うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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イカ焼きとホテル鳩月

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「師匠師匠ッ!いまの女の子ってだれッ!?」

戻ってきた瀬来さんが開口一番にオレに問うた。

「うん、ヤツはシャークだ」

そこでオレは瀬来さんの問いに、簡潔に答えた。

「『うん、ヤツはシャークだ…(キリッ)』じゃないわよ!どう見たってカワイイ女の子だったでしょ!ルウ!師匠はすっごい浮気性かもしれないよ!どうするッ!?」
「うぅ…うぅ~…!!」

ちょ!やめいっ!瀬来さんはオレと瑠羽の恋路を応援してるんだか邪魔してるんだかどっちなの??

「おい、嘘なんか言ってないぞ!彼女はダンジョンでサバイバルゲームをするサバゲサークル・トライデントのメンバーで、通称シャークだ。ダンジョンで知り合って、ここでもたまたま会ったんだよ!」
「師匠はあんな事言ってますけど…どう思いますかシズ?」

いつのまにかレポーター風味になった瀬来さんが、エアマイクを仁菜さんに向ける。

「う~ん…これは、セーフやぁ♪」
「おおっ!?」

さすが仁菜さん。よく解ってる!

「え、なんで…どうして…??」

しかし瀬来さんによって不安を煽られてしまった瑠羽が困惑しきってしまっている。うぅ、可哀そうに。

「それはやな…。コォチの持っているそのイカ焼きが証拠やッ!(ビシッ!)」
「「「おおっ!」」」

「そ、それは一体どういう事なんですか名探偵シズッチ!?」

あ…あれ?

「ふっふっふ…それはやなぁ。アツアツのイカ焼き持って女の子口説こうと思っても、まず間違いなくイカ臭くてムードぶち壊しやからやぁッ!!(ズビシッ!!)」

「うわぁ!さすが名探偵シズッチの名推理~ッ!!で、でも…師匠はイカ臭いアツアツのイカ焼き持って女の子を口説く変態かもしれませんよッ!!」

てオイッ!

「もぉ~~ッ!万智ちゃんも静ちゃんも、これ以上コーチをいじめないでよぉ~!」

あれ…?ああ、やっぱりオレ弄られてたのか。

「…で、なんでイカ焼きなんて持ってるの師匠?」
「いや、さっきまでいたシャークに貰ったんだよ。頼んでないけど、知り合いだったからサービスしてくれたんじゃないかな?」

「へぇ…。でもそのイカ焼き、焼き立てで美味しそうやねェ。ひと口貰ろうてもええ?」
「ああ、はいどうぞ」

「(ぱく…)はふはふ…ああ、おいひぃわぁ…!」
「え~ッ!なら私も欲しいッ!あ~ンっ…(まくまく…)んぅ!おいひぃ!」



オレの手に持つイカ焼きに嚙り付く仁菜さんと瀬来さん…。仁菜さんがエンペラを食べ、瀬来さんが残りのエンペラを平らげた。アイスキャンディを食べた後で渡されて困っていたが、まさかこのイカ焼きもオレではなく美人女子大生に食されるとは思ってもみなかっただろう。

「コーチ、わたしもひと口欲しいです…」
「ああ、瑠羽もどうぞ。熱いかもしれないから気を付けてね」

「はむっ!…ほふふ!あ…あっつい!」

ああ、やっぱりまだ胴体の方は熱かったか。どれ、オレもひと口。

「(がぶりっ)…むふむふっ!んぅっ!あっついな!…でも美味いッ!」

「「んっふふ!」」
『『むぐむぐ…』』

浜辺の斜光のなか四人でなかよく食べるは、一杯のかけそばならぬ一杯のイカ焼き。それを笑顔で順に回し食べ。なんだか彼女達との距離が、より一層縮まったようなひとときだった。


………。


午後7時、ホテル鳩月すっぽんの間。

「ただいまぁ♪あぁ~おなか空いたぁ~!」
「ハァ…、いい湯やったねぇ♪」
「コーチ、おまたせしましたぁ~♪」



お、湯上り美人が戻って参りましたな。

海水浴場からホテル鳩月に着いたのは午後5時くらい。海水浴場からホテルまでは仁菜さんが運転をしてくれた。なので僅かな時間だったけど、オレは後部座席にて隣には瑠羽。前には仁菜さんと瀬来さんという王様気分を味わえた。

ホテル鳩月は山というほど高くはないが、街から少し外れた高い位置にある5階建てのホテル。看板も昭和の香り漂うネオン管だ。仁菜さん達のことだからもっとゴッツイ高級旅館みたいな所を予約されたかと思ったけど、それなりにオレの懐具合に配慮してくれたようだ。

で、ホテル鳩月にも勿論温泉が引かれていて、本州一と言われる湧出量のかけ流しを堪能した。

そして、これがもっとも重要な事なのだが…なんと!オレと女子大生三人との部屋はおんなじなのですッ!ドンドン!パフパフゥ~!!

四人家族向けの部屋にオレと瑠羽と仁菜さんと瀬来さんが、仲良く布団を並べて眠るのだ。くぅ~~ッ!!これはストーカー問題に悩む瀬来さんを自宅に保護したことが高く評価された模様。

『コンコンコン』
「失礼いたします。ご夕飯の準備をいたしますねぇ~」
「あ、はーい、おねがいしま~す」

そしてオレ達が戻るのを待っていたかのようにして夕飯の膳が運び込まれてくる。そう、今回はお部屋で夕飯を頂くスタイル。こうして仲居さんが料理を部屋に運び込んでくれるのだ。

「おぉ~、これは豪勢だなぁ♪」
「すご~い!」

それぞれの膳でまず目をひくのは、まっぷたつになったグリルド伊勢海老。

これが実に良い匂いを漂わせている。それに汁物に酢の物に、サイコロステーキまでもが付いている。おお、これは実に美味そうだ。さらにそれとは別に、テーブルの上にはデデンと皆でいただく立派な船盛りが係留された。

「では、何かございましたらインターホンでお知らせください」
「あ、どうもありがとうございます(スッ)」

大人なオレは空かさず仲居さんにチップを渡すのも忘れない。あと夕飯後には布団も敷きに来るはずだから、その弾も用意しておかねば。

「さ、コォチどうぞ」
「おお、これはありがとう…」

瑠羽はお酒は飲まないが、他の三人が飲むので瓶ビールを仁菜さんがオレに注いでくれる。ちょっとちょっと瀬来さん。目の前の刺盛りに夢中のようだけど、ここは弟子が師匠にお酌するところじゃないの??

「ほな、乾杯の音頭はコォチにとってもらおうか♪」
「「「は~い♪」」」

え、そんなの考えてなかったぞ。うむむ…う~ん…よし。

「え~、ゴホン。では、みんなの健康と幸せを願って…カンパーイ!」
「「「カンパーイ!」」」

ビールを空けると歓声が沸く。みんな笑顔だ。そして湯上りの浴衣姿が眩し過ぎる。

「はーい師匠!ここまで運転お疲れ様でしたぁ♪(トットット…)」

そうコレ!こういうのずっと待ってたよ瀬来さん!

「どれもとっても美味しそ~♪コーチはどれから食べますか?」

うん、瑠羽はいっしょが嬉しいが発動中かな。食べる順番をオレと同じにしたいようだ。 

「うむむ、どれも美味そうだな。瑠羽は何から食べたい?」
「えっと…えっと!…じゃあお吸い物から!」

碗の蓋をとるとそこにはハマグリのお吸い物。ふんわりとした優しい香りに、キュッと胃が刺激される。

「はぁ~これは良い香りだね。それじゃ、いくよ…」
「は、はいッ!」

「「ずずぅ~…ほぅ…」」

「瑠羽ちゃん良かったねぇ。コォチとお揃いやん♪」
「ほんと、またまた見せつけちゃってぇ♪」
「え…え…そんな…(テレテレ)」

ほんと、良い友達だなぁ。瑠羽と仁菜さんと瀬来さん。彼女たちがこの先も、ずっと笑顔でいられるといいなぁ。
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