うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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【図工】

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時は、二十一世紀初頭。

秘密のダンジョンに潜り地下10層で遭遇したボス級モンスター『蠅の女王(仮称)』と戦闘状態に陥った江月鳴人(えげつ なきひと)は、その戦闘により負傷するが辛くも脱出。しかしその傷が原因で、左足を失ってしまった。

だが彼は持ち前の偏屈さと陰キャっぷりを存分に発揮し、ダンジョン前室に籠ると自身の義足を作るために黙々と作業に没頭するのだった。


          
レベル        38
種族:       人間
職業:       教師

能力値:
筋力         245      
体力         250      
知力         246      
精神力        271      
敏捷性        248      
運          166      
やるせなさ      356      

加護:
【塩の加護】

技能:
【強酸】2・【俊敏】・【病耐性】6・【簒奪】・【粘液】5・【空間】4・【強運】1.4・【足捌】・【瞑想】・【塩】5・【図工】

称号:
【蟲王】・【ソルトメイト】・【しょっぱい男】


「(ぽわわわわわわ…)ふふふ…この【図工】というスキルはいいな。モノ造りが楽しくなって、とても集中ができるぞ…」

そんなオレは義足を作っていて、なんだか新たなスキルを手に入れていた。

そのスキルの名は【図工】。自分用の義足の設計図を書いたりキングゴキの外殻を魔力で加工していたら、なんか自己習得できていたのだ。

だが【図工】の効果はそれだけではない。

図工というだけあって画を描くのも上手くなるようだし、能力値の器用さにもプラス補正がかかるようだ。ま、あいかわらずオレの『器用さ』はフラリとどこかに行って行方知れずのままなのだが。ホント、おまえはフーテンかと言いたい。

「よしっ…コレで完成と。しかしあとは傷が完治しないと、装着してのテストはできないな」

オレ専用の義足。

自分でいうのもなんだが、スキル【図工】の効果もあってかなり良い仕上がりだ。内部にはスポーツ義足に似せたフレームも入れ、カマドウマの腱も利用し足首には前後左右にテンションが掛かるようにしてある。

足の裏を地面につければその角度に合わせて曲がるが、足を地面から離せば自然とニュートラルな状態に戻る。つまりなんの力も加えなくても、歩く程度ならこの義足だけで充分というわけだ。

無論それだけではパワーが不足するので、使用時はスライム状の粘液を内部に注入して魔力で操作を行おうと考えている。

「(クイッ…クイッ…クイッ)うん、テストが待ち遠しいな。ではその間は、思いついたギミックでも作ってみるとするか…(がさごそ…)」

思いついたギミック。それは『増強アーム計画』。

この先もダンジョンにより深く潜ることを考えれば、今後も自身の身体を危険に晒すことになるだろう。そうしたら、また腕や足を失うかもしれない。

でもそんな時、安心して使い捨てに出来る仮の腕があったならどうだろうか。『それなら自身の生身の腕を犠牲にせずに済むではないか』という素晴しいコンセプトの基、オレは蟲王スーツに強化アタッチメントを装着することを思いついたのだ。

イメージとしては、細く長い手長海老のハサミのような腕。

例えば強くしたいと腕を太く逞しく作っても、支えるのは生身の本体だ。なので重すぎては身体がそれに振り回されてしまう。そこで細く長く、だ。そして中身はスライム状粘液で操作するので、たいして難しい操作はできないから細かな構造の手はいらない。それで精々ハサミで充分という訳。その代わりにリーチは長くして、頑丈で壊れ難く作るつもり。

ま、雰囲気としてはバズーカなんかを取ってくれる〇ンドロビウムについてた無骨なメカアームを想像して貰えばいいだろう。

そういえば〇ンドロビウムって、なんであんな兵装で近接戦闘を想定した巨大ビームサーベルなんて持ってたんだか?爆発物である大量のミサイルを山のように背負った状態で近接戦をするとか、常軌を逸しているとしか思えない。まぁ『画的にカッコイイからビームサーベルもつけちゃおう!』って話なんだろうけど。


で、そんな事を考えつつコツコツと増強アームを作っていたら、サクッとできました。さすが、スキル【図工】があると、作業も捗る。

『にゅ~ん!うにョ~ん!』
「おお、これはオモシロイように動くぞ!」

蟲王スーツのボディだけを装着し、背中に増強アームを取り付けて魔力で操作してみたが、作動状態は良好。

増強アームは蟲王スーツの背部に取り付けラックを設け、そこに装着する仕組み。収納状態での増強アームは、ただ何本かのパイプを背中に背負っているようにも見える。なにせ肩甲骨の間から、下に向けまず肘が伸び、上に折り返してまた下に、そしてまた下でも折り返してと、ひじ関節が2つもある。

先端の部分には、手長海老のように細いハサミが付いている。

これは閉じたまま突き刺せば槍として使えるし、開けば簡単なモノなら掴み取れる。カニのような大きなハサミにしなかったのは、先端が重いと慣性が掛かり過ぎて操作が難しくなるし、スライム状の粘液ではそこまで強く挟む力を発生させられなかったからだ。

『にゅ~ん!うにョ~ん…!』

だから、これでいい。

もし、今度腕を失いそうな時があれば、その時はこの増強アームを使えばいいのだから。


……。


「ちゅッ…ちゅッ…ちゅッ…」

糧品瑠羽は林檎を手に、今日もキスの練習をしていた。

あまりにしつこく万智にキスをせがむものだから、万智から『何事も自主練から入るモノでしょ!剣道だって野球だって、みんな一生懸命に素振りしているでしょ!?』と言われ、『それも尤もだ』と納得した瑠羽は、万智から渡された林檎にひたすらキスを続けていたのだった。

厄介駄々っ子と化した瑠羽ではあったが、根は素直で真面目な性格なのだ。

(待っててくださいねコーチ!よし、次はコレ…)
「(あむ…ぱく…もごもご…もごもご)」

今度はさくらんぼのヘタに見立てた太めのナイロン紐を口に含むと、それを『もごもご』と舌で転がしガンバって結ぼうとする。でも、なかなかうまくいかない…。舌の根元が攣りそうになり、どんどんと頬が痛くなってくる。

(でもガマン…!コーチの…、コーチとの愛の為だもん!)
「んんぅ…!んんぅ…!(もごもご…)」

涙目になりながら口をもごもごさせる瑠羽。そんな瑠羽に『買い物に行ってくるから』と声を掛けて部屋を出た万智は、たまった愚痴をこぼす為に仁菜静絵に電話をかけた。

『プルルル…ッ。なんや万智、どないしたん?』
「ああシズ、今すこし話しても大丈夫??」

静絵とは大学でも顔を合わせているが、いつも万智のすぐそばに瑠羽もいるので以前の失敗を踏まえ、万智は電話で近況を伝え静絵に相談をした。

『はぁ~…今そないな事になっとるんか。そりゃまたナンギやなぁ~』
「もぉ~シズ、そんな他人事みたいに言わないでよぉ~。シズだって師匠には借りがあるでしょ??」

万智は静絵からの助力を得るために、江月を引き合いに出した。

『まぁ色々とご馳走になって、こないだは家までお見舞いにきてもろうたしなぁ~』
「でしょ!なわけで力になってよぉ~…」

『ん~…、でもそれはウチには無理やわ…』
「エッ、なんで…ッ!?」

恋愛については自分よりも、一段も二段も上と一目置いている静絵に無理と言われ、万智は驚愕した。

『そりゃ…コーチと瑠羽ちゃんとの恋愛が、オママゴトやから…。もっと大人の恋愛やったら、ウチもアドバイス出来るんやけどなぁ…』
「ああ…それは…」

たしかに瑠羽は恋人の手を握るのすら恥ずかしがっているのに、ずっとキスがどうこうと騒いでいる。そんなレベルで混乱している瑠羽に恋愛巧者の静絵のアドバイスが役に立つとは、万智も到底思えなかった。

言われてみればもっともだ。

「えぇ~…。そしたらシズは、どうしたらいいと思う??」
『んん~そやな~…、もう当人同士を会わせて、お互いに好きってことを、再確認させるのが一番手っ取り早いんとちゃう?』

「ああ…、シズもやっぱりそう思うか」
『なんや?万智もそう思っとたんなら、そうすればええやん?』

「ん~…それなんだけどねェ…」

万智もそう思い放置していた江月のメッセージに返事を送ってみたのだが、今度はなぜか江月から電話もメッセージも返事が来なくなってしまったのだ。

『はぁ、そら困ったなぁ』
「でしょ~…」

『解った。ウチもコォチに連絡してみるから、万智も諦めんとコォチに連絡とってみぃ』
「うん…頼むねシズ。それじゃあ(プッ)」

「ハァ~…」

静絵との電話を切り、すっかり日の暮れるのの早くなった夕空を見上げ、万智はまた大きなため息をつくのだった。
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