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仙人になる修行にこんな話があったような?
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「―ふぅむ、それでその子にコテンパンにされたということか」
「ちくしょう…、アイツ絶対ダンジョンに潜ってるんだ」
(いや、それはおまえも同じだろうに…)
オレはシャークから、学校で起きた出来事を聞いた。
具体的には珈琲を浴び汚れてしまった部屋着を洗濯機に放り込み、せっかく綺麗にした部屋に飛び散ってしまった珈琲を拭き取ったりした後で。興奮するシャークをなんとか宥め、それからようやく話し始めたのでここまでものすごく時間がかかった。それに、普通の人なら火傷もしてたとこだぞ。
で、話によるとなんでも今日は、体育の授業が他のクラスと合同で行われたらしい。
雨が降っていたのでグラウンドが使えず、さりとて体育館のスペースも限られている。なので「じゃあ同じ学年だし合同で授業を行いましょう」という運びになったそうな。
授業の内容は1-Bと1-Eの合同で体力測定。
内容は垂直跳びや反復横跳びといった測定項目を順番に巡るといった、懐かしいモノ。まぁオレにとっての学生生活は灰色だったので、特に記憶に残っている青春的な事柄もまったく無いのだが。
ともかくそんな感じで授業を受けていたシャーク。
だがそこでふと、『本気を出したらどれくらい跳べるんだろう?』とそんなことに興味を持ったらしい。そこで測定場所ではない体育館の壁際によると、試しにそこで跳んでみたという。
しかしダンジョンで強まっていた事もあり、自分で思ってた以上に跳んでしまい注目を集めてしまったという。
まぁダンジョンでは上に飛び跳ねるなんてことは、まずしないしな。
それに、ちょっとは自慢したい気持ちもあったのだろう。その気持ちはオレにも解る。レベルアップしたての頃はどんどんと強くなれて、まるで生まれ変わったみたいな万能感に浸れるから。
オレも通勤中に駅の階段を二段跳びで駆けあがっていた時には、そうした爽快な気分を味わったモンだ。ま、オレの場合は通勤途中の不特定多数が目撃者で知り合いではなかったから、何の問題も起きなかったけど。きっと遅刻しそうで急いでるのだろうとか、朝から元気なヤツだくらいに思われただけだ。
しかし授業中ではそれを見ていたクラスメイトがワーキャーと騒ぎだし、シャークに注目が集まってしまった。
すると、他のクラスの女子生徒から「無闇にダンジョンで得た力をひけらかすな」と咎められたと言う。うん、これはオレもよくシャークに言っていること。なのでその子も言い分にも頷ける。
だがシャークとしてはそんなつもりではなかったので、それに反論しようとした。
が、その女子生徒は話を聞かずにその場を離れようとしたらしい。そこで待てよと後ろからその子の肩に手をかけたら、そのまま手首を極められコロリと投げ飛ばされたそうな。
う~む、これはなんとも微妙なところ。
普通さほど親しくもない相手に突然背後から肩に手を掛けられたら、投げ飛ばすのは些か行き過ぎでも過剰な防衛ともいえない。ましてやシャークは、その場で自身の力をひけらかしていると勘違いされても仕方のない行動を取っている。
まぁその場は授業中という事もあって騒ぎに気付いた先生に静められた。
が、それで納得のいかなかったシャークは放課後その子のいる教室まで出向いて抗議。ま、直情傾向なシャークらしいといえばシャークらしい。
なんだが、そこでもまた見解の相違から口論になってつい掴みかかり、再び投げ飛ばされてしまったという…。
で、すこぶる頭にきたがさすがにこれ以上やってはマズイと自分を抑え引き下がった。が、帰宅途中に今日の出来事を思い返すとどうにも気が納まらなくて、オレに電話をしたのだという。
それが雨の日にわざわざ、シャークが瞼を腫らしてまでオレのもとにやってきた理由だった。
『ずずぅ…』
「………」
静かな室内に、オレの珈琲を啜る音がやけに響く。
外ではシトシトと雨も降っているし、玄関先ではゴゥンゴゥンと洗濯機も回っている。そんな音をバックミュージックに、ただ黙ってポツポツと話すシャークの説明を聞いていた。
「つまりは以前より強くなったと思ったのに、簡単にひっくり返されたのが悔しかったんだな?」
その問いかけに、コクリとちいさく頷いて応えるシャーク。そして唇を噛み締めて、また悔しそうに震える。
きっとシャークの中では、ここ最近の成長で憧れのサンドラに近づけたと喜んでいたのだろう。それが簡単にその鼻っ柱を圧し折られるような出来事が起きて、心のバランスを失ってしまったと…。
うん、まぁ若い時にはよくあることだ。
成長期ってのは、どんどんと身体が大きくなる。昨日の自分より、今日の自分は明らかに勝った存在になってゆくのだ。それはある種の優越感や万能感に通じていく。
だが心もまだ人格形成の過程で、その分振れ幅も大きい。若者が突飛な行動に走ってしまいがちなのは、社会的なモラルとの擦り合わせがまだまだ出来ていない所為でもある。
しかし、オレの方がシャークより年上なせいか、そんな未熟さもまた可愛く思えてくる自分を感じ気恥ずかしくも非常に嬉しく思う。
なぜならばこの高校一年生という立場の若者が、シャークが、自分のおじさんおばさんでもなく、はたまた賢治兄ぃでもなく、オレを頼って相談にきてくれたから。利用されることはあっても精神的に人に頼られることなどついぞなかった、このオレにだ。
「そうか、解った。よし、おまえが強くなりたいのならオレが力を貸そう!」
『チーン!』
そう目力を籠めてシャークを見据え、かっこよく決めた瞬間。なぜか見計らったかのようなタイミングでオーブントースターが鳴る。
「む、餅が焼けたか。まぁいい、まずは腹ごしらえだ。シャークは何つけて食べる?」
「…マヨネーズ」
わお、これが若さか…。
………。
天の時・地の利・人の和…これが勝利の方程式。だがそれは個人の戦いに於いてはどうだろうか。そういった風に考えてゆくと、やはり定番の心・技・体となるのではなかろうか。
しかしてシャークの場合、技と体に関しては申し分ない。
聞けば警察官であるおじさんや賢治兄ぃから護身術のようなモノも習っているし、実の兄弟のミリオタ的な影響でマーシャルアーツな動きまで出来ている。そしてカラダは小柄ながら学校で部活動には所属していないが、休日にはサバゲフィールドを駆けまわっているのだ。
瑠羽たち女子大生を含めた4人のなかでは一番体力面での下地が出来ているうえ、なおかつまだまだ成長期という大きな伸び代のオマケ付きときている。そんなシャークをダンジョンで鍛えたなら、メキメキと強くなるのは自明の理といえよう。
だが、である。
強さとは技や体だけで決まるモノではない。技と体を操る確かな心があってこそ、完成されるモノなのだ。今回の件も、きっとシャークに自身を抑えられるだけの心がもっとあれば、こんなおかしなことにはなってはいなかったはず。
そこで今もっとも優先して鍛えるべきは、まずはシャークの心という結論に達する。
しかし心というのは、一番鍛えるのが難しい。なにせ目には見えないし…心が成長しているかどうかなんて、その言動から推察するより他にない。そしてなにより、そうと解っていてもオレ自身が優れた教育者という訳ではないので、出来うることも限られている。
だがどうにかしてシャークの希望を叶えてやりたいとオレなりに頭を捻った結果、シャークを地下2層のゴキ溜りに放りこんでやった。
「うわぁああ~!ヤダヤダッ!嫌だって言ってるだろぉ~~ッ!!」
貸した部屋着に着替えてだるんだるんのスエット姿になったシャークが、ゴキたちに囲まれつんざくような悲鳴をあげる。
「我慢しろッ!苦手を克服し、心を強くするんだッ!」
「だ、だからって!こんなトコで瞑想なんて…!出来るわけないだろ~ッ!!」
「為せばなる!おまえにならできるッ!シャーク!サンドラを超えてみせろ!オレの妹なら、ここでもグースカいびきをかいて昼寝してみせるぞ!!」
「グッ…!」
サンドラの名を出すと、シャークが戸惑いながらも泣き叫ぶのをやめた。
流石のサンドラ効果。まぁその結果オレの妹は『巨大ゴキの群れのなかにいても平気で昼寝をするアレなヤツ』という設定が追加されてしまったが。まぁ架空の存在なので別にいいだろう。
ともかくもシャークはなんとか座禅を組み、眼を閉じて瞑想をはじめた。
唇はぷるぷると震え、こめかみもピクピクとしてまるで集中できてはいない。が、苦手な虫に囲まれながらもその姿勢にまで持っていけたのは大きな進歩。オレも離れた位置でシャークの対面に座り、瞑想姿勢を取る。
「集中しろ!メディテーションだ!心頭滅却すれば火もまた涼しッ!!」
「うぅぅ…!」
それに『いったいなんだろう?』と取り囲んだ巨大ゴキが近寄りその触角が身体に触れる。その度にビクビクと激しく身を震わせているシャーク。
大丈夫、意識を内向きに没入させ忘我の域に達すれば、周囲の事など気にならなくなる。まぁ心頭滅却すればと言ったお坊さんは、そのまま焼け死んだけど。ゴキたちは攻撃しなければ襲ってはこないし、蟲王の称号を持つオレの指示には従う。なのでこの修行で、しっかりと心を鍛えてほしい。
…。
「うわぁぁあ!もうヤダ~ッ!もぅ!ヤぅ…うぼろろろ…ッ!」
時間にして約8分。精神の限界を迎えたシャークが遂に錯乱し吐いた。その嘔吐物に『ご馳走だ!』と言わんばかりに巨大ゴキたちが群がっていき、それを見たシャークがさらに真っ青な顔をして気を失った。
(うむむ、これが限界か…)
しかしこの場は虫の苦手な人間にとっては、まさに悪夢の光景。8分でもかなり頑張った方だろう。
え、オレ?オレは平気よ。まぁ見ていてあまり気分の良い光景ではないけどさ。もともと精神力は一番高い数値だったし、そういった負荷には強いらしい。
ま、蓮コラとか苦手なモノもあるけど、ネットでアップされてるフケや毛穴の油を取り除いたり、歯石を除去する動画なんかは、どういう訳かつい観ちゃうんだよね。怖いもの見たさじゃないけど、こういう感覚はなんというのやら?
ああでも、やっぱゴキの内側を視るのは苦手。毛の生えた肢がワキワキしたり腹部が動いてるの視ると、ウゾゾって虫唾が走る。
はい終了~、おまえたちも解散解散。
ほら、早く散らないと踏んづけちまうぞ?今からゲロって失神したシャークを、介抱してやらないといけないんだから。
「ちくしょう…、アイツ絶対ダンジョンに潜ってるんだ」
(いや、それはおまえも同じだろうに…)
オレはシャークから、学校で起きた出来事を聞いた。
具体的には珈琲を浴び汚れてしまった部屋着を洗濯機に放り込み、せっかく綺麗にした部屋に飛び散ってしまった珈琲を拭き取ったりした後で。興奮するシャークをなんとか宥め、それからようやく話し始めたのでここまでものすごく時間がかかった。それに、普通の人なら火傷もしてたとこだぞ。
で、話によるとなんでも今日は、体育の授業が他のクラスと合同で行われたらしい。
雨が降っていたのでグラウンドが使えず、さりとて体育館のスペースも限られている。なので「じゃあ同じ学年だし合同で授業を行いましょう」という運びになったそうな。
授業の内容は1-Bと1-Eの合同で体力測定。
内容は垂直跳びや反復横跳びといった測定項目を順番に巡るといった、懐かしいモノ。まぁオレにとっての学生生活は灰色だったので、特に記憶に残っている青春的な事柄もまったく無いのだが。
ともかくそんな感じで授業を受けていたシャーク。
だがそこでふと、『本気を出したらどれくらい跳べるんだろう?』とそんなことに興味を持ったらしい。そこで測定場所ではない体育館の壁際によると、試しにそこで跳んでみたという。
しかしダンジョンで強まっていた事もあり、自分で思ってた以上に跳んでしまい注目を集めてしまったという。
まぁダンジョンでは上に飛び跳ねるなんてことは、まずしないしな。
それに、ちょっとは自慢したい気持ちもあったのだろう。その気持ちはオレにも解る。レベルアップしたての頃はどんどんと強くなれて、まるで生まれ変わったみたいな万能感に浸れるから。
オレも通勤中に駅の階段を二段跳びで駆けあがっていた時には、そうした爽快な気分を味わったモンだ。ま、オレの場合は通勤途中の不特定多数が目撃者で知り合いではなかったから、何の問題も起きなかったけど。きっと遅刻しそうで急いでるのだろうとか、朝から元気なヤツだくらいに思われただけだ。
しかし授業中ではそれを見ていたクラスメイトがワーキャーと騒ぎだし、シャークに注目が集まってしまった。
すると、他のクラスの女子生徒から「無闇にダンジョンで得た力をひけらかすな」と咎められたと言う。うん、これはオレもよくシャークに言っていること。なのでその子も言い分にも頷ける。
だがシャークとしてはそんなつもりではなかったので、それに反論しようとした。
が、その女子生徒は話を聞かずにその場を離れようとしたらしい。そこで待てよと後ろからその子の肩に手をかけたら、そのまま手首を極められコロリと投げ飛ばされたそうな。
う~む、これはなんとも微妙なところ。
普通さほど親しくもない相手に突然背後から肩に手を掛けられたら、投げ飛ばすのは些か行き過ぎでも過剰な防衛ともいえない。ましてやシャークは、その場で自身の力をひけらかしていると勘違いされても仕方のない行動を取っている。
まぁその場は授業中という事もあって騒ぎに気付いた先生に静められた。
が、それで納得のいかなかったシャークは放課後その子のいる教室まで出向いて抗議。ま、直情傾向なシャークらしいといえばシャークらしい。
なんだが、そこでもまた見解の相違から口論になってつい掴みかかり、再び投げ飛ばされてしまったという…。
で、すこぶる頭にきたがさすがにこれ以上やってはマズイと自分を抑え引き下がった。が、帰宅途中に今日の出来事を思い返すとどうにも気が納まらなくて、オレに電話をしたのだという。
それが雨の日にわざわざ、シャークが瞼を腫らしてまでオレのもとにやってきた理由だった。
『ずずぅ…』
「………」
静かな室内に、オレの珈琲を啜る音がやけに響く。
外ではシトシトと雨も降っているし、玄関先ではゴゥンゴゥンと洗濯機も回っている。そんな音をバックミュージックに、ただ黙ってポツポツと話すシャークの説明を聞いていた。
「つまりは以前より強くなったと思ったのに、簡単にひっくり返されたのが悔しかったんだな?」
その問いかけに、コクリとちいさく頷いて応えるシャーク。そして唇を噛み締めて、また悔しそうに震える。
きっとシャークの中では、ここ最近の成長で憧れのサンドラに近づけたと喜んでいたのだろう。それが簡単にその鼻っ柱を圧し折られるような出来事が起きて、心のバランスを失ってしまったと…。
うん、まぁ若い時にはよくあることだ。
成長期ってのは、どんどんと身体が大きくなる。昨日の自分より、今日の自分は明らかに勝った存在になってゆくのだ。それはある種の優越感や万能感に通じていく。
だが心もまだ人格形成の過程で、その分振れ幅も大きい。若者が突飛な行動に走ってしまいがちなのは、社会的なモラルとの擦り合わせがまだまだ出来ていない所為でもある。
しかし、オレの方がシャークより年上なせいか、そんな未熟さもまた可愛く思えてくる自分を感じ気恥ずかしくも非常に嬉しく思う。
なぜならばこの高校一年生という立場の若者が、シャークが、自分のおじさんおばさんでもなく、はたまた賢治兄ぃでもなく、オレを頼って相談にきてくれたから。利用されることはあっても精神的に人に頼られることなどついぞなかった、このオレにだ。
「そうか、解った。よし、おまえが強くなりたいのならオレが力を貸そう!」
『チーン!』
そう目力を籠めてシャークを見据え、かっこよく決めた瞬間。なぜか見計らったかのようなタイミングでオーブントースターが鳴る。
「む、餅が焼けたか。まぁいい、まずは腹ごしらえだ。シャークは何つけて食べる?」
「…マヨネーズ」
わお、これが若さか…。
………。
天の時・地の利・人の和…これが勝利の方程式。だがそれは個人の戦いに於いてはどうだろうか。そういった風に考えてゆくと、やはり定番の心・技・体となるのではなかろうか。
しかしてシャークの場合、技と体に関しては申し分ない。
聞けば警察官であるおじさんや賢治兄ぃから護身術のようなモノも習っているし、実の兄弟のミリオタ的な影響でマーシャルアーツな動きまで出来ている。そしてカラダは小柄ながら学校で部活動には所属していないが、休日にはサバゲフィールドを駆けまわっているのだ。
瑠羽たち女子大生を含めた4人のなかでは一番体力面での下地が出来ているうえ、なおかつまだまだ成長期という大きな伸び代のオマケ付きときている。そんなシャークをダンジョンで鍛えたなら、メキメキと強くなるのは自明の理といえよう。
だが、である。
強さとは技や体だけで決まるモノではない。技と体を操る確かな心があってこそ、完成されるモノなのだ。今回の件も、きっとシャークに自身を抑えられるだけの心がもっとあれば、こんなおかしなことにはなってはいなかったはず。
そこで今もっとも優先して鍛えるべきは、まずはシャークの心という結論に達する。
しかし心というのは、一番鍛えるのが難しい。なにせ目には見えないし…心が成長しているかどうかなんて、その言動から推察するより他にない。そしてなにより、そうと解っていてもオレ自身が優れた教育者という訳ではないので、出来うることも限られている。
だがどうにかしてシャークの希望を叶えてやりたいとオレなりに頭を捻った結果、シャークを地下2層のゴキ溜りに放りこんでやった。
「うわぁああ~!ヤダヤダッ!嫌だって言ってるだろぉ~~ッ!!」
貸した部屋着に着替えてだるんだるんのスエット姿になったシャークが、ゴキたちに囲まれつんざくような悲鳴をあげる。
「我慢しろッ!苦手を克服し、心を強くするんだッ!」
「だ、だからって!こんなトコで瞑想なんて…!出来るわけないだろ~ッ!!」
「為せばなる!おまえにならできるッ!シャーク!サンドラを超えてみせろ!オレの妹なら、ここでもグースカいびきをかいて昼寝してみせるぞ!!」
「グッ…!」
サンドラの名を出すと、シャークが戸惑いながらも泣き叫ぶのをやめた。
流石のサンドラ効果。まぁその結果オレの妹は『巨大ゴキの群れのなかにいても平気で昼寝をするアレなヤツ』という設定が追加されてしまったが。まぁ架空の存在なので別にいいだろう。
ともかくもシャークはなんとか座禅を組み、眼を閉じて瞑想をはじめた。
唇はぷるぷると震え、こめかみもピクピクとしてまるで集中できてはいない。が、苦手な虫に囲まれながらもその姿勢にまで持っていけたのは大きな進歩。オレも離れた位置でシャークの対面に座り、瞑想姿勢を取る。
「集中しろ!メディテーションだ!心頭滅却すれば火もまた涼しッ!!」
「うぅぅ…!」
それに『いったいなんだろう?』と取り囲んだ巨大ゴキが近寄りその触角が身体に触れる。その度にビクビクと激しく身を震わせているシャーク。
大丈夫、意識を内向きに没入させ忘我の域に達すれば、周囲の事など気にならなくなる。まぁ心頭滅却すればと言ったお坊さんは、そのまま焼け死んだけど。ゴキたちは攻撃しなければ襲ってはこないし、蟲王の称号を持つオレの指示には従う。なのでこの修行で、しっかりと心を鍛えてほしい。
…。
「うわぁぁあ!もうヤダ~ッ!もぅ!ヤぅ…うぼろろろ…ッ!」
時間にして約8分。精神の限界を迎えたシャークが遂に錯乱し吐いた。その嘔吐物に『ご馳走だ!』と言わんばかりに巨大ゴキたちが群がっていき、それを見たシャークがさらに真っ青な顔をして気を失った。
(うむむ、これが限界か…)
しかしこの場は虫の苦手な人間にとっては、まさに悪夢の光景。8分でもかなり頑張った方だろう。
え、オレ?オレは平気よ。まぁ見ていてあまり気分の良い光景ではないけどさ。もともと精神力は一番高い数値だったし、そういった負荷には強いらしい。
ま、蓮コラとか苦手なモノもあるけど、ネットでアップされてるフケや毛穴の油を取り除いたり、歯石を除去する動画なんかは、どういう訳かつい観ちゃうんだよね。怖いもの見たさじゃないけど、こういう感覚はなんというのやら?
ああでも、やっぱゴキの内側を視るのは苦手。毛の生えた肢がワキワキしたり腹部が動いてるの視ると、ウゾゾって虫唾が走る。
はい終了~、おまえたちも解散解散。
ほら、早く散らないと踏んづけちまうぞ?今からゲロって失神したシャークを、介抱してやらないといけないんだから。
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