うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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瀬来家間近

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前回までのあらすじ。仁菜さんの轢いたのは山ゴブリンだった。

うん、まぁこれが例え海ゴブリンだろうが川ゴブリンだろうが関係ない。特異迷宮ことダンジョンから発生した特異生物と呼ばれるモンスターは、特定害獣として須らく駆除対象。なのでいくら殺してしまおうが、ここ日本では罪に問われないのだ。ゆえに問題なし。

ま、それはともかくとして、山ゴブリンの確認を終えた後はダメージを受けた車の点検を行う。

「ホンマ…、ホンマごめんしてなぁコォチ」
「大丈夫だよ仁菜さん。ぜんぜん怒ってないからそう心配しないで」

車を傷つけてしまった仁菜さんは、それを酷く気にしている様子。

でも車の傷くらいでオレは怒らない。そういう意味でも、お求めやすい中古車を買ったのだし。まぁ愛着を抱いているバイクを心無い理由で傷つけられたのならそれはもう烈火の如く怒りもするだろうけど、これは不慮の事故。なので怒りはしない。

「あ~、これまたベッコリ凹んでるねぇ」
「……」

車のフロント部を確認すると、山ゴブリンに衝突した際の凹みがしっかりと確認できる。

顔拓とまではいかないが、フロント部に頭部と肩部のぶつかった跡の隠しようもない凹みがコレありけり。

だが、しかし。

「ふ~む。ま、でもこの程度ならなんでもないさ。そう、スキル【粘液】ならばね。では、そして粘液はねばりだす、ザ・ミューカス!」

オレはフロント部に生じた凹みに対して、非常に粘着性の高い粘液を生み出し付着させる。

「さ、瀬来さん。この粘液を掴んでゆっくりと引っ張ってみて」
「え、私?別にいいけど、これでどうなるの…??」

瀬来さんが車に付着させた粘液をゆっくりと引っ張ってゆくと、ボコッとかべコン!なんて音を響かせながら、次第に凹みが元の状態へと戻っていく。

「わ、すご~い!あっという間に元に戻った!!」

ふふふ、どうだすごかろう。これぞ粘液のパワーよ。

普通、車の凹みを直そうとした場合、塗装を剥がしたうえで金属の棒などを溶接し、ソレを引っ張ることで凹みを引っ張り出して補修を行う。それはそれは面倒で手間のかかる作業だ。しかしスキル【粘液】程の吸着力があれば、わざわざ塗装を剥がしたりすることもなく凹みを引っ張り出すことが可能。

故にこうして、簡単に車の凹みが直せてしまうのだ。

「ほら、見てごらん。カンタンに直せただろ?だから仁菜さんもそんなに気に病む必要はないんだよ」
「コォチ…、ホンマに、おおきにな…」

そう言うと仁菜さんは、目元に涙を浮かべるほどに感謝している。

はて?以前に車の修理云々で酷いトラブルでも遭ったのだろうか…??まぁともかくもオレとしては仁菜さんの好感度が爆上がりしたようなので万々歳だ。

「さ、いいんだよ静。うんうん、よしよしいい子だね」
「うぅん、コォチ…。おおきに、おおきになぁ…」

真昼間の、しかも瀬来さんの見ている前でもしなだれて抱きついてくる仁菜さん。

こんな姿は、普段の彼女ならまずみせない筈。うむむ、これはなんともレアケース。だが役得なので、ここは甘んじてハグしとこう…。

……。

その後は運転を代わり、瀬来さんのナビで草津温泉街を抜ける。

草津はソロツーリングで何度か訪れた地だが、やはり硫黄臭い温泉の匂いを嗅ぐとなんとも旅情をくすぐられる。

「ふふ、江月さん温泉入りたいの?さっきからずっと鼻ひくひくさせてるよ?」
「お、そうか?う~む、温泉が好きだからかなぁ」

ぶっちゃけ、贅沢をたいして知らないオレは精神的快楽において、温泉以上のモノを知らない。無論いまでは彼女達との愛おしい時間を除けばという話であるが。

かつてボッチだった頃、終えた後でむなしさの残るギャルゲやエロゲに比べれば、温泉というのは心身ともに癒しを齎してくれる健全かつ最高の贅沢だった。

「落ち着いたら好きなだけ浸かりにくればいいよ。あ、そこ左ね」
「はいよ。ん~、でもだいぶ普段は使われてないような道路になってきたぞ…」

しばらく走るとアスファルトこそ敷かれているものの、路面には倒木に近いような枝や枯葉がかなり堆積している。バイクであれば堆積した落ち葉でスリップし、転倒してしまいそうだ。

「避難してる人が多いみたいだし、この道路もしばらく使われてないみたいね。でももうすぐだから…あ、ホラ見えてきた。ってエッ、なにアレ!?」

林道を抜け、ひらけた盆地に差し掛かる。

と、ぬかるんだ畑で逃げ惑うゴブリンを、後ろから追い轢き殺しているトラクターの姿が視えたのだった。
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