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周囲の目もあり、ゆっくりとコチラへ歩きだした音夢くん。そんな彼を見やりつつ内心で胸を撫で下ろす。
(ホッ、ようやく動いてくれたか)
もしここまで挑発されても一切動じずに、「構うこたねェ!全員でやっちまえ!」などと総がかりを命じられていたら、戦術的にはオレの負け。
そうなってはもはやスキルを使わないなどと手加減していられない。盛大に粘液ぶちまけたうえ、念の為にと用水路に伏せている3つシモベに命令を下さなくてはならなかったろう。
だがその結果が大惨事に至ってしまうのは、火を見るより明らか。
ともかく追い詰めたオレが悪いのか。はたまた強請りにきた彼らが悪いのか。時ここに至り、ようやく覚悟を決めたようだ。
(それでも逃げ道は用意したんだ。ま、とても飲めるようなシロモノではなかったろうけど)
しかしここに来る前の段階でも、色々齟齬は生じていたはず。「俺達が悪いんじゃない!悪いのは食い物独り占めしている連中だ!」なんてのは、ホントとんでもない論点ずらしだし。
それでもオレ達から食料を奪い避難してる人達にそれを分配すれば、起死回生で人気や信頼を回復できると考えたのか。彼らはここまでやってきた。
彼らの中では自分達こそ正義の桃太郎で、コッチは宝物を貯めこんでる悪い鬼に仕立てたいと。そして鬼退治で得た宝物は、みんなでいいようにしてもOKってことなのだろう。だが残念、待っていたのは簡単にやられてくれる鬼ではない。
そうして前に出てオレを見上げた音夢くんが、懐からカードを取り出した。
「ブラックホーネット!アイツをやれ!!」
そのカードから召喚されたモンスターは、黒い蜂。細身で尻だけがやけに大きい、トックリバチに似たシルエット。
(モンスターカードだと!?)
だが怪我をし片腕が利かなくてやってきたんだ。仲間以外にも何か切り札は持ってるだろうと予想はしたが、初手から切ってきたな。
しかし蜂の大きさは80cm程。
的も大きいうえ冷蔵庫ダンジョン地下10層にいる巨大蠅からすれば、明らかに動きで劣る。なのでこんなモンスターでオレを傷つけることなど、出来はしない。
が、それでも飛んでくる蜂を迎撃するため構えをとると、その間に再び懐へと手を入れ何かを探る音夢くん。そうして再び引き抜かれた手には、なんと拳銃が握られていた。
(なっ!モンスターは囮で、コッチが本命かッ!!)
拳銃を目にした瞬間、銃撃を受けた際の痛みが蘇り身の毛がよだつ。
しかし問答を続けている間に魔力を練る時間は充分あった。その魔力で即座に岩塩を両手に生み出し、左手の岩塩手刀で迫ってくる黒い蜂を切り払うと、右手の岩塩を盾にすべく前へと構える。
が、音夢くんの握った拳銃からはなんの発砲音もせず、銃弾は発射されなかった…。
「あ、え?くそっ…!?」
しかしそれに驚いたのは当人も同じだったらしく、酷く慌てている。
さらには懸命に脇の下や股の間に拳銃を挟み、片腕が使えないままどうにかしてブローバック式拳銃のスライドを引こうとしている。なぜ拳銃なんて物騒なシロモノを持っているのかは知らないが、拳銃まで使用する事態に陥るとは想定していなかったらしい。
「させるか!」
左手に生み出した岩塩を投げつけると顔を庇おうとした音夢の手に当たり、拳銃は弾かれ用水路へと落ちていく。
「あ、銃が…ッ!」
拳銃を失い酷く動揺する音夢…。が、コチラはもっと最低な気分だ。
数の暴力に頼っての強請り。それだけも許せないが、まだ目的が殺人ではない。しかしモンスターに加え拳銃…。明らかに人の殺傷しうる力を有した武器を向けられては、心中穏やかではいられない。
例えそれが、脅しのモデルガンか何かだったとしてもだ。
「よくも!コチラは被害が少ない様にと考えているのにッ!!」
ガッと胸に怒りが湧き、思わず眼にも殺気が宿ってしまうのを感じる。
「く、来るな!こっちにはまだ!ま、魔剣があるんだぞッ!!」
すると見据えられた音夢が、今度は腰から黒光りする小剣を抜き放った。
そして震える手でまた懐から何かの容器を取り出すと、しきりにそれを呷る。その口元から零れた小さな黄色い粒がアスファルトに零れ、パチパチと乾いた音をたてた。
(魔剣!それに、まさか薬物過剰摂取だとッ!?)
一般的なせき止めやかぜ薬などでも、ごく少量ではあるものの覚醒剤と同じような成分が含まれている。
そのため何十錠と一度に服用すれば、一時的に気分が落ち着いたり高揚したりするらしい。そんなのが一部の若者の間で流行っているとニュースでは聞いていたが、まさか目の前でそれをされるとは…。
それにしてもモンスターカードに拳銃に魔剣と、なぜこうも多くの隠し球を持ってるのか。もしやそういったお宝を、仲間から巻き上げていたのか?
ともあれ黒光りするショートソードからは確かに魔力の気配を感じ、魔剣というのも嘘ではなさそう。
そして薬物過剰摂取に関しては、まるで知識がない。
いったいどんな薬を飲んでいて、ダンジョン能力者にはどんな効果を齎すのか。突如として強力な超能力を発揮したりするのだけは、マジでやめてほしい。
(むむ、手の内が解らないのでは、迂闊に手出しも出来ないぞ…)
とはいえ本気で岩塩ブチ当てて殺してしまう訳にもいかない。
そんな葛藤を0.03秒ほどして躊躇っていると、そんな最中に瀬来さんが門を開け飛びだしてしまった。
切り払ったモンスターが墜ちてきたこととオレが強い殺気を放ってしまったの感じ取り、我慢が利かなくなってしまったようだ。
「瀬来さん!」
止める声にも振り返らず、肩を怒らせ音夢へと迫る瀬来さん。
「もう!いい加減にしてよッ!!」
その勢いに動揺し、思わずといった感じで魔剣の切っ先を瀬来さんへと向けた音夢。
「万智!?く、くるな!それ以上近づけばおまえでも!この魔剣ソードブレイカーでッ!」
「なによそんなモノッ!!」
握られていた骨ハンマーが、白い軌跡を描いて一閃。
すると魔剣ソードブレイカーは悲鳴のような甲高い音を立て、その黒い刀身が根元からポキリと折れたのだった。
(ホッ、ようやく動いてくれたか)
もしここまで挑発されても一切動じずに、「構うこたねェ!全員でやっちまえ!」などと総がかりを命じられていたら、戦術的にはオレの負け。
そうなってはもはやスキルを使わないなどと手加減していられない。盛大に粘液ぶちまけたうえ、念の為にと用水路に伏せている3つシモベに命令を下さなくてはならなかったろう。
だがその結果が大惨事に至ってしまうのは、火を見るより明らか。
ともかく追い詰めたオレが悪いのか。はたまた強請りにきた彼らが悪いのか。時ここに至り、ようやく覚悟を決めたようだ。
(それでも逃げ道は用意したんだ。ま、とても飲めるようなシロモノではなかったろうけど)
しかしここに来る前の段階でも、色々齟齬は生じていたはず。「俺達が悪いんじゃない!悪いのは食い物独り占めしている連中だ!」なんてのは、ホントとんでもない論点ずらしだし。
それでもオレ達から食料を奪い避難してる人達にそれを分配すれば、起死回生で人気や信頼を回復できると考えたのか。彼らはここまでやってきた。
彼らの中では自分達こそ正義の桃太郎で、コッチは宝物を貯めこんでる悪い鬼に仕立てたいと。そして鬼退治で得た宝物は、みんなでいいようにしてもOKってことなのだろう。だが残念、待っていたのは簡単にやられてくれる鬼ではない。
そうして前に出てオレを見上げた音夢くんが、懐からカードを取り出した。
「ブラックホーネット!アイツをやれ!!」
そのカードから召喚されたモンスターは、黒い蜂。細身で尻だけがやけに大きい、トックリバチに似たシルエット。
(モンスターカードだと!?)
だが怪我をし片腕が利かなくてやってきたんだ。仲間以外にも何か切り札は持ってるだろうと予想はしたが、初手から切ってきたな。
しかし蜂の大きさは80cm程。
的も大きいうえ冷蔵庫ダンジョン地下10層にいる巨大蠅からすれば、明らかに動きで劣る。なのでこんなモンスターでオレを傷つけることなど、出来はしない。
が、それでも飛んでくる蜂を迎撃するため構えをとると、その間に再び懐へと手を入れ何かを探る音夢くん。そうして再び引き抜かれた手には、なんと拳銃が握られていた。
(なっ!モンスターは囮で、コッチが本命かッ!!)
拳銃を目にした瞬間、銃撃を受けた際の痛みが蘇り身の毛がよだつ。
しかし問答を続けている間に魔力を練る時間は充分あった。その魔力で即座に岩塩を両手に生み出し、左手の岩塩手刀で迫ってくる黒い蜂を切り払うと、右手の岩塩を盾にすべく前へと構える。
が、音夢くんの握った拳銃からはなんの発砲音もせず、銃弾は発射されなかった…。
「あ、え?くそっ…!?」
しかしそれに驚いたのは当人も同じだったらしく、酷く慌てている。
さらには懸命に脇の下や股の間に拳銃を挟み、片腕が使えないままどうにかしてブローバック式拳銃のスライドを引こうとしている。なぜ拳銃なんて物騒なシロモノを持っているのかは知らないが、拳銃まで使用する事態に陥るとは想定していなかったらしい。
「させるか!」
左手に生み出した岩塩を投げつけると顔を庇おうとした音夢の手に当たり、拳銃は弾かれ用水路へと落ちていく。
「あ、銃が…ッ!」
拳銃を失い酷く動揺する音夢…。が、コチラはもっと最低な気分だ。
数の暴力に頼っての強請り。それだけも許せないが、まだ目的が殺人ではない。しかしモンスターに加え拳銃…。明らかに人の殺傷しうる力を有した武器を向けられては、心中穏やかではいられない。
例えそれが、脅しのモデルガンか何かだったとしてもだ。
「よくも!コチラは被害が少ない様にと考えているのにッ!!」
ガッと胸に怒りが湧き、思わず眼にも殺気が宿ってしまうのを感じる。
「く、来るな!こっちにはまだ!ま、魔剣があるんだぞッ!!」
すると見据えられた音夢が、今度は腰から黒光りする小剣を抜き放った。
そして震える手でまた懐から何かの容器を取り出すと、しきりにそれを呷る。その口元から零れた小さな黄色い粒がアスファルトに零れ、パチパチと乾いた音をたてた。
(魔剣!それに、まさか薬物過剰摂取だとッ!?)
一般的なせき止めやかぜ薬などでも、ごく少量ではあるものの覚醒剤と同じような成分が含まれている。
そのため何十錠と一度に服用すれば、一時的に気分が落ち着いたり高揚したりするらしい。そんなのが一部の若者の間で流行っているとニュースでは聞いていたが、まさか目の前でそれをされるとは…。
それにしてもモンスターカードに拳銃に魔剣と、なぜこうも多くの隠し球を持ってるのか。もしやそういったお宝を、仲間から巻き上げていたのか?
ともあれ黒光りするショートソードからは確かに魔力の気配を感じ、魔剣というのも嘘ではなさそう。
そして薬物過剰摂取に関しては、まるで知識がない。
いったいどんな薬を飲んでいて、ダンジョン能力者にはどんな効果を齎すのか。突如として強力な超能力を発揮したりするのだけは、マジでやめてほしい。
(むむ、手の内が解らないのでは、迂闊に手出しも出来ないぞ…)
とはいえ本気で岩塩ブチ当てて殺してしまう訳にもいかない。
そんな葛藤を0.03秒ほどして躊躇っていると、そんな最中に瀬来さんが門を開け飛びだしてしまった。
切り払ったモンスターが墜ちてきたこととオレが強い殺気を放ってしまったの感じ取り、我慢が利かなくなってしまったようだ。
「瀬来さん!」
止める声にも振り返らず、肩を怒らせ音夢へと迫る瀬来さん。
「もう!いい加減にしてよッ!!」
その勢いに動揺し、思わずといった感じで魔剣の切っ先を瀬来さんへと向けた音夢。
「万智!?く、くるな!それ以上近づけばおまえでも!この魔剣ソードブレイカーでッ!」
「なによそんなモノッ!!」
握られていた骨ハンマーが、白い軌跡を描いて一閃。
すると魔剣ソードブレイカーは悲鳴のような甲高い音を立て、その黒い刀身が根元からポキリと折れたのだった。
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