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unquenchable guilt
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大阪から戻ってきた仁菜さんが、お土産を持ってウチに元気な顔をみせてくれた。
そうして食事を終え寝物語にフトンのなかで会話を続けていると、話題はふたたび芸能界へ行くことに決まった瑠羽と瀬来さんに移っていく。ちなみに瑠羽は忙しくなった今も欠かさず連絡をくれるので、近況はよく知っている。
「ほしたら、ウチもあのふたりについてってやらんとアカンねぇ」
しかしここで、唐突に自身も芸能界入りを決める仁菜さん。
「え、仁菜さんも??」
芸能界に入るなんてそう簡単なことではないはずだが、これだけの美貌を備えた仁菜さんが言うと自然と受け入れられてしまう。
「せや。芸能界なんてウチでもよう行かんのに、あのふたりだけやったら心配やろ?」
「う、うぅむ…。それはたしかに」
そんな心理戦に長けた仁菜さんでも芸能界は危険と敬遠しているのに、根が素直すぎる瑠羽やお調子者でよく失敗する瀬来さんだけでは、めっさ心配なのは確か。
「それにウチ、女の子の友達はぜったい守るって、決めてるんよ」
「え?それはまた…」
オレは仁菜さんがそんなマイルールを自分に課しているとは露知らず、意外といった印象をうけた。と、そんな感情が表情にも出ていたのか、仁菜さんは眼だけで笑うと言葉を続けた。
「あんな、ウチな…、心にずっと消えない罪悪感いうのがあるんよ…」
「罪悪感?」
はて?なんだろう。男の子たちを手玉にとってるのが苦痛というなら、それをやめればいいだけだし…。
「…あんまり気ィのいい話やないけど、話してもええ?」
そうオレの眼の奥を覗きこむようにして訊いてくる仁菜さんに、否やは無い。
「もちろん。静が話したいのなら、オレは聞くよ」
すると顔の表情を読まれたくないのか、仁菜さんは向かい合っていた状態から後ろ向きになると、オレの腕に包まれるよう背中を寄せてきたのだった。
…。
「まえに、飴のオッチャンの話をしたやろ…。コォチ覚えてる?」
「ああ、もちろん覚えてるよ」
仁菜さんを腕のなかに抱き、その髪に口づけをするように囁き返す。
「ほしたらあの話にはな、あのあと続きがあるんよ…」
「ふぅむ…」
なかなか人には言えず、腹のなかにずっと溜め込んでいるモノ。そういったモノは、きっと誰にでもあるのだろう。そしてそれを今、仁菜さんはオレに話そうとしているようだ。
そこで話しやすいよう、やさしくその腕や髪を撫ぜてみる。
「…飴のオッチャンと近所の女の子がいなくなった後でな。ウチやっぱり納得いかなくて、女の子のことを色々訊いて回ったんよ…」
「うん」
「ほしたらそれ聞いた子達は、『知らん。それにもうあの子のことは話しちゃいかんて、お母さんに言われた』いうて…。ウチ、それがメッチャ悲しくてな…」
「……」
「それって…、その子はなんも悪うないやん!せやのに…!」
その時のことを思い出して感情を抑えきれないのか、仁菜さんがオレの腕をきつく掴み爪をたてる。
「ほんでもしすこしタイミングがずれてたら、消えてたのはその子やのうて、ウチやったんよ…??」
「……」
そうか。仁菜さんのなかには、その子を自分の身代わりにしてしまったのではという自責の念が、ずっと残っているのだろう。賢いのだから当然それは筋違いだと解っていようが、気持ちが納得できないのかもしれない。
そこでそんな思いが少しでも癒えるようにと、オレはオーラで仁菜さんを優しく包みあたためる。
「ハァ…。ほんでな…、中学ももう少しで卒業っていう時に、ほかのクラスの子に呼び出されたんよね…」
「む、呼び出し…?」
とはいえ呼び出しという単語を聞いても、オレでは告白かお礼参りの二択しかアタマに思い浮かばない。
「ほんで誰にも話を聞かれへん校庭の隅までふたりで行って、『仁菜さんあの子がいなくなった時、ずっと気にしてたでしょ?実はわたし、あれからあの子とずっと連絡とってたの』って…」
「おお!」
そうか。告白は告白でも、これはそういった告白だったか。
「グズッ…。でも『あの子ね…。引っ越した先でもあのことを引き摺って学校にも行けないで…。ずっとツライ、さみしいって…!わたしも電話で励ましたんだけど…。それでも、このあいだ亡くなったって、あの子のお母さんから…』いうてッ…!!」
「……」
仁菜さんが泣き声をあげず肩だけを震わせ、静かに泣いている。
それは…なんという、酷な告白だろうか。
きっと仁菜さんにその告白をした子も、自分ひとりでは耐え切れず誰かに話したかったのだろう。だからその子が消えた時に気にかけていた仁菜さんを思いだし、そのことを話そうと。
しかしそれが、仁菜さんにより深い業を背負わせることとなってしまったのか…。
「…だからウチ、その時から決めたんよ。友達のことは絶対に守る。ぜったいに見捨てへんて…!」
オレは知らなかった。
仁菜さんの心の奥底にはこんなにも悲しく、こんなにも熱い思いが眠っていたとは。だから瀬来さんが大学で総スカンを食っていた時にも、仁菜さんは人気など気にせず見捨てなかったのか…。
「ああ立派だ、なんて立派なんだシズ…!」
それを聞き、オレはただ仁菜さんをきつく抱きしめ褒めちぎることしかできないのだった。
そうして食事を終え寝物語にフトンのなかで会話を続けていると、話題はふたたび芸能界へ行くことに決まった瑠羽と瀬来さんに移っていく。ちなみに瑠羽は忙しくなった今も欠かさず連絡をくれるので、近況はよく知っている。
「ほしたら、ウチもあのふたりについてってやらんとアカンねぇ」
しかしここで、唐突に自身も芸能界入りを決める仁菜さん。
「え、仁菜さんも??」
芸能界に入るなんてそう簡単なことではないはずだが、これだけの美貌を備えた仁菜さんが言うと自然と受け入れられてしまう。
「せや。芸能界なんてウチでもよう行かんのに、あのふたりだけやったら心配やろ?」
「う、うぅむ…。それはたしかに」
そんな心理戦に長けた仁菜さんでも芸能界は危険と敬遠しているのに、根が素直すぎる瑠羽やお調子者でよく失敗する瀬来さんだけでは、めっさ心配なのは確か。
「それにウチ、女の子の友達はぜったい守るって、決めてるんよ」
「え?それはまた…」
オレは仁菜さんがそんなマイルールを自分に課しているとは露知らず、意外といった印象をうけた。と、そんな感情が表情にも出ていたのか、仁菜さんは眼だけで笑うと言葉を続けた。
「あんな、ウチな…、心にずっと消えない罪悪感いうのがあるんよ…」
「罪悪感?」
はて?なんだろう。男の子たちを手玉にとってるのが苦痛というなら、それをやめればいいだけだし…。
「…あんまり気ィのいい話やないけど、話してもええ?」
そうオレの眼の奥を覗きこむようにして訊いてくる仁菜さんに、否やは無い。
「もちろん。静が話したいのなら、オレは聞くよ」
すると顔の表情を読まれたくないのか、仁菜さんは向かい合っていた状態から後ろ向きになると、オレの腕に包まれるよう背中を寄せてきたのだった。
…。
「まえに、飴のオッチャンの話をしたやろ…。コォチ覚えてる?」
「ああ、もちろん覚えてるよ」
仁菜さんを腕のなかに抱き、その髪に口づけをするように囁き返す。
「ほしたらあの話にはな、あのあと続きがあるんよ…」
「ふぅむ…」
なかなか人には言えず、腹のなかにずっと溜め込んでいるモノ。そういったモノは、きっと誰にでもあるのだろう。そしてそれを今、仁菜さんはオレに話そうとしているようだ。
そこで話しやすいよう、やさしくその腕や髪を撫ぜてみる。
「…飴のオッチャンと近所の女の子がいなくなった後でな。ウチやっぱり納得いかなくて、女の子のことを色々訊いて回ったんよ…」
「うん」
「ほしたらそれ聞いた子達は、『知らん。それにもうあの子のことは話しちゃいかんて、お母さんに言われた』いうて…。ウチ、それがメッチャ悲しくてな…」
「……」
「それって…、その子はなんも悪うないやん!せやのに…!」
その時のことを思い出して感情を抑えきれないのか、仁菜さんがオレの腕をきつく掴み爪をたてる。
「ほんでもしすこしタイミングがずれてたら、消えてたのはその子やのうて、ウチやったんよ…??」
「……」
そうか。仁菜さんのなかには、その子を自分の身代わりにしてしまったのではという自責の念が、ずっと残っているのだろう。賢いのだから当然それは筋違いだと解っていようが、気持ちが納得できないのかもしれない。
そこでそんな思いが少しでも癒えるようにと、オレはオーラで仁菜さんを優しく包みあたためる。
「ハァ…。ほんでな…、中学ももう少しで卒業っていう時に、ほかのクラスの子に呼び出されたんよね…」
「む、呼び出し…?」
とはいえ呼び出しという単語を聞いても、オレでは告白かお礼参りの二択しかアタマに思い浮かばない。
「ほんで誰にも話を聞かれへん校庭の隅までふたりで行って、『仁菜さんあの子がいなくなった時、ずっと気にしてたでしょ?実はわたし、あれからあの子とずっと連絡とってたの』って…」
「おお!」
そうか。告白は告白でも、これはそういった告白だったか。
「グズッ…。でも『あの子ね…。引っ越した先でもあのことを引き摺って学校にも行けないで…。ずっとツライ、さみしいって…!わたしも電話で励ましたんだけど…。それでも、このあいだ亡くなったって、あの子のお母さんから…』いうてッ…!!」
「……」
仁菜さんが泣き声をあげず肩だけを震わせ、静かに泣いている。
それは…なんという、酷な告白だろうか。
きっと仁菜さんにその告白をした子も、自分ひとりでは耐え切れず誰かに話したかったのだろう。だからその子が消えた時に気にかけていた仁菜さんを思いだし、そのことを話そうと。
しかしそれが、仁菜さんにより深い業を背負わせることとなってしまったのか…。
「…だからウチ、その時から決めたんよ。友達のことは絶対に守る。ぜったいに見捨てへんて…!」
オレは知らなかった。
仁菜さんの心の奥底にはこんなにも悲しく、こんなにも熱い思いが眠っていたとは。だから瀬来さんが大学で総スカンを食っていた時にも、仁菜さんは人気など気にせず見捨てなかったのか…。
「ああ立派だ、なんて立派なんだシズ…!」
それを聞き、オレはただ仁菜さんをきつく抱きしめ褒めちぎることしかできないのだった。
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