うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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ダンジョン活動、略してダン活

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今は、とても大変な時代だ。

そしてそんな風に世の中が大変なことになっていると、マスゴミは偉そうに『やれ国はなにをやってるんだ!』とか、『こんな時に自衛隊は不甲斐ない!』なんていって叩いている。

だがこの日本では、自分らが高い金を手にする事だけが目的の詐欺師ばかり。そんな政府が、この国の舵取りをしているのだ。なのでその政府に対しなにやってんだと叩くのは、よく解る。

まぁそんな事を声高に唱えれば、オレの方が叩かれてしまうのだろう。が、一年を通じて政治家が問題を起こしたり逮捕されない年なんてのは一度たりとてないのだから、そこをまず考えてみて欲しい。

しかし、どこにあるかも解らない空間接続型ダンジョンを探して、汚れるのも厭わずモンスターがいるかもしれない危険なマンホールに潜ってくれている自衛官たち。それをテレビで叩くというのは、ちょっと頭がどうかしてるとしか思えない。

確かに力及ばず、佐渡島は中国軍に占拠されてしまった。

が、こんな大変な時にそんな不法な真似をしてきたのは中国であり、また自衛隊に交戦許可を下さなかったのは政府である。災害救助の出動が遅れたのだって、この大変な時に総理大臣が真っ先に死んで命令系統が麻痺したせいだ。これにはきっと、自衛隊のみなさんだってとても悔しい思いをされていたことだろう。

だから政府はともかく、不満や怒りの矛先を自衛隊に向けるというのは、ちょっと筋が違うと思うのだ。

しかしてメディアというのは暗いニュースや明るいニュースを織り交ぜ、悲喜交々をみせることで視聴者の耳目を集めるモノ。

で、時代はダンジョンであり、モンスター。

もはや『はぐれ猿が街中に現れた』とか、『逃げたインコが大繁殖して騒音とフン害が酷い』などといった問題などとは訳が違う。猪や熊が出た?うん、そんなものではもう誰も驚かない。

で、そんなマスゴミが『コレは良い!』と眼をつけたのが、街角のヒーロー。

ダンジョンスタンピードの最中、以前ダンジョンが試験的に解放されていた際に潜った経験のあるガソリンスタンドの店員が、モンスターから追われる女性を見事に助けたり。パーティーを組んでダンジョンに潜っていた方々が、この危機に立ち上がり自警団の如く街を守って大活躍したなんて話をインタビューしては、大いにもてはやしたのだ。

するとまた、『俺も俺も!』とそんなヒーローになることを夢見た一般人がこれまた碌な準備もせずに自分でみつけたダンジョンに潜り、大怪我をして救急車で運ばれるといった事件もまた数多く起きていた。

まぁ、それに関してはオレもうちの冷蔵庫ダンジョンに潜っている時点で、他人の事は言えないのだが。片足を失うという、大怪我もしたしな…。

ま、ともあれ、だ。


「いでよピクシーVッ!(きゅわわ~ぱぁあ!)」
「「「ぴぴぃ~!」」」

「わぁ~♪また別の子たちですねぇ♪」
「せやねぇ、今日はクィーンちゃんやないねぇ」

うん、現在オレはピクシー12名とピクシークィーン1名をカード化して支配下においているが、全員の性格をことこまかに把握するまでには至っていない。なので呼び出すときはついつい名前もつけ、性格もある程度わかっているピクシーVを呼んでしまうのだ。

「あれ…?この子達って、サンドラさんが連れてた子じゃないのか?」
「そうだが、厳密には違うぞ。オレがこの子達をアイツの応援に出してたんだ」

「そうだったのか…。あの、学校守ってくれて、ありがとう!!」
「ぴぴぃ?」

シャークはピクシー達に向け深々と頭を下げた。どうやら学校を守ってくれたピクシー達に、恩義を感じている様だ。

「ねぇ師匠、この子たちを出したってことは…」
「そうだ。ひとりにひとり、もしもの時の為にピクシーを護衛につける」

「わぁ!それなら別行動をとっても安心ですね♪」
「でもほんなら、この子達にもいっしょにスライムを狩ってもろたらええんちゃう?」

「うん、まぁそれもアリだとは思うが、それで早く終わってしまったらバイト代が稼げないだろ?それにピクシー達は強いけど、魔法で戦うから継戦能力はそれほど高くないんだ」
「へぇ~そうなんや。なんにでも一長一短あるもんやね」

「じゃあみんな、ペアを組みたいピクシーを選んでくれ」
「「「きゃ~ッ!!」」」

今時のイケてる女子大生にミリオタJK、それでも生で小妖精を見ればテンションはあがるらしく、わーきゃー言いながらピクシー達とコミュニケーションを試みている。

で…その結果。

「ルージュ!私たちがいちばんスライム倒そうね!」
「ぴぃ!」

瀬来さんはルージュとペアを組んだか。これはどっちも非常にイタズラ好きだから、それで馬が合ったのかもしれない。

「ウチはこの子とや、よろしゅうなアジュちゃん♪」
「ぴ…♪」

頭脳派の仁菜さんは、ピクシーのなかでは比較的クールなアジュールと組んだか。これはクールペアだな。

「アタシはこの子だ!よろしくなヴェール!」
「ぴぴ」

ふむ、シャークはヴェールとか。ヴェールは比較的おとなしい子のはずだが、シャークとの相性は悪くない様子。

「コーチ、わたしはこの子にしました♪とっても可愛いです♪」
「ぴ~♪」

瑠羽はローズとか。ふふ、これは甘えん坊ペアといった感じだな。

「ぴ~…(しょぼん…)」
「よしよし、ジョーヌはオレといっしょだ。オレ達はみんなを監督する仕事だから、責任重大だぞ。しっかりと頼むな」
「ぴ~!」

今回はあぶれてしまったジョーヌ。だがとっても愛嬌があって可愛い子なので、整体学校でピクシーを欲しいと言ってきた連中からは一番人気があった子だ。だからこれは相性の問題で、決してジョーヌが残念な子という訳じゃないぞ。

……。

で…。

「へへ~ん!私の勝ちぃ~~♪」
「きったねぇぞ万智ぃ!ジャマばっかりしやがってぇ!!」

最初の一時間ほどはオレが見て回りながら丁寧な狩りを指導した。が、一度休憩を入れた後は彼女らの自由にさせてみた。結果、大差をつけられて負けたシャークが、瀬来さんにウザい勝ちムーブをされ怒っている。

とは言うものの、4人のなかで一番戦果の高かったのは仁菜さんになる。

彼女はいち早く自分がスライムを倒している間に、また別のスライムをアジュールに探してもらうといった戦法をとって、実に効率的に動いたのだ。

二位は瑠羽。真面目に毎朝のジョギングをこなしていた瑠羽はこの地下1層でもローズと共に軽快に駆けまわり、足で戦果を稼いだ。

なので途中シャークを見かけては挑発し時間を無駄にしていた瀬来さんが、女子大生のなかではビリだったりする。

「ちくしょ~~ッ!」
「気にするなシャーク、まだ瀬来さん達とでは体力が違うんだから。そのうちおまえも動けるようになる」

シャークはインドア作戦を行うSWATみたいな恰好で、およそ走りまわるには向かない。

なおかつ自前の値の張りそうなナイフでスライムと戦おうとしていた。なので以前キングゴキに突っ込まれた時に壊れた、簡易防御陣を築くための金属製物干し竿を武器として渡しておいた。

でも最初「そんなのダセぇ!」と頑として受け取らなかったシャーク。だったが、しばらくすると床を這うスライムをいちいち腰を屈めて倒す苦労を知り、渋々無言で取りに戻ってきた。

そんなシャークに、オレは「戦闘はスタイルではなく、状況に応じ利用できるモノはなんでも利用する柔軟な発想が大切だ」というありがたいお言葉をかけてやった。

ほら、カンフー映画でも大勢に囲まれると、椅子やらなんやら使って戦ってるだろ?おまえも学校でそうしてたじゃないか。

それに見た目は悪くとも、折れた物干し竿だってスライムを倒すのには充分。軽いしリーチもあるから、狩り効率も上がっただろう。


こうして半日ほど4人で狩って、得られたスライムのドロップは2キログラムちょい。まぁ初日だし、こんなモノだろう。慣れればもっと狩り効率は上がるはずだ。

「あの…えっとコーチ」
「ん、どうした瑠羽?」

「えと…こんなモノをスライムからひろったんですけど…?」

そういって瑠羽がおずおずとオレにみせてきたのは、オレンジ色したスキルオーブ。

「おッ!誰が一番に拾うのかと密かに楽しみにしていたが、一番は瑠羽だったか!」

「え…!え…!?」
「ん、なになに、どうしたの??わぁ、なにコレ!?」

肩を後ろから抱いて瑠羽の手元を覗きこんだ瀬来さんもまた、スキルオーブに興味を示す。うん、これは丁度いいな。

「はい全員注目!これから大事なことを説明するから、よく聞くように!」
「「「はぁ~い!」」」

「いま瑠羽が手に載せている、オレンジ色したクルミほどの球。それが魔法の元となる、能力宝珠(スキルオーブ)だ」

「へぇ~、これがそうなんやぁ…」
「あ!アタシにもよく見せてくれよ!ン…なんかピンポン球みたいだな?」

ああ…そうね。なんかそんな色した卓球の球もあるよね。でもそういう言い方するとありがたみが減るからさ、よそうよねシャーク。ピンポン球よりツルツルぴかぴかしてて、もっとカッコイイでしょ!

「ほんで…、コレにはどないな能力が秘められてるん?」
「ふふふ…それは【酸】だ。モンスターから得られるスキルオーブは、概ねそのモンスターの得意とする特徴に合致する。だから酸攻撃をしてくるスライムは、【酸】という訳だな」

「へぇ~…。でも私は、もっと火とか水とかの方がいいなぁ~」
「そないなことあらへんやろ。コレがあれば、コォチの作る『なんちゃってレモン水』が作り放題やん」

ふむ、まぁ【酸】は一般的には不人気なスキルだろうから解るけどね。それでも高めると、とんでもない威力を発揮するから凄い事になるよ。

「コーチ、コレはどうやって使えばいいんですか?」
「うん、じゃあ瑠羽は目を閉じて、『このスキルオーブに秘められた力が自分のモノになりますように』って、強く念じてみて」

「はい!やってみます…!んぅぅぅ~~……ッ!」

眼を閉じ、顎にちっちゃな梅干しを作る様にして瑠羽は念じだした。すると…。

『(ぽわぽわぽわ…)』

「わッ!光ってるッ!!」
「スゲェ!」
「綺麗やねぇ…♪」

「瑠羽、頑張れ!もうすこしだッ!」
「ハイっ!んんぅぅぅぅぅうう~……ッ!!」

『ぽわぽわぽわ…きゅわ~!ぱわわぁ~カッ!!』
「「キャッ!まぶしッ!!」」


「はぁ~~~…ッ。……?(きょときょと)」

「瑠羽!やったぞ大成功だっ!」

この日、瑠羽は初めてスキルを手に入れた。
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