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サバゲフィールドの植物ダンジョン1
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世の中には、勝利の方程式なんて言葉がある。
自己啓発本や株式の本なんかに載っていそうな文言であるが、古くは天の時・地の利・人の和なんてのが有名だろう。
式にすると、『天×地×人=勝利』というわけだ。
って、これじゃただの掛け算にしかなってないな。
まぁともかく、現在天気は寒風吹きすさぶものの快晴であり、バトルフィールドはサバゲーマー達の庭。そしてキュートな瑠羽のハートフルな治療を受け、腹いっぱいにカニを食って英気を養ったことで士気はとても高く、なおかつモンスターと戦える武器を提供するオレに感謝してくれていた。
そう、それはまさに天の時・地の利・人の和が見事に揃っている状態といえよう。
そこで、『バトルフィールドのモンスターを駆除するついでに、良ければダンジョンも探してくんない?』と軽い調子でサバゲーマー達にお願いしたところ、あっという間にバトルフィールドにほど近い雑木林のなかにダンジョンであろう洞穴を発見してくれた。
流石サバゲーマー、普段から山野を歩き慣れているだけはある。
「(ざっざっざっ…バサバサ…)ふぅむ、あれがそうか」
乾いた枯れ葉の積もった斜面に見えるのは、洞穴。これまた不用意に歩くと非常に滑りやすそうな場所にあったもんだ。
「むぉッ!?…なんだ、ジャングか。しかしおまえ、その格好でうろついていると知らない奴に撃たれてしまうぞ?」
「あ、なんだ?提督にもやっぱりそう見える?まぁ鍋さん達に言って情報伝達してもらってるから大丈夫だとは思うが…、十分気を付けよう」
そう、今のオレの姿は聖塩衣から蟲王スーツへと華麗にチェンジ。
せっかく瑠羽が持って来てくれたので、昼食後に着替えたのだ。なにせ初めて入る未知のダンジョン、出来うるならば完全装備で臨みたい。
「ああ~♪聖塩衣もいいけど、着慣れるとやっぱりこっちのほうが落ち着くね~師匠ぅ♪」
「そうだな」
「「「おおぉ…(ざわざわ)」」」
金色の蟲王スーツ姿のオレの背後から鈍く輝くガンメタリックな蠅女王スーツ姿の瀬来さんが姿を現すと、居並ぶサバゲーマー達から感嘆の吐息が漏れる。
うん、解るよその気持ち。スーツはとてもピッチリしてて、身体のラインが丸解りだもんね。だから一切肌が露出していないにもかかわらず、なぜかとっても艶っぽくて、色っぽいのだ。
「さぁ、遅れてきた分ウチらも頑張ろうな。瑠羽ちゃん♪」
「うん、静ちゃん。がんばろうね!」
「「「おおぉ…!(ざわざわ)」」」
そこへさらに蟲王スーツmkⅡ姿の仁菜さんと瑠羽が加わると、さらにざわめきと吐息の度合いは大きくなる。なにせ彼女らの被っているヘルメットは、ご飯を炊く電子ジャーの蓋みたいに容易にパカパカと開閉できる。その為まだ麗しい美顔を晒したままで、美女ふたりが歓談しながら現れたからだ。
ふふふ、どうだ。全部オレが作ったんだぞ、とってもエロカッコイイだろう。
「はは…。いやはや、みな凄い格好だな。我々も時々ダンジョンに潜ってはいたが、こんな恰好してる者達は見たことがない」
「ああ。まぁ…これはウチだけの仕様だからな。でも見かけだけじゃなくて、性能も折り紙つきだぞ(うにょ~ん!チョッキ!チョッキ!)」
オレ達の姿を見て驚く提督に、背部アタッチメントな増設アームを動かしてスーツの性能の一端を見せてやる。
「いいなぁ~、それ私も欲しい!」
「ははは、瀬来さんがもっと魔力の操作に慣れたらね。で、提督、ここの土地はどうなんだ?」
欲しがり屋さんな瀬来さんは軽くいなしておき、話を進めるために提督に向き直る。
「ああ、ここなら大丈夫だ。あの斜面の向こう側だと不味かったが、その手前までなら俺の知り合いの土地だからな」
「そうか、なら何かあっても大丈夫そうだな。よし、では諸君!これからダンジョン探索を開始する!探索に参加する者は、くれぐれも事故や怪我のないように頼む!」
「「「おお~ッ!!」」」
これは前もって、提督と話し合っておいた事。食事中に『ダンジョン探索に一枚噛まないか』と、提督を誘ったのだ。
普通に戦えば、お化けアロエやカンフーバンブーなんかは結構手強い。モンスターと戦った経験が無ければなおさらだ。それはもう実際に戦った彼らなら、よく解っている事だろう。だがオレの生み出した塩の武器があれば、話は大きく変わってくる。
あれだけ手強かった植物系モンスターたちが、アラ不思議。塩でカンタンに弱体化できて、容易く退治できてしまうのだ。
ならばこれを逃す手はない。
サバゲーマー達に塩の武器を持たせ植物系モンスターを倒させる。すると彼らはモンスターから獲得した生命エナジーでサクッと成長。するとすると、後は塩の武器がなくても普通にお化けアロエを倒せるようになることだろう。
そうすれば、彼らは強くなれてハッピー。オレはそんな彼らにモンスターのドロップを集めてもらい、纏めて回収し真田薬品に売れば高値で買い取ってもらえてダブルでハッピー。後日そこから分け前を渡せば、提督たちにも良い小遣い稼ぎになるはず。と考えたのだ。
まぁ提督を口説き落とすのにいささか時間を労した。が、そこはシャークも話に加わり加勢してくれたので、最後には首を縦に振ってくれた。
だから今日からこのサバゲフィールドは、『強くなれて、なおかつお金も稼げる』という、いい事尽くめの娯楽施設へと大変身したのだ。やったね。
まぁともかく、そうして警戒しながら洞窟に潜るとそこはいかにも自然洞窟っぽい感じ。ただ光り苔でも生えたみたいにして、ダンジョン全体が薄らと青白く発光している。地形は多少歪んだりもしているが、ダンジョン自体は枝分かれしつつも概ね蒲鉾状に続いている模様。
「いたぞ…!こっちだ!」
「ゴー!ゴー!ゴー!」
で、オレ達完全武装のダンジョンセイバーズが突撃して入り口付近に橋頭堡を確保した後は、岩塩穂先の竹槍を装備したサバゲーマー達に地下1層の掃討を任せる。案の定地下1層のモンスターはお化けアロエであった。
が、数は多いが問題ではない。
なにせ今戦っているのは生粋のサバゲーマー達。年齢の差なんかは多少あるものの、彼らは休日の朝早くから集まって戦争ごっこに興じてしまえるような物好きたちである。
「そらこいよ!化け物どもめ…!(パタタ!パタタパタ…!)」
「よしいいぞ…そのままひきつけてろ!…それっ!!(ブスッ!)」
「じゅびびいぃぃい…!」
サバゲーマー達はそれぞれ小さなチームに分かれると、思い思いの戦術を練ってお化けアロエを駆逐してく。
「ふむ…、流石だな。皆、だいぶ調子が良いんじゃないか(きゅわわわ…)」
「まぁな。皆寝ても覚めても戦車だ武器だのといったモノや、戦史や戦略戦術に首ったけの連中ばかり。そんなヤツ等にのびのびと戦える舞台を用意してやれば、こうして水を得た魚のようになるのも当然の事だろう」
なるほど、それは言い得て妙だな。提督の言も尤もだ。
「あのすんませ~ん!また補充おねがいしま~す!」
「はいよ~。ここから必要なだけ持ってってね~」
ま、オレはこうして入り口付近に陣取り、岩塩の穂先を生み出してやるだけの簡単なお仕事です。
え、なぜって?それは今作っている穂先に秘密がある。通常、オレがスキル【塩】で生み出して武器として扱う塩は、基本オレ専用。なぜならばスキルを持つオレであれば、手にした塩の武器に後から魔力を注いで硬くするのも柔らかくするのも自由自在だから。
例えば岩塩鋸円盤を植物系モンスターに直撃させた後で、モンスターの体内に塩が毒素として回るよう炸裂させ細かく砕いたりするなんて芸当も可能だったりする。
だが生み出した塩の武器も、ひとたびオレの手から離れてしまえばそういった操作はすぐ近くにいないとできない。なのでサバゲーマー達に渡す岩塩穂先は、敢えて脆くて崩れやすく作っているのだ。ほら、そうした方が敵に突き刺した時に、欠けて塩が体内に残りやすいからね。
これであれば魔力で塩の操作が出来なくとも、植物モンスターに効率よく塩で毒ダメージを与えることが出来る。と、いうことなのよ。
「ありがとうございます、じゃあコレ」
岩塩穂先を補充したサバゲーマー達は、その代わりにモンスターのドロップを置いていく。お化けアロエのドロップは、魔石と『ギザギザしたアロエの葉』。
まぁこれであれば地上で倒した方が圧倒的に量が手に入るのだが、いかんせん塩で倒しているので素材が塩害を蒙ってしまっている。なのでそれだと薬の素材としては、役に立たない恐れがある。ま、いずれにしろダンジョン内で狩って間引きしてやる必要があるから、量に関してはそのうちに揃うだろう。
「閃け!エクスカリバール!(ごしゃ!)」
「あ、ズリィぞ万智!次アタシの番だったのにぃ~ッ!」
「今のはしょうがないでしょ!勝手にアロエが私の方に向かってきたんだから!」
うん、瀬来さん達はすでに塩の特効武器でなくてもお化けアロエを倒せるだけの力があるので、普段使いなれたエクスカリバールに武器を持ち替えている。あ、シャークも何気にまたダマスカスなナイフに持ち替えてるな。
「瑠羽ちゃん、そっち行ったでぇ~!」
「はい、やります!…えいっ(ゴスッ!)」
おお、瑠羽の使っている武器は、いまや懐かしのカツオくんバット。なんだかんだで今は瑠羽のメインウェポンとして活躍している。アレもオレの使っていた頃も合わせれば、いったいどれほどモンスターの血を吸ったんだか…。そう考えるとなんか変なモノが宿りそうで、ちょっと怖い。
「あ、静ちゃん!後ろ!」
「解っとるぅ…ヨッ!(グシャ!)」
仁菜さんが振り向き様に一閃、勢いよく振り下ろされたエクスカリバールによってお化けアロエが爆裂する。オレがダブルエクスカリバールとして使っていた武器は、今はこうしてそれぞれに仁菜さんと瀬来さんが使っている。
オレ…?ああ、オレはまぁ、まだ全然使ってないジャンボな金テコとかも持ってるし。それに魔力でこうして岩塩を生み出せば、それがもう立派な武器となるから。だから武器って、あんまり必要じゃなくなっちゃったんだよね。ま、未だに武器に対する憧れ的な気持ちは残ってるけど。
そうして降りた地下2層。で、植物ダンジョンの地下2層にいたモンスターはカンフーバンブー。これは順当に浅い層のモンスターが、そのまま地上に這い出てきていたようだ。
「ん…、こいつら地上よりも動きが鈍いぞ!」
「あれ視ろ!背が高すぎて天井につっかえてんだ!」
そして全高4メートルになろうかというカンフーバンブーは、なぜかダンジョンの天井に頭がつかえて非常に動き難そうにしていた。
「チャンスだ!やっちまえ!」
「「おおぉ!!」」
地形とミスマッチだったが為に、まさかのホームでサバゲーマー達にボコられるカンフーバンブー。なんというか…明らかに配置ミスだろう。もしダンジョンにダンジョンマスターとかがいるなら、場所変えてやれよ。
「すんませ~ん!また補充おねがいしま~す!」
「はいよ~」
ダンジョンで倒したモンスターは煙となって消え、ドロップを落とす。補充に来たサバゲーマーから渡されたカンフーバンブーのドロップは、魔石と『液体の入った竹筒』。なんか缶ビールのミニ缶みたいなサイズで、振るとチャプチャプと中に液体の入っているような音がする。なんだろコレ?中に入っているのは竹エキスかな?
「ふむ…楽勝だな。これであればもう1層下に降りても大丈夫そうだが、どう思うジャング?」
「うむ、見た感じ問題はなさそうだ。ただもう少しここで狩って、全員がレベルアップしてから下に下りてもいいんじゃないか?」
「なるほど、そうするか。…おーいみんな!レベルアップした者は補充の時に申告してくれ!」
こうして、地下2層で小一時間ほど戦闘を続けた。
なにせこの場にいる者たちは皆、ミリオタでありサバゲーマー。故に前線を意識して布陣を構築するという事も、お互いをカバーしあって戦うという事の大切さも熟知していた。
なのでそんな彼らは実に手堅い戦術でもってカンフーバンブーを閉所に誘い込み、身動き取れない状態で袋叩きにし危な気なく勝ちを積み重ねていく。
うん、実に頼もしい。
オレも以前はよくネットゲームなんかをしたもの。だが対人のチーム戦なんかをやると通話で意思疎通をしていないもんだから、前線構築を全く意識せずに突出してすぐに死ぬ味方や、後方から飛び道具でチマチマ攻撃するだけのチキンな味方には非常に苦しめられたものだ。
さらにはそれだけに飽き足らず、前線を崩壊させた挙句に一体だけはぐれた敵を全員で追いかけ回すというアホな子供サッカーじみた真似を始めたりと、ネットゲームでは敵よりも味方になったヤツらに振り回されて激しくストレスの溜ったモノだ。
しかしどうだ。
ここにいる彼らは実によく訓練された兵士であり、戦闘のイロハもカラダに叩きこまれているように見える。もちろん個々人の能力には差などはある。が、お互いをカバーしあって戦うというスタンスを身に着けているか否かで、こうも差が出るモノかと非常に感心させられてしまう。
「見事なものだなぁ…」
「ん?ああ、そうだな。うちはよく別のサバゲサークルとも対戦することもあるからな。メンバーは皆、そういう意識を持っているのさ」
オレがみなまで言わずに漏らした感想に、並んで立っていた提督が気付いて返してくる。
うむむ、だがそうはいっても上手くいかないというのはよくある事。この見事な成果は提督のカリスマとか、指導力という部分も少なくないのではないだろうか。
むむむ、もしやこの提督って、何気に優秀な指揮官だったり?
自己啓発本や株式の本なんかに載っていそうな文言であるが、古くは天の時・地の利・人の和なんてのが有名だろう。
式にすると、『天×地×人=勝利』というわけだ。
って、これじゃただの掛け算にしかなってないな。
まぁともかく、現在天気は寒風吹きすさぶものの快晴であり、バトルフィールドはサバゲーマー達の庭。そしてキュートな瑠羽のハートフルな治療を受け、腹いっぱいにカニを食って英気を養ったことで士気はとても高く、なおかつモンスターと戦える武器を提供するオレに感謝してくれていた。
そう、それはまさに天の時・地の利・人の和が見事に揃っている状態といえよう。
そこで、『バトルフィールドのモンスターを駆除するついでに、良ければダンジョンも探してくんない?』と軽い調子でサバゲーマー達にお願いしたところ、あっという間にバトルフィールドにほど近い雑木林のなかにダンジョンであろう洞穴を発見してくれた。
流石サバゲーマー、普段から山野を歩き慣れているだけはある。
「(ざっざっざっ…バサバサ…)ふぅむ、あれがそうか」
乾いた枯れ葉の積もった斜面に見えるのは、洞穴。これまた不用意に歩くと非常に滑りやすそうな場所にあったもんだ。
「むぉッ!?…なんだ、ジャングか。しかしおまえ、その格好でうろついていると知らない奴に撃たれてしまうぞ?」
「あ、なんだ?提督にもやっぱりそう見える?まぁ鍋さん達に言って情報伝達してもらってるから大丈夫だとは思うが…、十分気を付けよう」
そう、今のオレの姿は聖塩衣から蟲王スーツへと華麗にチェンジ。
せっかく瑠羽が持って来てくれたので、昼食後に着替えたのだ。なにせ初めて入る未知のダンジョン、出来うるならば完全装備で臨みたい。
「ああ~♪聖塩衣もいいけど、着慣れるとやっぱりこっちのほうが落ち着くね~師匠ぅ♪」
「そうだな」
「「「おおぉ…(ざわざわ)」」」
金色の蟲王スーツ姿のオレの背後から鈍く輝くガンメタリックな蠅女王スーツ姿の瀬来さんが姿を現すと、居並ぶサバゲーマー達から感嘆の吐息が漏れる。
うん、解るよその気持ち。スーツはとてもピッチリしてて、身体のラインが丸解りだもんね。だから一切肌が露出していないにもかかわらず、なぜかとっても艶っぽくて、色っぽいのだ。
「さぁ、遅れてきた分ウチらも頑張ろうな。瑠羽ちゃん♪」
「うん、静ちゃん。がんばろうね!」
「「「おおぉ…!(ざわざわ)」」」
そこへさらに蟲王スーツmkⅡ姿の仁菜さんと瑠羽が加わると、さらにざわめきと吐息の度合いは大きくなる。なにせ彼女らの被っているヘルメットは、ご飯を炊く電子ジャーの蓋みたいに容易にパカパカと開閉できる。その為まだ麗しい美顔を晒したままで、美女ふたりが歓談しながら現れたからだ。
ふふふ、どうだ。全部オレが作ったんだぞ、とってもエロカッコイイだろう。
「はは…。いやはや、みな凄い格好だな。我々も時々ダンジョンに潜ってはいたが、こんな恰好してる者達は見たことがない」
「ああ。まぁ…これはウチだけの仕様だからな。でも見かけだけじゃなくて、性能も折り紙つきだぞ(うにょ~ん!チョッキ!チョッキ!)」
オレ達の姿を見て驚く提督に、背部アタッチメントな増設アームを動かしてスーツの性能の一端を見せてやる。
「いいなぁ~、それ私も欲しい!」
「ははは、瀬来さんがもっと魔力の操作に慣れたらね。で、提督、ここの土地はどうなんだ?」
欲しがり屋さんな瀬来さんは軽くいなしておき、話を進めるために提督に向き直る。
「ああ、ここなら大丈夫だ。あの斜面の向こう側だと不味かったが、その手前までなら俺の知り合いの土地だからな」
「そうか、なら何かあっても大丈夫そうだな。よし、では諸君!これからダンジョン探索を開始する!探索に参加する者は、くれぐれも事故や怪我のないように頼む!」
「「「おお~ッ!!」」」
これは前もって、提督と話し合っておいた事。食事中に『ダンジョン探索に一枚噛まないか』と、提督を誘ったのだ。
普通に戦えば、お化けアロエやカンフーバンブーなんかは結構手強い。モンスターと戦った経験が無ければなおさらだ。それはもう実際に戦った彼らなら、よく解っている事だろう。だがオレの生み出した塩の武器があれば、話は大きく変わってくる。
あれだけ手強かった植物系モンスターたちが、アラ不思議。塩でカンタンに弱体化できて、容易く退治できてしまうのだ。
ならばこれを逃す手はない。
サバゲーマー達に塩の武器を持たせ植物系モンスターを倒させる。すると彼らはモンスターから獲得した生命エナジーでサクッと成長。するとすると、後は塩の武器がなくても普通にお化けアロエを倒せるようになることだろう。
そうすれば、彼らは強くなれてハッピー。オレはそんな彼らにモンスターのドロップを集めてもらい、纏めて回収し真田薬品に売れば高値で買い取ってもらえてダブルでハッピー。後日そこから分け前を渡せば、提督たちにも良い小遣い稼ぎになるはず。と考えたのだ。
まぁ提督を口説き落とすのにいささか時間を労した。が、そこはシャークも話に加わり加勢してくれたので、最後には首を縦に振ってくれた。
だから今日からこのサバゲフィールドは、『強くなれて、なおかつお金も稼げる』という、いい事尽くめの娯楽施設へと大変身したのだ。やったね。
まぁともかく、そうして警戒しながら洞窟に潜るとそこはいかにも自然洞窟っぽい感じ。ただ光り苔でも生えたみたいにして、ダンジョン全体が薄らと青白く発光している。地形は多少歪んだりもしているが、ダンジョン自体は枝分かれしつつも概ね蒲鉾状に続いている模様。
「いたぞ…!こっちだ!」
「ゴー!ゴー!ゴー!」
で、オレ達完全武装のダンジョンセイバーズが突撃して入り口付近に橋頭堡を確保した後は、岩塩穂先の竹槍を装備したサバゲーマー達に地下1層の掃討を任せる。案の定地下1層のモンスターはお化けアロエであった。
が、数は多いが問題ではない。
なにせ今戦っているのは生粋のサバゲーマー達。年齢の差なんかは多少あるものの、彼らは休日の朝早くから集まって戦争ごっこに興じてしまえるような物好きたちである。
「そらこいよ!化け物どもめ…!(パタタ!パタタパタ…!)」
「よしいいぞ…そのままひきつけてろ!…それっ!!(ブスッ!)」
「じゅびびいぃぃい…!」
サバゲーマー達はそれぞれ小さなチームに分かれると、思い思いの戦術を練ってお化けアロエを駆逐してく。
「ふむ…、流石だな。皆、だいぶ調子が良いんじゃないか(きゅわわわ…)」
「まぁな。皆寝ても覚めても戦車だ武器だのといったモノや、戦史や戦略戦術に首ったけの連中ばかり。そんなヤツ等にのびのびと戦える舞台を用意してやれば、こうして水を得た魚のようになるのも当然の事だろう」
なるほど、それは言い得て妙だな。提督の言も尤もだ。
「あのすんませ~ん!また補充おねがいしま~す!」
「はいよ~。ここから必要なだけ持ってってね~」
ま、オレはこうして入り口付近に陣取り、岩塩の穂先を生み出してやるだけの簡単なお仕事です。
え、なぜって?それは今作っている穂先に秘密がある。通常、オレがスキル【塩】で生み出して武器として扱う塩は、基本オレ専用。なぜならばスキルを持つオレであれば、手にした塩の武器に後から魔力を注いで硬くするのも柔らかくするのも自由自在だから。
例えば岩塩鋸円盤を植物系モンスターに直撃させた後で、モンスターの体内に塩が毒素として回るよう炸裂させ細かく砕いたりするなんて芸当も可能だったりする。
だが生み出した塩の武器も、ひとたびオレの手から離れてしまえばそういった操作はすぐ近くにいないとできない。なのでサバゲーマー達に渡す岩塩穂先は、敢えて脆くて崩れやすく作っているのだ。ほら、そうした方が敵に突き刺した時に、欠けて塩が体内に残りやすいからね。
これであれば魔力で塩の操作が出来なくとも、植物モンスターに効率よく塩で毒ダメージを与えることが出来る。と、いうことなのよ。
「ありがとうございます、じゃあコレ」
岩塩穂先を補充したサバゲーマー達は、その代わりにモンスターのドロップを置いていく。お化けアロエのドロップは、魔石と『ギザギザしたアロエの葉』。
まぁこれであれば地上で倒した方が圧倒的に量が手に入るのだが、いかんせん塩で倒しているので素材が塩害を蒙ってしまっている。なのでそれだと薬の素材としては、役に立たない恐れがある。ま、いずれにしろダンジョン内で狩って間引きしてやる必要があるから、量に関してはそのうちに揃うだろう。
「閃け!エクスカリバール!(ごしゃ!)」
「あ、ズリィぞ万智!次アタシの番だったのにぃ~ッ!」
「今のはしょうがないでしょ!勝手にアロエが私の方に向かってきたんだから!」
うん、瀬来さん達はすでに塩の特効武器でなくてもお化けアロエを倒せるだけの力があるので、普段使いなれたエクスカリバールに武器を持ち替えている。あ、シャークも何気にまたダマスカスなナイフに持ち替えてるな。
「瑠羽ちゃん、そっち行ったでぇ~!」
「はい、やります!…えいっ(ゴスッ!)」
おお、瑠羽の使っている武器は、いまや懐かしのカツオくんバット。なんだかんだで今は瑠羽のメインウェポンとして活躍している。アレもオレの使っていた頃も合わせれば、いったいどれほどモンスターの血を吸ったんだか…。そう考えるとなんか変なモノが宿りそうで、ちょっと怖い。
「あ、静ちゃん!後ろ!」
「解っとるぅ…ヨッ!(グシャ!)」
仁菜さんが振り向き様に一閃、勢いよく振り下ろされたエクスカリバールによってお化けアロエが爆裂する。オレがダブルエクスカリバールとして使っていた武器は、今はこうしてそれぞれに仁菜さんと瀬来さんが使っている。
オレ…?ああ、オレはまぁ、まだ全然使ってないジャンボな金テコとかも持ってるし。それに魔力でこうして岩塩を生み出せば、それがもう立派な武器となるから。だから武器って、あんまり必要じゃなくなっちゃったんだよね。ま、未だに武器に対する憧れ的な気持ちは残ってるけど。
そうして降りた地下2層。で、植物ダンジョンの地下2層にいたモンスターはカンフーバンブー。これは順当に浅い層のモンスターが、そのまま地上に這い出てきていたようだ。
「ん…、こいつら地上よりも動きが鈍いぞ!」
「あれ視ろ!背が高すぎて天井につっかえてんだ!」
そして全高4メートルになろうかというカンフーバンブーは、なぜかダンジョンの天井に頭がつかえて非常に動き難そうにしていた。
「チャンスだ!やっちまえ!」
「「おおぉ!!」」
地形とミスマッチだったが為に、まさかのホームでサバゲーマー達にボコられるカンフーバンブー。なんというか…明らかに配置ミスだろう。もしダンジョンにダンジョンマスターとかがいるなら、場所変えてやれよ。
「すんませ~ん!また補充おねがいしま~す!」
「はいよ~」
ダンジョンで倒したモンスターは煙となって消え、ドロップを落とす。補充に来たサバゲーマーから渡されたカンフーバンブーのドロップは、魔石と『液体の入った竹筒』。なんか缶ビールのミニ缶みたいなサイズで、振るとチャプチャプと中に液体の入っているような音がする。なんだろコレ?中に入っているのは竹エキスかな?
「ふむ…楽勝だな。これであればもう1層下に降りても大丈夫そうだが、どう思うジャング?」
「うむ、見た感じ問題はなさそうだ。ただもう少しここで狩って、全員がレベルアップしてから下に下りてもいいんじゃないか?」
「なるほど、そうするか。…おーいみんな!レベルアップした者は補充の時に申告してくれ!」
こうして、地下2層で小一時間ほど戦闘を続けた。
なにせこの場にいる者たちは皆、ミリオタでありサバゲーマー。故に前線を意識して布陣を構築するという事も、お互いをカバーしあって戦うという事の大切さも熟知していた。
なのでそんな彼らは実に手堅い戦術でもってカンフーバンブーを閉所に誘い込み、身動き取れない状態で袋叩きにし危な気なく勝ちを積み重ねていく。
うん、実に頼もしい。
オレも以前はよくネットゲームなんかをしたもの。だが対人のチーム戦なんかをやると通話で意思疎通をしていないもんだから、前線構築を全く意識せずに突出してすぐに死ぬ味方や、後方から飛び道具でチマチマ攻撃するだけのチキンな味方には非常に苦しめられたものだ。
さらにはそれだけに飽き足らず、前線を崩壊させた挙句に一体だけはぐれた敵を全員で追いかけ回すというアホな子供サッカーじみた真似を始めたりと、ネットゲームでは敵よりも味方になったヤツらに振り回されて激しくストレスの溜ったモノだ。
しかしどうだ。
ここにいる彼らは実によく訓練された兵士であり、戦闘のイロハもカラダに叩きこまれているように見える。もちろん個々人の能力には差などはある。が、お互いをカバーしあって戦うというスタンスを身に着けているか否かで、こうも差が出るモノかと非常に感心させられてしまう。
「見事なものだなぁ…」
「ん?ああ、そうだな。うちはよく別のサバゲサークルとも対戦することもあるからな。メンバーは皆、そういう意識を持っているのさ」
オレがみなまで言わずに漏らした感想に、並んで立っていた提督が気付いて返してくる。
うむむ、だがそうはいっても上手くいかないというのはよくある事。この見事な成果は提督のカリスマとか、指導力という部分も少なくないのではないだろうか。
むむむ、もしやこの提督って、何気に優秀な指揮官だったり?
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無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
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大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
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高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
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しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
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