うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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メディテーション

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仁菜さん瀬来さんという強か美人女子大生の術中に嵌まり、高額な旅行計画書という名の見積書を送りつけらてしまったオレ。

これに対しいったいどうしたのかというと…、それを快諾した。

だってさ…。こちとらここ数年、まったく女っ気のないまま過ごしてきたでおじゃるよ?海にだって長いこと行ってないし。思いきりハシャいで出かける日なんて、夏と冬のオタク祭典くらいのモノだったんだから。

そんなオレに、『一泊二日!ドキッ!男はコォチだけやでぇ~♡伊豆海水浴旅行!』なんていうなんとも魅惑的な旅行計画書が送られてきたなら、それはもうゴーサインを出すしかないじゃない!

だが、かつてのオレではこうも簡単に決断できはしなかったろう。

しかしダンジョンで強くなり、ポリバケツにはまだまだたっぷりと魔石が詰まっている。可愛い瑠羽、そして色っぽい仁菜さんにボヨヨンな瀬来さん。そんな彼女たちと楽しい旅行に出かけられるのならば、30万40万なんて金は安いモノだ。

「…ッさん…ズッキーさん!」

(おっと、そうだ。オレは整体学校の生徒たちから、ズッキーのあだ名で呼ばれることになったんだっけ)

「ああ、加藤。どうした?」
「いや俺は佐藤です、加藤はあっち。ほら、つぎ。ズッキーさんの番ですよ」

「おっと、そうだったな。つい考え事をしていたよ」
「もう、授業中ですよ」

(いかんいかん。折角高い金を払って授業を受けているのだから、しっかり学んでおかないとな)

ここは整体学校の実技教室。それ故タオルの敷かれた施術ベッドが幾つも並んでいる。そしてそんなベッドを囲んで、生徒たちが互いに学んだ技術を施しあっているのだ。

「じゃあ今度はオレが施術される側か、先生役は佐藤だっけ?」
「いえ、ボク加藤です。もぉ、いいかげんボクらの顔も覚えてくださいよ~ズッキーさん」

ちなみにオレは他の生徒たちから、マッチョなズッキーさんというあだ名で呼ばれるようになった。江月という名が、エゲツなのかエヅキなのか迷うと言われたので好きに呼んでくれと言ったらズッキーというニックネームをもらったのだ。

「いやぁ、すまんすまん」

そしてどうも学生時代から、ひとの顔と名前が覚えられないんだよなぁ。そんな性分が知力が増した今も残ってしまったようだ

さて、オレの混ぜてもらったグループは、加藤と佐藤という似たような背格好の今時な若者ふたりに、武藤というブルドッグ顔のおっさん。そして紅一点の後藤ちゃんという背の低い女の子というメンツ。これでもしオレの名が内藤とか遠藤とかだったら、藤揃いパーフェクトだったのに少し残念だ。

「はい、力を抜いて楽にしてくださ~い…(コキャ)」

頭と首に手を当てた加藤が首を捻って頸椎の矯正を行なう。

「うむ、入った」
「では反対いきまぁ~す…(コキャ)」

「これもOKだ」
「はい、ありがとうございましたぁ~」

で、オレの実演はなし。それはまだ勉強を始めたばかりだから、この実技授業でオレのやることはみんなの実験台になることと、他の生徒たちの施術を見て学ぶこと。人の顔と名前は覚えられないが、上昇した能力を使えばそれら施術もすんなりと頭に入ってくる。

うむ、早く整体師になるためにも、しっかりと学んでいこう。


………。


瀬来さんを朝夕バイト先まで送迎し、銭湯に連れていき飯を食わせる。

バイクに乗るのにも慣れた瀬来さんのぽよんぽよんを背に感じながらバイクを走らせていると、いったい瑠羽と付き合っているんだか瀬来さんと付き合っているんだか、自分でもよく解らなくなってくる。とはいえ瑠羽のうちにはバイクでも1時間半はかかるので、夕方からちょっと会いに行くというのもすこし難しい。

「ただいま~。じゃ、ちょっとだけやっちゃいますか」

で、瀬来さんはこう見えて、意外にも毎日かかさず1時間はノートを開いて勉強をしている。オレはもっと快楽思考で遊んでばかりなのだろうと思っていたので、思わぬ一面を知ったという感じ。

しかしそんな瀬来さんのお勉強タイムが、オレにとっては少々困る時間だった。

瀬来さんが真面目に勉強をしているので、テレビをつける訳にもいかない。さらに師匠であるオレがその間ゴロゴロと通信端末を弄っているだけというのも、なんとも恰好がつかないからだ。

さりとてその間「散歩に行ってくる」などと言って外に出るのも、何か変。別に散歩に行きたいわけでもないし、避けている訳ではないが瀬来さんもそうまでされると、オレに気を使ってしまうだろう。

で、そんなこんなで色々と考えた結果。オレは瀬来さんが勉強をしている間、瞑想をすることにした。

瞑想、そうメディテーションだ。漫画やアニメでも、瞑想するヤツは大抵強キャラ。弟子である瀬来さんが勉学に勤しむ間は、オレは瞑想してやり過ごすという訳だ。

これには二つの利点がある。

まず一つは、瞑想することにより精神を静め体内の気の流れを良くすること。精神のエナジーは、気力である。人の身体は魔力を魔力として留めておくことが難しいらしく、通常ひとの身体に存在する精神エナジーは、気力の形を取っている。

これを瞑想により気の流れを高め、練り、魔力へと変換するという一連の流れをスキルを発動させない状態で繰り返し練習していく。これによりスキルの発動が容易になったり、一度に多くの魔力を発生させ短時間で大技の発動が出来るようになったりと、きっとさまざまな恩恵があるはず。

そしてもう一つは、オレのリビドーを抑えるため。

ひとつ屋根の下、可愛くてお胸の大きな女の子とふたりきり。視覚的にも嗅覚的にもはげしく刺激され、オレはそんなリビドーを発散できずに持て余していた。

さらに瀬来さんは初めて会った時よりも、より魅力的になっている。レベルアップの恩恵もそうだが、温泉の効果も抜群だ。実は瀬来さんを連れて通っている銭湯も温泉。都内にも探せば天然温泉の銭湯というのがいくつもある。

そんな銭湯に通った結果、瀬来さんはより『つるぷに肌のむっちり美人』にクラスアップしてしまった。以前にも記したとおり瀬来さんはオレ好みのルックス。そこに『つるぷに肌のむっちり美人』というバフがかかり、オレはそんな彼女をバイクの後ろに乗せてぽよんぽよんな温もりを背に感じながら帰宅するのだ。

自宅に帰る頃には、すっかりヒート&ハードになってしまうのは言うまでもない。

だが、決して彼女に手を出すわけにはいかない。彼女は瑠羽の親友であり、そんなオレを信用して彼女はここにいるのだから。だからその信用をオレから裏切る訳にはいかないのだ。

故に「バイクの熱を冷ましてからカバーをかけるんだ。だから先に部屋あがってて」と、いつもほとぼりが冷めるの待って部屋に帰宅する。しかし、それでも収まりがつかないのが性欲というモノ。コレのせいで世界中数多の人間が道を誤ってきたのだから、その業は真にもって御しがたい。

そこで、瞑想だ。

そういった心の乱れを静め、無の境地に達し、全ての悩みから解脱する。

というわけで部屋に戻り寝間着に着替えると、オレはロフトの梯子を登りイヤホンを装着すると『天界に繋がりチャクラが全開になる聖なる周波数』というスピリチュアルなミュージックをかけ、胡坐で目を瞑る。

膝の上に手の平を上にして置き、天から降り注ぐという聖なるオーラを感じ取りながら瞑想。

(………)

うん、ここにはもう誰もいない。

在るのはただ無だけ…。


……。


「…ッ!師匠!…勉強おわったよ、もぉなにやってるの??」

ふと目を開けると、ロフトの梯子を登り上半身だけを見せた瀬来さんがいた。

そして瀬来さんを見た途端、梯子に押し潰された感じで『むにゅっ』と変形しているおっきなお胸に真っ先に目がいってしまった。

うむむ…。オレの解脱への道は、まだまだ遠いようだ。
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