うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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夕闇

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私の名はサンドラ、流離のバンパイアハンターよ。


なんてな。

昔ちょっとプレイしていたネトゲで、女性キャラがとても魅力的だった。なのでそのキャラを選択しお試しプレイしていたら、なんだかギルドに誘われた事があった。で、そのギルドに女と間違われたまま入ると、男連中にゲームとは関係のないプライベートなことまでけっこうアレコレと訊かれた。

なので逆に、その時は中身が男だとは一切明かさずネカマムーブで乗り切ってやった。そんなオレからすれば、これくらいのロールプレイは朝飯前なのだ。

ま、そんなオレは実際に女になった今でも、女心は一切解らんのだけど。

と、そんな感じでふと思い出したのだが、何かの弾みで『ネトゲが縁で結婚しました』な~んて噂が一度ネットで広がると、一気に『俺も俺も!』と便乗するような行動をとる者の、実に多かったことか。まぁそういう行動を取らざるを得ないくらい出会いが乏しいというのは、解るのだが。

でもホント、あ~ゆうのはちょいと宜しくないと思うよ。

というのも相手がどんな存在なのかなんて、ネット上ではいくらでも粉飾が可能だから。相手がいくら金持ちイケメンや超絶可愛い女の子だと自称したとしても、その確認のとりようはない。ねつ造した画像でもアップされれば、それで簡単に信じてしまうかもしれない。

それで『あなたにだけココだけの話』と、怪しげな投資話を持ちかけられたりするのだ。つまり、ネットでは一切相手の実像は映り得ず、虚像ばかりを見せられることになる。

オレが見てきた限りでも、ネット上での大法螺や煽りは日常茶飯事。まぁ煽りは関係ないか。でもゲームを楽しむような低年齢層が主流のネトゲでは、プレイしているとノーマナーの縮図を見る様。

だから散々大口叩いてたのが、実は中学生や小学生でしたなんて話もよくあること。

だからチャットなんかでホントに気の合い仲良くなっても、他のゲームに誘って遊んだりするくらいに留めておいた方が身の為だと思う。

それは、『ネトゲが縁で恋人ができました』なんて噂がある以上に、『ネット上の縁で知り合った人と直接会ったら、とんでもない事になりました』という事件の方が圧倒的に多いに違いないから。

それは昨今のニュースとなった事件を見ていれば、どういう意味かは解ってもらえるだろう。

ま、ともあれネトゲにしろなんにしろ、もし直接誰かと会うのなら余程の覚悟を持って臨んでほしい。

そもそも論として、当人がいうほどにイイ男イイ女であるならば、まず周りが放っておかないはず。それでも既存のコミュニティであぶれているようなヤツが、そういった場に出会いを求めアレコレ画策している可能性大だから。

故に待ち合わせ場所に着いたら『中身が男のアマゾネスマッチョが待っていた』なんてことだって、起こりうるかもしれない。

とはいえオレもゲームは好きだし『ネトゲは悪の温床だ!』などとディスるつもりは毛頭ない。ま、老婆心と思って聞き流してくれたまえ。

戦いながら、ふと先日オレを本物の女性と勘違いしてナンパしようとしていたパキスタン人のジェロームや、腰をヘコヘコしながら直立二足歩行しているコウモリ怪人を視ていたら、なんだかそんな風に思った次第だ。


           
レベル   40       
種族:人間
職業:教師

能力値
筋力:   500      
体力:   500      
知力:   500      
精神力:  500       
敏捷性:  500       
運:    486       
やるせなさ:656      

加護:
【塩の加護】

技能:
【強酸】2・【俊敏】・【病耐性】7・【簒奪】・【粘液】7・【空間】6・【強運】1.4・【足捌】・【瞑想】・【塩】5・【図工】・【蛆】・【女】・【格闘】6・【麻痺】4・【跳躍】9・【頑健】8・【魅了】4

称号:
【蟲王】・【ソルトメイト】・【しょっぱい男】・【蟲女王】・【女殺し】

で、そんなレッサーバンパイアをサーチ&デストロイして回った結果。地下11層のマッピングもすっかり終え、【魅了】も4となった。

なのでそろそろ、地下12層へと下りてみようと思う。


……。


『ぴんぽ~ん』
「(コンコンコン!)師匠~ッ!江月さぁ~ん!モォ…今日もいないのぉ~??」

夕闇の迫る中。今日も万智と瑠羽のふたりは、全く連絡のつかなくなった江月のアパートを足しげく訪ねていた。

『ぴんぽんぴんぽんぴんぽ~ん』


「や、やめなよ万智ちゃん…」
「えぇ~、だってこれでもう5回も空振りだよ?」

「えっと…きっと旅行とか、帰省してるんじゃないかな…」
「どうだろ?師匠は『何処に行くのにも基本バイクで行く』って言ってたから、バイクが残ってるのっておかしいんだよね…」

「「………」」

傾いた陽に長く伸びた影、ふたりに気不味い沈黙がおりる。

いつも『きっと会えるよ!だから今日こそは』と、励まし合いながらここまで来た。なのに今日もまったく江月の顔を見られず帰ることになると思うと、ふたりの表情は暗くなる。

と、そこに万智の通信端末が着信を知らせる音楽を奏でだした。

万智と瑠羽のふたりはその音にハッと顔を見合わせ、急いで通信端末を取り出した。が、それは江月からの着信ではなく、仁菜静絵からのモノであった。

「(プッ)はい、私」
『どやぁ?今日はコォチと会えたん?』

「ううん、今日も不発…」
『そかぁ、そら残念やったなぁ~』

会話の内容で相手が江月ではないと解り、瑠羽はまた萎れるように顔を俯かせる。そんな瑠羽を可哀そうに思いながらもどうする事も出来ずに、万智は仁菜との通話を続けた。

「で…、シズは何の用?」
『ううん、特に用はないんよ。今日もふたりでコォチに会いに行くいうてたやろ。ウチもコォチに連絡取ってみたけど返事がなかったから、ふたりは会えたんかなぁ~?って電話したん』

「全然いない…。バイクはあるんだけど、部屋も暗いしメーターも回ってない。ハァ、ホントどこ行っちゃったのよ、あのバカ師匠はッ!」
『万智ぃ、それは怒っても仕方ないでぇ。それに先に返事かえさんようにしたの、万智と瑠羽ちゃんの方なんやろ…?』

「ウッ…そ、それはまぁ、そうだけど…」
『ならそないカリカリせんと、また日を改めたらええやろ』

「でもさぁ。ルウがまたしょぼくれちゃってさ…」

電話をしながら歩いて瑠羽と距離を取っていた万智が振り返ると、瑠羽はちいさくしゃがみ込んで、自分の膝を机にちいさな手帳にまた江月への手紙を懸命に書いている。

そんな姿を見ていると、万智もまた居た堪れない気持ちになってくる。

『こないな時は、焦っても仕方ないんよ。今度はウチも付き合うから。…万智、ちょっと瑠羽ちゃんに代わって』
「うん、解った」

「シズがルウと話したいって。…ルウ?」
「エッ…!?あ…うん、ごめんね」

書き物に夢中になっていた瑠羽が、驚いた様子で顔を上げ通話を代わった。

「もしもし…静ちゃん?…ウン、…うん、…そうだよね。うん、ありがとう静ちゃん」

万智がしばらく電話をしている瑠羽を見ていると、落ち込んでいた表情が和らいでいく。どうやら静絵が、瑠羽になにか言い含めてくれたようた。

「万智ちゃん、今度は静ちゃんもいっしょに来てくれるって!」
「良かったね、でも…それだけ?」

「え…、うん、あのね…。『またいっしょに温泉に行ったり、みんなで楽しく旅行に行ける日が来るから、あきらめないで』って…」

(ああ、そうか…。そういう慰めかたもあったんだ…)

自分が慰める時よりも覿面に表情の和らいだ瑠羽。そんな瑠羽を見て、万智は静絵に女の器の差を見せつけられたような気がして、軽く凹んだ。

「じゃ今日はもう帰ろうか。で、帰ってお料理の特訓でもする?師匠に美味しい料理をご馳走して、喜んでもらうんでしょ?」
「うん…、また教えて万智ちゃん」

「ハイハイ、それじゃあビシバシ鍛えるからねッ!」

しかし万智は持ち前の明るさで気持ちを前向きに変えると、何を作ろうかとおしゃべりしながらふたりは江月の住むアパートを後にするのだった。
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