うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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subway

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この日、運転の終わった深夜の地下鉄サブウェイにオレはいた。バンバンとつっこまれてしまった、亡霊退治案件のためだ。

そしてオレの前には線路なんかの保守管理を行う作業着に電灯メット姿の中年鉄道職員が、口を揃えて1人で大丈夫かよと不安そうな表情を浮かべていた。

「え~、アンタひとりなのかい?ホントに大丈夫なのかい…??」
「そうだよぉ。今までもそうやって何度も来たけどさ。その度に毎度毎度、失敗してるんだよ??」

場所は駅のホームですでに電車は動いていないため、辺りはシンと静まり返っている。そこにオレたちの話している声だけが、やけに響いて聞こえる。そして彼らが不安に思うのも、オレがバッグひとつを持った私服姿だからだろう。

なので不安で不満そうな彼らに対し、大きく頷いて返してやる。

「大丈夫だ、問題ない」

「いや…、そうは言ったってな。なんの準備もしてないじゃないかアンタ」
「そうだよぉ。相手はダンジョンから出てきた化け物のうえ、オバケなんだよぉ…」

しかしそれでも鉄道職員らの不安は、払拭できなかったようだ。今までに何度もミッションが失敗したとあって、かなり疑心暗鬼になっている様子。

「よろしい、ならばお見せしよう。そして口外は無用。むぅん…、粘身ッ!!」

そこで持っていたバッグの口を開けパーツをぶちまけると、鉄道職員らに見せつけるべくオーラ変身により蟲王スーツ姿へと変身してみせる。まぁもっと手前で部屋でも借りて着替えても良かったのだが、挨拶後すぐにせっついた鉄道会社の上役に彼らを紹介され、そのままホームまで案内されてしまったのだ。

『じゅぱあぁ…!ぎゅちぃぃぃん!!』

「ア、アンタ!そ、その格好は…ッ!?」
「そ、それ!トーナメントで観たし!!」

「…そうです。私がゴールドインセクトです。目には目を。歯には歯を。そしてバケモノにはバケモノを!ということで、ご納得いただけましたでしょうか?」

そういって蟲王スーツ姿になった状態でそれぞれの顔に眼を向ける。そんなオレに、ふたりの鉄道職員は口を開いて目を見張っている。

うん、ネットでさ。ゴールドインセクトでエゴサしてみたらね、今なおとんでもない悪評ばっかりで軽く凹んだオレ。でもならばいっそハンムラビ法典的にやってしまえば、それなりに納得してもらえるのではなかろうかとソレっぽいセリフを考えてみました。

「おぉ!言葉の意味はよくわからんが」
「とにかくスゴイ自信だ!」

うん、するとなんだか、ご納得いただけたようだ。

…。

そうしてトロッコみたいな点検マシーンに乗り、3人で該当危険区域へと向かう。暗く薄気味悪い地下鉄の線路を、点検マシーンに付けられたライトだけが先を照らして進む。

『キュウン…、ゴコォン…!』

だが地図で示されたポイントよりも、だいぶ手前で点検マシーンは停止した。

「む…?」

「あ、いや…。これ以上近づいたら俺達も巻き添えを食うから、この先はアンタひとりで頼む」
「ああ、立会いを任されてるけど、俺達は能力者って訳でもないんだ。だからな、ここまでで頼むよ…」

なるほど、そういうことか。

「わかった。たしかに巻き添えを食うのは良くないし、戦闘中近くに居られたらオレも戦い難くて困る。ではココで待っていてくれ」

そう答えるとふたり解りやすいくらいにホッとした表情をみせ、安堵の息をつく。まぁ何度も案内をしたうえにその失敗を見せられたら、その度に生きた心地もしなかったろう。

そこでここから先は点検マシーンを降り、1人で幽霊チックなアンデッドモンスターが出現するというポイントまで進んでいく。

『カッ、コッ、カッ、コッ…』
『(ぴちょーん、ぴちょーん…)』

息を殺し静かに歩こうとしても、どうしてもわずかな足音が静まり返ったトンネル内に響く。そしてトンネルの天井部から垂れ落ちる水滴の音すら、やけに大きな響きとなって周囲に反響している。

(さて、そろそろ図示されていたポイントだが…)

「コハァァァァ~~…!」
「キュケケケェ~~…!」

するとオレの気配に気付いたのか、地下鉄の黒いコンクリ壁からボーッと青白い人影がいくつも湧き出てくる。だが…。

「ほぉ、なんだおまえたちか…。また随分とひさしぶりだな」

地下鉄のトンネルに現れて悪さをしていたモンスターは、どうやら下級霊レッサーゴーストどもだったらしい。そしてそれは他の者にとっては強敵でも、オレにとっては恐れる相手ではない。

「「「ギシャ~~!!」」」
「はいはい、ソルトスプラッシュ」

「「「ギャアアア~~!!」」」

不用意にオレへと襲いかかってきた下級霊たちは、撒かれた塩に触れるとたちどころに消滅していく。それは一撃でおつりが出るほどの大ダメージ。まるで発泡スチロールにシンナーなどの有機溶剤を垂らした時のように、あっという間に消えてしまう。

そうして圧倒的な力をみせつけたことで、遠くでそれを見ていた点検トロッコマシーンが近づいてきた。

「お、おい!今の見たか!」
「すごかったな…!あれだけの化け物を一撃で!」

だがそんなレッサーゴーストどもも物理攻撃が通じないため、普通に相手をするには厄介極まりない相手には違いない。それをこうして圧勝出来ているのは、単にスキル【塩】を持っているというからに過ぎない。

近づいてくる点検マシーンにライトに照らされながら、オレは便利だけれどもこの力に溺れてしまわぬように、改めて心にとどめ置こうと考えていた。
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