえば…」と話し出す。

「うちの部署もそれで困ってて。2週間くらい前からかな、最初は取引先かいたずらかなんて思ってたけど、一日一回必ずお昼時に来るから、そろそろ上に報告しようかと思っていたところなんだ」

「なら早く報告しとけよどクズめー!」と更に血圧を上げる楓先輩と「ふむ」と顎に手を当てて考え込む山崎部長。蒼汰くんは完全無視で眉間にシワを寄せながらパソコンとにらめっこしている。

「それも内線ですか?」
「うーん、それがさ。うちの部署は取引先からエントランスの受付を通さず直通で掛かってくるから、いまいち分からないらしくてね。電話音も同じだし。お昼時は僕もちょうどいない時間だし、電話を取る子も気味が悪いってすぐ切っちゃうから」
「そうなんですか…」

ふむ。にしても業務時間内に暇な人間がいるものだなぁと呆れてしまう。この分じゃ他の部署にも迷惑をかけてるんだろうか。2週間前なんて、うちはあのハッキング問題でバタついてたっていうのに。世間は呑気そのものだなとため息が出た。

「その子、すぐ切って正解よ。どうせ相手もこっちが何言ったってすぐ切るんだから」
「それは楓先輩がいつも怒鳴るから、相手もビビってんでしょ」
「あんなんでビビってんならそもそもかけてくんなっつーの」

楓先輩も蒼汰くんも心なしか元気がなく、掛け合いもどんよりしていて少し心配になる。いつも一緒に頑張っているメンバーだし、少しでも快適に仕事後ができるよう私も何かできればいいのだが。

「んー…でもその子が言うには、なんかボソボソ喋ってるらしいんだよね。なんでも、数字らしくて」
「…え?」

………数字?

「はぁ?ナニソレ、聞き間違いじゃない?あたしのときそんなこと言ってないわよ」
「ははは、深山は怖いからね。喋る暇すら与えてもらえないんじゃない?」
「うるさいな!なんだお前まで!!」


これは一体どういうことだろう。実は喋ってるけど楓先輩が聞き取れていないだけ?それか、企画開発部の人の時だけ喋ってるのか?それも、数字って…またややこしいことになってきたな。

「いや、部長。そんなことより俺のプリンすよ。もういい加減こっちもうんざりですよ」
「うーん、どうしたもんかねぇ」

山崎部長をも悩ませるほどに、プリン紛失事件もなかなか根っこが深いようだ。システム開発部しかないこのフロアで、どうも私たち以外の人間がプリンを盗んでいるようで。部長も誰も身に覚えのない、これもまた不可解な問題として居座っている。

「プリン?」
「俺のプリンがことごとく冷蔵庫に食われるんですよ」
「?なんのこと?」

すっかり拗ねてしまっている蒼汰くんはろくに説明もせずにパソコンに向かってしまい、克己さんはますます首を捻らせた。

「限定プリンを冷蔵庫に入れておくと、数時間後に無くなってしまっているみたいで。これも他の部署の人が食べちゃってるんじゃないかって話になってるんです」
「わざわざ8階に来てプリン盗ってくの?暇にも程があるね」

克己さんも驚くように、無言電話にせよプリン紛失にせよ、本当に社内には暇な人間が複数いるようで。真面目に働いている私たちが馬鹿にされているように思えてくる。そろそろ手を打っていく必要があるなぁと、私も頭を働かせた。
眉間にシワを寄せる私の頭に、克己さんがぽんっと手を乗せる。思わず見上げると、優しい顔で笑っている彼がいて、うっかりどきっとしてしまった。ここは会社なのに、その顔で見つめるのは反則だ。

「大丈夫だよ、穂ちゃん。君に何かあったら僕が守るから」
「、克己さん…」

「守るのは穂だけかよ」「部長の風上にもおけないっすね」「ははは、愛だね~」なんて会話もなんのその、うっかりときめいたままの私は見上げたまま微動だにできなかった。







「まぁとにかく、僕これから社長に会うから、企画開発部の電話のことも伝えておくよ。にしてもそんな愉快犯は許せないね」

山崎部長がそう言って立ち上がった。

「ありがとうございます。何かしら手が打てたら良いんですけどね。実害が特にないのでなかなかそちらに手が回せなくて」
「実害しかないだろ、あたしの精神衛生上よろしくなさすぎるわ」
「それは深山の堪え性の問題だろう?ビタミン足りてる?」
「うるせーどクズが!穂に捨てられろ!」
「はははっやだなぁ、起こり得ない未来を言われても僕だって困るよ」
「だーあー!蒼汰ぁ!こいつとっとと連れてけ!」
「だーからー!!声でかいんすよ!先輩!!」

このキレ具合、蒼汰くんもだいぶ参ってるなぁと、彼のPCを覗き込んでアドバイスできる箇所はないか探していると「先輩は見ないでください!一人でやるんで!」と怒って画面を切られてしまった。また夕方になにか甘いものを差し入れしてやろう。

「ほら、冬木サン!会議室行きますよ!」
「ちょっと、僕の穂ちゃんなんだから優しく接してよ」
「あんたの穂先輩じゃないんで、みんなの穂先輩なんで」
「なにそれみんなって誰」
「公私混同しすぎですからね」
「公私混同じゃなくて大事なものを愛でてるだけだよ」
「かー!糖分過剰摂取!!!」


「賑やかだねぇ」
「蒼汰くん、楓先輩に似てきましたね」
「ばか言わないでよ、あんな子どもっぽい言い合いあたしはしないわよ」
「じゃあ僕社長室行ってくるね」
「行ってらっしゃい~」
「ちょっと!聞いてんの?!」

克己さんと蒼汰くんの案件も、そろそろ佳境を迎えていると聞く。社運をかけたプロジェクトであるから、検討を祈りつつ、私も通常業務に戻る。今週末にシステムの大規模更新が待っているので、何度も調整を繰り返しているのだ。彼も頑張ってる。私も頑張ろうと気合を入れてまたPCに向かった。










「あー…もうまた…」

今日も恒例の掲示板探索を行っていると克己さんの記事を見つけた。更新時間はちょうど先程で、蒼汰くんが企画開発部から帰ってきた時だった。げっそりと疲れ切った蒼汰くんは虚ろな目で帰宅していったので、今日の会議もなかなか話の濃いものだったのだろう。
克己さんは最近また掲示板を使ってメッセージを書き込むようになった。ただ今度は堂々と私をグルーピングしているあたり、楓先輩の言葉を借りるなら「中学生が高校生くらいには成長したか?」という具合だろうか。でもいくらなんでも周りには見られないからってここを使うのはやめてほしい。苦笑しながら記事を開くと、なんてこと無い週末のディナーのお誘いだった。メッセージでやり取りすればいいのに、とため息が出る。呆れて出たものにしては、少し熱を孕んでいるなと自分で笑ってしまった。どうにも、恋人に甘いのは私も同じらしい。了承の旨を今度はちゃんとメッセージで送り、私もそろそろ片付けに戻ろうかと掲示板のチェックを急ぐ。
にしても、この社内掲示板も今や大盛況で、前にも増して多くの人が有効活用してくれている。以前からあった仕事の関連はもちろん、飲み会の案内も落とし物の案内も、連絡の通達がスムーズで助かっていると好評なのだ。作成者としてはほくほくの気分である。最近では特にグルーピングすることなくお悩み相談とかもあったりして、それらもモラルの面さえ守られていれば、特に問題視することなく運用させている。やはり個人IDでログインすることによって、匿名投稿ができないというのは大きいのだなと改めて思った。
この個人IDに連動しているPCの識別番号やデスクの物品管理番号が功を成して、あのハッキング事件の時も問題のPCをすぐに発見し、他全社員の個人IDをサーバーと解離させたことで事なきを得た。全くいい仕事をしているな、と自画自賛する。
他にももっと連動して有効活用できないかと考えあぐねているところだが、今は特段何もしていないという状況だ。来週行う例の半年に一度のシステム更新だって、そこの辺りは特にいじるつもりはない。まぁまた何か良いアイディアが浮かべば、といったところだろう。今日も社内掲示板は問題もなく、平和に有効活用されていることを確認して管理画面を閉じた。


週末は私の繁忙期がようやく終わる頃だ。焼き肉がいいかも、なんて思い立って彼にメッセージを送ると、かわいい絵文字が返ってきたので思わず吹き出してしまう。電話では味わえないところに彼の可愛さが見え隠れするのを最近知って、積極的にメッセージを送っている。彼は必ずどんなに忙しくても返してくれるし、返事を心待ちにしている自分もいて、なかなかスマホが手放せない。それに会えない夜は電話もくれるので、特に寂しさを感じることなくいられるのも彼のおかげだろう。メッセージ画面に浮かぶ彼の名前を見ながら、「あぁ、声が聞きたいなぁ」と呟いてしまう程には私も熱に浮かされていて、ちょっと電話をかけてみようかな、なんて頭を過る自分に苦笑した。幸いにも、彼も少しの休憩中のようだ。


prrrr…

『もしもし』
「ふふ、もしもし」
『会社で電話をくれるなんて。何かあった?』
「ううん、ただ声が聞きたくなっただけ」
『…僕はいつだって君を抱きしめていたいよ』

彼も社内にいるのにそんな甘いことを囁いて、周りに人がいないかとどきどきする。どんな顔をして言ってるんだろう。仕事中の真剣な顔?それとも、私に見せてくれる甘く優しい顔?

『君はいつもの喫煙所かい?』
「うん。いつものソファ」
『前みたいに足をあげてはいけないよ。そんな無防備な姿、僕以外に見せないで』
「そんなことしないし、それに誰もここには来ないわよ」
『どうかな?分からないよ。プリン盗賊もいることだし』
「そうやって聞くと一気に可愛げが出てくるね」
『君までそんなことを言ったら、横山くんが悲しむよ』

そんなことを言う彼の声色だって楽しんでいるものだから、心の中で蒼汰くんに謝りながらふふっと笑った。

「あなたは、今どこにいるの?」
『ふふふ、どこだと思う?』
「知らないわよ、いつもどこで休憩してるかなんて」
『基本君と同じだよ。4階にある自販機の横の椅子。君が今座っているソファとは比べ物にもならないほど硬いけど』

このソファは特注だ。そうやすやすと市販のベンチと比べられたらたまらない。居心地がよくないならいっそここに来てくれたらいいのに、なんて言ってしまいそうになる自分がいる。まだ仕事中なのに、彼の声を聞いて浮かれているのかもしれない。

「…どこにいるのか、すぐに分かればいいのに」
『GPSでもつける?』
「そんなことしたら、システムで管理しちゃうわよ」
『困ったなぁ、簡単にサボれなくなるね』
「あなたほどの人もサボるのね」
『当たり前だろう?見つけたら君も来てね』
「私が着く前に逃げたりしない?」
『逃げるわけないだろ。その前にたどり着いてくれよ』

居場所が私にバレることは特に問題がないようで、そんな何気ない一言にも熱を持ってしまう頬を冷まそうと手を触れた。彼も絶賛のふわふわのソファに横になる。電話してるだけで居場所も分かったらすっ飛んでいってしまう自覚があって、会社なのに、と思う私と、今はこの熱に浮かされていたいと思う自分がいた。彼をハッキングして、常に居場所が分かるようにしちゎおうか、なんてふふっと笑ったときに、ふっと頭をよぎるものがあった。

「っ、」
『穂?どうした?』
「……そうだ、ハッキング!」

思考を彼から与えられる熱に侵されながらもこれだけ頭が働くなら、私もまだまだやっていけるなと1人呟いた。それならまず、社長に連絡を取らねばならない。いや、その前に。今も不思議そうに問いかける彼に説明するのが先かもしれない。

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