うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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謀略

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ひょんなことから日本は世界中から目をつけられてしまった。

それは日本の製薬大手、糖野儀製薬の開発に成功したという『世界初であろう傷の即治る回復薬』のせい。これの映像が公開され確かな効果を持った薬だと知れ渡ると、アメリカは「おい〇び太~、俺達シンユウだよなぁ~!」と、同盟関係を武器に回復薬の製造法を強引に要求してきたのだった。

その動きに警戒感を強めた中国は資材をせっせと運び込み、まだ住人の解放もしていない佐渡島の要塞化をこれまた強引に始めてしまう。

そしてアジアには知らん顔を決め込んでいた風見鶏なEUも、これまた日本に粉をかけてくる。

言い回しは各国様々だが、「世界が混乱している今こそうんたらかんたらで~」と、要するに「人道的見地から回復薬の製造法を著作権フリーにしろ!」と言ってきたのだ。

だが「それを言うおまえらが大航海時代にもっと人道的見地に立って行動していれば、今の世界はこんなに混乱してなかったんだよ!」と声を大にして言い返してやりたいところ。

さらに発展途上な各国は相変わらずのいつもの手。

「発展した暁には、この先も日本さんをヨイショさせていただきますから!」と、国債で借金漬けの日本にさらに金と支援を要求してくる。

しかしその金は物価高の日本でヒーヒー言いながらも懸命に働いている日本国民の血税。

それをなぜ始終問題を起こし何かある度にコロコロと代わる政治家どもがよその国でエエカッコする為に、無駄に使われねばならないのか。

それは今までの莫大な支援金で、たいした発展も遂げられていない実績からも明らかなはず。

そういう国は「ハイ、ボク頑張ります!」とアピールだけしていればまたお小遣いがもらえると思っているガキと同じではないか。

もし本当に「発展して先進国の仲間入りをしたい!」という本気の気概あるのなら、資源のまったくない島国日本が米国からゴミみたいなクズ鉄くらいしか輸入してもらえなかったなか必死で発展した明治大正時代のように、発展途上国だって充分独力でやりくりしての成長だって可能なハズ。

なにせ当時と比べれば、その何倍にもなる経済規模の世界市場がひろく開かれているのだから。

だから要するに、今なお世界には欲の皮の突っ張っらかった貪欲なオオカミかダニしかいないという結論になる。ほんと、こんな状況でどうなるんだろうね。高い報酬がもらえる地位に就く事だけが目的の政治家しかいないこんな国で。

ま、それでも開かれたパンドラの箱のなかに最後に残った希望の如く、信義には信義で応えてくれる国もあったりする。故にそういった国とは真摯に向き合い、しっかりと手を握り合って進んでゆくべきであろう。

…。

『ぴんぽ~ん♪』
「(どんどん!)お~い、きたぞジャング!」
「(がちゃ)おう、遅かったな。もうみんな揃ってるぞ」

「へへ、そうか?」

9時10分。シャークが到着したことでバイトをしてもらう全員が揃った。

「ん、部屋に誰もいないじゃん?もうみんなダンジョンか?」
「ああ、そうだ。おまえも体操服か水着は持ってきたか?」

「ここにあるぜ。でもダンジョンに潜る前に身体を鍛えるっていう成長伸び代理論は昨日聞いたけどさ。なんで水着まで必要なんだ??」
「ふふ、それはまぁダンジョンに潜れば解るさ。オレも準備していくから、先にダンジョンに入っててくれ」

…。

「へへ…冷蔵庫のダンジョンて、いったいどんな感じなんだろな…(とぷり)」

しかしそうしてダンジョンの真っ黒に頭を入れ覗きこんだ利賀るりの眼には、とんでもない光景が飛び込んできたのだった。

「ンっ…!くぅ~ハァ…ッ!」
「あ…ダメッ!!」
「うぅぅ~…!うぅぅぅ~~ッ!」

それはダンジョンの中で水着姿の女子大生3人が、手足を張りつけのように縛られたうえ、心底苦しそうに身悶えている光景だった。

「え…ッ!」

そのあまりの光景に利賀るりは言葉を失う。そして拷問部屋というおぞましい単語が脳裏をよぎった。

(ハッ、そうか!ジャングはここで万智たちをッ!クソッ…、それに飽き足らず今日はアタシにまで手を出すつもりか…ッ!!)

そう思い到ると、なぜジャングが今日に限って体操服や水着を持って来いなどといった事にも合点がいく。

きっとジャングは、自分までをもそのおぞましい欲望の毒牙に掛けようとしているのだ。するとシャークの全身には震えるほどに激しい怒りが込み上げてきた。信頼を裏切られた怒り。友人を傷つけられた怒りによって。


…。


「ジャング!てめェ万智たちに何をしたぁ!!」


「どわっ!?なんだおいッ!いま着替えてるとこだろうッ!」

着替えの為パンツを脱いでいたオレに、突然激高したシャークが襲いかかってきた。

さらにタイミング悪くちょうど片足立ちになっていた所だったので、タックルを喰らいバランスを崩すともろとも倒れ込んだ。

「バカッ!変態ッ!糞野郎!信じてたのにッ!!」
「ちょっ!まっ!おま…何を怒ってるんだ!」

暴れるシャークを取り押さえるのに両手首をしっかりと掴むが、シャークはそれでも諦めずに身体を捻って暴れる。

「アアッ!おじさんっ!賢治兄ぃ!ちくしょ~~ッ!!」
「ちょっと待てッ!賢治というのは親戚の警察官だよな?なんで今ソイツの名前が出てくる!?」

「うるさい糞野郎ッ!万智たちにあんな真似しておいてッ!!」
「あ、痛ッ!なんだよ、ちょっと今確認するから待てって!」

シャークをダンジョンの出入り口に放り込むと、すぐに自分も後に続いて潜ってみる。

「「キャアアアアッ!」」
「ちょっ!何しとるんよコォチ!?」

おっとしまった。そういえばパンツ履くのがまだだった…。

「みんな…すまないッ!くそぉ…!アタシじゃジャングの…ジャングの糞野郎を倒せなかった!(ぎりっ!)」

立ち上がったオレに左手首を掴まれたまま座り込むシャークが、観念したように床を叩き歯ぎしりを鳴らす。うむむ、これは…。

「………(じぃ~~ッ)」
「………(ぷいッ…)」
「………(ぷいッ…)」
「………(ぷいッ…)」

疑いの視線で順に美人女子大生たちの眼をしっかりと見つめてゆくと、なぜか3人が3人とも気マズそうにオレから目を逸らす。

なるほど、そういうことか。

「こら、イタズラが過ぎるぞ!シャークが本気にして、こんなに参ってるじゃないか!ちゃんと説明して誤解を解くのは3人の責任だからな!」

魔力を送って3人をトレーニング用の粘液ロープから解放すると、オレはその場を後にする。やれやれ、参ったな。それにフルチンでお説教とか、ちっとも様にならないじゃないか。

……。

30分後。

「「「ごめんなさ~い」」」
「ホントにひでぇよ!本気で…、本気で心配したんだからなッ!」

頭をさげる美人女子大生たちに、シャークはまだプンプン怒っている。まったくだ。ほんとに質の悪いイタズラを思いついてからに…。

朝から殊勝に「トレーニングしたいから粘液ロープを出して」なんて言うもんだから喜んで出してあげたのに、まさかこんなしょうもないイタズラをするためだったとは。圧倒的質量をともなった『バッカモーン!』を、大空に向け盛大に発射したい気分だよ。

「ジャングのことは、その…疑ってわるかったよ…」
「ずずぅ…」

そんなオレは白湯を飲んで憤った気分を落ち着かせていた。

「(ことり…)うむ。この場合、シャークは一番の被害者だからな。状況的にそう思ってしまったのもまぁ無理はないだろう。オレに対する暴言は忘れよう」
「……(ホッ)」

「そして3人には、後でキツイお灸を据えておくからそれで許してやってくれ。特に、イタズラ発案者の瀬来さんには、特大のお灸を用意しておく」
「えぇ~~ッ!」

「わかった、それで許す」

瀬来さんは最近ちょっとアレだよ。手にした力に増長しているのがみられるからね。ここらで一度、キツイお灸を据えねばならないだろう。ま、それはまた考えておくとして。

「さて、ではもう一度繰り返しになるがおさらいだ。努力をし続けた結果、将来訪れるであろう肉体への変化はまだ不確実な仮定の未来。だがしかしそれをダンジョンのモンスターを倒すことで奪い取った生命エナジーにより、強引にその伸び代を埋めてしまうというのが成長伸び代充填理論だ。これは頭に入ったね?」
「「「はい!」」」

「では次に、もう一点大事なポイントを教えよう。ダンジョンではそうして自身の成長の先取りを出来る訳だが、基本的に一度成長してしまえばやり直すという事は出来ないモノと考えられる。これは非常に重要だ。つまりは急いで雑な成長をするよりも、1レベルずつ丁寧に身体を鍛えて着実に成長したほうが、同じレベル10になった時には能力値に大きな差がついているという訳だからね」

オレはスキル【女】の影響か、瀬来さん達にエナジードレインをされてレベルダウンしてしまったが、これは通常では起こりない現象と考えていいはず。

「はい質問!」
「なんでしょう瀬来さん」

「師匠は私たちよりずっとレベルが高いと思うけど、やっぱりレベルが高くなるほど次のレベルになるまでの時間は長くなりますか?」
「もちろん長くなります。それはもうムッチャ長く。なので1レベルごとの成長を大切にしてください。オレも効率の良い鍛え方をみつける前に上げてしまったレベルを、ずっとやり直したいと思ってるくらいです」

「ほんなら逆に1レベルごと丁寧に身体を鍛えてレベルアップしていけば、めっちゃ強くなれるんやね~」
「ザッツイグザクトリィ!まさにその通りだよ仁菜さん。そしてキミたちには特待生という職業もある。これは間違いなくオレの持つ教師という職業と対を為す職業だろう。だからこれらにより、キミたちはより高い成長の可能性を秘めているといえる」

「はい!わたしはコーチの特待生です!」

うんうん、瑠羽はこんなにいい子なのにどうして瀬来さんのイタズラなんかに乗っちゃったのかな。

「はい!」
「はいシャークくん」

「さっきダンジョンでデカい虫の殻みたいなの視たんだけどさ…、もしかしてあんなのもこのダンジョンにいるのか??」

おうふ…、それって今質問する内容?シャークくんはオレの説明をちゃんと聞いててくれたかな?
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