534 / 660
subway
しおりを挟む
この日、運転の終わった深夜の地下鉄サブウェイにオレはいた。バンバンとつっこまれてしまった、亡霊退治案件のためだ。
そしてオレの前には線路なんかの保守管理を行う作業着に電灯メット姿の中年鉄道職員が、口を揃えて1人で大丈夫かよと不安そうな表情を浮かべていた。
「え~、アンタひとりなのかい?ホントに大丈夫なのかい…??」
「そうだよぉ。今までもそうやって何度も来たけどさ。その度に毎度毎度、失敗してるんだよ??」
場所は駅のホームですでに電車は動いていないため、辺りはシンと静まり返っている。そこにオレたちの話している声だけが、やけに響いて聞こえる。そして彼らが不安に思うのも、オレがバッグひとつを持った私服姿だからだろう。
なので不安で不満そうな彼らに対し、大きく頷いて返してやる。
「大丈夫だ、問題ない」
「いや…、そうは言ったってな。なんの準備もしてないじゃないかアンタ」
「そうだよぉ。相手はダンジョンから出てきた化け物のうえ、オバケなんだよぉ…」
しかしそれでも鉄道職員らの不安は、払拭できなかったようだ。今までに何度もミッションが失敗したとあって、かなり疑心暗鬼になっている様子。
「よろしい、ならばお見せしよう。そして口外は無用。むぅん…、粘身ッ!!」
そこで持っていたバッグの口を開けパーツをぶちまけると、鉄道職員らに見せつけるべくオーラ変身により蟲王スーツ姿へと変身してみせる。まぁもっと手前で部屋でも借りて着替えても良かったのだが、挨拶後すぐにせっついた鉄道会社の上役に彼らを紹介され、そのままホームまで案内されてしまったのだ。
『じゅぱあぁ…!ぎゅちぃぃぃん!!』
「ア、アンタ!そ、その格好は…ッ!?」
「そ、それ!トーナメントで観たし!!」
「…そうです。私がゴールドインセクトです。目には目を。歯には歯を。そしてバケモノにはバケモノを!ということで、ご納得いただけましたでしょうか?」
そういって蟲王スーツ姿になった状態でそれぞれの顔に眼を向ける。そんなオレに、ふたりの鉄道職員は口を開いて目を見張っている。
うん、ネットでさ。ゴールドインセクトでエゴサしてみたらね、今なおとんでもない悪評ばっかりで軽く凹んだオレ。でもならばいっそハンムラビ法典的にやってしまえば、それなりに納得してもらえるのではなかろうかとソレっぽいセリフを考えてみました。
「おぉ!言葉の意味はよくわからんが」
「とにかくスゴイ自信だ!」
うん、するとなんだか、ご納得いただけたようだ。
…。
そうしてトロッコみたいな点検マシーンに乗り、3人で該当危険区域へと向かう。暗く薄気味悪い地下鉄の線路を、点検マシーンに付けられたライトだけが先を照らして進む。
『キュウン…、ゴコォン…!』
だが地図で示されたポイントよりも、だいぶ手前で点検マシーンは停止した。
「む…?」
「あ、いや…。これ以上近づいたら俺達も巻き添えを食うから、この先はアンタひとりで頼む」
「ああ、立会いを任されてるけど、俺達は能力者って訳でもないんだ。だからな、ここまでで頼むよ…」
なるほど、そういうことか。
「わかった。たしかに巻き添えを食うのは良くないし、戦闘中近くに居られたらオレも戦い難くて困る。ではココで待っていてくれ」
そう答えるとふたり解りやすいくらいにホッとした表情をみせ、安堵の息をつく。まぁ何度も案内をしたうえにその失敗を見せられたら、その度に生きた心地もしなかったろう。
そこでここから先は点検マシーンを降り、1人で幽霊チックなアンデッドモンスターが出現するというポイントまで進んでいく。
『カッ、コッ、カッ、コッ…』
『(ぴちょーん、ぴちょーん…)』
息を殺し静かに歩こうとしても、どうしてもわずかな足音が静まり返ったトンネル内に響く。そしてトンネルの天井部から垂れ落ちる水滴の音すら、やけに大きな響きとなって周囲に反響している。
(さて、そろそろ図示されていたポイントだが…)
「コハァァァァ~~…!」
「キュケケケェ~~…!」
するとオレの気配に気付いたのか、地下鉄の黒いコンクリ壁からボーッと青白い人影がいくつも湧き出てくる。だが…。
「ほぉ、なんだおまえたちか…。また随分とひさしぶりだな」
地下鉄のトンネルに現れて悪さをしていたモンスターは、どうやら下級霊どもだったらしい。そしてそれは他の者にとっては強敵でも、オレにとっては恐れる相手ではない。
「「「ギシャ~~!!」」」
「はいはい、ソルトスプラッシュ」
「「「ギャアアア~~!!」」」
不用意にオレへと襲いかかってきた下級霊たちは、撒かれた塩に触れるとたちどころに消滅していく。それは一撃でおつりが出るほどの大ダメージ。まるで発泡スチロールにシンナーなどの有機溶剤を垂らした時のように、あっという間に消えてしまう。
そうして圧倒的な力をみせつけたことで、遠くでそれを見ていた点検トロッコマシーンが近づいてきた。
「お、おい!今の見たか!」
「すごかったな…!あれだけの化け物を一撃で!」
だがそんなレッサーゴーストどもも物理攻撃が通じないため、普通に相手をするには厄介極まりない相手には違いない。それをこうして圧勝出来ているのは、単にスキル【塩】を持っているというからに過ぎない。
近づいてくる点検マシーンにライトに照らされながら、オレは便利だけれどもこの力に溺れてしまわぬように、改めて心にとどめ置こうと考えていた。
そしてオレの前には線路なんかの保守管理を行う作業着に電灯メット姿の中年鉄道職員が、口を揃えて1人で大丈夫かよと不安そうな表情を浮かべていた。
「え~、アンタひとりなのかい?ホントに大丈夫なのかい…??」
「そうだよぉ。今までもそうやって何度も来たけどさ。その度に毎度毎度、失敗してるんだよ??」
場所は駅のホームですでに電車は動いていないため、辺りはシンと静まり返っている。そこにオレたちの話している声だけが、やけに響いて聞こえる。そして彼らが不安に思うのも、オレがバッグひとつを持った私服姿だからだろう。
なので不安で不満そうな彼らに対し、大きく頷いて返してやる。
「大丈夫だ、問題ない」
「いや…、そうは言ったってな。なんの準備もしてないじゃないかアンタ」
「そうだよぉ。相手はダンジョンから出てきた化け物のうえ、オバケなんだよぉ…」
しかしそれでも鉄道職員らの不安は、払拭できなかったようだ。今までに何度もミッションが失敗したとあって、かなり疑心暗鬼になっている様子。
「よろしい、ならばお見せしよう。そして口外は無用。むぅん…、粘身ッ!!」
そこで持っていたバッグの口を開けパーツをぶちまけると、鉄道職員らに見せつけるべくオーラ変身により蟲王スーツ姿へと変身してみせる。まぁもっと手前で部屋でも借りて着替えても良かったのだが、挨拶後すぐにせっついた鉄道会社の上役に彼らを紹介され、そのままホームまで案内されてしまったのだ。
『じゅぱあぁ…!ぎゅちぃぃぃん!!』
「ア、アンタ!そ、その格好は…ッ!?」
「そ、それ!トーナメントで観たし!!」
「…そうです。私がゴールドインセクトです。目には目を。歯には歯を。そしてバケモノにはバケモノを!ということで、ご納得いただけましたでしょうか?」
そういって蟲王スーツ姿になった状態でそれぞれの顔に眼を向ける。そんなオレに、ふたりの鉄道職員は口を開いて目を見張っている。
うん、ネットでさ。ゴールドインセクトでエゴサしてみたらね、今なおとんでもない悪評ばっかりで軽く凹んだオレ。でもならばいっそハンムラビ法典的にやってしまえば、それなりに納得してもらえるのではなかろうかとソレっぽいセリフを考えてみました。
「おぉ!言葉の意味はよくわからんが」
「とにかくスゴイ自信だ!」
うん、するとなんだか、ご納得いただけたようだ。
…。
そうしてトロッコみたいな点検マシーンに乗り、3人で該当危険区域へと向かう。暗く薄気味悪い地下鉄の線路を、点検マシーンに付けられたライトだけが先を照らして進む。
『キュウン…、ゴコォン…!』
だが地図で示されたポイントよりも、だいぶ手前で点検マシーンは停止した。
「む…?」
「あ、いや…。これ以上近づいたら俺達も巻き添えを食うから、この先はアンタひとりで頼む」
「ああ、立会いを任されてるけど、俺達は能力者って訳でもないんだ。だからな、ここまでで頼むよ…」
なるほど、そういうことか。
「わかった。たしかに巻き添えを食うのは良くないし、戦闘中近くに居られたらオレも戦い難くて困る。ではココで待っていてくれ」
そう答えるとふたり解りやすいくらいにホッとした表情をみせ、安堵の息をつく。まぁ何度も案内をしたうえにその失敗を見せられたら、その度に生きた心地もしなかったろう。
そこでここから先は点検マシーンを降り、1人で幽霊チックなアンデッドモンスターが出現するというポイントまで進んでいく。
『カッ、コッ、カッ、コッ…』
『(ぴちょーん、ぴちょーん…)』
息を殺し静かに歩こうとしても、どうしてもわずかな足音が静まり返ったトンネル内に響く。そしてトンネルの天井部から垂れ落ちる水滴の音すら、やけに大きな響きとなって周囲に反響している。
(さて、そろそろ図示されていたポイントだが…)
「コハァァァァ~~…!」
「キュケケケェ~~…!」
するとオレの気配に気付いたのか、地下鉄の黒いコンクリ壁からボーッと青白い人影がいくつも湧き出てくる。だが…。
「ほぉ、なんだおまえたちか…。また随分とひさしぶりだな」
地下鉄のトンネルに現れて悪さをしていたモンスターは、どうやら下級霊どもだったらしい。そしてそれは他の者にとっては強敵でも、オレにとっては恐れる相手ではない。
「「「ギシャ~~!!」」」
「はいはい、ソルトスプラッシュ」
「「「ギャアアア~~!!」」」
不用意にオレへと襲いかかってきた下級霊たちは、撒かれた塩に触れるとたちどころに消滅していく。それは一撃でおつりが出るほどの大ダメージ。まるで発泡スチロールにシンナーなどの有機溶剤を垂らした時のように、あっという間に消えてしまう。
そうして圧倒的な力をみせつけたことで、遠くでそれを見ていた点検トロッコマシーンが近づいてきた。
「お、おい!今の見たか!」
「すごかったな…!あれだけの化け物を一撃で!」
だがそんなレッサーゴーストどもも物理攻撃が通じないため、普通に相手をするには厄介極まりない相手には違いない。それをこうして圧勝出来ているのは、単にスキル【塩】を持っているというからに過ぎない。
近づいてくる点検マシーンにライトに照らされながら、オレは便利だけれどもこの力に溺れてしまわぬように、改めて心にとどめ置こうと考えていた。
56
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~
ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。
玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。
「きゅう、痩せたか?それに元気もない」
ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。
だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。
「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」
この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
現代社会とダンジョンの共生~華の無いダンジョン生活
シン
ファンタジー
世界中に色々な歪みを引き起こした第二次世界大戦。
大日本帝国は敗戦国となり、国際的な制約を受けながらも復興に勤しんだ。
GHQの占領統治が終了した直後、高度経済成長に呼応するかのように全国にダンジョンが誕生した。
ダンジョンにはモンスターと呼ばれる魔物が生息しており危険な場所だが、貴重な鉱物やモンスター由来の素材や食材が入手出来る、夢の様な場所でもあった。
そのダンジョンからモンスターと戦い、資源を持ち帰る者を探索者と呼ばれ、当時は一攫千金を目論む卑しい職業と呼ばれていたが、現代では国と国民のお腹とサイフを支える立派な職業に昇華した。
探索者は極稀にダンジョン内で発見されるスキルオーブから特殊な能力を得る者が居たが、基本的には身一つの状態でダンジョン探索をするのが普通だ。
そんなダンジョンの探索や、たまにご飯、たまに揉め事などの、華の無いダンジョン探索者のお話しです。
たまに有り得ない方向に話が飛びます。
一話短めです。
現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜
涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。
ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。
しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。
奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。
そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~
虎柄トラ
ファンタジー
下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。
意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。
女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。
敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。
剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。
一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。
快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる