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eye of the beholder
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今日もバッティングセンターへと訪れていた糧品瑠羽。
華麗かつキレのあるフォームで付喪神化したカツオくんバットを振ると、打球は一直線にホームランと描かれた的を叩く。
(ホォムラァ~~ン!)
「やったねカツオちゃん!10回連続成功、記録更新だよ!」
ピョンと小さく跳ねてガッツポーズ。そして手にしたバットに向け嬉しそうに話しかけている姿は、完全に不思議ちゃん。でも瑠羽にはそんな時間が、非常に楽しくもあった。
実際、糧品瑠羽は付喪神化したカツオくんバットと意識を交流させることで大きく変わった。
今までのただ守られるだけだった立場から誰かの面倒をみる立場に変わったことで、精神的にも成長がみられたのだ。
それにより道で困っている小学生にも声をかけられるようになり、仁菜静絵の双子の兄弟を救うことも出来たのだった。そして今、彼らは慕う姉の元へと向かっている。
「あ、待ってるお客さんがいるから出ないと。一回休憩だね」
(ホ~ムラァン…)
そうして待合ベンチに戻ってきた瑠羽は荷物の中から母親に持たされた水筒を取り出し、それに口をつけ喉を潤す。
「ハァ、冷たくておいしい」
だがそんな瑠羽の姿を、ジッと見詰める男の姿があった…。
それは誰あろうオッチャン。このバッティングセンターの店番を務めるオッチャンだった。
普通、こういった施設では飲食物の持ち込みはNG。たとえ張り紙などがされてなくとも、喉が渇いたのなら据えられている自販機で飲み物を買うのがお約束。それを糧品瑠羽は世間への疎さから、気付けないでいた。
いや、彼女が常日頃から通っている図書館もある公民館では、ベビーカーでの親子連れなどが持参したおにぎりなどを館内で食べているのも日常の風景。そんな様子をごく自然なモノとして捉えてしまっていた瑠羽は、知らぬ間に世間のお約束を破ってしまっていたのだった。
だが、バッティングセンターのオッチャンはそれを見咎めるでもなく目を細めて小さく笑うと、再び読んでいた新聞へと視線を戻すのだった。
いったい、それはナゼ?
その答えは、オッチャンが糧品瑠羽のことをいたく気に入っていたからであった。思い返すまでもなく、その記憶はいまだ新しく、かつ鮮烈だった。
オッチャンが初めてこの少女を目にしたのは、彼女が物珍しそうにキョロキョロしながらバッティングセンターに入ってきた日のこと。小柄でまだあどけない顔立ち、背格好からして年ごろは中学生くらいだろうか。そして「利用したいのですけど、どうすればいいですか?」と訊いてきたのだ。
そこでオッチャンはピンときた。
はは~ん。さてはテレビか何かに影響されて、自分でもバットを振ってみたくなったクチか。なるほど、でなきゃこれぐらいの年頃の子が、ひとりでバッティングセンターになど来るはずもないもんな。
と、そう目星をつけると丁寧に利用法を説明してやった。
すると真剣に説明を聞き、しっかりとメモまでとる少女。そしてモタつきながらもバッターボックスへと向かっていった姿を微笑ましく見送り、定位置であるカウンターへ戻ろうと踵を返した時。背後で見事なまでの快音が鳴り響いたのだった。。。
そのおどろき振り向いた瞬間、呼吸がとまる。
なぜならそこには、髪をなびかせた白いワンピース姿の愛らしい少女が、綺麗なフルスイングで打球をネットに突き立てていたのだから。
だが、奇跡はそこで終わらない。
次も、その次も…。ピッチングマシーンから繰り出されたボールは見事に打ちかえされ、次々ネットに突き刺さった。
そして、視た。視てしまった。
愛らしく華奢にみえる少女がホームランを打つたびに、手にした赤いバットに向け嬉しそうに話しかけている姿を。。。。
(ア、アレは!アレはボールはトモダチ的なアレやないけッ!!)
昭和生まれなオッチャンの心にはこうして糧品瑠羽の姿が鮮烈に刻み込まれ、一番お気に入りのお客さんとなったのだった。
だが…、糧品瑠羽の虜となったのは店番のオッチャンだけではなかった。
バッティングセンターの常連客たちもまた、その愛らしい姿に心奪われたのだ。楽しそうに快音を響かせホームランを打つ姿に心躍らせ、嬉しそうにバットと話す姿にピュアなモノを感じホッコリと癒されていたのだ。
だがある時。不心得者がそんな彼女にしつこく話しかけて怖がらせ、すぐに帰ってしまうという事件が起きてしまった。
これには「ああ、幸せの青い小鳥が去ってしまった…」と、バッティングセンターのオッチャンも常連客もガッカリ。その後すぐさま不心得者を取り囲み、みんなで紳士と人の道についてのお説教を2時間に渡ってみっちりしたのだった。
それ以来このバッティングセンターでは、『触れず・話さず・関わらず』の超紳士同盟が暗黙の了解のもと結ばれ、守られるようになった。幸せの青い小鳥が驚いたり怖がって去ってしまわぬよう、細心の注意が払われるようになったのだ。
…。
だが今日は、そうとは知らぬ糧品瑠羽の姿を入り口から覗きこんで発見した女子高生が、「あ、いた!早く早く!」などと言って仲間を呼んでいるのがオッチャンの眼に入った。
礼儀正しく品のいい彼女が、何かトラブルを抱えているとは思えない。
だがもし、もしなにかトラブルが発生したのなら俺が間に入ってやろうと、オッチャンはドキドキソワソワしながら事態の推移を見守るのであった。
華麗かつキレのあるフォームで付喪神化したカツオくんバットを振ると、打球は一直線にホームランと描かれた的を叩く。
(ホォムラァ~~ン!)
「やったねカツオちゃん!10回連続成功、記録更新だよ!」
ピョンと小さく跳ねてガッツポーズ。そして手にしたバットに向け嬉しそうに話しかけている姿は、完全に不思議ちゃん。でも瑠羽にはそんな時間が、非常に楽しくもあった。
実際、糧品瑠羽は付喪神化したカツオくんバットと意識を交流させることで大きく変わった。
今までのただ守られるだけだった立場から誰かの面倒をみる立場に変わったことで、精神的にも成長がみられたのだ。
それにより道で困っている小学生にも声をかけられるようになり、仁菜静絵の双子の兄弟を救うことも出来たのだった。そして今、彼らは慕う姉の元へと向かっている。
「あ、待ってるお客さんがいるから出ないと。一回休憩だね」
(ホ~ムラァン…)
そうして待合ベンチに戻ってきた瑠羽は荷物の中から母親に持たされた水筒を取り出し、それに口をつけ喉を潤す。
「ハァ、冷たくておいしい」
だがそんな瑠羽の姿を、ジッと見詰める男の姿があった…。
それは誰あろうオッチャン。このバッティングセンターの店番を務めるオッチャンだった。
普通、こういった施設では飲食物の持ち込みはNG。たとえ張り紙などがされてなくとも、喉が渇いたのなら据えられている自販機で飲み物を買うのがお約束。それを糧品瑠羽は世間への疎さから、気付けないでいた。
いや、彼女が常日頃から通っている図書館もある公民館では、ベビーカーでの親子連れなどが持参したおにぎりなどを館内で食べているのも日常の風景。そんな様子をごく自然なモノとして捉えてしまっていた瑠羽は、知らぬ間に世間のお約束を破ってしまっていたのだった。
だが、バッティングセンターのオッチャンはそれを見咎めるでもなく目を細めて小さく笑うと、再び読んでいた新聞へと視線を戻すのだった。
いったい、それはナゼ?
その答えは、オッチャンが糧品瑠羽のことをいたく気に入っていたからであった。思い返すまでもなく、その記憶はいまだ新しく、かつ鮮烈だった。
オッチャンが初めてこの少女を目にしたのは、彼女が物珍しそうにキョロキョロしながらバッティングセンターに入ってきた日のこと。小柄でまだあどけない顔立ち、背格好からして年ごろは中学生くらいだろうか。そして「利用したいのですけど、どうすればいいですか?」と訊いてきたのだ。
そこでオッチャンはピンときた。
はは~ん。さてはテレビか何かに影響されて、自分でもバットを振ってみたくなったクチか。なるほど、でなきゃこれぐらいの年頃の子が、ひとりでバッティングセンターになど来るはずもないもんな。
と、そう目星をつけると丁寧に利用法を説明してやった。
すると真剣に説明を聞き、しっかりとメモまでとる少女。そしてモタつきながらもバッターボックスへと向かっていった姿を微笑ましく見送り、定位置であるカウンターへ戻ろうと踵を返した時。背後で見事なまでの快音が鳴り響いたのだった。。。
そのおどろき振り向いた瞬間、呼吸がとまる。
なぜならそこには、髪をなびかせた白いワンピース姿の愛らしい少女が、綺麗なフルスイングで打球をネットに突き立てていたのだから。
だが、奇跡はそこで終わらない。
次も、その次も…。ピッチングマシーンから繰り出されたボールは見事に打ちかえされ、次々ネットに突き刺さった。
そして、視た。視てしまった。
愛らしく華奢にみえる少女がホームランを打つたびに、手にした赤いバットに向け嬉しそうに話しかけている姿を。。。。
(ア、アレは!アレはボールはトモダチ的なアレやないけッ!!)
昭和生まれなオッチャンの心にはこうして糧品瑠羽の姿が鮮烈に刻み込まれ、一番お気に入りのお客さんとなったのだった。
だが…、糧品瑠羽の虜となったのは店番のオッチャンだけではなかった。
バッティングセンターの常連客たちもまた、その愛らしい姿に心奪われたのだ。楽しそうに快音を響かせホームランを打つ姿に心躍らせ、嬉しそうにバットと話す姿にピュアなモノを感じホッコリと癒されていたのだ。
だがある時。不心得者がそんな彼女にしつこく話しかけて怖がらせ、すぐに帰ってしまうという事件が起きてしまった。
これには「ああ、幸せの青い小鳥が去ってしまった…」と、バッティングセンターのオッチャンも常連客もガッカリ。その後すぐさま不心得者を取り囲み、みんなで紳士と人の道についてのお説教を2時間に渡ってみっちりしたのだった。
それ以来このバッティングセンターでは、『触れず・話さず・関わらず』の超紳士同盟が暗黙の了解のもと結ばれ、守られるようになった。幸せの青い小鳥が驚いたり怖がって去ってしまわぬよう、細心の注意が払われるようになったのだ。
…。
だが今日は、そうとは知らぬ糧品瑠羽の姿を入り口から覗きこんで発見した女子高生が、「あ、いた!早く早く!」などと言って仲間を呼んでいるのがオッチャンの眼に入った。
礼儀正しく品のいい彼女が、何かトラブルを抱えているとは思えない。
だがもし、もしなにかトラブルが発生したのなら俺が間に入ってやろうと、オッチャンはドキドキソワソワしながら事態の推移を見守るのであった。
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