うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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粘液地獄

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攻撃性の低い巨大カブトムシの幼虫(仮)は無視して通過し、地下2層へと降りてきた。と、そこは地下1層と違い、いかにも洞窟然とした雰囲気。

そして、そこにいたのはやっぱり山ゴブリン。

「う~む、やはりいたか」

「せやねぇ。でも意外と早かったんちゃう?」
「うんうん、山のなかをゴブリンがウロついてたから、このダンジョンも発見できたんだしね」

オレ達と遭遇したのは棍棒を手にした山ゴブリンが3体。

「ゲギャ!グゲギャ!!」
「「ギャッ!ギャッ!」」

出くわしたことに一瞬だけ驚いた様子をみせていたが、すぐに声を掛け合うとこちらに向かってきた。距離としては約30メートル。そんな直線を、山ゴブリン3体が縦一列になって突撃してくる。

(う~む、なんかどっかで観たようなフォーメーションだな。でも、それって貫通力のある攻撃を貰ったら一撃で全員オダブツだぞ…?ま、今回はそんな攻撃はしないけどね…)

「それっ粘液罠生成、クリエイトミューカストラップ!オーバーゼア!」

解説しよう。粘液罠生成とは、べっとりなトリモチ粘液で罠を作ること。

いやそのまんまやんけ!というツッコミはさておき、地面に粘液をまき散らすと先頭を走っていた山ゴブリンは魔法をなにか失敗したとでも思ったのかニヤリと口角をあげて笑い、あざけるように一声咆えて走る脚を速めた。

「ゲギャ!グゲギャギャッ…ギュピ!?」

だが粘液罠に足を踏み入れた途端、足の裏がベタリと張りつき大転倒。そこへ後続の2体も追突し、もつれ合うようにして粘液の虜とあいなった。

「ハイ…、お疲れさん」
「ほなな。窒息して死なんよう、気ィ付けるんやでェ~」

地面に撒かれた高粘性粘液に顔を張り付かせ身動きの取れなくなった山ゴブリンどもの上を、軽やかに跳んでパス。

そう、高粘性粘液に囚われたが最後。もはやどうすることもできないのだ。

唯一脱出できる方法としては、自身で生み出した魔力を粘液に浴びせ魔力で生成されたモノの効力に干渉すること。

しかし粘液に顔を張り付かせ身動きの取れない山ゴブリンどもは、悪態のような泣き声をあげただもがくのみ…。ま、仮に冷静に対処して魔力を練れたとしても、オレ特製の粘液がゴブリン程度が生み出した魔力に負けるわけないけどな。


……。

「「ゲギャギャ!?」」
(フハハハハ…!悶えろ!苦しめッ!決して抗えぬ粘液地獄のなかで、己が愚かさを存分に悔いるがいいッ!!)

とまぁそげな感じで、山ゴブリンを見つけた端から粘液で緊縛放置。

コレはアレよ。ダンジョンてばモンスターを倒しちゃうと、リポップさせちゃうジャン?このムーブは、それを防止するという意味があるのよセニョール&セニョリータ。

だって…ねェ。

いまさらゴブリンとか、実戦経験の足しにもならなければ生命エナジーも微々たるもの。そんなモンスターを倒してリポップによりまたエンカウント率を高めてしまうなんて、時間と手間の無駄でしかない。

なので先を急ぐのであれば、緊縛放置がもっとも効率的であるという答えが出てくるのだ。

「……」
「ほらマサル。そんなの気にしなくていいからな、先を急ぐぞ」

マサルが粘液緊縛された山ゴブリンを見て不思議そうに首を傾げている。

が、戦闘能力を奪われたモンスターに攻撃を加えるほど好戦的でもない様子。うん、おまえも並みのカンガルーよりずっと賢いはずだから、言葉が通じなくても解るだろ?

なんにせよ、オレ達は自由に使えるマイダンジョンを2つも有している。

コレが実にデカい。つまりは実戦経験や生命エナジーが得たければ、いくらでも好きなだけ獲得できるという環境にあるのだから。なのでダンジョンクリアを目標にしたダンジョンでは、クリア優先でモンスターを放置しまくったとしても、全然惜しくはないのだ。

「粘液弾…えいっ!」
「ヤッ!そこでそのまま大人しくしときっ!」


そしてオレ達は、全員がスキル【粘液】持ち。

コレが一体どういうことかというと、たとえ誰を狙おうとも3人から繰り出される粘液の飛沫からは決して逃れることはできないということ。どうだ、これはメッチャ恐ろしかろうデュフフフ…。
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