うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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三日後。オレはジェローム・アブドゥル・ミゲルタの職あぶれ外国人三人組を軽バンに乗せ、一路房総半島へと向かっていた。

提督の話では新会社もカタチが整い、早くもサバゲフィールドの駐車場に社屋を建てているという話。

うん、スタンピードの混乱は治まったものの、その事後処理には大変な手間を要している。そのため各種手続きなどには、モノクソ待たされたりする。だがここでそんなキャパオーバーな状況を、行政は大幅な規制緩和により簡略化。

ま、それにより審査なんかも物凄いザルになってしまっているわけだ。うぅむ、でもコレ…。後になってからまた支援金の不正受給なんかがボロボロ出てきそうだな。

まぁそれはそれとして、オレはジェロームたちを支援する為、お手製の乾燥肉やカメムシ鎧まで用意してやった。

燻製肉から乾燥肉にグレードダウンしているのは、ちょうどいい燻製チップが手に入らなかった為。そしてカメムシ鎧はここ数日巨大カメムシも倒しまくってたので、その外殻が有り余ってたから。それを鎧に加工するのも、日々の魔力練成訓練のついでだったのでなんてこともない。

(でも正直、ここまでしてやるつもりはなかったんだがなぁ~)

当初はスキルオーブだけを渡し、それで終いにするつもりだった。

だがジェロームたちがスタンピードのあおりを食って無職となり、お礼として渡すスキルオーブを売ろうと考えていたことでこんなことに。

うむ、力をどこの誰ともわからぬヤツに渡されては堪らない。そしてまた無職の辛さを身に滲みて知る者として、ジェロームたちを放ってはおけなかったのだ。

日本という母国で暮らすオレですら、無職の肩身の狭さをこれでもかと痛感しているというのに。それが言葉も碌に通じぬ外国で職にあぶれでもしたら、その不安や心細さは如何ほどのモノだろうか…。

「ホラ、この先にお土産屋があるから、そこでトイレ休憩にしよう」
「「…」」

バックミラーを確認すると、後部座席に座ったアブドゥルとミゲルタが軽く頷いてみせているのが映る。それでも今の言葉で彼らが理解できたのは、たぶんトイレの単語くらいだろう。

そのさらに後方の荷台には、超巨大猪の毛皮と緑に艶めくカメムシ鎧。

サバゲフィールドの東屋にはちょっとした倉庫や更衣室があり、そこを寝泊りに使っていいと提督から許可はもらってある。そこで使い道に困っていた超巨大猪の毛皮をコレは丁度いいと持ってきた次第だ。

「…ミスタ・ジャング」

見知らぬ土地へ連れてこられたことで、不安そうに助手席からオレの名を呼ぶジェローム。

「ああなに、心配するなジェローム。会社がちょっと山ん中なだけだから。別におまえたちを変なトコに連れてきゃしないよ」

それにそう軽く返すと、軽バンをお土産屋の駐車場へと乗り入れさせた。

…。

「おお~!早いなぁ、もう出来てるじゃないか!」

サバゲフィールドに到着すると、そのゲート前の駐車スペースには綺麗な新社屋の姿が。まぁ、とはいっても、まんま工事現場の事務所みたいなプレハブ建てなんだが。

「株式会社・特異産業…。ハハ、もう看板までついてるな」
「あ、ジャングさん、こんちゃ~ス!」

そこで車を社屋の前に停め、その二階建てプレハブの上部に飾られた看板を見上げていると、建物の裏手から見知った顔のトライデントメンバーが現れた。

「ああ、おつかれ。この看板いいな。白地に太い黒で描かれた、実直な社名ななんともナイスだ」

うむ。株式会社・特異産業。ダンジョンから獲れたモノを売る。実にそのまんまなネーミング。

「そうでしょ。あ、ウチ実家がペンキ屋なんで、コレも即行で仕上げましたよ」
「お、そうか!メンバーにペンキ屋がいるとシャークから聞いていたが、キミんとこだったのか。いや、この看板も実に見事だ」

そうしてふたりで、掲げられた真新しい看板を見上げる。

ここに今こうしているということは、彼もまたこの会社を新たな拠り所として選んだひとりなのだろう。提督も、スタンピードで生活の苦しくなったメンバーをこの会社で守るんだと電話で話してたしな。

「それで、提督はなかに?」
「いえ、今はいないっス。けど、話は聞いてますよ。外人部隊を連れて来たんですよね?」

「外人部隊…うん、まぁそこまで大層なモンじゃないが、そんなとこだ。たぶんコッチに住み込みなると思うから、よろしく頼むよ」
「了解っス!こっちの連中でも何人か住み込みになるのがいるんで、そんな心配しなくても大丈夫っスよ!」

「お、それは心強いな。じゃあジェロームたちを紹介しよう。あ、ちなみにキミは、なんて名だったか?」
「ヤダなぁ、銚子っスよ。忘れないでくださいよジャングさん」

「いやスマン。これからもよろしくな。頼りにしてるぞ、銚子」
「ジャングさんほどの力はないっスけど、調整もろもろは得意なんで。いつでも声掛けてくださいよ」

「ああ。みんなで、この会社をいい会社にしていこうな!」

そう言って腕を軽く振りかぶると、銚子もそれに合わせ同じ動作を重ねてくれる。

「そうっスね!」
『…スパァンッ!』

こうして綺麗に腕相撲スタイルのシェイクハンドが決まると、ふたり笑顔で改めて真新しい看板を見上げたのだった。
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