うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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physique

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「キャハハハ!お?この温泉すげェ浮くな!まるで海みたいだぞ!」

シャークは湯に飛び込むとスイっと仰向けになり、浮いてみせた。さすが実家が海の近くの伊豆なだけあって、泳ぎはお手のモノ。てかスキューバダイビングも出来るんだから、シャークの字名も伊達じゃないな。

「あ、待ってるりちゃん、キャッ!」

一方の結月ちゃんはシャークが飛び越えた滑りやすい斜面を、ゆっくり降りようとして苦戦中。

そしてスクール水着なことをすこし恥ずかしそうにしているが、ぜんぜんOK!というかオレ的にはむしろそれがいい!まである。

でもま、雛形師範は孫娘にもうちょっと気をつかってあげた方がいいだろうな。

まぁ年代的にそういった部分には、まったく気がいかないんだろうけど。でも結月ちゃんをみてると流石にすこし可哀そうに思えてくる。うん、やはり厳格すぎるのもちょっと考えモノだ。

で、結月ちゃんは急いでシャークのあとを追おうして、泥の斜面で足を滑らせ落水。盛大に水飛沫をあげた。するとその飛沫を顔に浴びたシャークが、苦痛に悲鳴をあげる。

「ぎゃーッ!目、めがぁぁああ~!」
「え?あ!る、るりちゃんだいじょうぶッ!?」

ふふふ、そう。なにを隠そう草津の湯は酸性度が高いため、眼に入るとめっちゃしみるのだ。

「なにしてるのよもぉ。ホラ、こっちいらっしゃい」

といいつつも瀬来さんの方からシャークに近づいていって、粘液で眼を洗ってあげている。

あらまお優しい。おそらくはすこしトロみのある眼薬くらいの加減にしてあげてるのだろう。で、瀬来さんはスポーティな黒青のスイムウェアがとてもお似合い。こちらはスーツの下に普段から着用してるので、オレの目にもお馴染みの姿。

にしても眼福でおじゃるな。

秘湯を独占し、そこで戯れるうら若き乙女たちという絶景もまた独り占め。これには心の幸福度もうなぎ登りというものでおじゃ。ふほほほほ!

なんて心を麻呂風味にして遊んでいると、斜面のうえになにやら逞しい影が現れた。ほほう、逆光での登場とは、なかなか心得てるじゃないかマサルのやつめ。

…。

険しい斜面を苦も無く降りてくるマッシブカンガルーのマサルと鹿の群れ。ただそれにより斜面の土がぼろぼろと温泉に落ちていったので、対岸側の温泉が泥で濁ってしまった。

それでもマサルの登場にシャークが色めき立った声をあげる。

「あ、なぁなぁ!アレがマサルか?すげぇゴツいな、なんであんなに筋肉ついてんだ!?」
「そうよ、アレがマサル。筋肉が多いのは…そうね、たぶん江月さんとおんなじだから、江月さんに訊いてみたら?」

「う、そこでオレにふるのか…」
「ぷ、ふふ…」


そんなやりとりに、結月ちゃんがクスクスと笑っている。

「なぁ、なんでだよジャング?」

で、スィ~っとオレの元まで泳いできたシャークがそんな風に問うてきた。

「ああ。そりゃおまえ、深層心理とかの影響だろうなぁ」

そう、ダンジョン能力者になった者は、大抵逞しい体躯となる。

が、昨今のファッショナブルな風潮からか、ゴリラみたいなマッチョよりも細身でスリムな方がウケが良い。ま、要するにその方がモテるわけだ。なのでほとんどの人間は、逞しくなっても細マッチョな方を選ぶ。

これはこの場にいる女性たちが、ひとりもアマゾネスマッチョになっていないことからも明らかだろう。

一方オレはというと、ダンジョン潜りたての頃に身体が強く逞しくなっていくのがめっちゃ嬉しくて、太く逞しい体躯となるのを強く望んでいた。うん、その時はこれでモテようなどともぜんぜん思ってなかったし。

だからそれがカラダの特徴として、出てきているのだろう。

「ダンジョン能力者になると、見た目でその能力の見分けがつかなくなるよな。瀬来さんみたいに細くても、男の何倍も力があったりするんだから。でもおまえがサンドラみたいになりたいのだったら、純粋に太く逞しい身体を望んで鍛えれば、そうなると思うぞ?」

「そっかぁ、そうだよな…。今な、たくさん食べて、たくさん寝るようにしてんだ。長く寝た方が成長ホルモンの分泌が良いんだってさ!」
「お、そうか。サンドラもガキの頃からバカバカ食っちゃグーグー寝てたからな。おまえもそうしてれば、きっとサンドラみたいになれるさ」

「おう!ぜったいサンドラさんみたいになるんだ!」

ふふふ、シャークもこういうとこは素直でかわいいんだよな。

とはいえ、昨今の風潮だとどうもゴリマッチョはすぐ見かけ倒しみたいにみられる感がある。それが未だにオレの絡まれたりする原因なんだけど。深層心理とかが外見に影響するのは間違いないのだろうが、コッチの問題もどうにかならないもんかね?
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