うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

文字の大きさ
355 / 660

タイマンバトル

しおりを挟む
枝葉を引き千切りながら現れたその姿に、3人そろって絶句。これには動揺を隠せない。

「な、馬鹿なッ!?」
「え、ウソやろ…」
「う、なんなのよコイツ!」

藪の向こうから現れたのは、身の丈2メートルを超えるめっさ筋骨隆々なカンガルーだった。


『バキバキバキ…』
「ふしゅるるぅ~~ッ!」

「な、なんで草津の山んなかに、カンガルーが…??」

うん、ちょっと意味がわからない。流れ的に100%鬼だと思ったのに。なぜにカンガルー?て、あのトンガリは耳だったのか。

だが混乱をきたしたとしても、仕方のない事と思える。まったく想定外もいいとこなのだから。さらにもしや狐や狸にでも化かされているのか、ともチラと考えてみる。が、日本にいる狐や狸がカンガルーの存在を知っているとも思えない。

ということは、やはりモンスター?

「ふっしゅ、むっしゅ!ぶしゅるるるぅ!!」

しかしなんとも、マッシブが過ぎる。

そんな原〇夫風味なマッシヴカンガルーが、自身の筋肉をアピールするかの如く前肢を上下に動かす。そして雑にケツをかきつつ、こちらを威嚇してくるではないか。

う~む、まるで「おまえたちなど俺の相手ではない」といった態度。しかしその瞳は油断なくオレを捉え、まさに一分の隙もない。

(ほぉ、オレとの対戦をご所望か。よしいいだろう、相手になってやる…)

かかってこいとばかりに首を振るマッシヴカンガルーに、オレもその気になった。慣れない山という環境で慎重に行動していたが、それにもすこし飽きていたところだ。

そうして一歩前へと踏み出そうとしたのだが、ここで瀬来さんが待ったをかけた。

「待って江月さん!こんなヤツ、私ひとりで充分だわッ!」
「え?」

そういって前へと踏み出す瀬来さん。

(え、怖くないの?たしかにカンガルーは草食動物だけどさ。身長差は歴然だし、あの筋肉だよ??)
「だいじょうぶ、私にまかせて…」


だがしっかりとオレをみつめ返してくる瀬来さんの瞳には、確かな自信の輝きが。

「むむ、だがあの筋肉だ。相当に手強いぞ。首相撲と蹴りには、充分注意するんだぞ」
「わかってる。私だってちゃんと、江月さんの指導を受けてるんだから!」

「よし、わかった任せよう。しっかりな」
「ええ、いってくる!」

シュカポンとマスクが閉じて瀬来さんの顔が視えなくなると、プシュッと空気の抜ける音。

打撃を警戒して、しっかりマスクの中にも粘液を満たしたようだ。それを見届けると、戦うスペースを空けるためオレと仁菜さんは後ろへとさがった。

「あんなん言うてもう…、あの子ホンマにだいじょうぶやろか?」
「瀬来さん、ケンカ度胸だけはあるからな。でも今回はそれだけじゃなく、かなり自信もありそうだ。期待してみよう」

そんな様子を、マッシヴカンガルーは攻撃せずにただ腕を組んで待っていた。非常に雑な組み方だが、風格を醸そうとしている風でもある。

「お、はじまるぞ…」
「ホンマにもう」

両者が木々の間に設けられたバトルフィールドで睨みあう。

瀬来さんは腰に据えられた骨ハンマーには手を伸ばさず、徒手のまま。マッシヴカンガルーも身ひとつ。だが、大きな身体そのものが強力な武器になる。あの強靭な筋肉の後足で蹴られたならば、たとえ蠅女王のスーツを着ていたとしても無事では済まないだろう。

「「ッ!」」

戦いがはじまった。

瀬来さんが姿勢を低く構えるのと同時に、マッシヴカンガルーも重心を後ろに。

その太い尻尾に体重をかけ、いつでも蹴りを繰り出せる態勢に移行したのだ。すると前傾の瀬来さんとマッシヴカンガルーが後ろに反り返るような態勢をとったことで、余計にその体格差が際立って見える。

「やっ!」

まず掛け声とともに先に仕掛けたのは瀬来さん。しかし真正面から突っ込んだので、マッシヴカンガルーからの鋭い蹴りに晒される。

「む、スライディング!?」

カンガルーキックをスライディングで避けマッシヴカンガルーの左手へと抜ける。だが間髪入れずに尻尾が振られ、その追撃を飛び込み前転で躱す瀬来さん。巧い、これで背後に回ったぞ。

しかしここで瀬来さん。

背後にあった木の幹を蹴って飛び上がると、脚が上にくるサマーソルト態勢でマッシヴカンガルーの顔に酸霧と粘液拘束を見舞った。

「アシッドミスト!ミューカスバインド!たーッ!!」
「ブフッ!?」

酸霧での目潰し。それを嫌ってマッシヴカンガルーが顔を背けたところに粘液弾が命中。

すると空中で腰の骨ハンマーを引き抜き、事態を飲み込めずに混乱するマッシヴカンガルーのドタマをそれでおもいきりブッ叩いた。

『どがんッ!!』

「「ええ~~ッ!?」」

これにはオレと仁菜さんもドン引き。

アレだけ自信満々かつ相手の土俵で戦う態で出て行ったのに、はじめてみればキックボクシングなら反則攻撃のオンパレード。

いや、生き残るための戦い方として、たしかにそう教えたのはオレだけどさ。まさかその通りにやるとは思わなかった。

だってここは流れ的に、ぜったい格闘オンリーでやるところジャンね!
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...