うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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Cursed Doll

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朝から生ぬるい雨がシトシトとほぞ降っていたこの日、オレの元に一本の電話がかかってきた。

『江月さん、雲海です。どうもご無沙汰してます』
「ああ、雲海さん!ひさしぶり、どうです体調の方は??」

電話の主は、雲海さん。オレと一緒に悪霊退治の依頼を始めたものの、張り切り過ぎたのか仏パワーを使いすぎてしまったのか、一週間ほどでダウンし寝込んでしまっていたのだ。

『ええ、その節はご迷惑をおかけしまして…。今はもう、だいぶ良くなりました』
「では復活したので、また浄罪を頑張りたいと」

『いえ、今回は別の件でお電話さしあげました。ご相談に乗っていただけますでしょうか?』
「ほう、それはまたどのような件で…?」

そうして雲海さんが話すには、なんでも雲海さんのいるお寺で人形の供養を頼まれ、それを引き取ったらしい。しかしその人形というのがかなり曰くのあるモノのようで―要するに呪いの人形だったらしく、生半可な方法では供養できなかったそうな。

そこで生半可ではない方法―つまりオレのスキルで生み出した聖なる塩で、塩漬けにしてしまおうと考え、連絡をとったのだという。

『その人形に向け読経をすると、焦げた髪が飛び散ってボヤ騒ぎになったりと、ほとほと手を焼いておりまして…』
「アハハハ…あ、いや失礼。それは笑い事ではないですね。いいですよ、では今日買い物のついでにそちらに寄って、塩をお渡ししましょう」

『そうですか、ありがとうございます。引き受けてくださって本当に助かります』
「いえいえ、では後ほど」

こうして雲海さんのいるお寺に立ち寄ったオレだったが、おり悪く雲海さんは別の接客中で話すことも呪いの人形を見ることも叶わなかった。

(う~ん、呪いの人形とか、一体どんなのかちょっと見てみたかったけどな…)


…。


だが、そうして自宅に戻ると、再び電話が鳴った。

『もしもし、わたしソーカちゃん』
「ッ!?」

そこで電話にでると、電話の主はソーカちゃんと名乗った。

いくつもの買い物袋を手に玄関を開けたところで電話がなったので、タイミング的にさっき会えなかった雲海さんだろうとよく通信端末の画面を確認せずにでてしまった。が、それがまさかのソーカちゃんとは。

『今からアナタの家に行くね…ウフフ!』

その声は可愛らしく女性的ではあるものの、同時に機械で合成した音声のようでもあり、耳障りかつ酷く禍々しさを感じさせるものでもあった。

「あ、―」
『プーーーーー…』

そして、一方的に切れてしまう。

(あ、ちなみに何年モデル?って訊きたかったのに…)

そう、発売から人気を博し長い歴史を持つソーカちゃん人形は、今なお根強い人気を誇っている。それ故モノによってはマニアの間でもの凄いプレミア価格で取引されているのは、オタにとってはもはや常識といえた。

「うぅむ、まぁいい。向こうから来るというのだから、後で直接聞けばいいか」

そこで買い物したモノを袋からだし片付けていると、再び電話が鳴った。

『もしもし、わたしソーカちゃん。いまアナタの駅の近くにいるの…ウフフ!』

「あ、―」
『プーーーーー…』

しかしまたもや、一方的に切られてしまう。

(あ、またかクソ。駅にいるなら、駅前の薬局でプロテイン買ってきて欲しかったのに…)

買い物した品を確認してたらうっかり大事なプロテインだけ買い忘れてて、ひどくガックリきてたというのに。

「う~む、しかし流石は人形。こっちの話をまったく聞かないな…」

まぁ起きた事象の流れからして、おおかたオレの生み出した塩に漬けられたことで攻撃されたというフラグが立ち、妖怪嫁たちがしていたように縁のラインを辿ってこちらに攻めてきてるのだろう。

うむ、こちとらそういった攻撃法は、妖怪嫁で経験済みよ。

「ヨシ、では目には目を、歯には歯を、人形には人形でいくか!」

そこでダンジョン前室に置いてあるプラモばかりが詰まったダンボール箱を開けると、対ソーカちゃん用カスタムMSの作成にとりかかった。

「できたぞ!その名もゴッ〇・シュトゥッツァーだ!」

解説しよう。この5分ででっちあげたゴッ〇・シュトゥッツァーがどんなMSかというと、ゴッ〇の股間からアッガ〇の腕が生えてるカスタムMSだ。

うん、とってもふざけているようだが、何もふざけてなどいない。

直接死に関わるような邪悪な存在というのは、意外なことに不浄なモノに弱かったりする。たとえば人を見ただけで殺せるような邪視なんかも、ウンチとかオシッコとか、人の性行為を見ることでその力を失ってしまうとか。

これがウソかホントかは知らないが、死:デストルドーと生:リビドーの関係性から考えても、相性が悪いことは間違いないだろう。

ま、このゴッ〇・シュトゥッツァーに関しては、そんな効果の確かめ半分と、相手に対する挑発。向こうはこちらを精神的にいたぶって追い詰めようとジワジワ圧をかけてくるのだから、そんなの全く効いてないぞというのを、目に見える形で示し挑発しかえしてやるのだ。

「たのむぞゴッ〇・シュトゥッツァー、おまえが本土防衛の要だ」
『(コトッ…)』

というわけでオレは股間にアッガ〇の腕がオッ立ったゴッ〇・シュトゥッツァーを、玄関先にセットし部屋に戻った。


…。


「あ、しまったもうこんな時間か!」

ゴッ〇・シュトゥッツァーを玄関先にセットしたのち、ダンジョン前室に戻ったオレ。そうして開けた段ボールやプラモの箱を片付け始めたのだが、そこで作りかけで放置したままのプラモを発見してしまったのだ。

するとつい、『う~ん、ここの削りが甘いよな。あ、こっちももう少しモールドを深く掘った方がいいだろうに…』などと過去の自分のアラが気になって、ちょっと触るだけのつもりが何時間も夢中になってしまった。

「うむむ、参ったな…。そういやソーカちゃんとやらは、どうしたんだ?」

冷蔵庫から這い出てみると、部屋は真っ暗。まぁダンジョン前室に潜った時にはまだ日も高かったのだから、それも当たり前だが。

とはいえ部屋の明かりを点けてみても、何の異常もみられない。

「ふむ…。冷蔵庫ダンジョンの存在が分からなかっただけでなく、部屋にも侵入されなかったか。するとあのゴッ〇・シュトゥッツァーが、仕事をしたのかな?」

うむ、鰯の頭もディボーション。そんなのでも鬼除けになったりするのだから、オレの作ったゴッ〇・シュトゥッツァーだって呪いの人形除けになったっておかしくはない。

『がちゃ』
「あッ!?」

しかし玄関扉を開け外を確認してみると、ゴッ〇・シュトゥッツァーが無残にもバラバラになって散らばっているではないか。

「くそう!よくもオレのゴッ〇・シュトゥッツァーを!ソーカの仕業だな!どこだ、出て来いッ!!」

そこでこの犯人であろうソーカちゃん人形の姿を探すも、影も形もない。

「もしや…待ちくたびれて帰ったのか?ああ、こんなにバラバラになって…可哀相に」

そこで部屋から箱を持ってくると、パーツを丁寧にひとつひとつ拾い上げていく。

「流石になんともないぜとはいかなかったか…。だが、ちゃんと直してやるからな」

どんなにバラバラになったって、素材はプラスチック。それに今の技術とスキル【工作】があれば、またいくらでもカッコよく作り直してやることは可能。

だがそうしてパーツを拾い集めていると、どこからか風に乗って『そんな風に、愛してほしかったのに…』と、掠れた声がかすかに聞こえたような気がした。

「ハッ、まさか今のはソーカか!まだ近くにいるのかッ!?」

しかしオレの声は深い闇に飲まれ、どれほど待っても返事の返ってくることはなかった。











「あれ…、そういえばアッガ〇の腕がどこにも落ちてないぞ…??」

そしてその後、呪いのソーカちゃん人形とアッガ〇の腕の消息は、ようとして誰にも知れなかったのだった。
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