うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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突入!スーパー銭湯

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ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

オレ達は数々の艱難辛苦を乗り越え、遂に辿り着いた。夢の温泉郷、スーパー銭湯へ。だが油断はできない。ここからが本当の勝負だ。

「いくぞ、みんな!」
「「「おう!」」」

瑠羽、瀬来さん、仁菜さん。

振り返って声を掛けると、心強い仲間達はその呼びかけに真っ直ぐな瞳で強く頷き応えてくれる。心を通い合わせた、素晴しい仲間達だ。


ドドドドドドドドドド…

まず第一の関門は、下駄箱。このスーパー銭湯の下駄箱には、靴の重量が軽いと絶対に鍵が掛からないという恐ろしい罠が仕組まれている。くそう、なんて悪辣なんだ。

『かちゃり…!』

だがトラップの構造を理解していたオレ達に、その罠は通用しない。全員が無傷で、下駄箱に靴を納めることに成功した。


ドドドドドドドドドド…

第二の関門は、受付カウンター。ここでは受付の人間が、常にその鋭い監視の目を光らせている。

「いらっしゃいませ~」
「大人四人や、よろしゅう」
「四名ですね。承りまぁす」

そこでここは、パーティーの中でもっとも対人交渉能力に優れた仁菜さんに前に出てもらう。ふふふ…彼女にかかれば、きっとどんな相手でもNOとは言えずについYESと言ってしまうことだろう。

「はいコォチ、うまいことパスしたでぇ」
「ふぅ~ッ、ありがとう。良くやってくれた。瑠羽…、オレはまだ視られているか?」
「(ちらっ…)いえ、受付の人はもう次のお客さんの相手をしてます」

基本目立つオレは、受付の人にも視線を注がれていた。そんな時、目立たずにいつも自身の気配を殺すよう身を縮こませている瑠羽は、斥候として優れた才能を発揮してくれる。うん、実に頼もしい。

「じゃあ二時間後にね、江月さん。もしダメだった時は外に足湯もあるし。ま、マッサージにでも行ってゆっくりしててよ。悲しくてもまた私が慰めてあげるから、めげないでね」

そして瀬来さん。彼女はこのパーティーのムードメーカー。オレがミッションに失敗した時のことも考え、優しいフォローを入れてくれる。ありがたいことだ。悲しくなったら、また彼女のむちむちぽよんぽよんのお胸に甘えさせてもらおう。

「じゃあここで、一旦お別れですね…」
「気ぃつけてなぁ」
「ファイトぉ!」

「ああ、またあとで…!(きりっ)」

オレは彼女達から向けられる温かな眼差しに見送られ、決意を籠めて男湯へと向かった。


ドドドドドドドドドド…

「うわっ…!え…!?」
「「「ざわ…ざわ…どよどよ…」」」

暖簾を潜り、男湯の脱衣場に突入。

と、オレと視線の合った男性が驚いた様子で道を空ける。それもまぁ無理はない。なにせアマゾネスマッチョにしか見えないオレが、突如として男湯に入って来たのだから。

だが躊躇っている暇はない。男湯に女が乱入してきたなどと店員に通報されれば、すぐに面倒なことになってしまう。

『ザッザッザッ…がちゃ、…ばさっ!!』

そこで一直線に空いているロッカーに向かうと、おもむろに服を脱ぐ。そう、ココからは時間が勝負!

「「「(おおおおッ…!!)」」」

上を脱いで鍛えられた上半身とバレーボールみたい爆乳が露わになると、オレを視ていた男性客達からは喜びに似たどよめきの声が漏れた。

「「「(おおぉお?う、うぅむ…!!)」」」

だが次いで下を脱ぎ鍛えられた下半身とぞうさんがコンニチワすると、オレを視ていた男性客達からは困惑と動揺の呻きが漏れた。

しかしそんな彼らの相手をしている場合ではない。一刻も早くオレを待つ広い浴槽と塩サウナに向わなければならないのだ。

(では、さらば。人のカラダをジロジロ視ている前に、ぜひ自身の緩みきった身体を鍛え直したまえ)

…。

『さばぁ~!ざざぁ~!』

浴場に入りおしゃれオブジェなかけ湯で身体を流す。よし、ここまで無事に辿りつけた。だがもう浴槽は目の前、というところで背後から声をかけられてしまった。

「え~と、すいませんお客さん。ああ、外国のひとかな?参ったなぁ、言葉通じるかなぁ…?」

声を掛けて来たの人物の声はまだ若い。恐らく浴場を見回り、サウナでお客さんを扇いだりするバイトくんだろう。しかし遂に、オレは店員に呼び止められてしまった。

(くっ、いま一歩というところで…)

とはいえ呼び止められてしまっては仕方ない。やむなく…振り返る。

「えぇ…ッ!?」

すると振り返ったオレの姿を視て、驚愕し慄いてみせるバイトくん。

「ア…アァァ…、ア……アァ…ァ…ッ!?」

その様子はまるで、圧倒的な力の差を見せつけられたピッコ〇みたいだ。そんな驚きにあんぐりと口を空けた彼の視線が、オレの顔と、胸と、股間を何度も行き来する。

「なにか…?」

だが、オレはなにもやましいことはしていない。

だたちょっと顔だちと声が女性なだけで、胸がバレーボールみたいなだけだ。そして男の子がついてるのから、男湯に入った。だからこれでいいのだ。

もしなにか言われたら『胸はトレーニングをしていて、重いモノに挟んでしまったと言おう』等と苦しい言い訳を考えていると、バイトくんはおもむろに手にしていた赤いバスタオルを差し出した。

「と、とにかくコレで隠しておいてくださいッ!(バッ!)」

そしてそれだけ言うと、赤い顔で逃げるようにして去って行ってしまった。

「これは…?」

手渡されたのは赤いバスタオル。

これはサウナでサービスタイムになると、バイトくんたちがサウナに入っているお客さんを扇いで熱風を浴びせかける為に使うモノ。

そのサービスのことを熱風ロウリュウと、このスーパー銭湯では呼んでいる。フィンランド語では『löyly(ロウリュ)』と書き、蒸気という意味だ。しかしサウナの盛んなフィンランドだが、実はこのタオルで扇ぐスタイルは『アウフグース』と言って、ドイツから発祥し広まったモノらしい。

「うむ、ともかくバイトくんが渡してくれたこのバスタオル…、ありがたく使わせてもらおう」
『すちゃ』

こうしてオレは、スーパー銭湯の若いバイトくんから渡された赤いバスタオルを装備した。

…。

「ふぅ~~~ッ、いい湯だぁ~~~っ」

浴槽のふちにもたれ、温かな温泉を堪能する。バイトくんから渡された赤いバスタオルを装備したおかげで爆乳が隠れ、オレの事をチラ見してくる視線もだいぶ減ってくれた。

それでもまだ若いのから『おいアレ見ろよ』『すげぇ!』なんて声が聞こえてくるが、まぁ若いのは仕方ないだろう。自分の感情を抑える術をまだ持たないのだから。

それにしても、バイトくんの神対応のおかげで助かった。

スーパー銭湯のバスタオルなのでソレが湯に浸かっていても誰も注意をしてきたりはしない。まぁもしそれを言ってきたヤツがいたならば『おまえはそんなにオレのおっぱいが視たいのか』と言い返してやるつもりではある。ただまぁそもそも、マッチョなオレにそれを言う度胸のあるヤツはいなさそうだ。

ともあれあのバイトくんには世話になった。ここはチップでも奮発して渡してやりたいところだが、今は生憎と裸で持ち合わせがない。まぁ顔は覚えたから、今度でいいか。

さて…、お次は塩サウナでゆっくりと瞑想でもするかな。
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