うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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今日も魔石を売りに出かけた。

そして途中で美味しそうな匂いを店先に漂わせていたお蕎麦屋さんに釣られ、鴨南蛮そばを食べて帰ってきた。うん。食べたいと思ったモノを気兼ねなく食べられる喜び。これも金銭的余裕があればこそだ。

昼食の上限を¥500に留め節約を強いられていたサラリーマン時代の苦労を偲びながら、つい美味しくて追加でかつ丼まで食べてしまった。


「ふむふむ…。よし、いくぞ…こうで、こうで、こう。…こうで、こうで、こう」
『すっ、すっ、きゅま…すっ、すっ、きゅま…』

そんなオレはうちに帰ってくると、ダンジョン前室にて通信端末にダウンロードした動画を観ながら身体を動かしていた。

今視聴している動画は、動画配信サイトにアップされていた拳法の達人のモノ。今日日はこんな貴重な動画が簡単に手に入るのだから驚きである。

さて、動画では達人が殴りかかってきた暴漢役の弟子パンチを足さばきで右に避け、左手で繰り出され弟子の右手を掴み、右手で弟子の顎に突き上げるような掌底を放っている。勿論練習なので実際には当たっておらず寸止めになっているが、次第にそれを繰り返す動作はどんどん加速していく。

「う~ん、スゴイな…。今だからこそ動きもしっかりと捉えられるが、レベルアップする前だったらとてもじゃないが目で追えなかったろうな」

で、いま行っているのは動画で観た達人の動きを覚え、実際に自分の身体で再現してみること。

学生だった頃、恥ずかしながら学校でイジメを受けていたオレ。

そこで精神的なイジメをしてくるクラスメイトを牽制する為に、頑張って身体を鍛えていた。その流れで格闘漫画にも強い興味を示し、図解で型などが載っていれば懸命にそれを覚えようとしていたものだった。

だがいかんせん。漫画の図解ではどういった動きで図1と図2が繋がるのかが解らず、大変悔しい思いをしたのを今でも覚えている。

それがどうだろう。動画で教えてもらえればカンタン、動作は丸解りだ。これはありがたい。

ああ。あとその事を思い出しての余談だが、同じように学校でイジメられていた当時の数少ない友人が空手の通信教育を申し込んでいて、ある時その教材を見せてもらったことがあった。

そのなかに『門外不出!悪用厳禁!禁断の人体秘孔図』というのがあって、人体の急所とそこを攻撃した場合どうなってしまうのかの説明書が付いていた。それには人体の図に黒点がいくつも記してあり、『ここを強打した場合、相手は吐き気を催して死ぬ』等と書かれていて戦慄を覚えた記憶がある。

まぁその戦慄の意味も、人体図にあまりにも黒点が多過ぎ『いやそんなに弱点ありまくるんかい!』と思った点と、『強打の度合いが曖昧で、そこまで強く叩けるなら別に弱点でなくても死ぬだろう』と思った点だ。卒業以降そのオタ友とは顔を合わせていないが、今でも元気にしているだろうか。


え~と、なんの話だったっけ?

そうだ。要するに拳法の達人の動画を観て、その動きを自分のモノとしようっていう話よ。ダンジョンで鍛え上げ身体能力の向上した今のオレならば、その向上した知力で達人の身体の動きをまるっと記憶し、そのうえで向上した器用さにより達人の身体の動きもバッチリと再現できるはず。いわゆるラーニングだ。

うむ、我流で戦ってても少し行き詰まりを感じていたのでこれは良い突破口になりそう。それに瀬来さん達を指導するにしても、オレがちゃんとした技術を身に着けておかないと。


………。


調べた結果、エクスカリバールと普通のバールの攻撃力の差はさしてなかった。

チョッピリだけエクスカリバールのほうが攻撃力が高い程度…かな。じゃあどのくらいの差なのかというと、キングゴキの比較的薄い腹部の外殻を攻撃した場合ではエクスカリバールならしっかりとした穴が空き、普通のバールでは少ししか空かないといった具合。

なのでエクスカリバールと普通のバールで、攻撃力に大きな差が生じた訳でもない。

試しにスライムを攻撃してもスライムが攻撃を受けた途端に沸騰し始めたり、一瞬のうちに消し飛んだりもしなかった。故にチョッピリ攻撃力が増した、いうなればエクスカリバール+1とでもいったところだろうか。


………。


そんなこんなで三日が過ぎた水曜日。今日もダンジョンの前室にて拳法の達人の動きを学び、その動きを地下7層の格闘蛙と戦い我が身にその技を落とし込んでいく。

そして…、格闘蛙は確かに近接戦闘に長けたモンスター。ではあったが、もはや拳法の達人から動きを完全にマスターしたオレの敵ではなかった。

「ゲロォ~ッ!(ひゅばぁぁ!)」
『す…すっすっ!きゅまッ!(ぺごしゃッ!)』

体を捌いて放った掌底が、格闘蛙の横面を的確に捉えその頬骨と首の骨をほぼ同時に粉砕する。

「ゲェ…ロォ…(ぼふんっ)」
「よし…遂に会得したぞ。達人の足捌きッ!(ギラリ!)」

格闘蛙を素手で屠(ほふ)ること百数十体…。オレは遂に達人の足捌きを会得した。

           現在    前回
レベル        37      36
種族:       人間

筋力        212      200
体力        218      201
知力        215      202
精神力       240      220
敏捷性       220      208
運         133      103
器用さ       221      200

技能:
【強酸】・【俊敏】・【病耐性】5・【簒奪】・【粘液】2・【空間】2・【強運】1.3

称号:
【蟲王】

拾得物:
【運】のスキル―オーブ×4個・武器強化スクロール×1個・その他ドロップ多数

そしてレベルも上がった。

前回のレベルアップからだいぶ時間がかかったので、能力値の上昇も過去最高だ。〇面ライダー1号2号の筋肉は常人の10倍らしいので、その常人の筋力を10とするならオレはすでに〇面ライダーの2倍は強いという計算になる。むむむ、これはなんとも誇らしい。

そして【運】のスキル―オーブを4個手に入れたことで、【運】9が【強運】1.3になった。

まさかスキルレベルが端数刻んでくるとは思わなかったが、これはこれで解りやすいのでグッドだろう。そして【強運】の効果か、今回のレベルアップでは運が30も上昇。ダントツだ。

武器強化スクロールもさらにもう1個手に入ったので、残っていた普通の銀のバールに付与してダブルエクスカリバールにすることも出来た。


そんなオレが瞳には炎を、眉毛はファイヤーパターンみたいに波立たせ一流の格闘家気分で部屋に戻ると、テーブルの上に置かれた通信端末がチカチカと点滅していた。手に取って確認してみると、それは瀬来さんからのメッセージだった。

「ん…瀬来さんか。また週末の指導の件かな?(ぽち)」

『江月さん。ルウから江月さんと付き合いたいって相談受けたんだけど、どうする???』
「なにぃッ!?」

…驚愕した。びっくり仰天だ。あの真面目で大人しそうな女子大生の糧品さんが、オレとお付き合いしたいですとッ!?

そして同時に動揺、困惑する。



正直オレは、ルックス的には可愛くてお胸の大きな瀬来さんに惹かれていた。だって可愛いんだもん。だがそんな彼女からオレに対し別の女性の恋愛話を振られるということは、彼女はまったくオレに興味がないということを明確に示していたから。ぐぬぅ…。

だがしかし、性格的には糧品さんなんだよなぁ~。



だってめっちゃいい子なんだもん。ほんといい子よ。控えめで奥ゆかしい。三人並ぶと目立たないけど、糧品さんだって充分素敵な和風美人よ。

しかしどうしよう。この問いかけに何と答えればいいだろうか。

勿論彼女のいない万年淋しいボーイを通り越したオレが、こんな有難い申し出を断るという選択肢はない。この場合、振り向いてはくれない好みの女の子よりも、自分のことを好いてくれる女の子を取る。そう、確実性だ。だから思春期のどっちつかず煮え切らないボーイみたいには、悩まないぞ。

でも即オッケー!みたいに返したら、軽薄な男と思われはしないだろうか。

うん、瀬来さんと糧品さんはとても仲が良い。なにせ今回のように恋愛事まで相談するくらいだ。つまり瀬来さんに渡った情報は、そのまま糧品さんまで届くという事。

むむむ…、これは慎重に考えねば!

なんて考えていたら、そこへさらにメッセージが届いた。

『話した方が早いから、ここに電話して。○○○-××××…』
「なんですとッ!?」

と、唐突に電話番号が送られてきたのだった。コ、コレは一体…。
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