うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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魔法の武器

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昨日はすごい一日だった。

瀬来さんをダンジョンで鍛えるつもりでいたら、なんと女子大生が3人に増えていた。で、ダンジョンではワーキャー言いながらも女子大生3人がゴブリンを撲殺。しかし糧品さんがショック状態に陥ってしまった時には冷や汗をかいたものだ。

まぁともあれ、まだダンジョンに潜ったことも無い人間の成長データがえられたのだ。うむ、オレの理論の裏付けをしていく意味でも、その意義は大きかったと言えるだろう。

そんなオレはゆったりゆっくりと爆睡して9時に起床。世の中は今日も忙しなく動いているのだろうなぁ~などと無職なりのしょうもない優越感に浸りつつ、バイクに跨りのんびりと出かける。そしてルーチンワークとなった魔石を売る店舗巡りを終えると、今日は買い物をする為に少々遠出をして大型のホームセンターへと向かった。


大型ホームセンター。ここには近所のホームセンターには置いていない工事業者さん御用達の大きな部材や工具類も取り揃えている。そしてオレの目当てもまた、そんな工具類だ。

結局なんだかんだでカツオくんバットは瀬来さんに取られたまま。なので手持ちの武器は瀬来さんからバットの代わりに預かった長い棒と自作の鉄製竹槍だけ。長い木の棒なんて今の腕力で振り回したらカンタンに折れるだろうし、鉄製竹槍についても同様。突くにはいいが、中空のパイプなので振ったりすればすぐに曲がってしまう。

そこで、新たな武器を買い揃えに来たのだ。

そしてこの大型ホームセンターには、そんな武器に使えそうな工具がゴロゴロと置いてある。で、そのなかで目を引くのは、やっぱりバールだ。硬くて折れずに曲がらない。ハードな工事現場で使われるハードな道具だけあって、ちょっとやそっとじゃ壊れない。

なにせ鍛造品だ。鉄をトンカン叩いて焼き入れし、より丈夫な炭素鋼に加工してあるので強度は申し分ない。ではと並んでいる商品の中から、振りやすそうなバールを選んで手に取ってみる。

手に取ったのはやはりバールといえばコレ!といったL字型をしたバール。ただしデカくて重い。短い方の先端が釘抜きに、長い方の先端は平たく尖りヘラになっている。

(うん…握りやすくて振りやすそうだ…)

ネットでもバールは買い求められるが、やはり武器として使うなら使い心地は確認しておきたい。それが大型ホームセンターまでわざわざ足を運んだ理由。但しおおっぴらに店内でバールを振り回したりすれば、たちまち店員さんが飛んできて怒られてしまう。

なので握り具合と重さ、重心のバランスなどを気にしながら手に取ってみて数点をチョイス。

頭のなかで選んだバールを手にモンスターと戦っている自分をイメージし、どのバールが良いかを選んでいく。イメージした敵は当然一番の強敵だったキングゴキ。奴には生半可な攻撃は通用しなかった。だが、今の身体能力と強力な武器があれば太刀打ちできそうな気はしている。


というのもこの数日、ダンジョンの攻略ペースを落としていた。

それには色々と理由がある。ひとつには魔石が売れるようになったことで金銭的な不安が解消された事。これは大きい。『あとはムリせずダンジョンで魔石を集め、のんびり暮らせばいいのでは?』という風にも思うからだ。

ダンジョンは危険だ。キングゴキに追い回されていた時には、本当に生きた心地がしなかった。だから無理にダンジョンに深く潜らずとも、今のままでもいいような気もしてきたのだ。

とはいえ、より下の階層にも興味がない訳ではない。

ダンジョンは危険だが魅力的でもある。もっと下に潜れば、もっとすごい何かが見つかるかもしれない。しかし今潜っている階層は地下7層。キングゴキが現れたのは地下5層。とすると地下10層にはキングゴキ以上に恐ろしいボスモンスターが出てくるような気がして恐ろしい。

うむ、その為にはやはりより強力な武器が必要だ。武器を揃えておくことに越したことはない。蟲王スーツのお蔭で防御は整ったといえるので、ここでは是非武器を強化しておきたい。

そんな事を考えながら、幾つかの工具を買う事に決めた。

まず選んだのが全長900ミリの高炭素鋼全体焼入で、金属疲労に強いという謳い文句のバール。全体に銀色のメッキが施されているところもポイント。スキルの酸で早々に錆びついてしまうようでは困る。
これは以前に買ったミニバールにも同じようなメッキが施されているので、間違いないだろう。これを予備も含め2つ購入。

また別の種類のバールも選んでみた。1500ミリの一本まっすぐな金テコと呼ばれるタイプ。こちらはオールスチール製で先端のみに焼き入れが入っている昔ながらの重いモノ。というのも最近の流行で工具も軽量化されてきている。それだと軽い分扱いはしやすいが、武器としての威力は落ちる。

なのでこちらは威力重視で重いモノをチョイスした。メッキではなく塗装なので禿ると錆びてしまうが、この金テコは短槍や投げ槍として使う予定だ。感じとしてはマンモスを狩る原始人っぽくね。なのでコレは6本のご購入。

最後に大型の両口ハンマーを一振り購入。全長は900ミリで柄は木製だが、機械構造用炭素鋼を用いたヘッドは破壊力抜群そうで、重量も7キログラムと今回購入したモノの中で一番重い。

以上。バール2本と金テコ6本、大型両口ハンマーを買っても総額7万円で済んだ。スーパー銭湯の豪遊よりも安くてポイントも溜る。うむむ、凄いぞ大型ホームセンター。

ただそれらを全て空間庫に入れて持ち帰ろうとしたら、重量物はより魔力を消費するらしくエライ勢いで魔力が削られていき危なかった。バイクを運転中に意識がクラクラくるなんて、ほんと洒落にならんよ。


………。


うちに戻ると早速ダンジョン前室に移動し、購入してきた工具を空間庫から取り出す。

「フゥ~ッ!キツかったぁ!これじゃあ今日はダンジョンに潜れそうもないな…」

出かけた時は元気いっぱいだったのに、戻って来たらもう何もしたくないほどにグロッキー。それでも広げたダンボールの上に買ってきた工具を広げてみて、ひとりでニヤニヤ。おもいっきり危ないヤツだな。

「さぁ諸君、キミたちはたった今からただの工具ではなく武器として生まれ変わるのだ!ダンジョンのモンスターと戦う為、諸君らの力を貸してくれッ!」

危ない奴ついでにお気に入りのアニメキャラの口調を真似て、買ってきた工具たちに向け演説を一節ぶってみた。気にしないでほしい。オタはこういった行動が大好きなのだ。

すると壁に貼っておいたケロ太くんへの寄せ書きが、ハラリと剥がれ落ちて工具の上に。これは格闘蛙からドロップしたアイテムだが、使い方が解らないけど模様がファンタジーっぽくて気に入ったので壁に貼っておいた。

まぁ軽くテープで留めただけだから剥がれてしまったなぁ、と拾い上げるために手に掴むと、ケロ太くんへの寄せ書きが、いやスクロールが淡く光っているのに気が付いた。

(むむっ!?)

慌てて手を引っ込める。

こんな得体のしれないスクロールでどこかに飛ばされでもしたら堪らない。しかし手を離すとすぐに光は治まった。

「ん…なんだったんだ?」

丁度いいとこに金テコがあったのでそれを掴みスクロールをツンツン。うん、反応はない。ただの屍のようだ。じゃあと再び拾い上げようと手で触れると、またスクロールは淡く光り出した。

「おわっ!?」

ただ今度は摘まんだところまでいったので、指を離したことでスクロールが舞ってダンジョンの床に落ちていく。

「ん?…んぅ??」

ちょっと意味が解らない。何度もツンツン。そして手で触れてみる。しかし今度は触れていても、まったく光らなかった。

「そうだよな。壁に張る時だってベタベタと触っていたのに何も起きなかったんだから…」

一体何が原因だったのだろうと指先でスクロールと摘まみあげたまま前室をウロウロ。場所とか位置がなにか関係あるのかもと考えたからだ。するとやっぱり最初に落ちてきた工具を並べたダンボールの上に持っていくと、スクロールが淡く光り出すのが確認できた。

「うむむむ…」

オレの手、スクロール、そして工具。そこから導き出される答えとは…。

「も、もしやこのスクロールには、武器の強化や何かしらの付与の魔法が掛けられているとか!?」

オタ的発想で考えると、そうとしか考えられない。普通ならこういった訳の解らないモノは触らないに限る。触らぬ神に祟りなしというではないか。

しかし、遂に知的欲求には勝てずにスクロールを使ってみたくなってしまった。


でも何かあったらやっぱり怖い。なので実験にはしっかりと蟲王スーツに着替え、まだ未使用で残っているキングゴキの外殻も盾にして行なう事にした。

「もし…このスクロールが武器強化のスクロールなのだとすれば、武器に反応するのも頷ける。そしてそんな反応を見せるのなら、実に親切設計だ。反応がなければ、なんのスクロールか解らなかったもんな…」

ひとりブツブツと言いながら段ボールの上にあった武器を除け、銀色に輝くバールを一本だけを残した。

もし凄い効果が付与されるならメイン武器に付与したいし、何かあっても被害はバール一本で抑えたい。

「すぅ~…はぁ~…、すぅ~…はぁ~…。では、いざ!こういうのは多分、スキルオーブを使う時と一緒で魔力を注いで念じてやればいい筈だ…。よし、さぁスクロールよッ!なんか凄い超絶パワーをこのバールに授けるがいいッ!!」

『きゅわわ~ぱぁああ~!』
「おおおおおぉ!!」

スクロールから溢れた光が銀色のバールに降り注ぐ。そしてバールが『なんかうっすらと光る銀色のバール』になった。

「むむむむッ!?こ、これは…」

そんなうっすらと光る銀色のバールからは、ちょっぴりとだが魔力が感じられる。そこで手に持って青白いダンジョンの天井に掲げてみる。

「すごいぞ…これは魔法のバールだッ!」

うむ、見た目はバールだが、うっすらと光っていて実にカッコイイ!オレはこの光る銀色のバールを『エクスカリバール』と名付けたのだった。
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