222 / 660
ダンジョンスタンピード第二波 火炎
しおりを挟む
まるで戦時下のような様相を呈してきた景色。
過去、第二次世界大戦の最中。東京大空襲のあった際には、みなこんな焦燥感に駆られながら逃げ惑っていたのだろうか…。
『『『ブラバババババババ…ッ!!!!』』』
「む、またヘリか。退避!みんな、急いで物陰に隠れろ!」
「「「は、はい!」」」
武装した自衛隊ヘリがしきりに上空を飛んでいる。モンスターを駆逐する為に。
だがそんななかオレ達は瀬来さんを除いては金ぴかで、非常によく目立つ。なかでもオレはモンスターチックな姿そのまんまなので、特に誤射をされかねない。しかも日本語を話しているのに、自衛官さん達に日本人だとなかなか信じてもらえなかった信頼と実績まである始末。
な訳で自衛隊ヘリが飛んでくる度に、こうして物陰に隠れてはやり過ごし移動を続けていたのだった。
「…ふぅ、やっと行ってくれたね」
「ホンマ、こないに胆が冷えるもんなんやなぁ…」
地上にはモンスター、上空には自衛隊ヘリと、移動は遅々として進まない。
「……」
だがそれでも移動を続けないと、母親の心配な瑠羽がまた厄介駄々っ子と化してしまう。
「瑠羽、もう少しだよ。きっと無事に、お母さんに会えるからね」
「…はい」
…。
だが、そうして移動を続けるオレ達の前に、またしても在り得ない存在が敵として立ちはだかった。
『ヴゥワァアアアン!ヴゥワアアアン…ッ!!』
行く手を塞ぐようにして現れたのは、白い高級外車。
有名なドイツ製の、日本でも金持ちに見られたい人間が大好きな車だ。それが威嚇をするかの如く、激しくアクセルを吹かしている。さらにはすでに何かを轢いたらしく、車体のフロント部分は醜く歪み血で赤く染まっている。
「江月さん、あれ…」
「うむ、どうもモンスターと間違えられているらしい。違うと示すのに手を振ってみよう」
こちらは紛らわしい恰好をしているのだ。なのでモンスターと間違われても致し方ない。そう思いアクセルを吹かす車に向け手を振ってみるが、白い高級外車は一層威嚇をするように激しくエンジン音を轟き響かせ返してきた。
「むむッ!手を振るだけでなく、マルやバツをハンドサインで送っても通じないだと!?」
「コーチ…!」
「うぅむ…。どうやら相手は、見境がなくなってしまっているらしい」
「ちょっ、どないするん…?」
『ヴワアアアアアァァアン…ッ!!』
その問いかけに答える前に、斬りつけるようにハンドルを切って頭をこちらに向けた白い高級外車。
アスファルトにタイヤのスピン音を鳴らしながら急発進。そんな高い排気量を誇る高級外車が、暗闇を走り抜けるような凄まじい勢いで迫ってくる。
「みんな、姿勢を低くしてオレの後ろに…!」
近付くことで視え難かったフロントガラスの向こう。
そこに短髪のメガネ小太り男性がハンドルを握っているのが確認できた。その男性に向け腕を突きだし、両の手の平をひらき停止を促す。が、男はそれに構わずに…いや、むしろニヤけた笑みをさらに深め車を加速させた。
おおむね真っ直ぐにしか走れない車を躱す事は、容易い。
だが一度躱したとて、この調子ではまたすぐに襲ってくるのだろう。そしてもはや車はすぐ目の前。ニヤけ短髪メガネの小太りが、ぶつかった際の衝撃に備えハンドルを硬く握っているのがよく視て取れる。
「なんと、愚かな…。喰らえ、ジャンプ台のポーズッ!!」
白い高級外車と接触するその寸前。オレは素早くジャンプ台のポーズをとる。
両脚を肩幅以上に開いて前屈し、右手を前に、左手を後ろにと真っ直ぐ伸ばす。そう、エアロビなんかでよくやっている、あの格好だ。そして残っていた片側の増設アームをしっかりと伸ばすのも、忘れない。
結果、オレは白い高級外車に綺麗に轢かれ、オレを轢いた白い高級外車は綺麗に跳ね上がって宙を舞う。
『ヴワアアアァァア~~~~ン…ッ!!』
飛んだまま宙で左に3/4回転した白い高級外車が2.6秒ほど滑空。
そうしてフロント部分から着地し、オレンジ色の火花を散らしながら逆さで滑って行く。きっとさぞ、驚きと興奮に満ちた愉快な空の旅だったことだろう。
「コーチッ!」
「江月さん、大丈夫!?」
「ああ、なんともない。だが、おもいきり轢かれてしまったよ」
「ホンマ災難やったねェ、背中にくっきりタイヤの跡ついとるよ?」
「う~む参ったな、これはもう人身事故じゃないか」
「いきなり車で撥ねようとするなんて、ほんとヒドイわよね!私文句言ってやるわ!」
「万智、ちょっと待ちぃ!いきなり車で人撥ねようなんてする頭おかしいのに、不用意に近づいたらアカンよ!」
「あ、それもそうか…!」
「あの…。でも事故が起きてるから、助けに行ったほうが…」
「瑠羽ちゃん、あのな…。もしコォチがおらんかったら、あの車に轢かれとったのウチらの方やで?それにまず、『事故起こしてすいません、大丈夫ですか』って向こうから謝りに来るのが筋やない??」
「え…と、でも車も逆さまになってるし…、運転手さんも怪我してるんじゃ…」
『ボンッ!!』
起きた事態にどうするべきかと彼女らが相談していると、当の高級外車が真っ赤な火を噴いて燃え上がった。どうやらガソリンに引火してしまったらしい。
『ぼぉぉおおぉおおおお~~~ッ!!』
ふぅむ、コレは酷い。コレでは熱くてまったく近づけないな。ま…火葬の手間が省けて良かったじゃないか。
じゃ、そういうことで。
「ぎゃああああああ~~ッ!」
…。
モンスターの他に、二度も人間の襲撃を受けたオレ達。
まったくなんてことだ。
この酷い混乱に、精神の箍が緩んでしまったとでもいうのか。ただまぁ平時でも精神の箍が緩みきって他人を襲う輩は常日頃から沸いていたので、なにも混乱のせいとばかりも言いきれないだろう。
うむ、気を付けろ。チャンスがあればこれ幸いと悪事に走るクズは、常にすぐそばに存在するのだ。
…。
午後6時。
しかしそんなこんなでやっとこ糧品宅のある住宅地までやって来たのだが、なんとここでも瑠羽の住んでいるマンションが燃えていた。
「そんなッ!おかあさん!おかあさぁ~んッ!!」
「あ、待つんだ瑠羽!」
火事の火元は1階、だがその上には瑠羽の家が。そんな火の手の上がった自宅を視て混乱をきたした瑠羽が、止めるのも聞かずに走り出してしまう。
暗闇が燃え上がった炎で赤く染まり、熱波が唸りをあげて逆巻いている。またしても火事。マンションの駐車場には建物から避難した人達と、それを襲いに来たモンスターとで追いかけっこ状態。そんな中に瑠羽は飛び込んで行ってしまった。
「瑠羽ちゃんはウチが!コォチは火事の方を…!」
早くもマンションの階段にとりつき駆け上がっていく瑠羽を、仁菜さんが追ってくれる。
「よし、しかしこのモンスターの数は…」
「江月さん、あの靴ベラ貸して!モンスターは私がなんとかするから!」
左手にエクスカリバールを構えた瀬来さんが、高周波ブレードっぽい力を秘めたミスリル靴箆を要求。そういえば3人とも初日にはしっかりと持っていたカメムシ盾を、いつの間にか失くしてしまっている。
「解った、気を付けるんだぞ」
「うん、解ってる!うおおぉ~ッ!」
ミスリル靴箆を受け取った瀬来さんがその先端を白く発光させると、気合と共に混乱の駐車場へと斬り込んでいく。
『『『ぶぉぉぉおおッ!ごぉおおおおぉッ!!』』』
と、その間にも火勢はどんどんと勢いを増す。
「クッ…こちらもぐずぐずとしていられない!チャクラオン…!御霊フルブラストッ!!」
『『『びゅきぃーんッ!』』』
魔力を高め御霊たちをフル召喚。
するとすぐに輝く虹色の光と共にピクシークィーンが現れ、胸からは小さな塩太郎が生え、義足からはレッドスライムがうねうねと湧き出てくる。
「よし、こちら側からは消火が難しい。南側に回り込むぞ!」
…。
『『『ぶわぁぁあ~ッ!ごぉおおおおおぉ~~ッ!!』』』
そうしてマンションの南面に回り込むと、こちらは駐車場側よりも一層火の燃え方が激しい。だが…。
「たのむピクシークィーン!空気を遮ってくれ!」
「………(スン)!」
ピクシークィーンが風を操り火災現場の周りに空気の動かない層を作りだすと、激しく燃えていた炎の勢いが目にみえて衰えていく。
「塩太郎は断炎板を!レッドスライムは遊水道から水をひいてくるんだッ!」
(…ッ!…ッ!…ッ!!)
『うにゅにゅ~ん…!』
『『『ずばんッ!ずばーんッ!!』』』
塩太郎の生み出した分厚い岩塩の板が、延焼している部屋へと次々に突き刺さっていく。そう、塩は簡単に燃えたりはしない。だからこれで、だいぶ延焼も抑えられるはず。
しかしこうまでしても炎の勢いは治まらない。どうやらガス管がやられてしまっているようだ。
日本の神話では伊邪那岐命が火の神・軻遇突智を殺してしまったから火はコントロールの出来ないモノとされているが、いかにも何とも御し難い。
「むむむ…!だがレッドスライムが水を確保して戻るまではなんとしても押え込まねば!溢れ出ろ粘液ッ…そして荒ぶる炎を覆い尽くせッ!粘液大奔流ッ!!」
そうだ。今こそ我が粘液の力を見せる時、いざッ!
『『『うぞぞぞぞぞ…きゅばあ!ぶじゅゅううううううぅぅ!!!!』』』
スライムのようにうねうねと動く粘液の津波が炎に触れると、たちまちモウモウと白煙が沸き起こり激しい蒸発音が響き渡る。
『『『ぶじゅゅううううううぅぅ……!!!!』』』
だが、押し負けてはいない…。なぜならば、粘液は炎に対しても強いから。
通常、激しく焼けている可燃物に水をかけても熱が残っていれば、蒸発してしまったり流れ落ちてしまえば再び発火現象を起こしてしまう。だがしつこくその場に留まり続ける粘液ならば、唯の水とはひと味もふた味も違うのだ。
しつこくそこに存在し続ける事で、燃焼に必要な酸素の供給を絶つことができるから。
『(うにゅうううう…!つんつん)』
「おお、待っていたぞレッドスライム!よし、合体攻撃だ!それ、ハイドロアタック!!」
と、そこに遊水道から長細いホースのような姿となって水をひいてきてくれたレッドスライム。そこで力を合わせ、今度は粘性の高い消火用水を燃え盛る炎に向けて浴びせかける。
『『『ぶばしゅうううう~~!!!』』』
1階の火元となった部屋とその両隣。そして上にある2階3階の5部屋が全焼してしまった。が、御霊たちの協力によって、6階にある瑠羽の家は無事守ることが出来た。
うぅむ、なにやら火に祟られまくる一日だったが、結果オーライ。うむ!これぞチームワークの勝利だ。
過去、第二次世界大戦の最中。東京大空襲のあった際には、みなこんな焦燥感に駆られながら逃げ惑っていたのだろうか…。
『『『ブラバババババババ…ッ!!!!』』』
「む、またヘリか。退避!みんな、急いで物陰に隠れろ!」
「「「は、はい!」」」
武装した自衛隊ヘリがしきりに上空を飛んでいる。モンスターを駆逐する為に。
だがそんななかオレ達は瀬来さんを除いては金ぴかで、非常によく目立つ。なかでもオレはモンスターチックな姿そのまんまなので、特に誤射をされかねない。しかも日本語を話しているのに、自衛官さん達に日本人だとなかなか信じてもらえなかった信頼と実績まである始末。
な訳で自衛隊ヘリが飛んでくる度に、こうして物陰に隠れてはやり過ごし移動を続けていたのだった。
「…ふぅ、やっと行ってくれたね」
「ホンマ、こないに胆が冷えるもんなんやなぁ…」
地上にはモンスター、上空には自衛隊ヘリと、移動は遅々として進まない。
「……」
だがそれでも移動を続けないと、母親の心配な瑠羽がまた厄介駄々っ子と化してしまう。
「瑠羽、もう少しだよ。きっと無事に、お母さんに会えるからね」
「…はい」
…。
だが、そうして移動を続けるオレ達の前に、またしても在り得ない存在が敵として立ちはだかった。
『ヴゥワァアアアン!ヴゥワアアアン…ッ!!』
行く手を塞ぐようにして現れたのは、白い高級外車。
有名なドイツ製の、日本でも金持ちに見られたい人間が大好きな車だ。それが威嚇をするかの如く、激しくアクセルを吹かしている。さらにはすでに何かを轢いたらしく、車体のフロント部分は醜く歪み血で赤く染まっている。
「江月さん、あれ…」
「うむ、どうもモンスターと間違えられているらしい。違うと示すのに手を振ってみよう」
こちらは紛らわしい恰好をしているのだ。なのでモンスターと間違われても致し方ない。そう思いアクセルを吹かす車に向け手を振ってみるが、白い高級外車は一層威嚇をするように激しくエンジン音を轟き響かせ返してきた。
「むむッ!手を振るだけでなく、マルやバツをハンドサインで送っても通じないだと!?」
「コーチ…!」
「うぅむ…。どうやら相手は、見境がなくなってしまっているらしい」
「ちょっ、どないするん…?」
『ヴワアアアアアァァアン…ッ!!』
その問いかけに答える前に、斬りつけるようにハンドルを切って頭をこちらに向けた白い高級外車。
アスファルトにタイヤのスピン音を鳴らしながら急発進。そんな高い排気量を誇る高級外車が、暗闇を走り抜けるような凄まじい勢いで迫ってくる。
「みんな、姿勢を低くしてオレの後ろに…!」
近付くことで視え難かったフロントガラスの向こう。
そこに短髪のメガネ小太り男性がハンドルを握っているのが確認できた。その男性に向け腕を突きだし、両の手の平をひらき停止を促す。が、男はそれに構わずに…いや、むしろニヤけた笑みをさらに深め車を加速させた。
おおむね真っ直ぐにしか走れない車を躱す事は、容易い。
だが一度躱したとて、この調子ではまたすぐに襲ってくるのだろう。そしてもはや車はすぐ目の前。ニヤけ短髪メガネの小太りが、ぶつかった際の衝撃に備えハンドルを硬く握っているのがよく視て取れる。
「なんと、愚かな…。喰らえ、ジャンプ台のポーズッ!!」
白い高級外車と接触するその寸前。オレは素早くジャンプ台のポーズをとる。
両脚を肩幅以上に開いて前屈し、右手を前に、左手を後ろにと真っ直ぐ伸ばす。そう、エアロビなんかでよくやっている、あの格好だ。そして残っていた片側の増設アームをしっかりと伸ばすのも、忘れない。
結果、オレは白い高級外車に綺麗に轢かれ、オレを轢いた白い高級外車は綺麗に跳ね上がって宙を舞う。
『ヴワアアアァァア~~~~ン…ッ!!』
飛んだまま宙で左に3/4回転した白い高級外車が2.6秒ほど滑空。
そうしてフロント部分から着地し、オレンジ色の火花を散らしながら逆さで滑って行く。きっとさぞ、驚きと興奮に満ちた愉快な空の旅だったことだろう。
「コーチッ!」
「江月さん、大丈夫!?」
「ああ、なんともない。だが、おもいきり轢かれてしまったよ」
「ホンマ災難やったねェ、背中にくっきりタイヤの跡ついとるよ?」
「う~む参ったな、これはもう人身事故じゃないか」
「いきなり車で撥ねようとするなんて、ほんとヒドイわよね!私文句言ってやるわ!」
「万智、ちょっと待ちぃ!いきなり車で人撥ねようなんてする頭おかしいのに、不用意に近づいたらアカンよ!」
「あ、それもそうか…!」
「あの…。でも事故が起きてるから、助けに行ったほうが…」
「瑠羽ちゃん、あのな…。もしコォチがおらんかったら、あの車に轢かれとったのウチらの方やで?それにまず、『事故起こしてすいません、大丈夫ですか』って向こうから謝りに来るのが筋やない??」
「え…と、でも車も逆さまになってるし…、運転手さんも怪我してるんじゃ…」
『ボンッ!!』
起きた事態にどうするべきかと彼女らが相談していると、当の高級外車が真っ赤な火を噴いて燃え上がった。どうやらガソリンに引火してしまったらしい。
『ぼぉぉおおぉおおおお~~~ッ!!』
ふぅむ、コレは酷い。コレでは熱くてまったく近づけないな。ま…火葬の手間が省けて良かったじゃないか。
じゃ、そういうことで。
「ぎゃああああああ~~ッ!」
…。
モンスターの他に、二度も人間の襲撃を受けたオレ達。
まったくなんてことだ。
この酷い混乱に、精神の箍が緩んでしまったとでもいうのか。ただまぁ平時でも精神の箍が緩みきって他人を襲う輩は常日頃から沸いていたので、なにも混乱のせいとばかりも言いきれないだろう。
うむ、気を付けろ。チャンスがあればこれ幸いと悪事に走るクズは、常にすぐそばに存在するのだ。
…。
午後6時。
しかしそんなこんなでやっとこ糧品宅のある住宅地までやって来たのだが、なんとここでも瑠羽の住んでいるマンションが燃えていた。
「そんなッ!おかあさん!おかあさぁ~んッ!!」
「あ、待つんだ瑠羽!」
火事の火元は1階、だがその上には瑠羽の家が。そんな火の手の上がった自宅を視て混乱をきたした瑠羽が、止めるのも聞かずに走り出してしまう。
暗闇が燃え上がった炎で赤く染まり、熱波が唸りをあげて逆巻いている。またしても火事。マンションの駐車場には建物から避難した人達と、それを襲いに来たモンスターとで追いかけっこ状態。そんな中に瑠羽は飛び込んで行ってしまった。
「瑠羽ちゃんはウチが!コォチは火事の方を…!」
早くもマンションの階段にとりつき駆け上がっていく瑠羽を、仁菜さんが追ってくれる。
「よし、しかしこのモンスターの数は…」
「江月さん、あの靴ベラ貸して!モンスターは私がなんとかするから!」
左手にエクスカリバールを構えた瀬来さんが、高周波ブレードっぽい力を秘めたミスリル靴箆を要求。そういえば3人とも初日にはしっかりと持っていたカメムシ盾を、いつの間にか失くしてしまっている。
「解った、気を付けるんだぞ」
「うん、解ってる!うおおぉ~ッ!」
ミスリル靴箆を受け取った瀬来さんがその先端を白く発光させると、気合と共に混乱の駐車場へと斬り込んでいく。
『『『ぶぉぉぉおおッ!ごぉおおおおぉッ!!』』』
と、その間にも火勢はどんどんと勢いを増す。
「クッ…こちらもぐずぐずとしていられない!チャクラオン…!御霊フルブラストッ!!」
『『『びゅきぃーんッ!』』』
魔力を高め御霊たちをフル召喚。
するとすぐに輝く虹色の光と共にピクシークィーンが現れ、胸からは小さな塩太郎が生え、義足からはレッドスライムがうねうねと湧き出てくる。
「よし、こちら側からは消火が難しい。南側に回り込むぞ!」
…。
『『『ぶわぁぁあ~ッ!ごぉおおおおおぉ~~ッ!!』』』
そうしてマンションの南面に回り込むと、こちらは駐車場側よりも一層火の燃え方が激しい。だが…。
「たのむピクシークィーン!空気を遮ってくれ!」
「………(スン)!」
ピクシークィーンが風を操り火災現場の周りに空気の動かない層を作りだすと、激しく燃えていた炎の勢いが目にみえて衰えていく。
「塩太郎は断炎板を!レッドスライムは遊水道から水をひいてくるんだッ!」
(…ッ!…ッ!…ッ!!)
『うにゅにゅ~ん…!』
『『『ずばんッ!ずばーんッ!!』』』
塩太郎の生み出した分厚い岩塩の板が、延焼している部屋へと次々に突き刺さっていく。そう、塩は簡単に燃えたりはしない。だからこれで、だいぶ延焼も抑えられるはず。
しかしこうまでしても炎の勢いは治まらない。どうやらガス管がやられてしまっているようだ。
日本の神話では伊邪那岐命が火の神・軻遇突智を殺してしまったから火はコントロールの出来ないモノとされているが、いかにも何とも御し難い。
「むむむ…!だがレッドスライムが水を確保して戻るまではなんとしても押え込まねば!溢れ出ろ粘液ッ…そして荒ぶる炎を覆い尽くせッ!粘液大奔流ッ!!」
そうだ。今こそ我が粘液の力を見せる時、いざッ!
『『『うぞぞぞぞぞ…きゅばあ!ぶじゅゅううううううぅぅ!!!!』』』
スライムのようにうねうねと動く粘液の津波が炎に触れると、たちまちモウモウと白煙が沸き起こり激しい蒸発音が響き渡る。
『『『ぶじゅゅううううううぅぅ……!!!!』』』
だが、押し負けてはいない…。なぜならば、粘液は炎に対しても強いから。
通常、激しく焼けている可燃物に水をかけても熱が残っていれば、蒸発してしまったり流れ落ちてしまえば再び発火現象を起こしてしまう。だがしつこくその場に留まり続ける粘液ならば、唯の水とはひと味もふた味も違うのだ。
しつこくそこに存在し続ける事で、燃焼に必要な酸素の供給を絶つことができるから。
『(うにゅうううう…!つんつん)』
「おお、待っていたぞレッドスライム!よし、合体攻撃だ!それ、ハイドロアタック!!」
と、そこに遊水道から長細いホースのような姿となって水をひいてきてくれたレッドスライム。そこで力を合わせ、今度は粘性の高い消火用水を燃え盛る炎に向けて浴びせかける。
『『『ぶばしゅうううう~~!!!』』』
1階の火元となった部屋とその両隣。そして上にある2階3階の5部屋が全焼してしまった。が、御霊たちの協力によって、6階にある瑠羽の家は無事守ることが出来た。
うぅむ、なにやら火に祟られまくる一日だったが、結果オーライ。うむ!これぞチームワークの勝利だ。
42
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

