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Recording scene
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糧品瑠羽はその人生の半分以上を、意識的には暗い灰色の世界で過ごした。
優しく裕福な家庭に生まれたものの酷く病弱で、碌に学校にも通えぬ苦しくも孤独な少女時代。また治療の甲斐あって普通の生活が送れるようになってからも、その幼い頃の経験が仇となり内向的な性格へと育ってしまった。
そんな瑠羽に転機が訪れたのは、大学に進学し初めて心許せる瀬来万智という友達が出来たこと。
そして万智との縁で江月鳴人という初恋を覚えた相手から告白され、その恋人になれたことによる大転機。しかも江月は誤解をした瑠羽が万智に対し激しく逆上していたにも関わらず、事を分け説明し誤解を解いたうえ、その場で瑠羽に交際を申し込んでくれたのだ。
これにより瑠羽は親友を失うことなく、初恋もまた成就したのだった。
やさしく、たくましく、とても懐の深い恋人は瑠羽のことをとても大事にしてくれた。そんな強い愛情の後押しを得て、瑠羽は今日まで自身を成長させることができたのだ。
そして今まで自分を引っ張ってくれた万智と、困っているといつも的確な助言をくれる静絵。そんなふたりの親友と共に、瑠羽は芸能界入りしてアイドルとなった。
目的はひとつ、変わる勇気を伝えること。
自分が変われたように、その思いを、やり方を、大勢のひとに伝えたい。それが今の、瑠羽の願い。そんな瑠羽の姿が、今日もまた屋外採石場の撮影現場にあったのだった。
「「うわぁ~、やられたぁ~!」」
「もぉ~、しっかりしてよね!お兄ちゃんたち!」
「ハイカット~!オッケーです」
収録しているのは、ジャリンコJrの冠番組。
新米冒険者兄弟に扮するジャリンコJrたちが一流冒険者を目指し、数々の困難に挑戦していくといった内容。そのなかで瑠羽は進行アシスタントであり、かつ妹役というポジション。
挑むテーマは毎回変わり、まずは何もせず挑戦し失敗。その後に懸命な特訓シーンを経て、後半でのリベンジが山場となる番組構成。
とはいえ挑戦するのは若手男性アイドルたちなので、カメラに向かって話す以外の時間はほぼ待機といった状態。それでも背景として応援している様がカメラに納められたりするので、挑戦中も気を抜けず拘束時間は意外と長いのであった。
「お疲れっす!」
「おつかれさまでした、ありがとうございました」
そうして収録を終えた周囲のスタッフたちと挨拶をしている瑠羽に、ジャリンコJrのひとりがにこやかに笑顔を浮かべ声をかけた。
「ルーチュンおつかれ~。妹役、すごく良かったよ~」
「ありがとうございます」
「でさぁ、メッセージとか交換しようよ」
「ごめんなさい。そういうの事務所からしないようにって、言われてるんです」
それに対し、教えられたとおりの返しをする瑠羽。それでも、相手は引き下がらない。
「またまたぁ、そんな硬いこと言わずに仲良くやろうって」
しかしそう言いながら近づいてきて肩に手をかけようとするのを、スルリと達人の足捌きで躱してみせる。番組の為にダンジョン能力者となった若手アイドルと、江月に鍛えられガチでモンスターと戦っていた瑠羽とでは、そもそもの地力が違う。
「おっとと、あれ…?」
「ありがとうございました。またよろしくお願いします」
そうして手を前に身体を泳がせている相手にお辞儀をすると、瑠羽はその場をあとにする。
「あ、ちょっと待ってよ―」
「ん~、なんだどうした~??」
と、そこへそんなやり取りをみつけたグラサン野球帽姿の八重樫が、間に割って入る。
「や…、いえ、なんでもないですプロデューサー」
「ふむ、そうか。なら暗くなる前に撤収するぞ~。こんなとこで野良のモンスターに襲われても、堪らんからな」
「は~い、お疲れ様でしたぁ…」
(まったく…)
苦笑で若手アイドルの後姿を見送ると、八重樫は別方向に向け去っていく瑠羽の後姿にも眼を向ける。今日も新人とは思えぬ、なかなか胆の座った演技をしてみせていた。
(でも…しっかりやってたけど、今日はちょっと表情が硬かったかなぁ)
まだ慣れなかったり緊張もあるのだろうが、と思案顔で八重樫は陽の暮れかけた撤収風景を見回す。しかし自分が直接訊くよりも、ここは組苑に話を聞くのがいいだろうと、一先ずそこで思考を打ち切るとまた周囲に声をかけた。
「ほら撤収急げよぉ」
「「ウ~スッ!」」
若いのはほっとくと、すぐおしゃべりを始めてしまう。そして若い子が芸能界に入ったりすれば、それだけで気持ちが浮ついたりしてしまうもの。
だが、そんな素振りは一切みせないルーチュ。それに好感を抱きつつ両親と面談までしてこの世界に誘ったのだからと、糧品瑠羽のことを気にかけてやる八重樫小五郎の姿があったのだった。
優しく裕福な家庭に生まれたものの酷く病弱で、碌に学校にも通えぬ苦しくも孤独な少女時代。また治療の甲斐あって普通の生活が送れるようになってからも、その幼い頃の経験が仇となり内向的な性格へと育ってしまった。
そんな瑠羽に転機が訪れたのは、大学に進学し初めて心許せる瀬来万智という友達が出来たこと。
そして万智との縁で江月鳴人という初恋を覚えた相手から告白され、その恋人になれたことによる大転機。しかも江月は誤解をした瑠羽が万智に対し激しく逆上していたにも関わらず、事を分け説明し誤解を解いたうえ、その場で瑠羽に交際を申し込んでくれたのだ。
これにより瑠羽は親友を失うことなく、初恋もまた成就したのだった。
やさしく、たくましく、とても懐の深い恋人は瑠羽のことをとても大事にしてくれた。そんな強い愛情の後押しを得て、瑠羽は今日まで自身を成長させることができたのだ。
そして今まで自分を引っ張ってくれた万智と、困っているといつも的確な助言をくれる静絵。そんなふたりの親友と共に、瑠羽は芸能界入りしてアイドルとなった。
目的はひとつ、変わる勇気を伝えること。
自分が変われたように、その思いを、やり方を、大勢のひとに伝えたい。それが今の、瑠羽の願い。そんな瑠羽の姿が、今日もまた屋外採石場の撮影現場にあったのだった。
「「うわぁ~、やられたぁ~!」」
「もぉ~、しっかりしてよね!お兄ちゃんたち!」
「ハイカット~!オッケーです」
収録しているのは、ジャリンコJrの冠番組。
新米冒険者兄弟に扮するジャリンコJrたちが一流冒険者を目指し、数々の困難に挑戦していくといった内容。そのなかで瑠羽は進行アシスタントであり、かつ妹役というポジション。
挑むテーマは毎回変わり、まずは何もせず挑戦し失敗。その後に懸命な特訓シーンを経て、後半でのリベンジが山場となる番組構成。
とはいえ挑戦するのは若手男性アイドルたちなので、カメラに向かって話す以外の時間はほぼ待機といった状態。それでも背景として応援している様がカメラに納められたりするので、挑戦中も気を抜けず拘束時間は意外と長いのであった。
「お疲れっす!」
「おつかれさまでした、ありがとうございました」
そうして収録を終えた周囲のスタッフたちと挨拶をしている瑠羽に、ジャリンコJrのひとりがにこやかに笑顔を浮かべ声をかけた。
「ルーチュンおつかれ~。妹役、すごく良かったよ~」
「ありがとうございます」
「でさぁ、メッセージとか交換しようよ」
「ごめんなさい。そういうの事務所からしないようにって、言われてるんです」
それに対し、教えられたとおりの返しをする瑠羽。それでも、相手は引き下がらない。
「またまたぁ、そんな硬いこと言わずに仲良くやろうって」
しかしそう言いながら近づいてきて肩に手をかけようとするのを、スルリと達人の足捌きで躱してみせる。番組の為にダンジョン能力者となった若手アイドルと、江月に鍛えられガチでモンスターと戦っていた瑠羽とでは、そもそもの地力が違う。
「おっとと、あれ…?」
「ありがとうございました。またよろしくお願いします」
そうして手を前に身体を泳がせている相手にお辞儀をすると、瑠羽はその場をあとにする。
「あ、ちょっと待ってよ―」
「ん~、なんだどうした~??」
と、そこへそんなやり取りをみつけたグラサン野球帽姿の八重樫が、間に割って入る。
「や…、いえ、なんでもないですプロデューサー」
「ふむ、そうか。なら暗くなる前に撤収するぞ~。こんなとこで野良のモンスターに襲われても、堪らんからな」
「は~い、お疲れ様でしたぁ…」
(まったく…)
苦笑で若手アイドルの後姿を見送ると、八重樫は別方向に向け去っていく瑠羽の後姿にも眼を向ける。今日も新人とは思えぬ、なかなか胆の座った演技をしてみせていた。
(でも…しっかりやってたけど、今日はちょっと表情が硬かったかなぁ)
まだ慣れなかったり緊張もあるのだろうが、と思案顔で八重樫は陽の暮れかけた撤収風景を見回す。しかし自分が直接訊くよりも、ここは組苑に話を聞くのがいいだろうと、一先ずそこで思考を打ち切るとまた周囲に声をかけた。
「ほら撤収急げよぉ」
「「ウ~スッ!」」
若いのはほっとくと、すぐおしゃべりを始めてしまう。そして若い子が芸能界に入ったりすれば、それだけで気持ちが浮ついたりしてしまうもの。
だが、そんな素振りは一切みせないルーチュ。それに好感を抱きつつ両親と面談までしてこの世界に誘ったのだからと、糧品瑠羽のことを気にかけてやる八重樫小五郎の姿があったのだった。
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